南九州発 新技術説明会(1)
日時:2008年11月13日(木)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- エネルギー
1)酸化チタンと導電性高分子を用いた光で充電できる蓄電池(光蓄電池)
鹿児島大学 工学部 電気電子工学科 助教 野見山 輝明
新技術の概要
従来の2セル型(太陽電池+蓄電池)ではなく、光発電能と蓄電能を兼ね備えた光蓄電電極を持つ1セルで光で充電できる蓄電池の開発を行っている。光蓄電電極は、酸化チタンと蓄電材料となる導電性高分子の複合材料である。
従来技術・競合技術との比較
本技術は1セル2電極(光蓄電極+対極)型であるのに対し、他機関では1セル3電極(光発電極+蓄電極+対極)型が研究されている。本技術の方が小型化・フィルム化が容易であるが、他機関の方が現状で光による蓄電効率は高い。
新技術の特徴
・1セル2電極(光蓄電極+対極)型のシンプルな構成で光による蓄電を可能にしている。
・可撓性が高く作製プロセスが多様な導電性高分子を主たる電極材料とするため、フィルム化が容易で形状の自由度が高い電池となる。
・酸化チタンの光による酸化還元力で蓄電反応を起こすスキームとそのスキームを実現する電極構造の構築を行っている。
想定される用途
・小電力小型電子機器(センサー等)の電源
・配電線や充電作業を必要としないメンテナンスフリーなスタンドアロン電源
- エネルギー
2)ブレイン・マシン・インターフェースを実現する電極
宮崎大学 医学部 医学科 助教 國武 孝人
新技術の概要
本技術は金属と電解質溶液との界面の特性を変化させるものであり、従来型の電極では難しかった神経活動の記録が、本技術で作成した電極により確実に、また高振幅の細胞外活動電位として長期間連続的に可能となった。
従来技術・競合技術との比較
金属微小電極を脳に刺入し、直接神経活動を記録する方法は存在したが、信号雑音比が小さく、また長期間安定して記録することが出来なかった。そのため、背景雑音から目的の神経活動を弁別するために各種のコンピュータ処理システムが開発されてきた。本技術により神経活動の振幅が10倍以上になったため弁別は極めて簡単になった。
新技術の特徴
・本技術により作成した電極では個体間の性能差が極めて小さくできた。
・神経活動の振幅が従来型の10倍以上になり最大で 2.5 mV になった。
・電極を一箇所に数ヶ月以上留めた場合、振幅に変動は見られるものの最低200μV以上の活動が連続して記録可能である。
想定される用途
・ブレイン・マシン・インターフェース
・動物実験および臨床用神経活動記録・刺激電極
・筋電図、心電図、誘発電位用電極(単独、マッピング)
- アグリ・バイオ
3)腫瘍細胞やウイルス感染細胞を排除する細胞の活性測定法
宮崎大学 農学部 応用生物科学科 准教授 江藤 望
新技術の概要
ナチュラル・キラー(NK)細胞は、腫瘍細胞やウイルスに感染した細胞の排除を行っている。株化されたNK細胞を利用することで、NK細胞を賦活する成分のスクリーニングを、大規模且つ簡便に行う方法。
従来技術・競合技術との比較
従来は、健常人から採血して得た末梢血単核球を用いてNK活性を測定していた。①これは大量に調製することが困難な細胞であるため、大規模なスクリーニングを行うことは出来なかった。②測定結果がドナーの健康状態に影響を受けていた。新技術では、これらを解決している。
新技術の特徴
・実験規模を大きくできる(細胞を容易に調製できる)
・ドナーの健康状態等に影響を受けない
・NK細胞への直接活性のみを測定できる
想定される用途
・NK活性賦活成分(機能性食品素材)のスクリーニング
・食品の加工に伴う機能性成分の失活のモニター
・薬理成分のスクリーニング
- 製造技術
4)従来の鉛フリー銅合金に替わる新しい鉛フリー銅合金
鹿児島大学 大学院理工学研究科 ナノ構造先端材料工学専攻 教授 末吉 秀一
新技術の概要
銅合金溶湯に二硫化モリブデンを添加し、反応によって素地中に硫化銅を分散させ、それを固体潤滑剤として機能させることによって被削性を向上させた新しい鉛フリー快削銅合金とその製造方法
従来技術・競合技術との比較
