京都大学 新技術説明会
日時:2010年08月23日(月)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)耐熱性モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素の作製とその応用
京都大学 大学院農学研究科 食品生物科学専攻 准教授 保川 清
新技術の概要
モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素の熱安定性を向上させるアミノ酸変異を24種見出した。得られた変異を組合せることにより耐熱性が大きく向上した酵素を作製し、高温でのcDNA合成に有用であることを示した。
従来技術・競合技術との比較
逆転写酵素の基質であるRNAとDNAはリン酸基をもつため負電荷を帯びている。今回、酵素分子内の基質結合領域に正電荷を有するアミノ酸残基を導入することにより、基質との親和性が高くなり、熱安定性が向上することを示した。
新技術の特徴
・正電荷を有するアミノ酸残基導入による熱安定化が、他の逆転写酵素や核酸合成酵素にも適用可能と期待できる
・熱安定性が向上した逆転写酵素では、保存安定性向上による流通・保蔵の経費の削減が期待できる
・RNAを標的とした項目で、診断意義は明らかだが、要求感度・迅速性を満たせず実用化できないものに本酵素を用いる
想定される用途
・高温でのcDNA合成反応
・高温でのRNA増幅反応
・上記特徴を生かした核酸検出試薬
関連情報
・サンプルの提供可能
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2)緑藻由来シフォナキサンチンによる脂肪細胞分化抑制作用
京都大学 大学院農学研究科 応用生物科学専攻 准教授 菅原 達也
新技術の概要
ミルや海ブドウなどの緑藻類に特徴的に含まれてるカロテノイドの一種であるシフォナキサンチンが脂肪前駆細胞の脂肪細胞への分化を著しく抑制することを見出した。
従来技術・競合技術との比較
シフォナキサンチンは、これまでに抗肥満作用が知られているアレン構造を有するカロテノイド(フコキサンチンやネオキサンチン)よりも強い作用を有する。
新技術の特徴
・食経験のある天然の化合物
・これまでに機能性が注目されていない成分
想定される用途
・食品
・化粧品
・医薬品
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3)経口投与で有効な精神的ストレス緩和ペプチド
京都大学 大学院農学研究科 食品生物科学専攻 准教授 大日向 耕作
新技術の概要
ジペプチドTyr-Leuの経口投与により医薬品に匹敵する強力な精神的ストレス緩和作用(抗不安作用)を示すことを見出した。この抗不安作用にはセロトニン5-HT1A、ドーパミンD1、GABAA受容体の活性化が関与していた(特願-2009-21958)。また、牛乳および卵白タンパク質由来の抗不安ペプチドも新たに見出した(特願-2010-088531、特願-2010-120306)。
従来技術・競合技術との比較
従来の抗不安薬はGABAA受容体のベンゾジアゼピン結合サイトや5-HT 1A 受容体に直接結合するが、ジペプチドは5-HT 1A 、D 1 、GABA A 受容体のいずれにも親和性を示さず、セロトニン、ドーパミン、GABAの遊離を高めることにより抗不安作用を示す。従来の抗不安薬とは全く異なる作用機構であった。
新技術の特徴
・食品タンパク質由来成分で医薬品に匹敵する抗不安作用を示す
・経口投与で効果を示す
・安価に大量生産できる
想定される用途
・抗不安作用および抗うつ作用を示す機能性食品および医薬品(特願-2009-21958、特願-2010-088531、特願-2010-120306)
・睡眠導入作用を示す機能性食品および医薬品(特願-2010-088531)
・学習促進作用、食欲調節作用および抗不安作用を併せ持つ高齢者向け機能性食品および医薬品(特願-2010-120306)
関連情報
・試作可能
・外国出願特許あり
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4)ゲノムDNAのハサミとしての人工制限酵素
京都大学 大学院工学研究科 合成・生物化学専攻 准教授 世良 貴史
新技術の概要
DNA切断部位を2つの人工DNA結合タンパク質で挟んだ、新しいタイプの人工制限酵素を開発した。その構造上の特性から、従来の人工制限酵素よりも非常に高いターンオーバーで標的DNAを特異的に効率よく切断できる。
従来技術・競合技術との比較
我々の人工制限酵素ではDNA切断部位を2つの人工DNA結合タンパク質で挟んでいるため、人工制限酵素として最近注目を集めているzinc-finger nucleaseよりも、切断活性が高く、かつ細胞毒性が低いことが期待される。
新技術の特徴
・ゲノム上の標的配列を特異的に切断
・従来の人工制限酵素と異なり、高いターンオーバーでDNAを切断
・細胞毒性が低い
想定される用途
・標的遺伝子のノックアウト
・病態モデル動物の創出
・相同性組換えを利用した遺伝子改変
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
5)温室効果ガス削減に利用可能なメタン酸化菌のメタン消費能促進技術開発
京都大学 大学院農学研究科 応用生命科学専攻 准教授 由里本 博也
新技術の概要
ビタミンB12またはその類縁体、およびそれらを生産する微生物により、メタン酸化細菌のメタン消費能を向上させ、二酸化炭素に次ぐ温室効果ガスであるメタンの環境中への排出削減に利用する。
従来技術・競合技術との比較
環境中に微生物を散布する際、その微生物が定着するかどうかが重要であるが、メタン酸化菌やそのメタン消費能を向上させる微生物(例:窒素固定細菌)は、土壌や植物圏に広く棲息しており、メタン排出削減を行う環境に定着しやすい。
新技術の特徴
・ビタミンB12およびその類縁体より、メタン酸化菌のメタン消費能が向上する
・ビタミンB12およびその類縁体を生産する微生物との共培養により、メタン酸化菌のメタン消費能が向上する
・メタン酸化菌は土壌や植物圏に広く生息し、メタン排出削減が必要な水田や植物表層に定着しやすい
想定される用途
