公立大学法人首都大学東京 新技術説明会
日時:2008年07月04日(金)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 環境
1)バイオディーゼル燃料製造のためのアルカリ法メチルエステル化プロセスにおける相分離の促進法
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 環境調和・材料化学専攻 教授 加藤 覚
新技術の概要
バイオディーゼル燃料製造のためにアルカリ触媒法を利用してエステル交換反応を行う際に、長鎖脂肪酸アルキルエステル相と、グリセリンを含有するアルコール相が生成する。この反応液に粘性の低いメタノールを多量に添加し強攪拌することで相分離が促進され、極めて短時間のうちに相分離が可能となる技術を開発した。数時間を要する従来法に比べて10秒程度で相分離が完了する。
従来技術・競合技術との比較
エステル交換反応で廃食用油からバイオディーゼル燃料を製造する場合に、生成されたグリセリンを含むメタノール相と、長鎖脂肪酸アルキルエステルからなる相が混合し乳化を起す。そのため、これまでは製品となる長鎖脂肪酸アルキルエステル相を取り出すために数時間の静置処理が必要であり、生産性が極めて低かった。新技術は相分離が早い(10秒程度)ので連続操作が可能になる。
新技術の特徴
・メタノールの多量添加
・強攪拌
・バイオディーゼル燃料製造装置の連続稼働
想定される用途
・バイオディーゼル燃料の製造
・エステル交換反応での相分離の促進
- 電子
2)動作認識知識による不審者判別システム
首都大学東京 大学院システムデザイン研究科 情報通信システム工学専修 教授 山口 亨
新技術の概要
人間の動きをコンピュータが追跡して不審者の動きに近いものを検出し、自動で不審者を判別する。さらにネットワーク接続により、監視のプロにより新たに検出した不審者動作データを順次サーバへ自動送信して、不審者の動きの知識をシステム全体に送付する。 これにより、不審者の判別率を自動的に向上させていく。
従来技術・競合技術との比較
従来手法は、静止画による顔認識でマッチングをとる手法が中心であり、動作でマッチングをとる手法は少ない。また、数少ない動作を用いる手法の場合には、単純な領域侵入チェックや、領域乗り越えチェック等をベースとしており、不審者の動作、すなわち「あやしい素振り」で判別する手法は無い。
新技術の特徴
・顔の向きや用途のプロファイルを加えた推論
・プロファイルデータを加味した事例ベース表の更新
・ファジイ連想推論による高精度・高速な判別
想定される用途
・駅や空港などの交通機関での不審者判別
・スーパーやコンビニ等の商業施設での利用
・警備会社による利用
- 情報
3)インタネットサービス構築のためメタデータを活用した情報共有システム
産業技術大学院大学 産業技術研究科 情報アーキテクチャ専攻 教授 成田 雅彦
新技術の概要
メッセージ交換・データ蓄積型のインタネットサービス構築技術である。多様なディバイスからデータを入力し、整理格納・検索ができる。予めキーワードとタグを関係づけておくことにより、データの入力時にキーワードを取出し、容易にメタデータを付与できる。また、これに基づき高速検索ができる。外部サービスとも連携可能である。
従来技術・競合技術との比較
日付や人名などのメタデータを使用して知人ネットワークを作成するシステムや、カレンダーを作成するシステムは個々に開発されているが、本件は、各種サービスを開発・連携するためのメタデータを活用する汎用的なプラットフォームとして体系的に提供しているところが異なる。
新技術の特徴
・様々なデバイスからのメッセージやデータを扱え、様々な形態で出力や外部との連携ができる
・データ蓄積時にメタデータの付加機能を持ち、これを用いてデータを整理・蓄積・検索を行なう
・本システムを用いてサービスを構築するAPIを提供
想定される用途
・PC/携帯/モニタシステムなどを連携したスケジュール管理
・健康管理システム、タクシーは医者システム、コールセンタや障害問合せシステム
