九州工業大学 新技術説明会
日時:2009年12月11日(金)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 材料
1)微量ボロン添加による塑性加工性に優れたチタン合金の開発
九州工業大学 先端エコフィッティング技術研究開発センター 教授 萩原益夫
新技術の概要
チタン合金及びチタン金属間化合物は延性、鍛造性などの塑性加工性が悪いのが最大の欠点である。本技術は0.1重量%以下の微量のボロンをチタン系合金に添加することにより結晶粒を微細化(100μm以下)し、これにより塑性加工性の改善を図る。
従来技術・競合技術との比較
柱状晶組織を破壊し、また偏析を低減するための高温鍛造処理が不要となる。また恒温鍛造などの従来技術を適用した場合に、より低温側の温度域で、またより高い歪速度条件下での鍛造が可能となる。また室温延性もボロン無添加材と比較して大幅に改善される。
新技術の特徴
・本技術は全てのチタン系合金に応用可能。
・塑性加工が可能となる温度域、歪速度域が拡大したことによる製造コストの低減。
・良好な室温延性が付与されたことによる材料信頼性の向上。
想定される用途
・自動車サスペンションスプリングコイル
・航空機エンジン圧縮部のディスク、ブレード
・低コスト組成の一般用途向けチタン合金部材。
- デバイス・装置
2)大気安定な有機半導体材料の開発と有機トランジスタ評価
九州工業大学 先端エコフィッティング技術研究開発センター 准教授 高嶋 授
新技術の概要
大気中でも安定動作するp型有機半導体と、大気安定性の高いn型有機半導体を開発した。特にn型有機半導体は、0.1cm2/Vsを越す電子輸送性能を有しており、世界屈指の安定なn型半導体である。
従来技術・競合技術との比較
大気安定なp型半導体はこれまで幾つかの報告事例がある。一方、n型有機半導体は、開発された材料が少なく、一般に大気暴露により急速に電子輸送性能は消失する。今回開発したn型有機半導体材料は、これまでの事例に無いほど、大気暴露後も高く安定した電子輸送特性を示した。
新技術の特徴
・大気安定性を活用すると、半導体としての用途で特に高速性を要求しなければ、そのまま適用可能かもしれません
想定される用途
・n型有機トランジスタ(プラスのゲート電圧印加でオン状態を形成するスイッチ素子)
・有機薄膜太陽電池のn型層
関連情報
・サンプルの提供可能、外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
3)蛍光バイオセンサーを用いた微量ヘム定量法
九州工業大学 大学院情報工学研究院 生命情報工学研究系 准教授 坂本 寛
新技術の概要
本発明は、ヘム分解酵素ヘムオキシゲナーゼ(HO)の高いヘム親和性および選択性を利用して、HOのアミノ酸改変および蛍光プローブの導入によりバイオセンサーを構築し、その蛍光強度変化によって遊離型ヘムを高感度に測定する方法を提供する。
従来技術・競合技術との比較
先行技術に比べ100倍以上の感度をもっており、微量ヘムの生理作用解明に有効である。また、HOのヘムに対する親和性・選択性は極めて高いため、夾雑物が存在しても測定できる優位性がある。競合技術と違って、酸化還元反応を用いないため、ノイズが小さい。
新技術の特徴
・遊離ヘムのみを検出し、ヘム蛋白に含まれるヘムには応答しない。
・試料の前処理が不要で、迅速に測定できる
・酸化反応を用いないので、酸化剤の影響を受けない
・nMオーダーのヘム濃度を精度よく定量できる
想定される用途
・バイオ分野の基礎研究用キット
・大腸がんスクリーニング検査(便潜血検査)現行の免疫学的検査方法の代替法
・がんをはじめとする疾患マーカーとしてのヘム検出試薬
・マラリア検査試薬
- 製造技術
4)縦磁界効果を利用した高電流密度超伝導電力ケーブル
九州工業大学 大学院情報工学研究院 電子情報工学研究系 教授 松下 照男
新技術の概要
CO2削減のための革新技術として超伝導電力輸送は期待されているが、製作技術の向上にもかかわらず、超伝導線材の価格が高いことが災いして、その普及はまだ進んでいない。ここでは、電流密度を飛躍的に向上させる縦磁界効果によって使用する超伝導線材量を削減するための超伝導ケーブル構造を提案する。
従来技術・競合技術との比較
