岩手大学 新技術説明会
日時:2011年01月11日(火)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 製造技術
1)金型表面の微細周期構造で撥水性を改善した樹脂成形品
岩手大学 大学院工学研究科 機械システム工学専攻 バイオ・ロボティクス部門 教授 山口 昌樹
新技術の概要
流動性の低いバイオマスプラスチックで、様々な形状の部品を実現するには、金型設計がキーテクノロジーの一つになる。金型表面へミクロンオーダーの微細周期構造を形成するために、V溝の2軸切削加工を採用した。バイオマスプラスチックを用いて試作した樹脂成形品では、接触角を向上でき、撥水性が大幅に改善された。
従来技術・競合技術との比較
撥水性の制御方法としては物理的制御、化学的制御、添加剤制御が挙げられる。撥水性の制御は、表面自由エネルギーが低い材質で固体表面を覆うのが主流であり、フッ素樹脂 (テフロン等) が有名である。しかし、フッ素樹脂だけで超撥水性を得るのは困難で、剥離の問題もある。微細周期 (フラクタル) 構造によって超撥水性が発現する機構 (ロータス効果) は、低コストで安定した品質が得られる。
新技術の特徴
・樹脂成形品の任意の表面の撥水性を向上できる
・セルフクリーニング機能として産業応用できる
・バイオマスプラスチックにも応用可能
想定される用途
・極微量の液体を扱う医療用チップの分析精度向上
・貼るだけで撥水性を付与できるシートの開発
・液体の輸送抵抗の減少による省エネルギー化
関連情報
・サンプルの提供可能
- 製造技術
2)固体混合による包接結晶の製造法
岩手大学 工学部 応用化学・生命工学科 准教授 横田 政晶
新技術の概要
二成分もしくは三成分の固体原料をボールミルなどで摩砕混合することで、結晶性の包接化合物を合成することを特徴とする。さらに、摩砕を行わないでも、原料を接触させておくだけで、自発的に包接化する場合もある。
従来技術・競合技術との比較
包接化合物の製造は、これまで主に水熱合成のように、高温、高圧で合成されてきた。我々の技術の特徴は、溶媒が不用であること、さらにマイルドな環境で合成できることで、グリーンケミストリーの観点から重要である。
新技術の特徴
・溶媒を使わない
・自発的な発熱を利用するので、新たに熱エネルギーを供給する必要がない
・多くの反応系に適用できる
想定される用途
・電子材料の製造
・固形医薬品の製造
・触媒の製造
- 計測
3)あらゆる表面のすべりやすさ評価を可能とする動摩擦測定器
岩手大学 理事/副学長 岩渕 明
新技術の概要
人肌や毛髪から工業製品まで幅広い測定対象のIn-situ摩擦評価を可能とする、測定面の傾斜や曲率による自重誤差のリアルタイム補正機能を備えた動摩擦測定器を世界で始めて開発した。
従来技術・競合技術との比較
卓上摩擦試験器で必要となる測定対象のサンプル作成が不要で、先端のアタッチメントを交換することで種々の材料組合せにおけるデータが取得可能である。また、既存のポータブルの摩擦計では測定が困難な動摩擦測定を行うことができる。
新技術の特徴
・測定ハンドルをすべらせるだけで、摩擦データが得られる
・新開発の自重誤差補正システムにより、傾斜面や曲面等の測定対象をそのまま測定できる
・荷重、摩擦抵抗、摩擦係数のリアルタイム表示及びデータの統計処理
想定される用途
・人肌、毛髪等のトリートメント効果の評価
・工業製品の摩擦抵抗の簡便な評価
・床面や壁面等のすべりやすさの簡便な評価
関連情報
・サンプルの貸出し可能
- 情報
4)ロバストモデル予測制御による乱気流の影響軽減アルゴリズム
岩手大学 工学部 機械システム工学科 准教授 佐藤 淳
新技術の概要
本技術の制御アルゴリズムは、乱気流による航空機の揺れを、乱気流の事前情報を利用して予測し、その影響を打ち消すような制御入力を求める。この入力は運動モデルの誤差や、乱流および運動状態の計測誤差までも考慮した上で影響を最小にするものである。
従来技術・競合技術との比較
従来技術と比べ、機体運動モデルの誤差や計測誤差に起因する悪影響を受けにくい制御手法となっており、これらの誤差が想定範囲内ならば、乱気流による運動を増幅させることはない。また本技術は、事前情報により効果的に抑制可能な乱気流の帯域推定にも応用できる。
新技術の特徴
・傾斜やカーブを伴う一定コースを自動走行する車両に対する、走行性能の評価および改善
