電気通信大学 新技術説明会
日時:2009年05月12日(火)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
1)UWB, WiMax, W-LANに対応したプリント基板フィルタおよび積層フィルタ
電気通信大学 電気通信学部 電子工学科 准教授 和田 光司
新技術の概要
アンテナ共用器は1つのアンテナを送信と受信で共用するための送受信信号を分岐させる分波フィルタである。2つの帯域を分け、かつ、アンテナを共用するため、結合素子(キャパシタ)を介して異なる共振回路に接続し、帯域通過とインピーダンスマッチングをとることで、部品点数を低減し、設計も容易とした。
従来技術・競合技術との比較
従来のアンテナ共用器では、分布定数線路により所望のフィルタ特性を得うるようにしているため、部品点数が多くなり、また、全体でのインピーダンスマッチングをとろうとすると設計が著しく困難となる。
新技術の特徴
・減衰極を活用した特性改善
・構成部品が少ない
想定される用途
・UWB用フィルタ
・WiMax用フィルタ
・W-LAN用フィルタ
関連情報
・外国出願特許あり
- 情報
2)キュー計算原理を用いた超高性能、小電力、小プログラムサイズ、簡単ハードウエアプロセッサと並列化コンパイラ
電気通信大学 大学院情報システム学研究科 情報ネットワークシステム学専攻 教授 曽和 将容
新技術の概要
8年前に提案した並列キュープロセッサが、現在使われているコンピュータの上位概念であることを見いだし、その概念のもと小型高性能コンピュータシステムの開発に専念してきた。その結果として、実用化に非常に近いFPGAレベルでのプロセッサの設計とそのための並列化コンパイラの開発に成功した。本技術は超高性能はもちろんの事、小電力、小プログラムサイズ、簡単ハードウエアという特徴を持っており、この成功により商品化に大きく近づいた並列コンピュータシステムとなった。
従来技術・競合技術との比較
従来の技術は中間計算結果の格納にランダムアクセスレジスタを使うレジスタマシンであった。この方式では、命令長が長くなりその結果プログラム長がながくなる、偽の従属性を持ち込んで命令の並列実行は困難である、ハードウエアが複雑になり多くの電力を消費するなどの問題点があった。本技術はこれらの問題点をすべて解決できる技術である。
新技術の特徴
・超並列処理で超高性能,組み込みからスーパーコンピュータに使える
・小プログラムサイズでソフトハードの独立性が高い
・簡単ハードで小電力消費
想定される用途
・多機能携帯電話やPDA
・組み込みプロセッサ
・高性能サーバーやスーパコンピュータの要素コンピュータ
関連情報
・外国出願特許あり
- 製造技術
3)ICタグ時代の新在庫管理、SCMツール
電気通信大学 電気通信学部 システム工学科 教授 松井 正之
新技術の概要
3時系列(流入、流出、予測)からなる流動数図表をベースに、新聞売り子モデルでインディケータ(移動基準在庫)を設定し、需要変動の判断をあるロジックと管理限界法で行なう効果的なオンデマンド在庫管理手法を構築し、ツールとしたものである。
従来技術・競合技術との比較
従来の在庫管理は、その前提となる需要予測手法が外れることが多く、人間系で対応することが多かった。また、オンデマンド環境では、企業は時々刻々と変動する需要に対して迅速に対応することが求められるが、この環境に有効な手法は見られない。
新技術の特徴
・需要予測手法に依存しない、先見追従方式である。
・3種類の時系列データの相関を活用して大幅に精度を向上させている。
・オンデマンド管理が可能であり、これからのICタグ時代に有効である。
想定される用途
・サプライチェーン(SC)の各段階における在庫管理ツール
・特に、倉庫や卸商などにおける自動発注量管理ツール
・ERP/SCMパッケージ類のオプションツールとしての用途など
関連情報
・サンプルの提供可能
- 製造技術
4)安価な装置で平滑なDLC膜を作る方法
電気通信大学 電気通信学部 電子工学科 教授 田中 勝己
新技術の概要
安価な(10万円以下の設備費)自作加熱装置とプロパンガスを原料にして、1000℃以下の温度でサファイア上に均一なDLC膜を作成することができる。
従来技術・競合技術との比較
真空装置とプラズマを用いる従来法に対し、我々は安価な装置と触媒を用いてメタン熱分解によりDLC作成法を特許公開した(特開2005-226162)。この方法を改良して反応に必要な温度を350℃以上下げることに成功した。
新技術の特徴
・安価な設備投資で、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を材料表面上に形成できる。
・様々な基板上に、均一にDLC膜を堆積できる。