現有の鉛フリー銅合金には、稀少金属であるビスマス等が添加されており、地球環境への負荷の増大、コスト高等、多くの問題が指摘されている。当該材料は、これらの問題点を改善すると共に、これと同等の被削性および機械的性質を有している。
新技術の特徴
・快削成分は硫化銅
・溶湯への添加剤は二硫化モリブデン
・被削性および機械的性質は従来の鉛フリー銅合金と同等
想定される用途
・水道器具
・被削性が要求される銅合金使用機器
関連情報
・サンプルの提供可能
- 製造技術
5)加工食品の原料として利用するエビの殻の軟化処理方法
鹿児島大学 水産学部 准教授 進藤 穣
新技術の概要
底曳網漁により、小型のエビが混獲される場合、頭と殻の除去に手間が掛かり、その上安価である理由から廃棄される場合がある。また、シラエビのように殻むき機械を導入した場合、既存の機械を利用することが不可能で、改良のためのコストが膨大に掛かる。殻むき作業をせずに、天然由来の粗酵素液および有機酸緩衝液を用いて殻を軟化処理することで、小型エビを加工食品の原料として有効に利用する。
従来技術・競合技術との比較
従来、シラエビの殻を軟化させる方法として、一旦凍結後、酸に浸漬し、アルコール液に浸して脱酸処理を行なう方法や酵素アクチナーゼを用いる方法が示されているが、エビの味覚や生鮮度にどのように影響があるか不明である。本方法では、生鮮度低下および味覚への影響を考慮した殻の軟化処理方法である。
新技術の特徴
・青果物の未利用部から抽出した粗酵素液を利用
・味覚への影響を考慮して、有機酸緩衝液を利用
・軟化処理中におけるエビの生鮮度低下を抑制
想定される用途
・クリームコロッケようなエビの風味を活かした惣菜の原料
- 環境
6)光触媒を用いたバイオマスの利用
宮崎大学 工学部 物質環境化学科 教授 田畑 研二
新技術の概要
草本、木質系バイオマスに含まれるリグニンを常温・常圧の反応条件で可視光で使える光触媒を用いて解離し、その後セルラーゼ等の分解酵素を用いて糖化する技術。
従来技術・競合技術との比較
草本、木質系バイオマスに含まれるリグニンの処理は強酸処理、塩基処理、超臨界法などが検討されているがそれぞれに課題があり、実用化されている技術はない。本法は常温、常圧のゆるやかな反応条件で、太陽光に多く含まれる可視光を利用できる光触媒を用いてリグニンの解離を行うものである。その後セルラーゼ等の分解酵素を用いて糖化する。
新技術の特徴
1.常温、常圧の環境に優しい反応条件で糖化できる。
2.太陽光を利用できる省エネ型の糖化技術である。
3.酸、塩基処理法と異なり後処理の必要がなく、何回でも使用できる。
想定される用途
1.草本系、木質系バイオマスからのバイオエタノール生成プロセスの前処理工程として使用できる。
- 製造技術
7)廃電子部品からのインジウム、ガリウム、亜鉛の高選択的回収技術の開発
宮崎大学 工学部 物質環境化学科 教授 馬場 由成
新技術の概要
インジウム、ガリウムは亜鉛精錬残渣中に含まれており、大量の亜鉛が含まれている溶液からのインジウム、ガリウムの選択的分離を行える抽出剤の開発に成功した。
従来技術・競合技術との比較
亜鉛精錬残渣中に含まれているインジウム、ガリウムは、現在イミノ2酢酸型樹脂によって分離されているが、インジウム・ガリウムと亜鉛との分離は可能であるものの、インジウムとガリウムの分離はできない。一方、今回開発した新規な抽出剤は、インジウム、ガリウム、亜鉛をそれぞれ分離することができる抽出剤である。
新技術の特徴
・インジウム、ガリウム、亜鉛の相互分離がpHを操作するだけで平衡論的に分離できる
・本抽出剤は固体の樹脂に含浸させることによって、カラム操作もできる
・抽出されたインジウム、ガリウム、亜鉛は塩酸溶液で容易に回収でき、抽出剤の再利用ができる
想定される用途
・亜鉛精錬残渣からのインジウム、ガリウムの高選択的分離材として使用できる
・ITO(Indium Tin Oxide)ターゲット材スクラップからのインジウムの回収材として利用できる
関連情報
・サンプルの提供可能
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
鹿児島大学 産学官連携推進機構 知的財産部門
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