中部公立3大学 新技術説明会
日時:2010年01月19日(火)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 創薬
1)光で放出制御できるNO関連生物活性分子の新規ドナー試薬
名古屋市立大学 大学院薬学研究科 創薬生命科学専攻 准教授 中川 秀彦
新技術の概要
本技術は、新たな活性種ニトロキシル(HNO)の放出を光によってON/OFFできる化合物(HNOドナー)に関するものである。従来の欠点であった水溶性、遮光時の安定性を高めた化合物の開発に成功し、生物実験への対応が可能となった。
従来技術・競合技術との比較
他技術として水溶液中、自発分解や加温によってニトロキシル(HNO)を放出する化合物があるが、放出位置・放出時間の両方の制御を行えるものはなかった。生物応用の観点から位置・時間の制御は極めて有効かつ重要であり、本技術は従来技術と比較して高い新規性・進歩性がある。
新技術の特徴
・一酸化窒素(NO)とは異なる作用機序を有する新たな生物活性化学種であるニトロキシル(HNO)を放出する化合物である点
・光の照射によって放出を制御できるため、培養試料等における放出(作用)位置と時間を自由に設定できる点
・優れた親水性を持ち、培養細胞等の生物試料に適用可能である点
想定される用途
・生物研究用試薬
・新たな作用機序の心臓病治療薬の開発基盤
・抗癌剤の開発基盤
関連情報
・サンプルは市販を予定しています。外国出願特許あり
- 創薬
2)ナノTiO2粒子の吸入暴露による発ガンのリスクマーカー
名古屋市立大学 大学院医学研究科 生体防御・総合医学専攻 准教授 二口 充
新技術の概要
ナノ材料は、生産/使用現場で呼吸により生体内へ侵入する。我々はナノ粒子TiO2吸入暴露による肺発がん発生機構を明らかにし、ナノ粒子の吸入暴露による肺がんの危険性を示す有用なリスクマーカーを見いだした。
従来技術・競合技術との比較
ナノ粒子の発がんリスク評価は始まったばかりである。我々の技術はこれを応用し、世界で初めて各個人での肺がんの危険性をメカニズムに基づいたリスクマーカーを用いて示すことが可能である。
新技術の特徴
・吸入暴露による肺がん発症の予防/治療標的因子への応用および創薬
・吸入暴露による肺線維症/中皮腫発症のリスク評価マーカー
・吸入暴露による肺線維症/中皮腫の予防/治療標的因子への応用および創薬
想定される用途
・製造現場における定期検診によるリスク評価
・一般の定期検診における肺がんリスク評価
・二酸化チタニウム以外のナノ粒子吸入暴露による肺がんリスクマーカーへの応用
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
3)低酸素領域イメージング用近赤外蛍光プローブの開発
岐阜薬科大学 大学院薬学研究科 薬学専攻 教授 永澤 秀子
新技術の概要
生体内の低酸素領域を近赤外蛍光により特異的に可視化して非侵襲的にイメージングする近赤外蛍光プローブを開発した。本プローブは、低酸素条件で、特異的に還元代謝によって活性化され、細胞内タンパク質等と反応して低酸素細胞を標識する。
従来技術・競合技術との比較
臨床適応されているがんイメージング法のPETやSPECTは、放射性同位体を用いるため、被爆のリスクを伴う。蛍光プローブの中で、近赤外蛍光色素は組織透過性が高く、自家蛍光物質の影響を受けないため、非侵襲的に生体を診断する方法として優れている。
新技術の特徴
・生体内の低酸素領域のin vivoイメージングを行うことができる。
・生体の自家蛍光の影響を受けず感度良く検出できる。
想定される用途
・難治性がんに存在し、予後不良の要因となる低酸素領域を非侵襲的に診断することができる。
・がんの低酸素ニッチに存在すると考えられるがん幹細胞の研究用プローブとして有用である。
・分子修飾により、細胞内への送達を高めることができる。
- 創薬
4)脊髄由来間質系細胞の調製法と脊髄損傷治療への応用
岐阜薬科大学 大学院薬学研究科 薬学専攻 教授 古川 昭栄
新技術の概要
脊髄の間質系幹細胞を増殖誘導する方法を確立し、脊髄全切断ラットの損傷部位に移植したところ、本来麻痺から回復しない後肢が動くようになり、移植3週間後には体を支えて歩行するまでに回復した。
従来技術・競合技術との比較
中枢神経系の軸索再生は困難であり、脊髄損傷に対する抜本的治療法はない。本技術は、ヒトの脊髄間質細胞(キットで簡便化)の同種移植(免疫抑制剤の併用)により、前例のない効果的な脊髄損傷治療法となり得る。
新技術の特徴
・脊髄間質系細胞は本来脊髄内に存在する正常細胞であり、同種移植に適した安全な細胞である。
・哺乳動物中枢神経系での軸索再生技術は皆無であり、運動機能を著明に改善する本技術の効能は際立っている。
・脊髄損傷だけでなく脳損傷後の機能修復やリハビリ効果の増進も期待される。
想定される用途
・脊髄間質細胞は増殖性が高く、増殖後も軸索再生促進能を保持していることから、治療用キット化も視野に入る。
・脊髄損傷や脳卒中の治療等、中枢神経系の神経障害に広く用いることができる。
・慢性の脊髄損傷治療への足がかりとする。
- 創薬
5)脂肪酸から抗がん剤をつくる