超伝導体に電気抵抗なしに流せる電流密度は磁界が強くなるにつれて減少するために、生じる縦磁界を打ち消す構造としていた。しかし、逆に、縦磁界を強調する構造とすることにより臨界電流密度を飛躍的に増加させることができる。これにより同一の電流容量では線材コストが大幅に下がり、大きな経済効果を生む。
新技術の特徴
・安価な超伝導ケーブル作製技術
想定される用途
・電力ケーブル
- 計測
5)放電発光計測の高感度化と発光計測による電気絶縁状態の評価
九州工業大学 大学院工学研究院 電気電子工学研究系 准教授 大塚 信也
新技術の概要
電気エネルギー機器の絶縁異常の早期診断と状態評価および絶縁破壊機構の理解と解明のために、放電発光の検出感度向上が要求されている。本技術は、光計測器の感度向上と発光自体の強度増加の手法、および空間分解分光による評価手法の提案である。
従来技術・競合技術との比較
放電発光計測の高感度化は、測定機器自身の製品性能向上に頼る部分が大きいが、本技術は発想を変えて、測定対象となる発光自身の強度を上げること、および現有機器の性能限界近くで使用できるようにするものである。
新技術の特徴
・発光の時間・空間分解分光技術による発光状態や発光種の評価・特定
・放電発光の強度の上昇
・絶縁破壊の防止技術
想定される用途
・放電・プラズマ現象の超高感度発光計測
・電気エネルギー機器の電気絶縁異常の計測・評価
・遮断器での電極材料やノズル材料の影響評価
関連情報
・電気絶縁媒体の絶縁特性の評価や破壊現象の高時間分解測定が可能
- デバイス・装置
6)新しい1線シリアルI/Fを使用した三端子レギュレーター
九州工業大学 マイクロ化総合技術センター 教授 中村 和之
九州工業大学 マイクロ化総合技術センター 産学官連携研究員 森本 浩之
新技術の概要
パッケージ組み立て後に補正可能な三端子レギュレーターを提案する。書き換えのための端子追加は不要である。新しい高速/高信頼性の1線シリアル・インターフェース使用により、出力電圧などの特性変更が可能となっている。
従来技術・競合技術との比較
端子数を増やすことなく設定書き換えが可能であるため。特に端子数の少ないICデバイスの高精度化、特性改善に有効である。従来より高速で高信頼性の1線シリアル・インターフェースとしても使用可能である。
新技術の特徴
・シリアル設定による書き込みが可能な小端子数の電子回路デバイスに有効である
・高速かつ高信頼性の1線シリアル・インターフエースとしても利用可能である
・不揮発書き込みにも対応可能である
想定される用途
・DC-DCコンバーター
・発振器
・オペアンプ
関連情報
・外国出願特許あり
- 環境
7)バイオマスプラスチックおよびそのブレンド製品の成分選択的な資源循環技術
九州工業大学 エコタウン実証研究センター 特任教授 西田 治男
新技術の概要
炭酸ガス削減のために、カーボンニュートラルなバイオマス由来のプラスチックであるポリ乳酸のブレンド体の導入が電気電子機器部品や自動車部品において活発に展開されている。 本技術は、使用後のポリ乳酸およびその複合体から、選択的にポリ乳酸成分のみを原料のL-ラクチドにケミカルリサイクルし、他成分のマテリアルリサイクルを容易にする技術である。
従来技術・競合技術との比較
従来、ポリ乳酸を含んだブレンド体は、単に焼却して熱エネルギーの回収に留まっていた。原料回収技術としても、ポリ乳酸単体を単に熱分解あるいは水熱反応により加水分解し、乳酸やオリゴマー、さらにはラセミ化したD-乳酸成分を多量に含有した混合分解物が回収されていた。
新技術の特徴
・光学純度を落とさず(ラセミ化させず)に、原料のラクチドにほぼ定量的に変換できます。
・LLDPE、HDPE、PP、PS、PBSなどの汎用樹脂とのブレンドからも容易にL-ラクチドを選択分離できます。
・ベント付押出機のみで、ブレンド体からのL-ラクチド変換・回収と汎用樹脂のマテリアルリサイクルが可能です。
・成形体(フィルム、射出・圧縮・真空成型品など)の嵩高さを容易に低減し、リサイクルしやすい形状に変えられます
・難燃化ポリ乳酸組成物(水酸化物系、リン系)からも、ポリ乳酸成分を選択的にL-ラクチドに変換・回収できます。
想定される用途
・電気電子IT機器部品のケミカル/マテリアル自動分別リサイクル
・自動車部品のケミカル/マテリアル自動分別リサイクル
・混合回収されたプラスチック容器・包装の自動分別ケミカル/マテリアルリサイクル
・水蒸気分解で得られた乳酸オリゴマーによる種々のバインダー
関連情報
・実証試験の実施可能、外国出願特許あり
- 環境
8)バブルと放電,衝撃波で水をきれいに!
