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山陰(鳥取・島根)発 新技術説明会

日時:2010年07月16日(金)

会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)

参加費:無料

発表内容詳細

  • 材料

1)プラスチック上にも形成できる高移動度p型半導体多結晶薄膜

島根大学 総合理工学部 電子制御システム工学科 教授 梶川 靖友

新技術の概要

300℃以下の温度で堆積できるp型化合物半導体混晶薄膜を開発した。多結晶薄膜でありながら、正孔移動度が高いので、以前開発した300℃以下の温度で堆積できるn型化合物半導体混晶薄膜と組み合わせて様々な応用が期待できる。

従来技術・競合技術との比較

従来、高い正孔移動度をもつp型半導体多結晶膜としてはGaSbが知られていたが、400℃程度以上の基板温度でないと形成できなかった。今回、GaAsとの混晶とすることで、300℃以下でも形成可能になり、プラスチック上にも高い正孔移動度を持つp型多結晶薄膜が形成できるようになった。

新技術の特徴

・300℃以下でも堆積できるp型半導体多結晶薄膜
・正孔移動度は約40c㎡/Vsと、n型ZnO多結晶薄膜中の電子移動度に匹敵するほど高い
・表面平坦性に優れる

想定される用途

・p型薄膜トランジスタ
・p/n接合型薄膜トランジスタ
・ヘテロ接合バイポーラトランジスタのp型外部ベース層

  • 材料

2)透明導電薄膜や熱電変換材料への応用を目指したホウ素ドープ二酸化チタンの開発

島根大学 総合理工学部 物質科学科 准教授 北川 裕之

新技術の概要

二酸化チタンは純粋な結晶は絶縁体ですが、適正不純物をドープするあるいは酸素が欠損すると、半導体から金属的な導電性を示します。本研究では、ホウ素ドーピングによる二酸化チタンの電気伝導制御技術を開発しました。

従来技術・競合技術との比較

二酸化チタンに伝導性を持たせるためには、ニオブをドーピングする方法、酸素欠損を導入する方法が用いられてきました。ホウ素ドーピングによる伝導制御はこれまでに試みられていない新しい手法です。

新技術の特徴

・チタン酸化物へのホウ素ドーピングによる伝導制御
・簡便かつ短時間の材料製造プロセス
・スパッタターゲットへの応用が可能

想定される用途

・透明導電薄膜
・熱電変換材料

  • 材料

3)せん断性能に優れた斜行型合板と応用製品の開発

島根県産業技術センター 材料技術グループ 主任研究員 河村 進

新技術の概要

合板の面内せん断性能を向上させるため、木目方向が周辺に対して45度をなす合板(斜行型合板)を大量生産する方法を考案し、耐力壁、I形梁などのせん断性能を必要とする建材応用製品や、曲げやすい合板として実用化する。

従来技術・競合技術との比較

せん断性能に優れた木質材料としてOSBがあげられるが、長期耐久性についてはまだ十分明らかではない。斜行型合板はせん断性能に優れていることは古くから知られていたが、今回初めて合理的な製造方法を確立できた。

新技術の特徴

・せん断弾性率が通常合板の2.7倍
・せん断強度は通常合板の3倍
・曲げヤング率は通常合板の3~4割
・間伐材等小径木からも製造可能。OSBより比重が小さく、接着剤使用量が少なく環境に優しい

想定される用途

・I形梁、ボックスビームのウェブ材
・耐力壁、接着壁パネル
・コンクリート型枠、曲面型枠
・シェル構面

関連情報

・外国出願特許あり

  • 環境

4)色の長さで測る環境水中栄養塩(N、P)の簡便現場定量技術

島根大学 総合理工学部 物質科学科 准教授 清家 泰

新技術の概要

湖沼の富栄養化による水質汚濁の原因物質として広く認識されている栄養塩(N、P)の濃度を現場で簡便に測定するための簡易定量法及び簡易定量測定具を提示する。

従来技術・競合技術との比較

従来技術・競合技術としては、「パックテスト」があるが、この技術は、発色液の濃淡を目視で判定するため個人差によるバラツキを生じ易い欠点を有する。ここに提示の新技術は、カラムの発色層の長さで判定するため、バラツキの小さい、より高精度な定量が可能である。

新技術の特徴

・現場で測定可能なため、目的物質の形態変化を考慮しなくて良い
・カラムに吸着した発色層の長さに基づいて濃度を決定
・吸光光度定量に近い精度を有するので低濃度試料の定量が可能

想定される用途

・環境教育用教材
・一般市民による水質調査
・専門家による水質測定にも利用可能

関連情報

・試作可能

  • アグリ・バイオ

5)チリメンジャコのビタミンD3を増加させる方法

鳥取県産業技術センター 食品開発研究所・機械素材研究所 副所長 野口 誠

新技術の概要

ちりめんじゃこ(700ユニットのビタミンD3を含有)に紫外線を照射することで、5000ユニットという極端に高いビタミンD3を含有するちりめんじゃこを製造することが可能となった。

従来技術・競合技術との比較

従来、成魚に紫外線を照射しても、ビタミンD 3 の増加は少なかった。本発明では、稚魚がプロビタミンDを多量に含んでいる特性を利用して、短時間の紫外線照射でビタミンD 3 を増加させることを可能とした。

