ライフサイエンス 新技術説明会【オンライン開催】
日時:2021年07月15日(木) 13:30~15:55
会場:オンライン開催
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、三重大学、岐阜大学
発表内容一覧
発表内容詳細
- 創薬
三重大学 大学院医学系研究科 生命医科学専攻 免疫学 教授 ガバザ エステバン
新技術の概要
特発生性肺線維症などの難治性肺疾患の予後は極めて悪く、治療薬としては、現在、pirfenidoneやnintedanibなどの抗線維薬が用いられるが、十分な治療効果が得られなく、新たな治療法の開発が急務である。また、特発生性肺線維症などの難治性肺疾患患者の主な死因は病態の急性増悪であるが、現在、日常臨床ではその早期診断法は困難であり、急性増悪の新たなバイマーカーの開発が望まれている。
従来技術・競合技術との比較
現在、特発生性肺線維症の治療として傷害されている肺上皮細胞が分泌する成長因子の発現を抑制する抗線維化薬が使用されているが、延命効果が全く認められていない。肺傷害・線維症の原因は肺胞上皮細胞のアポトーシスであることが最近の研究で明らかになりつつある。しかし、その細胞死誘導因子は未だに同定さておらず、治療法の開発が困難である。本発明では肺胞上皮細胞の死を誘導する肺内細菌叢由来のコリシンと名称した新規ペプチドに対するモノクローナル抗体を開発した。また、本発明では肺内細菌叢由来のコリシンに対して開発したモノクローナル抗体は、in vivoの実験において、transforming growth factorβ1過剰発現に伴う肺線維症とその病態の急性増悪を抑制した。さらに、本抗コリシンモノクローナル抗体はブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルに対しても同様の治療効果を示した。本抗コリシンモノクローナル抗体を用いて体液中のコリシンをより感受性高い方法で測定する方法も開発し、この方法にて肺線維症の急性増悪が早期に診断することができた。
新技術の特徴
・急性肺障害に対して有意な抑制効果を示す薬物である。
・肺線維症患者の死因である急性増悪を抑制する薬物である。
・バイマーカーの可能性が高い標的分子である。
想定される用途
・急性肺障害の治療薬
・肺線維症の急性増悪の治療薬
・急性肺障害・肺線維症の急性増悪のバイマーカー
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
2)アルツハイマー病因ペプチドの凝集を蛍光で検出する
発表資料三重大学 大学院生物資源学研究科 生物圏生命科学専攻 創薬化学研究室 准教授 増田 裕一
新技術の概要
アルツハイマー病因ペプチドであるアミロイドβペプチド(Aβ)の凝集を、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)として検出する方法を開発した。本方法により観測されるFRET強度は凝集量と相関することから、Aβ凝集の新規定量法としての応用が期待できる。
従来技術・競合技術との比較
Aβ凝集の定量には、凝集体に結合して蛍光強度が増大するチオフラビンTが一般に用いられている。しかし、チオフラビンTの結合部位が凝集阻害剤と競合すると、凝集量を正確に評価できない。本研究の手法では、Aβ42の凝集に影響がないN末端を蛍光標識しているため、凝集阻害剤との競合が起こらない。
新技術の特徴
・FRETによるAβ凝集の観測
・蛍光標識Aβの特性が野生型Aβに近い
・凝集阻害剤による干渉を受けないAβ凝集の定量
想定される用途
・Aβ42の凝集阻害剤の簡便なスクリーニング方法
・細胞や生体内におけるAβ凝集の可視化
- 創薬
岐阜大学 大学院連合創薬医療情報研究科 医療情報学専攻 助教 本田 諒
新技術の概要
Rasを阻害するペプチド鎖であるRas結合配列と細胞膜透過ペプチドを組み合わせることにより、Ras結合性と細胞内へのデリバリー性の両立を実現した人工タンパク質を提供する。
従来技術・競合技術との比較
近年G12C阻害剤の臨床応用が進んでいるが、本人工タンパク質はすべての変異型Rasを阻害することができるため、抗がん剤としての適用範囲が広い。
新技術の特徴
・これまで創薬困難であったRasを直接標的とする抗がん剤
・細胞膜透過性タンパク質というユニークな分子構造
・すべての変異型Rasを阻害することができるため、G12C阻害剤よりも適応範囲が広い
想定される用途
・がん治療
- アグリ・バイオ
三重大学 地域イノベーション推進機構 植物機能ゲノミクス部門 教授 小林 一成
新技術の概要
本技術は、植物の脱分化・再分化過程で適切な化学物質や物理的刺激を与えてエピジェネティック変異を方向づけ、生物的・非生物的ストレス耐性を植物に付与するものである。この技術は、大規模選抜やゲノムの改変を必要とせず、エピジェネティック変異を応用して植物育種を可能とする世界で唯一の技術である。
従来技術・競合技術との比較
植物の交配育種では、DNAの変異がランダムに起こることが制限要因となり、大規模選抜に膨大な時間的・費用的コストを払う必要がある。一方、我々が開発した技術では、ゲノムのエピジェネティック変異を人為的に方向付けることにより、目的とする生物的・非生物的ストレス耐性を獲得した植物が選抜過程なしに作出できる。
新技術の特徴
・エピジェネティック変異を人為的に誘導することにより植物に生物的・非生物的ストレス耐性を付与できる
・獲得されたストレス耐性はDNAの塩基配列変化に依存しないが、後代に安定して遺伝する
・遺伝子組換え、ゲノム編集に依存せず、選抜過程を一切経ずにストレス耐性植物を作出できる
想定される用途
・地球規模の気候変動による大規模な干ばつにも対応できる乾燥耐性作物の作出
・複数の生物的・非生物的ストレス耐性が付与されたエリート品種の作出
・交配育種が極めて困難な作物種(例えばバナナ)に短期間で病害抵抗性を付与する
関連情報
・外国出願特許あり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
三重大学 地域イノベーション推進機構 知的財産統括室
TEL:059-231-5495 FAX:059-231-9743
Mail:chizai-mipcrc.mie-u.acJp
URL:https://www.crc.mie-u.ac.jp/chizai/
東海国立大学機構 岐阜大学学術研究・産学官連携推進本部
TEL:058-293-2025
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