ライフサイエンス 技術説明会
日時:2010年01月29日(金)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)新規微生物を用いたブドウ病害防除剤の開発
山梨大学 大学院医学工学総合研究部 ワイン科学研究センター 准教授 鈴木 俊二
新技術の概要
バチルス ズブチリスKS1株は、ブドウべと病に対する防除効果を持つ。環境汚染の一因とみなされ、消費者から敬遠され始めた化学合成農薬の削減に向け、人体や環境への負荷の少ないブドウ病害防除剤を開発する。
従来技術・競合技術との比較
ブドウに適応する微生物農薬の開発自体は決して新規性があるわけではないが、微生物によるべと病に対する防除効果についての報告は見当たらず、本新技術の特許性は極めて高い。
新技術の特徴
・抗生物質を分泌し、病原菌の菌糸を破裂させる
・殺虫剤、殺菌剤などの薬剤に対する抵抗性が極めて強い
・ブドウ灰色かび病、晩腐病にも防除効果を示す
想定される用途
・微生物農薬
・農業用微生物資材
関連情報
・サンプルの提供には、山梨大学との研究試料提供に関する契約(MTA)が必要である、外国出願特許あり
- 材料
2)ナノ粒子による炎症性伝達物質吸着を利用した炎症制御の研究
就実大学 薬学部 薬効解析学分野 教授 見尾 光庸
新技術の概要
ICPプラズマ法等を用いて作成したシリカナノ粒子ならびにアルミニウムドープ酸化チタンの物質吸着特性を応用して,炎症局所における炎症性伝達物質や抗原を吸着させることにより,多数の伝達物質が複雑に関与する炎症を効果的に制御するものである.
従来技術・競合技術との比較
従来の炎症治療では,伝達物質特異的な拮抗薬やその産生を阻害する薬物を用いていたが,単一の物質を阻害するだけでは炎症制御は困難であった.活性酸素を発生しない酸化チタンやシリカのナノ粒子を炎症制御に用いる試みは従来なかったものである.
新技術の特徴
・表面積の大きいナノ粒子を用いることで高い物質吸着能を得ることができる.
・表面に正電荷を持つ酸化チタンと負電荷を持つシリカを使い分けることで,多様な物質を吸着することができる.
・紫外線照射時にも活性酸素を発生せず,球状のアルミニウムドープ酸化チタンは,安全性が高い.
想定される用途
・炎症性伝達物質の吸着を応用することにより,炎症の制御を目的とした薬用化粧品の創生.
・ナノ粒子を布やフィルムに固定化して,抗原や病原菌を防ぐ防護マスクやドレッシングフィルムの作成.
・フィルター状不織布等にナノ粒子を固定化して,水のろ過装置や空気清浄機のフィルターへの応用.
関連情報
・有償サンプル提供可能
- 医療・福祉
3)FIR遺伝子のスプライシングを指標にした新規抗癌剤のスクリーニング法
千葉大学 大学院医学研究院 分子病態解析学 講師 松下 一之
新技術の概要
自然界に存在する多くの化合物の中には、抗癌剤活性を有するものが存在します。本研究は、癌の原因となるc-myc遺伝子を抑制するFIR遺伝子のスプライシングに着目して、新規の簡便な抗癌剤のスクリーニング法を開発しました。
従来技術・競合技術との比較
抗癌剤のスクリーニングでは、単に癌細胞が死滅することを確認するだけでなく、その作用機序が明らかにならないと、臨床応用は困難です。我々の技術は、作用メカニズムから、簡便な抗癌剤のスクリーニングを意図したものです。
新技術の特徴
・抗癌剤のスクリーニング
・癌化のメカニズム→バイオマーカーの開発
・新規抗がん剤(分子標的薬の開発)
想定される用途
・抗癌剤
・スプライシング阻害剤
・バイオマーカー(腫瘍マーカー)
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
4)がん増殖の抑制と抗炎症作用を示す低分子型高機能抗体(イムノトキシン)
鹿児島大学 医歯学総合研究科 感染防御学講座 免疫学教室 助教 永井 拓
新技術の概要
がんや慢性炎症性疾患のに関与するマクロファージを標的とした低分子型高機能抗体(イムノトキシン)を作製し、マウス疾患モデルにて治療効果を確認した。
従来技術・競合技術との比較