・条件を選ぶことで、膜厚、膜質を制御できる。
想定される用途
・DLC膜加工による材料表面の耐磨耗強度向上
・材料表面の”ぬれ”性の向上
・金属上へのDLC膜形成(処理温度の問題が残るが)
- 計測
5)デジカメ・ムービーの手ブレ計測・補正評価システム
電気通信大学 電気通信学部 情報通信工学科 准教授 西 一樹
新技術の概要
デジタルスティルカメラやビデオカメラにおける手ブレ補正装置の性能を定量的に評価する技術を開発した。動画テストパターンを撮影することで手ブレの3次元的な振る舞いが検出できることを利用している。各種統計処理を備えたGUIもあわせて開発している。
従来技術・競合技術との比較
点光源を撮影することで2次元軌跡として手ブレを検出する方法はあるが、3次元軌跡として測定した例はこれまでになかった。手ブレ補正装置がカメラ本体・レンズ鏡筒のどちらに内蔵されていても評価が可能なこともこれまでにない特徴である。
新技術の特徴
・光学式手ブレ補正であれば、あらゆるデジタルカメラ・レンズの評価が可能
・手ブレの3次元的な振る舞いが検出可能なので、手ブレに関する多角的な評価が可能
・処理速度は撮影画像1枚につきわずか0.5秒程度と高速
想定される用途
・各種デジタルスティルカメラ、ビデオカメラおよび一眼レフカメラ用レンズの手ブレ補正装置の評価
・高速振動体の画像解析など
関連情報
・サンプルの提供可能
・外国出願特許あり
- 情報
6)3次元空間への実物大かつ実操作可能なスケッチを用いたデザイン支援環境
電気通信大学 大学院情報システム学研究科 情報メディアシステム学専攻 教授 田野 俊一
新技術の概要
目の前の3次元空間をデザイン空間としたデザイン支援システムである。デザイナは、対象物を目の前に実物大でスケッチし、スケッチされた対象物を人間がどのように操作するとどのように動くかを教示し、実際に身体を動かしてスケッチを操作してデザインを評価し、スケッチを修正することによりデザインを進めていく。
従来技術・競合技術との比較
自動車や電気製品のようにデザイン対象が3次元構造を持ったものは多く、3次元表示を利用するデザインシステムが数多く研究されてきた。しかし、実際のデザイン設計の場面での使用事例はない。単なる立体表示だけでは3次元空間を使う必然性がなく2次元スケッチで代用できる。そこで必然性である「実物大」「実操作可能」に着目した。
新技術の特徴
・3次元空間を用いることの必然性である「実物大」「実操作可能」に着目したデザインコンセプト
・「実物大」「実操作可能」を生かしたデザインフロー
・「実物大」「実操作可能」デザインを可能とするソフト・ハードと新ユーザインタラクション
想定される用途
・人間が使うあらゆる物のデザイン分野(自動車、輸送機器、電気製品、産業機械、宇宙、家具、住宅など)
・教育分野(スケッチに代わる表現ツール)
・娯楽分野(ゲーム、博物館など)
- 製造技術
7)赤外線レーザー照射による熱可塑性樹脂の無損傷溶着法
電気通信大学 地域・産学官連携推進機構 客員教授 黒﨑 晏夫
新技術の概要
多くの熱可塑性樹脂はCO2レーザーを吸収して発熱溶融する。一般には重ね合わせ溶着には不向きであるが、樹脂部材上面に赤外線透過性をもちヒートシンク機能を有する型を設置することで、樹脂表面で発生する余分な熱を放散させることで部材内部の加熱溶着を実現する。各種レーザー・樹脂に対応可能である。
従来技術・競合技術との比較
ヒートシンク機能のないレーザー溶着方法では、外表面の過熱による損傷が著しい。また、半導体レーザー等の「レーザー透過溶着」では、「透過部材」と「吸収部材」の重ね合せ形態を必要とするが、レーザー吸収性を持たせるために色素添加をしなければならず、使用時にこの添加剤の影響を無視できない場合がある。
新技術の特徴
・樹脂部材には特別に赤外線吸収色素を添加する必要はなく、素材本来の性質のままで使用できる
・赤外線透過性をもちヒートシンク機能を有する型によって、レーザー照射によって部材表面で発生する余分な熱を放散できる
・寸法的・素材的に接着剤を使用できない条件においても接合が可能となる
想定される用途
・薬液管路・継手の接合
・内部に電子回路基板をもつデバイスのパッケージング
・化学・生化学分野の反応・分離・検出用マイクロ流体チップ作成
関連情報
・外国出願あり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
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TEL:042-443-5137FAX:042-443-5108Mail:onestopkikou.uec.ac.jp
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