千葉大学 新技術説明会
日時:2011年02月22日(火)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- デバイス・装置
1)複数の2次元情報を保持する立体作製技術
千葉大学 大学院工学研究科 人工システム科学専攻 教授 伊藤 智義
新技術の概要
単一の3次元ボリュームに複数の投影パターンを記録させる技術であり、方向によって観察される画像を変えることが可能である。直接的にはレーザー加工による3次元クリスタルアートに適用でき、記録媒体を工夫することでカラー化も可能である。
従来技術・競合技術との比較
従来の手法では、記録可能な組み合わせも、記録可能な数も限定されるが、本手法では投影パターンに階調を持たせることで、ほぼ任意の画像を、ほぼ任意の数、表示できることを可能にした。
新技術の特徴
・2次元情報の切替による光通信のスイッチング素子、回路
・特定の面に特定の情報を持たせることを利用した情報暗号鍵
想定される用途
・インテリア
・立体掲示板
・広告
- デバイス・装置
2)電気化学発消色ならびに発光を用いた反射型・発光型デュアルモード表示
千葉大学 大学院融合科学研究科 情報科学専攻 画像マテリアルコース 教授 小林 範久
新技術の概要
電気化学的な発消色挙動ならびに発光挙動に基づく安価・簡便に作成できる表示技術の新展開について述べるとともに、両者の機能を一つのセル中に併せ持つ反射型・発光型デュアルモード表示技術についても紹介する。状況において反射型・発光型を選択できるとくちょうを。
従来技術・競合技術との比較
従来知られている表示素子の作製にはナノメートル?サブマイクロメートルの薄膜を積層するなどの制御技術が必要となるため、設備が大掛りになり複雑な工程を有する。ここで紹介する発光ならびに発色素子はマイクロメートル以上の厚膜で機能するため、安価・簡便に作製できる利点を有している。
新技術の特徴
・ナノメートルレベルの膜制御技術が必要ない
・安価・簡便に作製できる
・低電圧駆動
想定される用途
・電子ペーパー
・表示板
・電子ポスター
- 計測
3)排出量取引に向けたレーザー技術による炭素蓄積量把握
千葉大学 大学院園芸学研究科 緑地環境学コース 緑地科学領域 助教 加藤 顕
新技術の概要
京都議定書から始まった排出量取引では、森林の炭素吸収量を定量的に把握できるモニタリング手法の確立が必要である。レーザー技術を用いて樹木の不定形な形状を正確に測定し、そこから炭素吸収量の算出を行う。
従来技術・競合技術との比較
レーザーから取得できるデータは3次元の点群データである。その点群データを定量的に解析するためにラッピング法と呼ばれる世界初の表面再現技術を開発した。その結果、これまで困難であった不定形樹木を正確に測定できるようになった。
新技術の特徴
・自動車に搭載したレーザーからデータ取得し、自動で構造物を判別する技術
・不定形な形状を正確に再現する技術
・人の体型をレーザーにより測定し、自動で値を算出する技術
想定される用途
・樹木形状から炭素蓄積・吸収量の把握
・材積計算
・樹木活力度の把握
・葉量やLAIの推定
関連情報
・データ提供があれば、試作品を作成可能。
- 計測
4)ナノフィラーからなる超高感度のひずみセンサの開発および応用
千葉大学 大学院工学研究科 人工システム専攻機械系コース 教授 胡 寧
新技術の概要
金属表面処理を施した導電性ナノフィラーとポリマーなどの母材からセンサを作成し、センサの電気抵抗変化からひずみを測定することにより、超高感度のひずみセンサを実現する。このようなセンサは、構造物の安全監視、精密機器と汎用センサなどへの応用が期待される。
従来技術・競合技術との比較
従来の技術と比べて、まず、従来のひずみゲージより数十倍高い優れた感度特性を有している。次は、製作コストが低いことにあり、また、フィラー、母材および加工過程を変えることによりセンサ特性を設計することが可能である。さらに、センサの非線形応答特性を生かして、構造物の安全監視に適切である。