本技術は、がんや慢性炎症性疾患に関わるマクロファージを選択的に除去することにより、病態に関与する複数のサイトカインの抑制が可能である。また、従前の抗体医薬に比して開発コストが低減な抗体である。
新技術の特徴
・抗原認識部位を利用したドラッグデリバリーシステムのキャリア。
想定される用途
・慢性炎症性疾患の治療薬(間質性肺炎、関節リウマチ、クローン病、動脈硬化症)
・抗がん剤(脳腫瘍、乳がん、卵巣がん)
・炎症性マーカーとしての診断薬
関連情報
・サンプルの提供可能、外国出願特許あり ※JSTの外国出願支援を大学から申請中です
- 創薬
5)カルシウム透過チャネルTRPV2を治療標的とした心筋症等筋変性疾患治療創薬の試み
国立循環器病センター研究所 循環分子生理部 分子生理 薬理学 室長 岩田 裕子
新技術の概要
心筋症モデル動物を用いた薬効評価から心筋症の病態改善効果が判明したCa2+透過チャネルTRPV2の特異的阻害剤あるいはその候補化合物及びTRPV2の細胞膜発現抑制法
従来技術・競合技術との比較
特異的阻害剤がないため、TRPV2細胞膜発現と心筋症心不全の関係、病態に対するTRPV2阻害剤の効果を調べた報告はない。今回の技術は、(1)拡張型心筋症に対する有効な治療薬候補になる(含市販薬)(2)TRPV2を特異的に阻害する実験ツールとしても有効。さらに(3)病態時においてTRPV2を細胞膜から消失させ不活化させる新しい方法
新技術の特徴
・TRPV2の活性化によって生じる病態改善への応用 (ガン、脳疾患など)
・既存の市販薬を使っているため、副作用などの情報が豊富であり、早期臨床応用可能
・新しいメカニズムに基づくTRPV2阻害法
想定される用途
・拡張型心筋症治療薬
・筋ジストロフィー治療薬
・心不全治療、心筋梗塞予防薬
関連情報
・サンプルの提供可能
- 医療・福祉
6)CRP遺伝子多型情報を用いた固形癌リンパ節転移診断
秋田大学 大学院医学系研究科 呼吸器・乳腺内分泌外科学 講師 本山 悟
新技術の概要
各種画像診断を駆使しても正確な診断が難しいとされる固形癌のリンパ節転移診断を、治療前に少量の患者血液を用いて調べることができる技術、あるいはその迅速診断キット作製技術である。癌進展リスク判定法としても用いる事が可能である。
従来技術・競合技術との比較
従来の画像診断法とは全く異なる観点からの診断法である。また少量の血液サンプルを用いた方法であり、患者負担は極めて少なく、簡便で検査費用も少ない。患者遺伝子に則った個別診断および治療(テーラーメイド医療)が行える新技術である。
新技術の特徴
・患者個別情報に基づいた個別化診断法ならびにリスク判定法である
・一遺伝子多型解析であり安価である(一般臨床普及に適している)
・市場が極めて大きい
想定される用途
・癌進展度診断(一般臨床診断、開発された診断キットによる保険収載を想定)
・癌進展のリスク判定(生命保険会社による保険加入時のリスク判定)
- 医療・福祉
7)Cyclin EとLMP2を用いた子宮平滑筋肉腫の新規診断法の開発
信州大学 大学院医学系研究科 免疫制御学 准教授 林 琢磨
新技術の概要
本技術は、子宮平滑筋肉腫に対する新規鑑別マーカーとしてCyclin EとLMP2とを組み合わせることにより、簡便な子宮平滑筋肉腫の免疫組織染色診断法を開発するものであり、婦人科腫瘍の鑑別診断において革新的である。
従来技術・競合技術との比較
現行の確定診断は、術後の病理医の経験に基づく病理診断に依存し、客観性に欠ける点がある。また、MRI、CT等の画像診断は、体外より子宮中の情報を与えることができるが、子宮平滑筋肉腫か子宮平滑筋腫の鑑別は不可能である。
新技術の特徴
・子宮平滑筋肉腫と子宮平滑筋腫を鑑別すべくバイオマーカー
想定される用途
・病理診断:子宮平滑筋肉腫と子宮平滑筋腫とを鑑別すべくバイオマーカー
関連情報
・サンプルの提供可能、外国出願特許あり
- 創薬
8)新たなコンセプトによる感染防御薬の開発
東京医科歯科大学 大学院疾患生命科学研究部 高次生体制御 教授(JST 戦略的創造研究推進事業・CREST研究) 鍔田 武志
新技術の概要
Bリンパ球膜分子CD22を標的としてBリンパ球の機能を改変することにより、ワクチンと同様の変化を免疫系におこし、インフルエンザなどの感染症を防御する技術を開発した。さらに、このような作用を持つ化合物を合成する技術を開発した。
