信州大学・長野高専 新技術説明会
日時:2008年11月21日(金)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 計測
1)FBGとリング共振器を用いた光ファイバ分布計測システムの高性能化
長野工業高等専門学校 電子制御工学科 教授 佐野 安一
新技術の概要
FBGとリング共振器を用いて、物理量の変化に対応した中心波長の変化が得られる狭帯域センサをベースとした光ファイバ分布計測システムを提案する。またFBG、リング共振器それにPBGFあるいはホーリーファイバを組み合わせた光ファイバ分布型ガスセンサシステムを提案する。
従来技術・競合技術との比較
従来、FBGを用いた光ファイバ分布計測システムではFBGの中心波長が変化してもFBGの反射光量の変化が小さなため中心波長を高精度に測定できない欠点があった。提案する技術によりFBGよりもはるかに狭帯域のセンサを実現できるため中心波長の変化によるセンサからの光量変化は大きくなり高精度分布計測システムを実現できる。また提案の分布型ガスセンサシステムは従来より高感度な分布型ガスセンサシステムを実現できる。
新技術の特徴
・光ファイバを用いた高精度分布計測システム
・光ファイバを用いた高感度分布型ガスセンサシステム
想定される用途
・高精度な建築構造物のヘルスモニタリングシステム
・広域ガス漏れ検出システム
・二酸化炭素の20倍の温室効果ガスであるメタンの検出が可能なため地球環境維持に貢献できる
- 製造技術
2)Ti-Ni形状記憶合金を応用したブドウ作業補助具
長野工業高等専門学校 機械工学科 准教授 北村 一浩
新技術の概要
Ti-Ni合金は超弾性特性と呼ばれる6%もの変形を加えても元の形状に戻る性質を持っている。本合金を利用して両腕に取り付け腕を支える器具を開発した。この器具はブドウ栽培での両腕を挙げたままの作業を補助する。
従来技術・競合技術との比較
ブドウ作業補助具は、バネとリンク機構を用いた器具が試作されているが、重量が重い、かさばる、などの欠点があり農家に普及しなかった。しかしこれを数本のTi-Ni合金ワイヤーに置き換えることにより、小型化・軽量化が可能となった。
新技術の特徴
・Ti-Ni合金の超弾性効果を利用
・弾性部材がしなやかに曲がるため、手を大きく動かしても違和感が無い
・小型・軽量である
想定される用途
・ブドウや梨などの果樹作業補助
・電力会社の電線工事
- 環境
3)バイオマスから新規な二糖類を効率的に生産する方法
信州大学 工学部 物質工学科 教授 天野 良彦
新技術の概要
バイオマスの主要成分を水熱反応装置及び酵素を用いて分離し、この糖質成分をさらに酵素変換により新規二糖類であるグリコシルキシリトールに変換する際の、変換効率を向上させる方法について紹介する。
従来技術・競合技術との比較
バイオマスをハイブリットリアクターシステムで変化する手法及び装置については新しい技術である。また、酵素変換の際の収率向上法についても、生成物阻害を回避する新規の手法である。
新技術の特徴
・新規の連続式バイオマス変換装置
・微生物を用いた糖質の収率向上法
想定される用途
・バイオマス変換による工業素材の製造
・機能性糖質の製造
関連情報
・製造依頼がある場合には対応が可能
- 計測
4)高分解能センシングによる、森林現況情報の作成方法および間伐地の自動区分方法
信州大学 農学部 アルプス圏フィールド科学教育研究センター 教授 加藤 正人
新技術の概要
日本には1千万haの人工林があるが、災害の起きやすい放置された間伐地(細い木が密生する不健全な林)が増加している。当該技術は、人工衛星等による高分解能センシングデータを用いて、人工林の樹種別本数などから林相をゾーニングした後、林分情報と地形要因をモデル化して間伐地を自動的に区分する手法である。
従来技術・競合技術との比較
従来の間伐地の選定は、現場の森林技術者の経験と現地調査結果に基づいて判断しており、林道の近くなどの狭い範囲に限られる。広域の森林を対象とする場合、多大な労力と時間を要している。当該発明は論文や研究例もない全く新規の技術であり、間伐地選定の時間と労力の大幅な削減という点で優位である。
新技術の特徴
・広域の森林を対象に、現況をビジュアルに自動区分できる。