・これらを構築するための汎用的なプラットフォーム
- 電子
4)非接触メンタルストレス診断システム
首都大学東京 大学院システムデザイン研究科 経営システムデザイン専修 助教 鈴木 哲
新技術の概要
着衣のまま椅子に座っている被測定者にレーダーアンテナから照射されるマイクロ波の変化を算出し、ストレス状態の変化を測定する装置を開発した。座った作業状態のままでストレス状態を測定できるので、労働衛生上の応用や簡易的な病態診断に役立つ。
従来技術・競合技術との比較
従来、自律神経系の変化を観察する場合は心電図を用いるなど、日常的に使用するには不向きなものが多かった。また、非接触で人のストレス状態を測定する装置は開発されていなかった。
新技術の特徴
・非接触での生体表面の微小変位計測
・最大エントロピー法による心拍変動指標の解析
・マイクロ波の受発信手段を備えたシート
想定される用途
・走行中のメンタルストレスのモニタリング
・デスクワーク作業者のメンタルストレスのモニタリング
・着座時の労働衛生上への応用
- 材料
5)新規pH応答性高分子を用いた遺伝子導入用材料
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 環境調和・材料化学専攻 助教 朝山 章一郎
新技術の概要
新規pH応答性高分子である低毒性のアルキル化ポリビニルイミダゾールとDNAが複合体を形成する。この複合体は他の成分を加えることなく、細胞選択的に高い遺伝子発現を示した。 実験例の多くは、当該複合体により、遺伝子の選択的な細胞内への導入による遺伝子治療の可能性を示唆する。
従来技術・競合技術との比較
遺伝子治療に非ウィルス性の核酸キャリアの利用が検討されているが、ウィルス性の遺伝子キャリアに比べて、極めて遺伝子発現効率が低い状況にある。また細胞ターゲッティング能やヌクレアーゼ耐性を保持することが困難である、などの問題点がある。
新技術の特徴
・pH応答性アルキル化ポリビニルイミダゾールの合成
・DNAとの複合化による高い遺伝子発現効率
・遺伝子治療用医薬組成物としての利用
想定される用途
・遺伝子治療用の医薬組成物
・各種臓器の診断
・癌細胞の診断
- 材料
6)ナノファイバーを用いた新しい構造体の開発
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 環境調和・材料化学専攻 教授 川上 浩良
新技術の概要
エレクトロスピニング法において、コレクター間に電位差を与えて、配向制御性に優れ、多軸配向のナノファイバー集積体を直接かつ容易に形成する技術を開発した。
従来技術・競合技術との比較
既存のナノファイバー配向技術はウェブ面が均一に1軸配向されない、2軸の配向状態が十分に行われない、厚み方向の制御が不可能である、などの問題点があった。また、エレクトロスピニング法で直接多軸配向ナノファイバー集積体を形成する技術は存在しなかった。
新技術の特徴
・多機能のポリイミドナノファイバーの作製
・エレクトロスピニング条件の制御
・ナノファイバー集積体の構造制御
想定される用途
・電池のセパレーターや電解質膜、導電性ナノファイバー
・濾過フィルター、触媒反応場としてのナノファーバー
・医療用器材
- 材料
7)電解エッチングにもとづくアルミニウム規則直行細孔の形成と機能化
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 環境調和・材料化学専攻 准教授 西尾 和之
新技術の概要
アルミニウムの電解エッチングによりトンネルピット配列を形成した後、陽極酸化処理により酸化アルミニウムの多孔質皮膜を成長させる。このとき、アルミニウムを消失させることにより、ピットの壁面に垂直に配向した、透明度の高い酸化アルミニウム多孔質膜体が得られる。
従来技術・競合技術との比較
ミクロンサイズの高アスペクト比細孔配列を有するアルミニウムを効率良く酸化アルミニウムに変換し、光透過性の高い多孔質体とする技術は知られていなかった。
新技術の特徴
・酸性電解液中でのアルミニウム箔の効率的な陽極酸化
・低電圧でのアルミニウム箔の陽極酸化