・自動車、鉄道、船舶等の、突風、路面の凹凸、波浪等による揺れや乗り心地の改善
・トンネル出口での突風に対する、車両の直進安定性の改善
想定される用途
・航空機等の、乱気流や突風による揺れや乗り心地の改善
・風力発電装置の、一定回転数維持のためのピッチ角制御
・航空機等の、乱気流や突風による動的構造負荷の低減
- 情報
5)制御が容易な改良型暗号システム
岩手大学 情報メディアセンター 情報処理部門 准教授 吉田 等明
新技術の概要
これまで、製品化に成功しているCVC暗号(製品名で、Chaos Vernam Cipherの略)を大幅に改善して、高速化と堅牢化をはかり、かつ容易に制御できるようにした。
従来技術・競合技術との比較
従来の発明と比べ堅牢性や高速性(ソフトウェアでは2?3倍程度)が増している。さらに装置の簡略化によって、ハードウェア実現時の回路規模は1/6程度になると予想される。また、パラメータを調整してもカオス性を保つことができるなど、制御の面でも格段に進歩した。
新技術の特徴
・長周期性:特許出願時109~1016、現在109726まで改良。乱数を使い捨てにできる
・高速性:ソフトウェアで1.7-2.2 Gbps、ハードウェアではさらに高速化可能
・堅牢性:最大限まで堅牢にすれば、ハードウェア依存性も有し、暗号化鍵を盗まれても解読されるとは限らない
想定される用途
・専用ハードウェアを持った暗号化装置
・乱数発生器
・組み込み系機器への応用も期待できる
- エネルギー
6)液相析出法により合成したSnO2ナノ粒子を用いるリチウム二次電池用負極
岩手大学 大学院工学研究科 フロンティア材料機能工学専攻 准教授 宇井 幸一
新技術の概要
次世代自動車用蓄電技術として、リチウムイオン二次電池のさらなる高性能化と低コスト化が要求されている。本研究では、Li+イオン拡散距離の短縮と反応表面積の増加を目的として、安価な高分子溶液を反応媒体とする液相析出法を用いて単分散酸化スズ(SnO2)ナノ粒子を合成し、バインダーとして水溶性高分子を用いたシンプルな電極作製プロセスを開発した。
従来技術・競合技術との比較
SnO2の理論容量(783 mAh g-1)は、従来のリチウムイオン二次電池用負極材料である黒鉛の約2倍を有するので、代替材料として注目されてきた。しかし、粒子サイズがミクロンオーダーのSnO2粒子ではサイクル特性に問題を有し、実用化には至っていない。一方、従来のバインダーのポリフッ化ビニリデンの分散剤は有機溶媒であるが、水溶性バインダーは分散剤として水を使用できるので、安価で低環境負荷の電極作製プロセスを開発できる。
新技術の特徴
・単分散SnO2ナノ粒子の合成に液相析出(Liquid Phase Deposition: LPD)法を使用
・負極のバインダーとして、水溶性高分子であるポリアクリル酸やポリビニルアルコールを使用
想定される用途
・車載用二次電池
・系統連系用二次電池
・宇宙衛星用二次電池
- 環境
7)木質バイオマスを原料とする重金属処理剤
岩手大学 農学部 共生環境課程 准教授 小藤田 久義
新技術の概要
木質バイオマスの酸糖化により糖液とともに得られる硫酸リグニンには、これまで燃料以外の用途が見出されていなかった。本研究では、硫酸リグニンを重金属含有排水の処理剤として利用することによりクロム等を沈殿・除去できることを明らかにした。
従来技術・競合技術との比較
カルシウムによる現行の凝集沈殿法では大量のスラッジが発生するが、無機系廃棄物であるため処分が困難である。硫酸リグニンによる処理では、焼却によるスラッジの減容化が可能であるほか、重金属を灰分として回収・再利用することもできる。
新技術の特徴
・木質バイオマスからエタノール等を製造する際に副産物として大量の製品を得ることができる
・有機物系の資材であるため焼却処理が可能であり、熱源としても利用できる
・硫酸リグニン自身にはほとんど灰分が含まれないため、焼却することにより吸着した重金属のみが回収される
想定される用途
・めっき工場の排水処理
・鉱山排水の浄化
・重金属汚染水域の浄化
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
岩手大学 地域連携推進センター 技術移転マネージャー 大賀 紘一
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