岐阜薬科大学 大学院薬学研究科 薬学専攻 教授 酒々井 眞澄
新技術の概要
脂肪酸パルミチン酸由来の新規抗がん物質(分子量500以下)の合成に成功した。
従来技術・競合技術との比較
抗がん活性は従来の代表的抗がん剤5-fluorouracil(5-FU)より強く、正常細胞に対する毒性が極めて少ない。
新技術の特徴
・安価で簡便な合成
・がん細胞特異的
・標的候補分子への親和性(インシリコデータ)
想定される用途
・抗がん剤
・がん再発抑制薬
・がん予防薬
- 創薬
6)がん・心疾患の克服を目指した画期的DDSの開発
静岡県立大学 大学院薬学研究科 製薬学専攻 講師 浅井 知浩
新技術の概要
婦人科系がんや心不全などの疾患臓器に高発現が認められるタンパク質HB-EGFをターゲットにした新しいドラッグデリバリーシステム(DDS)を構築した。膜結合型HB-EGFを介した選択的薬剤デリバリーを可能にする抗HB-EGF抗体修飾リポソームを開発した。
従来技術・競合技術との比較
これまでにHB-EGFをターゲットにしたDDS技術は、リポソーム技術に限らずまったく存在しない。また、従来の抗体利用のDDSはがんへの応用がほとんどを占めるが、本発明は心不全や動脈硬化のような循環器系疾患の診断・治療にも応用が期待できる。
新技術の特徴
・他にはない独自性が高いHB-EGFの評価系を利用して本技術を開発。
・安全性と製造面で優位に立つ非ウイルス系キャリアであり、実用性が高い。
・siRNAを始めとする核酸デリバリーにも応用可能。
想定される用途
・抗がん剤の開発
・心不全治療剤の開発
・動脈硬化診断薬の開発
- 創薬
7)新規HIV複製阻害剤
名古屋市立大学 大学院医学研究科 生体防御・総合医学専攻 教授 岡本 尚
新技術の概要
HIV感染症の現行の治療法の欠点である副作用の出現と薬剤耐性ウイルスの出現を阻止するためにHIVの独特な転写制御機構を抑制する化合物を創薬した。
従来技術・競合技術との比較
HIVの転写制御因子Tat阻害剤はhigh-throughput法などで数個の化合物が得られているが、いすれも高い細胞毒性と低い選択性のため実用的ではない。
新技術の特徴
・TatはHIV特異的な蛋白分子であるので、ここで得られた化合物はHIV感染症やAIDSに特異的である。
・ただし、ここで用いた手法は分子複合体形成を阻害することが治療法となるもの一般に応用可能である。
想定される用途
・HIV感染症
・Kaposi肉腫をはじめAIDS患者全般の治療
関連情報
・サンプルの提供可能
- アグリ・バイオ
8)チオール基を持つリン脂質で構成されるセンサーチップ
静岡県立大学 食品栄養科学部 食品生命科学科 教授 中山 勉
新技術の概要
Tailグループにチオール基を持つ新規リン脂質誘導体を合成した。これを金のチップ上にコーティングすればリン脂質単分子膜のセンサーチップが容易に製作できることをQCM法により証明した。
従来技術・競合技術との比較
従来のリン脂質修飾チップは、まずリポソームを調製してからそれをチップの表面に張りつけることが多かったが、本法はそれより簡便かつ確実にセンサーチップを作製できるところに特徴がある。
新技術の特徴
・末端にチオール基を持つ物質を合成する方法に適用可能である
・リン脂質により化学修飾された物質の合成あるいは調製に適用可能である
・親和性の測定を基盤にして、医薬品あるいは食品成分の生理活性あるいは毒性の予測技術に発展できる
想定される用途
・医薬品あるいは食品機能性成分と生体膜との親和性測定
・医薬品あるいは食品機能性成分と膜タンパク質との親和性測定
・医薬品あるいは食品機能性成分と膜結合糖鎖との親和性測定
- アグリ・バイオ
9)酵素を使って有用モノテルペンを合成する
静岡県立大学 生活健康科学研究科 食品栄養科学専攻 教授 酒井 坦
新技術の概要
柑橘由来のγ-テルピネン合成酵素に変異導入し三員環構造を持つモノテルペン、サビネンを生産するように改変した。これを用いるとγ-テルピネンの合成と同じ方法でサビネンを酵素的に生産できる。
従来技術・競合技術との比較
精油は種々のモノテルペンの混合物であり、純物質は分溜等により精製して得られている。この技術によれば有用性の高い??純度のモノテルペンを穏和な条件で得ることができる。また、異なるモノテルペンをほぼ同一条件で生産できる。
新技術の特徴
・変異導入により異なる産物を生産できるので、他のモノテルペンにも応用できる
・あらたな酵素発現系を開発する必要がない
・遺伝子をもとの植物に導入すれば植物の香りを変えることができる
想定される用途
・高純度のサビネンの生産
・抗菌性、殺虫性、抗かび性の試験試料の調製
・リラックス効果や不安緩解効果試験試料の調製
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名古屋市立大学 リエゾン・センター(事務局学術課)
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静岡県立大学 教育研究推進部 産学連携室
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