新技術の特徴
・従来のひずみゲージより数十倍高い感度を持つこと
・低いコストと簡便な製作過程を有すること
・センサ特性を自由に設計すること
想定される用途
・航空機、宇宙構造物、高速車両、船舶、ビル、橋梁、高架道路、トンネル、ダムなどの構造物の安全監視
・精密機器、圧力センサや触覚センサなどの工業汎用センサへの応用
・材料特性試験におけるひずみ計測などへの応用
関連情報
・サンプルの提供可能
- エネルギー
5)窒化物半導体タンデム太陽電池のスマートイノベーション -超構造マジック疑似混晶化(SMART)によるアプローチ-
千葉大学 大学院工学研究科 人工システム科学専攻 電気電子系コース 特任准教授 草部 一秀
新技術の概要
最大効率50%超の窒化物半導体タンデム太陽電池を提案する。漏れ電流抑制と変換波長域拡大を両立する超構造マジック疑似混晶(SMART)によって、太陽光のほぼ全域をカバーする2-4タンデムセルが構成される。
従来技術・競合技術との比較
太陽光スペクトルを広範囲でカバーする窒化物半導体太陽電池は、素子接合特性の劣化が問題であり、従来のLED技術での解決は困難性が極めて高い。SMARTは、接合特性を改善する最も実現性の高い技術である。
新技術の特徴
・窒化物半導体1分子層制御ナノテクノロジー
・タンデムセルすべてを窒化物半導体疑似混晶で構成可能とするSMART
・変換波長域を長波長側へ拡大させる光・熱増感作用
想定される用途
・高効率太陽電池
・可視全域/3原色発光ダイオード
・ソーラーブラインド赤外線検出器
関連情報
・サンプルの提供可能
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
6)任意の特性をもつ遺伝子スイッチや遺伝子回路の機能を高速かつ高効率に開発する効果的な方法
千葉大学 大学院工学研究科 共生応用化学 准教授 梅野 太輔
新技術の概要
液操作のみで、望む特性をもつ遺伝子スイッチや回路を高速かつ高効率に、そして並列的に開発するプラットフォーム技術を開発した。この操作は完全に自動化可能であり、さまざまなソースから、機能に妥協の無いバイオセンサや遺伝子誘導システムを作り上げるのに適している。
従来技術・競合技術との比較
望む機能をもつスイッチ/回路の選抜に要する時間は圧倒的に世界一であり、選択効率も、世界一である。更には、緊縮性(非誘導時の出力漏れの少なさ)の高い遺伝子スイッチの制作に向いている。また、遺伝子誘導や発現きりかえにおける「スイッチング時間」や、遺伝子回路の出力タイミングに対する選択ができる世界で唯一のシステムでもあります。
新技術の特徴
・自動化を睨んで、数階の液操作のみで、高速に全操作を終了する
・遺伝子発現誘導系で最も問題となる「漏れ」に対する強い選択をかけることが本手法の特徴である;緊縮性の高い安定な発現誘導系を自作できる
・遠別作業が分オーダーで完了するため、振動回路やパルス発生スイッチ、タイマーなどの今まで選別できなかったものを容易に選別することができる
想定される用途
・抗体などのタンパク質生産のための、漏れの少ない遺伝子発現の誘導システムの開発
・人工のサーカディアンリズム(振動回路)やパルス回路、遅延スイッチなどを自在に制作できる→ファーメンテーションの内部プログラム化
・任意の選択性と感度で応答するバイオセンサのシリーズ創出
- 医療・福祉
7)がん診断・治療マーカー候補としての新規mRNAバリアント
千葉大学 大学院薬学研究院 薬物学研究室 助教 降幡 知巳
新技術の概要
ヒトがん組織およびがん細胞を用いた解析によりがん細胞に選択的に発現する新規OATP1B3 mRNA splicing variantを同定した。このmRNAおよびコードされるタンパク質・ペプチドは新たながん診断・治療マーカーとなると期待できる。