・メタン消費能が向上したメタン酸化菌を調整し、これを様々な環境に散布して定着させ、メタン排出を削減する
・ビタミンB12およびその類縁体を散布することにより、環境中に常在するメタン酸化菌のメタン酸化活性を向上させる
・ビタミンB12およびその類縁体を生産する微生物を散布して定着させ、環境中に常在するメタン酸化菌のメタン酸化活性を向上させる
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6)脂質結合活性を有する生体由来タンパク質をベースとするナノ粒子分散剤の開発
京都大学 物質−細胞統合システム拠点 助教 村上 達也
新技術の概要
高比重リポタンパク質に含まれるアポリポタンパク質A-I (apoA-I)は、血中に存在する天然の分散剤である。タンパク質工学的手法により、細胞膜透過活性を付与することが明らかとなった。
従来技術・競合技術との比較
ポリエチレングリコールなどとは異なり、生体由来であるため高い生体適合性を有する。ナノ粒子と混合するだけでその水分散化を達成できる。
新技術の特徴
・生体適合性
・吸着型分散剤
・特定分子接着機能
想定される用途
・ドラッグキャリア開発
・遺伝子導入キャリア
・金属ナノ粒子の水分散剤
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7)貼って治す再生医療材料
京都大学 工学研究科 機械理工学専攻 医療工学分野 教授 富田 直秀
新技術の概要
患部の上から貼り付けることによって組織を再生させる医療用材料を提供します。フィブロインスポンジ複合体は農業生物資源研究所にて開発された新素材で、手術用として生体に用いられてきた絹糸を精製しており、アテロコラーゲンに匹敵する低いアレルギー源性と高い細胞親和性に加え、高い強度を有することが特徴です。
従来技術・競合技術との比較
患部を保護しながら再生を促す新しいタイプの医療用材料です。高強度のため、軟骨などの荷重環境にある組織の再生にも用いることができます。細胞と共に用いる再生医療製品としての効果が確認されていますが、事業化では細胞を用いない治療法を目指します。
新技術の特徴
・高強度培養胆体
・軟骨細胞の分化を維持しながら増殖させる
・遺伝子導入によって様々な生体機能性を付与することが可能
想定される用途
・関節疾患治療材料
・その他の組織再生
・細胞の分化を維持しながら増殖させる培養基材
関連情報
・材料提供の可否は、用途などにより農業生物資源研究所で判断されます
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8)γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)の新規阻害剤
京都大学 化学研究所 生体機能化学研究系 助教 渡辺 文太
新技術の概要
γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)を不可逆的に失活させる新規ホスホン酸エステル型阻害剤を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来GGT阻害剤として用いられてきたアシビシンと比較して、GGTに対する選択性が高く、毒性や変異原性を示さない。
新技術の特徴
・細胞内グルタチオン濃度の制御
・GGTの生理作用解明のためのツール
・グルタチオン代謝に関する基礎研究全般
想定される用途
・現在市販で唯一入手可能なGGT阻害剤
・生化学試薬
・GGTの立体構造の解明
関連情報
・サンプルの提供可能
・外国出願特許あり
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9)新規亜鉛結合タンパク質を用いた遺伝情報発現制御法
京都大学 化学研究所 生体機能化学研究系 教授 二木 史朗
新技術の概要
我々は、細胞内亜鉛濃度に応答してDNA結合スイッチ、ひいては転写制御可能な新規亜鉛フィンガー型タンパク質を開発した。
従来技術・競合技術との比較
細胞内亜鉛濃度に応答して転写制御可能であることや、様々な転写因子結合部位を認識する亜鉛フィンガー型転写因子が設計可能であることから広い応用性が期待される。
新技術の特徴
・亜鉛濃度に応答したDNA結合のスイッチが可能
・亜鉛濃度に応答した転写制御が可能
・多彩な亜鉛フィンガー型転写因子への応用の可能性
想定される用途
・研究用転写調節システム
・細胞内亜鉛濃度センサー
・内在型転写因子発現調節
- アグリ・バイオ
10)細胞接着促進化合物の実用化
京都大学 大学院薬学研究科 病態情報薬学分野 准教授 西川 元也
新技術の概要
アドへサミンはヒト細胞を接着させ増殖させる化合物であり、その溶液をかけるだけでヒト細胞を様々な物質や細胞に接着させ増殖させることができる。また実験動物内でも外部から投与した細胞の生着を高める。小分子化合物でありながら、細胞接着タンパク質であるフィブロネクチンのような働きをする。
従来技術・競合技術との比較
アドヘサミンはファイブロネクチンと同様の生理的細胞接着性を持ち、ファイブロネクチンやポリリジンよりも安定している。長期常温保存、溶液保存が可能であり、大量生産も可能である。合成品のため、感染の危険性なく、合成純品のためロットによる不確定要素はない。
新技術の特徴
・培養皿に接着しにくく増えにくい細胞(プライマリー細胞やヒトiPS細胞など)の培養を簡便にする。世界中の研究者により活用され、培養可能なヒト細胞の種類が増える
・細胞を強くガラス上に密着させ、マイクロインジェクションを容易にし、顕微鏡観察を容易にする。分子イメージング、細胞生物学、分子生物学の研究者に用いられる
・血球細胞などの浮遊細胞を接着させ、クローニング、顕微鏡観察、病理診断を可能にする。血液細胞の分化などの研究に用いられる。細胞工学にも用いられる可能性がある
想定される用途
・基礎細胞生物学研究のための新たな化合物試薬としての用途
・細胞治療のための化合物試薬としての用途
関連情報
・サンプルの提供可能
・外国出願特許あり
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関西ティー・エル・オー株式会社 (京都大学産官学連携本部 知的財産室内)
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