京都大学 新技術説明会
日時:2009年09月08日(火)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- エネルギー
1)太陽電池を指向したフラーレン-カーボンナノチューブ複合材料
京都大学 大学院工学研究科 分子工学専攻 助教 梅山 有和
新技術の概要
ポルフィリン-フラーレン連結分子とカーボンナノチューブからなる複合薄膜を湿式系で半導体電極上に作製する技術を開発した。その複合薄膜を用いた光電流発生の外部量子収率が最大22%に達した。
従来技術・競合技術との比較
フラーレンとカーボンナノチューブの複合体を湿式プロセスで得るのは従来困難であったが、化学修飾と溶媒極性の制御を活用した本技術により容易に作製できるようになった。それにより太陽電池への応用が可能となった。
新技術の特徴
・新規n型半導体材料であるフラーレンとカーボンナノチューブの複合体を作製できる
・複合化に溶液プロセスが適用できる
・多様な機能性分子とカーボンナノチューブの複合化にも適用が可能である
想定される用途
・色素増感型太陽電池
・有機薄膜型太陽電池
関連情報
・サンプルの提供可能
- 材料
2)非金属触媒を用いた安価で簡便なリビングラジカル重合
京都大学 化学研究所 助教 後藤 淳
新技術の概要
近年、リビングラジカル重合法が、最先端分野に用いられる高機能性高分子を製造する精密重合法として注目されている。我々は、最近、汎用の安価で安全なリン、窒素、アルコール、および炭素化合物がリビングラジカル重合の優れた触媒として作用することを発見し、各種の(機能性)モノマーの重合を制御した。また、水酸基をもつ化合物からの1ポット簡便グラフト重合技術を開発した。
従来技術・競合技術との比較
本技術では、安価で安全な汎用化合物で重合を制御できる。触媒は、取扱いが容易で、重合は簡便である。触媒残渣の問題もほとんどない。経済性、環境安全性、簡便性に優れる。水酸基からの直接開始法は、煩雑な重合開始基の導入を不要とし、分岐・グラフト型高分子の合成上、大幅な省力化と自由度を与える。
新技術の特徴
・低費用である
・環境安全性に優れる
・簡便性に優れる
・触媒は非導電性で毒性が低いことから、電子材料や生体材料への応用に好適である
・水酸基からの直接開始法を併用することにより、分岐・グラフト型高分子を簡便に合成しうる
想定される用途
・エラストマー(自動車材料、工業用品、医療材料、スポーツ用品、建築資材)、接着剤、ポリマーアロイ
・レジスト、コーティング、塗料、インク、界面活性剤、分散剤、化粧品、潤滑剤
・電子、光学、力学、分離、潤滑、生体、医療材料
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
3)高効率で固体発光する有機蛍光材料
京都大学 大学院工学研究科 材料化学専攻 准教授 清水 正毅
新技術の概要
有機ELなど有機材料の発光機能を拠り所とする電子デバイスの発展には、有機薄膜(固体)状態で効率よく発光する材料が必要不可欠である。この発明は、固体状態での発光量子収率が極めて高い有機蛍光材料に関するものであり、化合物の構造に応じて、青から赤までの発光色を実現することができる。
従来技術・競合技術との比較
従来材料と比べて、この発明の材料の固体発光量子収率は極めて高い。また、含まれる芳香環の数が少ないので、合成が容易、有機溶媒への溶解性に優れる特長を有する。
新技術の特徴
・紫外光照射による高効率発光
・ポリマーに分散した状態でも高効率発光
・材料によっては、混合によって白色発光が可能
想定される用途
・有機EL用色素
・有機固体レーザー用色素
・有機固体センサー用色素
- 材料
4)バイオマス由来の白金代替燃料電池用電極触媒の製造方法