九州工業大学 大学院生命体工学研究科 生体機能専攻 准教授 玉川 雅章
新技術の概要
本システムでは処理水の通水中に酸素や空気を注入せずにマイクロバブルを発生させ,水中放電によりプラズマ放電を起こし,OHラジカルとバブル崩壊時の衝撃波やマイクロジェットを利用して,水の超高度処理を行え,かつ小型・低コストで運用できる
従来技術・競合技術との比較
これまでの水処理技術,特にオゾン処理では,オゾンを生成するための付帯設備が多く,導入コストや維持管理費が高く,大型化するなどの問題があったが,本技術においては,同等以上の分解効率で小型・低コストである.
新技術の特徴
・水の超高度処理(脱色,脱臭,殺菌,難分解有機物)
・小型・低コスト
・操作が容易
想定される用途
・上下水処理
・難分解物質やカーボンナノチューブの水中分散への適用
・液体の殺菌処理
関連情報
・外国出願特許あり
- 機械
9)世界初!蝶ロボットの開発
九州工業大学 大学院情報工学研究院 機械情報工学研究系 准教授 渕脇 正樹
新技術の概要
蝶の翅の運動を幾何学的に明らかにし、また、翅まわりの流れ場を定量的に評価し、これらの研究成果を基盤として、尾翼を有することなく、2枚の翅の羽ばたき運動だけで飛翔するロボットを開発した。
従来技術・競合技術との比較
蝶などの昆虫を模倣した小型羽ばたきロボットは、様々なデバイスを用いて国内外で盛んに研究・開発が行われてきたが、尾翼を有することなく、2枚の翅の羽ばたき運動だけ飛翔するロボットは世界初である。
新技術の特徴
・尾翼を有することなく,2枚の翅の羽ばたき運動だけで飛翔可能(世界初)
・モータおよびバッテリを搭載しているにも関わらず全重量1.9g
・カメラやセンサを搭載し,様々な分野での活躍が期待できる.
想定される用途
・ホビー
・災害時なのど人命救助(人命救助支援)
・人物監視(欧米を中心にテロ対策),安全・安心の社会の実現
関連情報
・外国出願予定あり
- 機械
10)バリ発生の検知方法
九州工業大学 大学院情報工学研究院 機械情報工学研究系 助教 是澤 宏之
新技術の概要
プラスチック成形品を射出成形金型を用いて成形する際、固定型と可動型の分割面先端で発生するバリの低減を目的とした検出方法。
従来技術・競合技術との比較
直接的な方法として金型分割面の変位を計測する方法や、間接的な方法として表面の応力状態の計測する方法などがあるが、それらは成形環境への対応や配置位置の決定などが困難であった。
新技術の特徴
・樹脂成形品以外の金型の構造強度評価
想定される用途
・成形不良(バリ)の発生予測
・成形状態の大局的な評価
・設計活動の評価
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