甲南大学・神戸大学 新技術説明会
日時:2008年10月10日(金)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)環境保全技術としての磁気力による抗生物質の選択分離
神戸大学 大学院農学研究科 食料共生システム学専攻 助教 井原 一高
新技術の概要
畜産業および水産業において、抗生物質は食の安全性確保のために重要な役割を果たしているが、使用後に環境へ拡散するおそれがあり薬剤耐性菌の発生が懸念されている。本技術は、磁気力を活用して抗生物質を選択的に分離除去することが可能である。
従来技術・競合技術との比較
通常の水処理技術は生物学的処理が柱のため、抗生物質の処理には適していない。本技術は、消費エネルギも少ない上に簡便に抗生物質を分離することができる。
新技術の特徴
・磁気シーディングを行うことによって、非磁性である抗生物質を磁気力によって分離可能
・永久磁石を用いて簡便に分離除去することができる
・適用できる抗生物質は、テトラサイクリン系をはじめとして広範囲である
想定される用途
・畜産もしくは養殖関連施設からの抗生物質の拡散防止
・食品に残留する抗生物質の分離除去
・病院排水に含有する抗生物質の分離処理
- 材料
2)π共役系を拡張したチアゾール誘導体
神戸大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 教授 森 敦紀
新技術の概要
CH結合置換反応を利用して、複数のチアゾール分子をもつπ共役系を拡張したチアゾール誘導体を合成した。得られたチアゾール誘導体の紫外・可視吸収スペクトル、蛍光スペクトルを測定し、π共役系の拡張による最大吸収波長、蛍光波長のシフトを確認した。
従来技術・競合技術との比較
CH結合置換反応を利用して炭素-炭素結合形成反応を行うことにより、従来の金属反応剤を用いるクロスカップリング手法にくらべ簡便に多様な誘導体を合成することが可能になる。
新技術の特徴
・パラジウム触媒を用いる炭素-炭素結合生成反応
・CH結合を活性化して直接結合形成が可能
・π共役系が拡張した蛍光強度の大きなチアゾール誘導体
想定される用途
・有機EL材料
・有機半導体
・蛍光色素
関連情報
・サンプルの提供可能
- 製造技術
3)ボールペンが不要な耐水耐光性ノンカーボン用紙
神戸大学 都市安全研究センター/大学院医学研究科 災害・救急医学分野 准教授 中尾 博之
新技術の概要
セルフ発光紙によるノンカーボン用紙の表面にコート剤もしくは透明コート紙により被覆することにより、耐水・耐化学・耐光性を賦与した複写用紙を発案した。
従来技術・競合技術との比較
災害時のトリアージタッグ(患者選別記録紙)に用いられる複写紙は、カルテの代用として5年間の永年保存が要求される。現在用いられている用紙は耐水性を保つために合成紙が用いられているが、この材質のためにさまざまな溶剤による染料流出や退光が生じることが実際の災害現場で生じた。また、屋外の現場ではボールペンがなければ記載できない。
新技術の特徴
・屋外などにおける場所においてもボールペンなどの筆記用具がなくても、コーティングがなされているので小枝などで記録が可能である。
・耐水・耐化学・耐光性を賦与した複写用紙。
・上記の特徴を持つため、現在使用が不可能であった水中・術野で記載が可能となり、身障者による記載に応用が可能となった。
想定される用途
・悪天候・水中における複写記録
・筆記具の使用が困難な段階での身障者、リハビリ、幼児教育等様々な用途展開
・公文書などが抱える複写紙の退光問題に対して保存期間の延長が可能
- デバイス・装置
4)傾斜の方向や大きさを検知し、結果を光の色でその場所に表示する「光る傾斜計」
神戸大学 大学院工学研究科 市民工学専攻 准教授 芥川 真一
新技術の概要
計測対象点に発生する傾斜について、その方向と大きさを検出し、結果を原位置に光の色や強さ出で表示する低コストの装置。
従来技術・競合技術との比較
傾斜計については長い開発の歴史があり、簡易なものから高度なものまで多くの機種が揃っている。しかしながら、計測結果の処理方法についてはほとんどがデータロガーを介してパソコンなどに収集され、それを後処理する形式となっている。どのような傾斜が発生しているのかを迅速に現場で確認したい場合に、それを実行することが困難な状態である。それに対し、本発明は計測結果がその場に光の色で表示されるため、誰にでも現状確認ができるメリットがある。
新技術の特徴
・傾斜を計測する低コストの装置
・計測した傾斜に関する情報がその場所に光で表示される
想定される用途
・鉛直度、傾斜をモニターするべきあらゆる社会基盤施設
・工事中の社会基盤施設
・傾斜を光の色に変えることによって面白さが増すエンタテイメント設備
- アグリ・バイオ
5)どんな物質でも誘導剤にできる遺伝子発現調節システム
神戸大学 自然科学系先端融合研究環遺伝子実験センター 助教 乾 秀之
新技術の概要
誘導物質に対する受容体が存在しなくても、抗体が取得できる物質であればどんな物質でも誘導物質として遺伝子発現調節(促進、抑制)系を構築することができる。
従来技術・競合技術との比較
既存の遺伝子発現調節システムは、生物が本来持っている遺伝子発現制御系を利用して開発されたものである。即ち、誘導因子となる物質は受容体が存在するものに制約され、我々が自由に設定することはできない。
新技術の特徴
・あらゆる物質(タンパク質、有機化学物質、無機化学物質等)を誘導物質として設定可能
・遺伝子発現の促進・抑制の選択可能
・誘導(抑制)遺伝子を自由に設定可能
想定される用途
・バイオレメディエーション分野で問題となっている微生物による二次汚染の回避