従来技術・競合技術との比較
新規OATP1B3 mRNA variantは既報mRNAと異なるタンパク質・ペプチドをコードする可能性がある。従来がんでは既報mRNAが発現すると考えられていたが、例えばあるヒト大腸がん組織で新規mRNAは既報mRNAの61倍高く発現する。
新技術の特徴
・がん細胞に選択的であり、全てのがん種ではないが広範で偏りを持った発現プロファイルを持つこと
・通常、健常人では発現しないタンパク質・ペプチドが発現する可能性があること
・マウスやラットとの種差が大きい遺伝子であること
想定される用途
・新規mRNA・タンパク質・ペプチドの検出によるがん予後診断
・新規mRNA・タンパク質・ペプチドを標的としたがん治療・抗がん剤開発(分子標的薬など)
・新規mRNA・タンパク質・ペプチドを利用したがん治療・抗がん剤開発(がん免疫療法・放射線治療など)
関連情報
・共同研究・共同開発を希望します
- 医療・福祉
8)近赤外線分光法を用いた新たな排尿機能検査法
千葉大学 医学部附属病院 検査部 臨床検査技師 山口 千晴
新技術の概要
非侵襲的な近赤外線分光法を用いて、排尿機能・障害に関連する大脳のヘモグロビン濃度の変化および特異的な波形を見出した。さらに従来の排尿機能検査では成し得なかった排尿機能・障害の中枢神経レベルの機序の解析法、各種排尿障害の新たな診断・鑑別方法、治療効果判定方法を考案した。
従来技術・競合技術との比較
本技術は従来の排尿機能検査よりも侵襲性が低く、患者の負担軽減となる。また、近年用いられている高額かつ大型のPET、fMRIなどの脳機能画像的手法と比べ、本技術では小型装置を用いるため、非拘束的で検査施設の制限がなく、リアルタイムな個別解析が可能となる。近年の脳機能画像的手法では難しかった日常の臨床検査として利用可能となる。
新技術の特徴
・侵襲的な排尿機能検査でしか捉えることのできなかった排尿障害を非侵襲かつ非拘束的に捉えられる点
・リアルタイムかつ個別の排尿機能・障害に関連した変化を捉えられる点
・中枢神経レベルから排尿機能・障害を捉えうる点
想定される用途
・排尿機能検査の新たな検査法としての用途
・下部尿路障害の診断マーカーとしての用途
・排尿に関連する脳機能解析法、病態解析法としての用途
- 医療・福祉
9)次世代の血管新生治療の開発
千葉大学 大学院医学研究院 循環病態医科学/循環器内科 医員 森谷 純治
新技術の概要
糖尿病状態ではセマフォリン3Eやp53といった血管新生抑制因子の発現が亢進しており、それらの因子の抑制によって血管再生過程および耐糖能異常が回復することを明らかとした。これらの結果は血管新生抑制因子を標的とした新たな血管新生治療、および糖尿病治療の開発の可能性を示唆している。
従来技術・競合技術との比較
骨髄や末梢血単核球細胞移植による血管新生療法は現在ヒトへと臨床応用されているが、糖尿病患者においてその効果が低いなどの問題点がある。本技術より開発される治療はこうした患者においても効果を有すると考えられる。
新技術の特徴
・血管新生抑制因子でかつ耐糖能障害を示す分子の阻害剤であるため、血管新生と糖代謝の両方を同時に是正し得る
・血管新生を促進する因子を標的とした従来の血管新生治療のコンセプトとは全く異なる分子を標的としている
・血管新生促進因子の働きを減弱させる分子を抑制するため、血管新生促進因子との併用での相乗効果が期待できる
想定される用途
・糖尿病患者の虚血性心血管疾患に対する、血管新生抑制因子を標的とした抗体医薬を用いた治療
・既存の血管新生促進因子と本技術による血管新生抑制因子の阻害剤の併用による血管新生治療
・血管新生抑制因子阻害剤を用いた糖尿病への新しい治療
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