・間伐地の適切な抽出は地球温暖化対策に貢献でき、応用範囲が広い。
・都道府県で普及しているGISなどのIT技術との連携により付加価値を見出せる。
想定される用途
・自動区分された間伐所要地域(間伐地の区分・分布図)をもとに、適切な間伐を実施による災害リスクの低減と林業振興
・地球温暖化対策の森林のCO2吸収量では、間伐が実施された健全な人工林が算定基準となっており、国益にも資する
・人工林率の高い海外(中国と韓国などのアジア地域)での当該特許技術の適用範囲も期待できる
- アグリ・バイオ
5)未利用スプラウトを利用した機能性食品素材
信州大学 農学部 応用生命科学科 准教授 中村 浩蔵
新技術の概要
生産量の約20%が未利用物として排出されているスプラウト食品(もやし、カイワレなど)を利用して、優れた栄養成分と食品機能性成分、食品機能を有する「パウダードスプラウト」を開発した。
従来技術・競合技術との比較
一般の野菜乾燥パウダーと比較して、脂溶性成分(機能性成分や脂溶性ビタミン)、タンパク含量に優れており小麦胚芽に似た栄養組成をもつ。また、野菜のパウダーには見られない機能性成分、生体内での脂質改善効果が期待できる。
新技術の特徴
・パウダードスプラウトの優れた栄養価(食物繊維、ビタミン類、葉酸、食品機能性成分など)
・パウダードスプラウトの食品機能(コレステロール低下作用、中性脂肪低下作用など)
・未利用で廃棄されるスプラウトの有効利用
想定される用途
・機能性食品素材(特定保健用食品、保健機能食品)
・健康食品素材
・食品素材
関連情報
・サンプルの提供可能
- 創薬
6)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療薬とNASH診断マーカーの開発
信州大学 大学院医学系研究科 加齢適応医科学系専攻 教授 青山 俊文
新技術の概要
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は欧米において顕著に増加している疾患であり、日本においても相当多数の患者が存在する。エイコサペンタエン酸(EPA)単独投与がNASH患者の治療に高度に有効であることを確定した。NASH患者の病勢診断に有用な因子群を確定し、加えて、新規NASH診断マーカーを開発した。
従来技術・競合技術との比較
魚油から精製されるエイコサペンタエン酸(EPA)は 副作用を伴うことなく NASHの治療に顕著な効果を示すことが初めて示された。NASHの確定診断には肝生検を必要とするが、血液試料を用いてNASHの診断を行なう新規マーカーを見出した。
新技術の特徴
・安全性の高い優れたNASHおよびNAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)治療薬の開発
・NASH病勢診断に有用な因子群の確定
・血液試料を用いるNASH診断マーカーの開発
想定される用途
・NASHおよびNAFLDの治療薬
・NASHの臨床検査法
・EPAの合剤・適用拡大への応用
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
7)正常眼圧緑内障モデル動物とそれを用いた被験物質の評価方法
信州大学 大学院医学系研究科 臓器移植細胞工学医科学系専攻 准教授 林 琢磨
新技術の概要
40才以上の日本人の28人に1人の罹患率(4%)で発症する正常眼圧緑内障は、糖尿病網膜症に次ぎ失明原因の2位を占める。本疾患の発症機序は明らかとされておらず、治療法が確立されていない。本発明は、正常眼圧緑内障の症状に似た形態を月齢依存的に示し正常眼圧緑内障モデル動物、及びそれを用いた正常眼圧緑内障治療効果評価方法、正常眼圧緑内障の治療剤、診断・リスク予測に関するものである。
従来技術・競合技術との比較
これまでの緑内障モデル動物では、月齢依存的な症状の悪化という慢性疾患特有の症状が得られない。申請者らの本発明は、月齢依存的に正常眼圧緑内障が自然発症し、ヒトの正常眼圧緑内障の症状に類似する点が多い。これまでの緑内障モデル動物では難しいとされる正常眼圧緑内障の予防薬のスクーリニング、診断・リスク予測を検討するために、申請者らの本発明を用いた試験は特に優れている。
新技術の特徴