・疾病のマーカータンパク質の増減に応じて治療遺伝子の発現を制御する遺伝子治療ベクターへの応用
・生体における化学物質やタンパク質の局在モニター
- アグリ・バイオ
6)乾燥に強い農作物を実現する方法
甲南大学 理工学部 生物学科 准教授 今井 博之
新技術の概要
農地の砂漠化など、地球温暖化の影響はこれからの農作物の生産に大きく影響を与える。本技術は、植物の気孔からの水分蒸発を調整する機能を持った技術を提供し、耐乾燥性に強い農作物鑑賞植物を創生することを可能とする。
従来技術・競合技術との比較
従来、乾燥ストレスに強い作物は、トライアンドエラーで探索、乾燥に強い植物の遺伝子を探索してそれを活用する手段が用いられてきたが、探索は困難が伴って最適解はなかなか出てきていないのが現状である。
新技術の特徴
・植物の気孔の開閉を制御調整する方法
・植物の耐乾燥性を向上させる方法
・植物の耐乾燥性を向上させる物質のスクリーニング方法
・上記の方法を用いて、耐環境性に優れた農作物を実現する
想定される用途
・鑑賞植物の長寿命化
・鑑賞植物及び農産物の生産地域の拡大
・地球温暖化、砂漠の緑化用耐乾燥性植物の創出
- 情報
7)人の感覚に基づく欠陥検査基準の簡便決定法及び装置
甲南大学 知能情報学部 知能情報学科 教授 中易 秀敏
新技術の概要
検査員の知覚・感覚による検査能力を簡便かつ正確に計測し、検査精度の良い外観検査基準を合理的に決める方法及び自動検査装置の設計を支援します。また、熟練検査員の感覚反応を定量的に記録し、検査員の技量を判別したり、技量訓練に役立つ感覚知覚計測の方法を提供します。
従来技術・競合技術との比較
表面の傷の大小、塗装の光沢の状態がよい悪いを判定する検査では、使用者の判断基準を加味して基準値を決める必要がある。しかし、実際には基準決定のためには何人もの検査員の特性をいろいろな種類の対象物に対して何回も計測して初めて一つの基準値が定められるため、極めて効率が悪いのが現状である。紹介する新技術は、熟練者の優れた完成の特徴を科学的に記録するので、精度の高い検査基準を簡単に決定できる。
新技術の特徴
・熟練技術者の感性を知覚心理曲線で計測記録するため、精度よくかつ低コストで簡便に検査基準を決定できる。
・煩雑な心理曲線をもとめるための試行回数や検査員の負担を低減でき、高い効率で精度よくかつ低コストで簡便に検査基準を決定できる。
想定される用途
・製品の外観検査など視覚能力に依存した検査基準の決定
・その他、印刷むら、塗装の剥げ落ち、表面の傷の汚れの自動検出への応用
- 情報
8)テレビ会議、遠隔地講義に文字情報を同時に活用するオンラインコミュニケーションシステム
甲南大学 情報教育研究センター 准教授 井上 明
新技術の概要
遠隔地にある複数の端末間で、ネットワークを介して双方向通信を行い、端末上での映像データの表示に加えて、参加者の講義等に対する意見、感想を容易に記録することができる、オンラインコミュニケーションシステム。
従来技術・競合技術との比較
従来のテレビ会議や遠隔地講義では、映像や音声による情報発信に重点が置かれているが、映像や音声情報だけでは、参加者の発言数や論理の展開と言った状況を把握することが困難のことが多い。
新技術の特徴
・遠隔地会議や講義において、参加者が自由にメモ書きや自分の意見を記述、記録することができるシステム。
・各端末からのメモ書きは、全ての端末上で見ることが出来、会議講義の進行中にそれに応えることも出来るし、参加者の情報の共有化が図れる。
想定される用途
・リアルタイムな遠隔地講義
・遠隔地会議への活用
・会議中における参加者のチャットへの活用
・オンラインコミュニケーションへの活用
- 情報
9)学習意欲を持続させ、学習効果の高い電子教育システム
甲南大学 情報教育研究センター 准教授 井上 明
新技術の概要
学生の科目に対する興味、関心、態度、好き嫌い、得手不得手、成績の良し悪し等の情意情報を取り扱い、学生の個性に合わせた双方向の電子教育システムを提供する。
従来技術・競合技術との比較
一般的なe-ラーニングシステムは、サーバー側から学習者の端末へネットワークを介して、講義等の映像情報を配信したり、問題、解説等を含む一連の教育コンテンツを順次配信する。ただ、学習者の学習状況や興味に応じた学習教材を的確に提供するまでにはいたっていない。
新技術の特徴
・当該e-ラーニングシステムを利用したすべての学習者の学習関心度、学習履歴、学習パターンを蓄積する。その学習パターンから、最適な学習コンテンツを提供する。
・実際の教育現場と同じ状況で、教師と学生との間で質問や解答等の双方向のコミュニケーションが図れるシステム。
・過去の経験に基づきかつ学生の情意面に応じた対応を可能とする電子教育システム。
想定される用途
・教育機関での遠隔地間の講義
・社内教育機関での遠隔地間の教育
・過去の失敗事例の教育や知識技能の継承伝達に関する教育
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
神戸大学 連携創造本部
TEL:078-803-5945FAX:078-803-5947Mail:hicd-ccrd3office.kobe-u.ac.jp
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甲南大学 フロンティア研究推進機構
TEL:078-435-2754FAX:078-435-2324Mail:officefrontcenter.konan-u.ac.jp
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