大阪府立大学・大阪市立大学 新技術説明会(1)
日時:2009年07月01日(水)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 計測
1)湿り空気・過熱水蒸気の高度利用のための湿度センサ
大阪市立大学 大学院工学研究科 機械物理系専攻 講師 伊與田 浩志
新技術の概要
簡易な構成で、結露や汚れによる劣化が少なく、室内空気から過熱水蒸気に至る広範囲な湿度変化、温度変化に対しても使用でき、処理条件の高度制御を実現するための簡易な湿度測定方法、そのためのセンサ部と測定装置。
従来技術・競合技術との比較
高温高湿度条件下でも連続測定が可能である。低コスト化が求められ、汚れが激しい気流の湿度制御にも適用可能な技術。既存装置の制御系に組み込むことで、システムの高性能化が期待できる。
新技術の特徴
・原理が単純
・常温から280℃を超える高温域での使用が可能
・室内空気から過熱水蒸気に至る広範囲な湿度の簡易測定に適する
想定される用途
・乾燥装置
・食品機械や殺菌装置
・湿り空気・過熱水蒸気を用いた加工技術の高度化,省エネルギー化
- デバイス・装置
2)蛍光X線イメージング技術
大阪市立大学 大学院工学研究科 化学生物系専攻 教授 辻 幸一
新技術の概要
X線CCDカメラと試料の間に2つの独立した毛細管コリメーターなどを取り付ける。この際、2つのコリメーターのなす角度をX線全反射臨界角近傍で調整することにより、全反射を行えたX線のみをCCDカメラで受光する。このように、X線全反射現象を利用してCCDカメラに到達するエネルギーを選別することにより識別可能なX線像を迅速に取得する。
従来技術・競合技術との比較
蛍光X線分析により試料中の元素の定性、定量分析を行うことができる。元素分布を測定するためには、通常、微小X線ビームを作成し、このX線ビームを走査するか、相対的に試料を走査する方法が用いられる。しかし、この方法ではX線ビームの微細化と分析領域の広範囲化に伴い、測定時間が大変長くなる欠点がある。
新技術の特徴
・X線による元素識別イメージング
・大気圧下での非破壊的元素イメージング
・迅速測定
想定される用途
・材料開発・解析
・バイオイメージング
・環境分析
- 分析
3)光アシスト超音波速度変化イメージング法による生体組織診断 ―非侵襲体内脂肪分布などの検出―
大阪府立大学 大学院工学研究科 電子数物系専攻 教授 堀中 博道
新技術の概要
光アシスト超音波速度変化イメージング法は、光吸収による弾性定数の変化を超音波速度変化として検出し、断層画像を構築する方法である。分光情報や超音波速度の温度依存性を利用して目的とする物質の分布領域を識別できる。非侵襲の体内脂肪分布画像装置の開発などが可能になる。
従来技術・競合技術との比較
生体の光イメージングに用いられている蛍光法と比較して、光散乱の影響を抑制でき、深さ方向の情報も得られる。PAT(光音響トモグラフィ)に比較して、照射光の安全基準が明確であり、さらに、深部に適用できる可能性がある。他の脂肪計測法と比較して、直接に画像が得られ、分布領域の識別能力もある。
新技術の特徴
・光吸収情報を音速の速度変化として検出する方式であり、光散乱の影響を受けにくい
・光断層画像の分光情報が容易に検出できる
・市販の超音波画像診断装置が利用できる
想定される用途
・生体組織における特定物質分布の検出
・浅部、深部における病変部の初期診断
・生体組織診断(非侵襲脂肪分布などの検出)
- エネルギー
4)直接形アルコール燃料電池用の新規アノード電極触媒
大阪府立大学 大学院工学研究科 物質・化学専攻 助教 樋口 栄次
新技術の概要
直接形アルコール燃料電池(DAFC)は、燃料改質器関連機器が一切不要であるためシステム全体の構造が簡略化される。DAFCを実用化するためには、高活性な電極触媒が必要である。本研究で作製した電極触媒は、高いアルコール酸化活性と耐久性を有している。
従来技術・競合技術との比較
従来の電極触媒は、PtRuなど貴金属を使用しているため高価であり、作動中に被毒されて活性が低下する。本研究で開発した電極触媒はPtとSnO 2 とか成るためPtの使用量の低減(低コスト化)が可能である上、SnO 2 が助触媒として働くため、高い触媒活性と耐久性を有する。
新技術の特徴
・一段階の反応で金属/酸化物ナノ粒子触媒が合成できる
・PtとSnO2のナノ粒子から成るため、触媒量の低減(低コスト化)が可能である
・アルコール酸化反応に対して高い触媒活性と耐久性を有する
想定される用途
・アルコール形燃料電池用の電極触媒
・固体高分子形燃料電池用の電極触媒
・耐CO被毒を有する電極触媒としての利用
- エネルギー
5)安全性・信頼性に優れた全固体型リチウム二次電池の開発
大阪府立大学 大学院工学研究科 応用化学分野 准教授 忠永 清治
新技術の概要
リチウム二次電池の正極材料であるコバルト酸リチウム粒子の表面に、液相法により遷移金属硫化物薄膜を形成した。この粒子を正極活物質とした全固体リチウム二次電池は、溶液電解質系電池に匹敵する電流密度で放電が可能となった。
従来技術・競合技術との比較
硫化物固体電解質を用いたリチウム二次電池は、可燃性の有機電解液を持たないため、従来のリチウム二次電池に比べて飛躍的に高い安全性を有している。しかし、大きな電流密度での放電は困難であった。
新技術の特徴
・液相法によって遷移金属硫化物薄膜を粒子上に容易に形成できる
・薄膜の形成により硫化物電解質と正極活物資の反応が抑制されるので、電解質や電極材料の劣化の抑制が期待できる