・透明な多孔質の金属薄膜体の作製
想定される用途
・光触媒担体及び光機能材料
・精密濾過フィルター
- 材料
8)金ナノ粒子触媒の新規調製法および新しい応用
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 環境調和・材料化学専攻 教授 春田 正毅
新技術の概要
汎用の高分子材料や活性炭、ナノ孔炭素に対しても簡便に金をナノ粒子として担持する方法として、担体表面に吸着させた金錯イオンを析出還元する方法や有機金錯体を固相で混合する方法などを開発した。その結果、常温、水溶液中でグルコースの酸素酸化が進行し、グルコン酸ナトリウムを高速、高選択的に製造できる。
従来技術・競合技術との比較
金の粒子径を2nm以下のクラスターにして、高分子、炭素、金属酸化物に分散・固定化することが出来るので、常温で働く空気浄化触媒(一酸化炭素やホルムアルデヒドの酸化)および液相酸化触媒(グルコースからグルコン酸ナトリウムの合成)として性能が大幅に向上した。
新技術の特徴
・空気中の一酸化炭素、ホルムアルデヒド、アンモニア、トリメチルアミンを常温で酸化分解できる。
・担体を選ぶことにより、気相および液相での選択酸化や選択水素化など種々の反応への応用が可能である。
・担体の種類に応じて金の化合物と担持法を選ぶことにより、新しい触媒を作ることができる。
想定される用途
・気相および液相における選択酸化触媒
・高耐久性顔料材(エンジ、ピンク、紫)、化粧品、塗料
・柔軟性のある導電性材料、電池や化学センサ用の電極、赤外線センサ
関連情報
・サンプルの提供可能
- 計測
9)レーザ誘起蛍光法を用いたNO濃度測定手法
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 環境調和・材料化学専攻 教授 梶井 克純
新技術の概要
大気中のオゾンの生成機構に決定的役割を果たすNOとNO2の濃度測定のために、測定大気にオゾンを添加してNOをNO2に転換する技術と、レーザ誘起蛍光法を援用したNO2を選択的にまた簡便・高精度に測定する装置とを、開発した。これにより同一の測定装置でNOとNO2の同時測定が可能となった。
従来技術・競合技術との比較
従来は、大気中のNO2を測定する場合は、一旦NOに変換してから間接測定することが一般的であったが、この場合には、当該変換過程の選択性や効率に多くの問題があった。加えて、大気中のNO濃度変動の影響を大きく受けるという欠点が存在した。
新技術の特徴
・レーザダイオード利用による、低コストで省電力・省スペースの測定装置
・NOを精度よく簡便に計測する手法の開発
・NOとNO2の同時測定が可能な手法の開発
想定される用途
・汎用性の高い低コスト窒素酸化物アナライザー開発
・大気中オゾン生成機構の解明
・大気中光化学反応の機作解明
- デバイス・装置
10)ジルコニウムフェライト吸着剤と磁気分離によるリンの浄化と回収
首都大学東京 大学院理工学研究科 電気電子工学専攻 教授 伊藤 大佐
新技術の概要
リンを吸着したジルコニウムフェライト吸着剤をマグネットにとおし、吸着剤をマグネット内の分離用磁性フィルタに付着させ、それをマグネットの周辺に設けた磁性フィルタで補足することにより、水系中のリンを高速、小スペース、かつ低コストで分離・浄化・回収する技術および装置の開発である。
従来技術・競合技術との比較
従来、ジルコニウムフェライト吸着剤にリンを吸着させる時、及びジルコニウムフェライトからリンを回収する時は、濾過法や凝集沈殿法によりリンを回収し再利用している。そのために、広いスペースを必要とし、さらに処理時間が長くかつ処理水量が制限されるという問題があった。
新技術の特徴
・ジルコニウムフェライト吸着剤と磁気分離技術の組み合わせ
・下水・汚水処理の低コスト、高速処理
・高速度、小スペース、低コストのリン回収技術
想定される用途
・効率的な浄化装置の開発
・リンによる富栄養化の阻止
・枯渇が懸念されるリン資源の確保
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