従来技術・競合技術との比較
抗菌剤/抗ウイルス薬およびワクチンの開発には個々の微生物について病原微生物やその型を同定し、次いで薬剤を開発する必要があるが、本技術では病原微生物を同定する必要がないために、新興感染症や新たな変異を持った微生物などに素早く対処できる。また、ホストの免疫系に作用するため、耐性菌/耐性ウイルスの出現の心配がなく、また,ホスト内での微生物の変異にも対応できる。
新技術の特徴
・ワクチンとも、抗菌剤/抗ウイルス薬とも異なる画期的な感染防御薬の開発が可能
・耐性菌/耐性ウイルスの出現の心配がなく、また、抗原変異にも対応できる
・Bリンパ球を標的としたドラッグデリバリーにも用いることができる
想定される用途
・感染防御薬
・アジュバント
・Bリンパ球白血病/リンパ腫の治療薬
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
9)アクトミオシン駆動性のバイオチップ開発
群馬大学 大学院医学系研究科 病態薬理学 教授 小濱 一弘
新技術の概要
DNAチップで代表されるバイオチップが広く医療の世界に広がっているが、次世代のバイオチップは“lab-on-a-chip”(又はmicro-Total Analysis System〈μTAS〉ともよばれている)であろう。手掌大のプラットフォーム内でターゲット物質を運搬するが、筋肉蛋白質を運搬手段に用いて、ATPエネルギーとする。
従来技術・競合技術との比較
このバイオチップでは、μmレベルの微細流路を作り、反応物質をはこぶ。従来技術では、流路灌流にポンプを用いているが、本提案ではこれを筋肉収縮に関与するアクチンとミオシンの相互作用で行う。
新技術の特徴
・μmレベルの幅の溝の中を反応物質運搬する
・反応する物質は、アクチンに結合させ運搬する
・ATPをエネルギー源とし、電力を用いない
想定される用途
・在宅医療診断装置
・野外医療診断装置
・lab-on-a-chipに関する分野全体
関連情報
・サンプルの提供可能、外国出願特許あり
- 計測
10)表面プラズモン共鳴センサ,およびそのセンサチップの製造方法
九州大学 大学院 システム情報科学研究院 情報エレクトロニクス部門 システム情報科学研究院長,主幹教授(JST 戦略的創造研究推進事業・CREST研究) 都甲 潔
新技術の概要
表面に低分子化合物からなる抗体結合部位とエチレングリコール基からなるバックグラウンド部位を所定の比率で有し、いずれもがポリエチレングリコールリンカーを介して表面に固定化された表面プラズモン共鳴センサ用のセンサチップ、その作製方法、および表面プラズモン共鳴センサ
従来技術・競合技術との比較
ppbオーダー以上の感度を必要とするときには混合SAM(mixed SAM)が利用される.ところが従来の作製方法では溶液中で混合SAMが高密度に配向されるまでに数日という長い時間を要していた.このため,異なる2つのチオール化合物の混合比率をセンサチップ表面に反映させることできないという問題がありセンサの検出精度に大きな影響を及ぼしていたが,本発明はこの問題を解決した.
新技術の特徴
・混合SAMを構成する二以上の異なる第2PEG鎖間での置換が起きにくく、異なる第2PEG鎖を所望の比率で基板表面上に維持させることができる。
・二以上の異なる第2PEG鎖の比率がセンサチップ間で安定している均一なセンサチップを作製することができる。
・非特異的吸着を効率的に抑制することができる。これにより、本センサチップを使用するセンサの検出精度をより高めることができる。また、センサチップの均一性により、各センサチップによる測定結果のバラつきを低減することが可能となる。
想定される用途
・爆薬センサ,水質センサ,麻薬センサ
・医薬品・食品等の品質管理センサ
・環境有害物質センサ、農薬センサ、ウィルスセンサ
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
科学技術振興機構 産学連携展開部 産学連携担当
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