京都大学 生存圏研究所 居住圏環境共生分野 講師 畑 俊充
新技術の概要
バイオマスまたはその焼成炭化物の粉末を含窒素化合物とともに通電加熱法により熱処理することで、優れた燃料電池用触媒を製造する。得られる触媒は、金属錯体を用いないため、コスト及び環境の両面から、従来の触媒よりも優れている。
従来技術・競合技術との比較
従来法では燃料電池のカソードで起こる酸素還元反応を促進するために多量の白金触媒を必要とするが、この白金触媒は高コストである。この問題の解決策として低白金使用のカソード開発や非白金カソード触媒の開発がおこなわれている。
新技術の特徴
・バイオマスからカソード触媒を作製する
・通電加熱法を用いて効率的にカソード触媒を製造できる
・カソード触媒中に金属をふくまない
想定される用途
・燃料電池用カソード触媒
- 材料
5)非化石資源のみから構成される高性能木質材料
京都大学 生存圏研究所 生存圏開発創成研究系 助教 梅村 研二
新技術の概要
木粉、樹皮粉末、植物繊維、木材チップなどのリグノセルロースに天然由来のポリカルボン酸を添加すると、化石資源由来物を加えること無しにプラスチック様成形物やパーティクルボードなどの木質材料をつくることができる。
従来技術・競合技術との比較
既存の木質材料の製造においては、接着剤をはじめとした各種化石資源由来の化学物質の添加が必要不可欠であった。本技術ではこれらを一切使用せず、天然由来の安全な物質のみを使って製造することができる。
新技術の特徴
・樹皮を用いることで抗菌性に優れた材料ができる
・農産廃棄物由来のリグノセルロースの有効利用ができる
・有害物質を一切使用していないので、廃棄が容易である
想定される用途
・内装用木質建材、家具
・文具、事務用品、食器、玩具
・緑化資材
関連情報
・外国出願特許あり
- 建築・土木
6)居ながらにして耐震補強できる「しなやか吸震工法」
京都大学 防災研究所 社会防災研究部門 教授 川瀬 博
新技術の概要
来るべき巨大地震に備えて古い木造家屋の耐震性能の向上が早急に必要である。また温暖化対策の一環としての長寿命建築の推進のために、高度な耐震性を有する木質構造部材が必要となる。我々が新たに開発した工法は主として間伐材等を用い、簡便に既存家屋に実施できるよう施工性に優れ、さらに高い変形性能を有したものである。
従来技術・競合技術との比較
これまでの木造家屋用の耐震部材は性能を重視するあまり施工性が悪く、補強用としては居ながらにして施工できるものではなかった。また従来の部材は、剛性の大きく出る工法ばかりが開発されてきた。木造家屋のフレームは本来柔軟なものであり、大きな変形性能を与える必要がある。また通常の筋交いや構造用合板パネルでは想定以上の大変形時には自重を支えることができない。
新技術の特徴
・自重を支えることが可能な木質構造
・せん断力を保持しつつ大変形が可能
・木材資源の有効活用
想定される用途
・既存家屋の耐震補強
・新築家屋の構造部材
- 建築・土木
7)井桁フレームを用いた免震構造体
京都大学 大学院地球環境学堂 地球親和技術学廊 教授 小林 正美
新技術の概要
幅と厚さが同じで、双方の長さが板幅の2倍だけ違う板材で作れる井桁フレームを、互いに直交させて、入れ子状の構造体を組む。四隅の十字交差の組手部分をピン(ボルト)で接合するだけで、鉛直・水平の荷重に強く、連続と積層が容易な自立構造体ができる。
従来技術・競合技術との比較
日本の木造建築は、釘等を使わない伝統的な軸組工法では、柱と梁は?と栓などの仕口で接合され、また今日一般的な在来工法では、柱と梁は金物で剛に接合される。これらとは異なり、井桁フレームを十字交差の入れ子に組み、ピン接合で作れる本構造体は、全く新たな工法である。