新技術の特徴

・1日の所要量のビタミンD3をわずか数gでまかなうことができる
・短時間の紫外線照射でビタミンD3の増加が可能
・イワシ以外の稚魚でもビタミンD3の増加が可能

想定される用途

・ビタミンD3の増加した加工品の製造
・骨粗鬆症予防のための食品開発
・高齢者用の食品開発

  • アグリ・バイオ

6)アミノペプチダーゼを用いた多様なジペプチドの生産法

鳥取大学 農学部 生物資源環境学科 講師 有馬 二朗

新技術の概要

我々が見出したアミノペプチダーゼのペプチド合成活性を利用し、様々な有用ジペプチドの合成に成功しました。本技術は、高汎用な利用が可能であり、有用ジペプチドの安全な合成法の確立、酵素合成における高収率化が期待できます。

従来技術・競合技術との比較

本技術では単純なアミノ酸及びそのエステルを材料とし、従来のアミノ酸N側の保護/脱保護工程が不要で、1ポットでダイレクトに合成できるジペプチドも存在します。また、水溶液中での反応が可能なものもあり、化学合成特有の有機溶剤を使用せずに合成できます。

新技術の特徴

・水溶液中での反応、合成ジペプチドの配列制御が可能
・材料が比較的安価であり、合成ステップが少ない
・反応基質の適用範囲が広い

想定される用途

・農薬・医薬材料の合成
・食品素材(甘味料等)の製造
・新たな機能性ジペプチドの同定と開発

  • 医療・福祉

7)脳神経変性病に関わるタンパク質の形の変化の解明とその原理を応用に向けた研究開発

鳥取大学 大学院工学研究科 化学・生物応用工学専攻 教授 河田 康志

新技術の概要

アルツハイマー病やパーキンソン病に代表される脳神経変性病は特定のタンパク質の形が変化し、アミロイド線維を形成することによって発症すると考えられています。このアミロイド線維形成機構を解明することはそれらの病気を早期に知る原理・方法の開発につながり、ひいては脳神経変性病の早期診断や予防が期待されます。

従来技術・競合技術との比較

タンパク質の凝集やアミロイド線維形成は脳神経変性病などの病気に密接に関連していますが、アミロイド線維形成を起こしうるタンパク質の「種」の見積もり方についてはよい方法がこれまでありませんでした。この「種」を見いだす物質を開発したので、今後この方面での応用に期待されます。

新技術の特徴

・パーキンソン病やアルツハイマー病の原因となるアミロイド線維を検出できる
・アミロイド線維を形成する「種」の存在を検出できる
・アミロイド線維病発症の可能性の早期診断と予防に応用できる

想定される用途

・パーキンソン病やアルツハイマー病の診断と予防
・脳神経変性病一般の診断と予防
・アミロイド線維病の診断と予防

  • 医療・福祉

8)肝臓癌の新規治療標的の同定

鳥取大学 大学院医学系研究科 遺伝子医療学部門 教授 汐田 剛史

新技術の概要

レチノイン酸は、種々の癌細胞を細胞死に誘導する作用があることが報告されている。また、肝臓癌の前駆病変で肝硬変からの肝発癌を抑制する効果も報告され、レチノイン酸は肝癌などの治療や予防に効果が期待される。一方、レチノイン酸は数十~数百の遺伝子を発現調節することが知られており、これらの遺伝子は癌治療標的となりうるが、27個の標的遺伝子を同定した。これらのうち注目される遺伝子をピックアップした。これらの遺伝子は癌治療標的となることが期待できる。

従来技術・競合技術との比較

レチノイドの作用に注目して、その標的遺伝子を同定した。それらの機能解析を通じて、それを標的とすることでより強力な癌抑制作用効果が期待しうる。同定した遺伝子について、レチノイドの標的遺伝子であるという報告は少なく、これらの遺伝子には新規の作用をもつことが期待できる。ゲノムワイドに網羅的に遺伝子を探索しており、新規性の高い画期的な成果が期待できる。

新技術の特徴

・ゲノムワイドな探索
・癌の進展や抑制に関係する遺伝子の同定
・抗酸化作用に関係する遺伝子の同定

想定される用途

・抗癌剤や発癌予防薬の開発
・抗酸化薬の開発
・皮膚病治療薬の開発

  • 医療・福祉

9)新しい自己免疫性甲状腺疾患の診断マーカー:抗ペンドリン抗体

鳥取大学 大学院医学系研究科 機能再生医科学専攻 遺伝子再生医療学講座 再生医療学分野 特任教授 吉田 明雄

新技術の概要

甲状腺特異蛋白ペンドリンを過剰発現させた細胞より、ペンドリンを抽出、精製し、患者血清と反応させて抗ペンドリン自己抗体を測定する。現在ウエスタンブロット法で行っているが、ELISA RIA でも可能である。

従来技術・競合技術との比較

従来の抗TG、抗TPO抗体では50?70%の陽性率であったが、本方法は橋本病を98%、バセドウ病を、84%診断できる。 亜急性甲状腺炎では全例陰性。無痛性甲状腺炎でも、抗TG抗体、抗TPO抗体が強陽性のものにしか陽性にならない。

新技術の特徴

・簡便で確実な自己免疫性甲状腺炎の診断
・亜急性甲状腺炎とバセドウ病、橋本病のより確実な鑑別
・無痛性甲状腺炎の診断と経過観察

想定される用途

・ペンドリンが発現している他臓器の自己免疫疾患の診断
・SLEなど全身の自己免疫疾患の診断
・インターフェロン使用時の自己免疫性疾患発症の診断

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島根県産業技術センター 企画調整スタッフ

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