・本技術は、月齢依存的に正常眼圧緑内障が自然発症し、ヒトの正常眼圧緑内障の症状に類似する点が多い。
・本技術は、正常眼圧緑内障の予防薬のスクーリニング、診断・リスク予測を検討に対して特に優れている。
想定される用途
・正常眼圧緑内障の予防薬のスクーリニング、診断・リスク予測の検討
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
8)絶滅危惧種ヒカリゴケの人工培養法
信州大学 繊維学部 応用生物学系 教授 下坂 誠
新技術の概要
ヒカリゴケは洞窟などに生育し黄緑色の鮮やかな光を反射する。絶滅危惧種に指定されたヒカリゴケを実験室内で大量増殖させ光らせる技術を開発した。自生地でのヒカリゴケ再生に貢献し、観賞用として癒しの空間を演出する。
従来技術・競合技術との比較
コケ栽培の研究例は少なく技術的にも確立されていない。絶滅危惧種ヒカリゴケに関しても栽培に関する報告はない。今回、初めてヒカリゴケ細胞を実験室内の環境で安定かつ無限に増殖させる人工培養に成功した。
新技術の特徴
・ヒカリゴケ細胞を研究室内で安定に維持し、大量に増殖させることができる
・培養支持体と培養法の工夫により、ヒカリゴケを光る状態に保つことができる
想定される用途
・観賞用として神秘的な黄緑光による癒しの空間を演出する
・自生地におけるヒカリゴケの再生に貢献できる
関連情報
・実物の見学可能
- アグリ・バイオ
9)毛髪損傷へのケラチンフィルムによる新規評価法の開発
信州大学 繊維学部 応用生物学系 教授 藤井 敏弘
新技術の概要
ヒト毛髪に大量に含まれているケラチンの自己集合を利用してフィルムを作製した。このフィルムが紫外線照射による感受性を示すことを見出した。これを毛髪への紫外線損傷を測定する評価システム等へと展開している。
従来技術・競合技術との比較
毛髪関連製品の開発のため、髪の毛の損傷評価は毛髪自体を使用して開発され適用されている。しかし、髪の毛の個体差等により、データの不均一性と再現性が問題となっている。本技術はこれらの点を克服した。
新技術の特徴
・個人差の問題の解決
・高感度(初期段階の損傷の評価)
・簡便な操作での評価
想定される用途
・紫外線を含めた損傷毛への対応製品の開発
・パーソナルな人工皮膚
・羊毛への応用
- 医療・福祉
10)タンパク質微粒子を用いたコロイド水溶液による模擬血液
信州大学 繊維学部 創造工学系 准教授 小林 俊一
新技術の概要
人工臓器を含む医療用具の開発や医学研究における実験、あるいは医療診断行為の実験実習などの際にヒト血液の替わりに使用する模擬血液として、毛髪や絹のタンパク質微粒子を用いたコロイド水溶液を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来の簡便な模擬血液としてグリセリン水溶液が用いられていたが、粘度特性が必ずしもヒト血液とは一致せず、今回開発した模擬血液は、赤血球に相当するタンパク質微粒子を含むコロイド水溶液で、粘度特性もヒト血液にほぼ一致する。
新技術の特徴
・開発したコロイド水溶液の粘度特性がヒト血液とほぼ一致する。
・タンパク質微粒子が赤血球に相当し、超音波診断装置の造影剤としても効果がある。
・対象タンパク質は入手しやすく、個人の毛髪からタンパク質を抽出すれは、個人対応コロイド溶液となりうる。
想定される用途
・人工臓器を含む医療用具の開発や医学研究における実験における模擬実験
・医療診断行為の実験実習における模擬実験
・個人の毛髪からタンパク質を抽出した個人対応のコロイド溶液は、テーラーメード型医用材料への応用に期待できる。
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
信州大学 地域共同研究センター
TEL:026-269-5620FAX:026-269-5630Mail:officecrc.shinshu-u.ac.jp
URL:http://www.crc.shinshu-u.ac.jp/
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TEL:03-5214-7519
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