新技術の特徴
・井桁フレームを入れ子に組み合わせて作る構造体。小径木材の利用と部材の運搬・組立・解体が容易で、自然に低負荷
・連続・積層するフレーム構造体が作れ、それ自体が免震構造体となるので、大規模な構造物や空間を構築できる
・変形に強い木造構造体が作れるので、地盤条件の悪い場所の木造文化財の保存や老朽木造建築物の補強工法となる
想定される用途
・多様な木造建築構造体としての利用、および伝統的木造軸組建築の耐震補強
・木製シェルター(障害者用、学童用)
・遊具(人間・動物)、木製およびプラスチック玩具、貴重美術品移送用梱包
- 環境
8)リグノセルロース系バイオマスからのバイオエタノール生産
京都大学 エネルギー理工学研究所 生体エネルギー研究分野 助教 渡辺 誠也
新技術の概要
食料と競合しないリグノセルロース系バイオマスからのバイオエタノール生産に特化した発酵酵母菌の開発に成功した。本技術を滋賀県琵琶湖において最近異常繁茂が社会問題となっている水草からのバイオエタノール生産実証試験に投入する。
従来技術・競合技術との比較
タンパク質工学および代謝工学的遺伝子改変技術により、これまでの五炭糖発酵酵母菌に比べてエタノール以外の発酵副産物が少なく、五炭糖発酵速度が促進されている。また、水草を未利用バイオマス資源として捉える試みもこれまでに例がない。
新技術の特徴
・オリジナリティの極めて高いタンパク質工学および代謝工学的遺伝子改変技術を用いたバイオエタノール生産
・食料と競合しないリグノセルロース系バイオマスの有効利用促進
・発酵副生成物の抑制と発酵速度促進
・学術研究を実用化へ昇華する明確なロードマップ
想定される用途
・河川、湖沼などにおける繁茂水草のバイオマスとしての有効利用
・水草に限らないリグノセルロース系(木質系)バイオマスへの利用
・国内外のバイオエタノール生産コンソーシアムに対するライセンス販売
関連情報
・大学とのサンプル分与に関する契約締結が必要
- 環境
9)分解され易い樹木の分子育種
京都大学 大学院農学研究科 応用生命科学専攻 准教授 林 隆久
新技術の概要
キシログルカン、キシラン、ガラクタン、ポリガラクチュロナン、グルコマンナンなどを特異的に分解するグリカナーゼを過剰発現させて、それら糖鎖を著しく減少させた細胞壁からなる樹木を作出した。その木部の糖化性は著しく高かった。
従来技術・競合技術との比較
糖化性に優れた樹木としては、ポプラやヤナギが推奨されているが、この技術を用いるとポプラ木部の糖化性がさらに高くなった。
新技術の特徴
・木部細胞壁内の糖鎖コンプレックス構造が正常な木材と異なる
・細胞壁セルロースの結晶化度が正常な木材より高いことが推測される
・細胞壁におけるリグニンの固着が緩やかであることが推測される
想定される用途
・バイオエタノール生産のためのバイオマス原料
関連情報
・サンプルの提供可能
・外国出願特許あり
- 環境
10)セルロースナノファイバーを用いた軽量・高強度材料
京都大学 生存圏研究所 教授 矢野 浩之
新技術の概要
セルロース系ナノファイバーは鋼鉄の5倍の強度、石英ガラス相当の低熱膨張を有する低環境負荷ナノファイバーである。このナノファイバーを65wt%含む、曲げ強度200MPa以上の成型材料。
従来技術・競合技術との比較
本材料は、持続可能なバイオマス資源由来で、鋼鉄の1/5の軽さで鋼鉄並の強度、ガラス並の低線熱膨張を有する、サーマルリサイクル可能な成型材料である。
新技術の特徴
・軽量、高強度
・低熱膨張
・バイオマス資源ベース
想定される用途
・自動車等移動体部材
・家電筐体
・住宅材料
関連情報
・外国出願特許あり
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