・薄膜の形成により界面抵抗が低減するので、大きな電流密度で充放電できる
想定される用途
・自動車用リチウム二次電池
・モバイル用リチウム二次電池
- 材料
6)新規三脚型有機配位子と遷移金属で組み立てる発光金属錯体素材
大阪市立大学 大学院理学研究科 物質分子系専攻 講師 舘 祥光
新技術の概要
トリエチルベンゼンを基本骨格に持つ三脚型有機配位子と遷移金属より調製される新規な遷移金属錯体が、特異的なコンフォメーションによる特徴的な発光特性を有することを見出した。この遷移金属錯体及び類縁体の発光特性等を紹介する。
従来技術・競合技術との比較
遷移金属錯体発光体は、遷移金属と有機配位子部分の工夫による独自のさまざまな発光特性を改変・付与できることに加え、無機発光体に比し、用途に応じた形状変化が可能で自由度が高い。
新技術の特徴
・化学的に修飾が可能
・金属錯体独自の発光特性
・材料への加工が容易
想定される用途
・LED用発光体素子材料
・各種照明用材料
・表示デバイス(液晶バックライト、FED、PDP、EL)
・他の材料への化学的、物理的な導入
関連情報
・サンプルの提供可能
- 材料
7)光機能性フォトクロミック材料の新しい可能性
大阪市立大学 大学院工学研究科 化学生物系専攻 准教授 小畠 誠也
新技術の概要
フォトクロミック材料は光によって色が変化するため、これまで調光材料や紫外線発色インクなどに利用されてきた。本技術では、これまでの技術とは全く異なるフォトクロミック特性について発表する。具体的には、結晶材料のフォトアクチュエータ-、シークレット材料、温度履歴表示材料についての特性および技術手段について紹介する。
従来技術・競合技術との比較
紹介する3つの特性および技術は光を利用するものであり、光可逆な結晶変形や色の変化を紹介する。これまで熱によって変形や色変化するものは知られているが、光を利用するため遠隔での操作が可能であり、応答速度が速いことが特徴である。
新技術の特徴
・マイクロマシン
・秘匿情報の表示
・温度センサー
想定される用途
・フォトアクチュエータ-
・シークレットラベル
・温度履歴表示
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
8)粒子径を制御した結晶性酸化鉄ナノ粒子の簡便合成法
大阪府立大学 大学院工学研究科 物質・化学系専攻 准教授 岩崎 智宏
新技術の概要
ボールミルを反応装置として用いることで、室温で中性の原料懸濁液から粒子径が制御された結晶性酸化鉄ナノ粒子を製造できる。従来法に比べて簡素なプロセスで微細で均質なナノ粒子を簡便に合成することが可能である。
従来技術・競合技術との比較
高塩基性懸濁液を加熱する従来技術では生成物の熱凝集が生じるため、微細で粒子径が制御されたナノ粒子を得にくく、加熱後に中和等の処理も必要であるが、中性懸濁液の非加熱処理である本技術ではこれらの問題は生じない。
新技術の特徴
・出発溶液の組成とミリング処理条件によって生成物の組成・粒子径が制御可能
・ナノ粒子の合成に続く複合化処理への展開が容易
・酸化鉄だけでなく他の材料のナノ粒子合成にも有効
想定される用途
・医療用・印刷用磁性酸化鉄ナノ粒子の製造
・超微細酸化鉄顔料の製造
・ナノオーダーレベルで構造制御した無機/無機および無機/有機複合材料の製造
- 材料
9)金属ナノ粒子を用いた微小化、金属使用量低減化を可能にするナノめっき法
大阪府立大学 産学官連携機構 先端科学イノベーションセンター 准教授 椎木 弘
新技術の概要
機能的保護層を持つ金属ナノ粒子を用いて、プラスチック基材に金属ナノ粒子を固定化する手法により、電子部品の微小化・高機能化のニーズに対応した新しい実装要素技術。
従来技術・競合技術との比較
本技術により金属ナノ粒子を用いて簡単にプラスチック表面での薄膜形成が可能になるため、従来の無電解めっきよりも工程が少なくなり、微小材料へのめっきや微小パターン形成および金属使用量の低減化が可能である。
新技術の特徴
・導電性パターン
・金属コーティング
・省資源・低環境負荷
想定される用途
・金属薄膜形成
・電極材料
・バイオチップ
関連情報
・サンプルの提供可能
・試作可能
- 材料
10)光圧力によるナノ物質・分子の非接触操作と特性選別技術
大阪府立大学 大学院工学研究科 電子・数物系専攻 教授 石原 一
新技術の概要
光の圧力によりナノ物質や分子のサイズやキラリティーなどを非接触に選別する技術。ナノ物質・分子の光学特性がサイズ、キラリティー等に敏感に依存するため、光吸収・散乱による圧力でこれらを選択的に選び取る運動制御が行える。
従来技術・競合技術との比較
ナノ構造の量子力学的性質に直接アプローチすることでサイズ・キラリティー等を非接触選別する全く新しい発想の技術。また従来のレーザー捕捉技術と異なり、共鳴散乱・吸収を使うため光波長より格段に小さなナノ構造の選別が行える。
新技術の特徴
・ナノ物質・分子等のサイズ、吸収線、キラリティーなどを直接選別する新しい考え方による高機能ナノ構造作製技術
・物質のサイズ・形状等の単なる外部パラメーターの制御ではなく機能発現の源である量子力学的性質にアプローチする技術
想定される用途
・量子ドットの吸収線等の特性選別、また配列構造等の作製
・分子のエナンチオ選択的な運動操作による光学異性体選別
・太陽電池等各種ナノ素材の自己組織的構造生成の光応答による制御
関連情報
・外国出願特許あり
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