東京理科大学 新技術説明会
日時:2010年10月05日(火)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 材料
1)近紫外光により暖色系白色発光するLED照明用ガラス
東京理科大学 基礎工学部 材料工学科 教授 安盛 敦雄
新技術の概要
近紫外光で暖色(黄色)系の白色発光する無色透明ガラスを開発した。この発光ガラスは特殊なアルカリホウケイ酸塩系であり、耐熱性・化学耐久性が非常に高く、環境負荷は小さい。暖色系の白色LED用発光チップなどとして、適用可能と考えられる。
従来技術・競合技術との比較
現在の白色LED用発光チップである蛍光体微粒子分散有機樹脂と比較して、無色透明かつ黄色発光するため、暖色系かつ全方位への発光が可能となる。また耐熱性・化学耐久性が非常に高く、白色LED照明の高輝度化・長寿命化が期待できる。
新技術の特徴
・ケイ酸塩系ガラスが母材なため、耐熱性・化学耐久性・機械的強度が高い
・無色透明なため、発光時も未発光時も背面を見ることが可能である
・RGB蛍光体の混合ではなく、材料単体で黄色発光する
・励起光を短波長紫外光にすれば青色発光も可能である
想定される用途
・暖色系照明に用いる白色LED用の発光チップ
・液晶ディスプレイに用いる白色LED用の発光チップ
関連情報
・サンプルの提供可能
- アグリ・バイオ
2)タンパク質の生産性を高めるエンハンサー配列とその利用法
東京理科大学 基礎工学部 生物工学科 教授 島田 浩章
新技術の概要
mRNAの5'非翻訳領域(上流配列)に下流のORFの翻訳量を高める(タンパク質の生産性を高める)活性をもつものを発見した。この配列の下流に任意のタンパク質遺伝子を結合することで効率的に生産させることができる。
従来技術・競合技術との比較
転写量を高めることでタンパク質の生産性を上げる技術は多く知られているが、翻訳効率を高めることでタンパク質生産性を上げる技術は例が少ない。両者を組み合わせることで、高効率なタンパク質生産システムを構築することができる。
新技術の特徴
・新規タンパク質高発現組換えベクター
・新規形質転換体の作出
・新規タンパク質の合成方法
想定される用途
・コムギ胚芽系などのin vitroタンパク質翻訳系でのハイスループットで効率的なタンパク質生産システムの構築
・組換え体植物を利用した物質生産系での医薬品などの生産
・タンパク質翻訳系に関する研究用試薬としての応用
- アグリ・バイオ
3)医・理工・芸術系連携によるがん医療インターフェースの開発
東京理科大学 基礎工学部 材料工学科 准教授 曽我 公平
新技術の概要
がん診断に関わる情報量は医療技術の発展に伴い膨大になっている。本技術は医師による医療画像診断において異常部位を効率的に発見できるように支援する医療画像表示制御装置及びプログラムを提供する。
従来技術・競合技術との比較
これまでの医療画像の医師への「見せる技術」は、正確にもれなく見せることを主眼としている。本技術ではこれらに加え「楽に・わかりやすく・効率よく見せる」ことに焦点を絞って開発を進めている。
新技術の特徴
・医師が多元大量の医療データーの中から容易に異常を抽出できる
・芸術分野(デジタルメディアデザイン)の専門的な手法を採用
・医師の悩みが開発の発端
想定される用途
・CT、MRI、PET複合画像からの異常の発見
・医師による画像診断の前処理
・異常な画像の発見
- 情報
4)1段階処理の予測法(One-Step Model)による高性能な劣化画像復元手法
諏訪東京理科大学 システム工学部 電子システム工学科 講師 田邉 造
新技術の概要
原画像の注目画素に対する時間変化を原画像のみを用いた有色性駆動源を有する状態方程式、および原画像がぼけと雑音によって劣化することを観測方程式でモデル化することで、劣化画像のみから原画像を復元する技術である。
従来技術・競合技術との比較
従来技術は原画像がぼけや雑音などによって劣化することを予防する技術であるのに対して、新技術はすでに劣化した劣化画像のみから低演算量(高速処理可能)でかつ鮮明な原画像を復元する技術である。
新技術の特徴
・クリアな原画像に“ぼけ”と“雑音”が含まれた劣化画像のみから鮮明な画像を復元する技術
・手ぶれ補正や顔認識などの“ぼけ”や“雑音”を予防する既存技術の改良ではなく、劣化した画像を復元する技術
・新技術は少ない演算量で実現可能なことにより、回路規模は小さく超低消費電力に優れた技術である
・回路規模は小さく超低消費電力にも優れているため、ポータブル性に優れた技術である
想定される用途
・防犯分野や医療分野の動画像に対する目的箇所の拡大処理技術
・画像処理を用いた生産ラインなどの器具の故障検出
・携帯電話のカメラやデジカメや地デジなどの動画像に生じる“ぼけ”や“雑音”の除去
関連情報
・サンプルの提供可能
・外国出願特許あり
- 製造技術
5)気泡微細化沸騰を用いる高発熱密度機器の高熱流束冷却技術
山口東京理科大学 工学部 機械工学科 教授 鈴木 康一
新技術の概要
例えば電子機器の小型化高性能化は、消費電力の増加による素子からの発熱密度の増大をまねき、100W/cm2を超えるのもそう遠くはない。本発明は、空冷及び液冷の単相冷却の従来技術に代わって、気泡微細化沸騰を用いる新しい冷却技術を提案するものである。気泡微細化沸騰は、高いサブクール度の沸騰で発生し、沸騰熱伝達の限界とされていた限界熱流束を超える高熱流束、例えば500W/cm2の高熱流束除熱を可能にした。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、100W/cm 2 程度までの除熱が限界とされ、それ以上の高熱流束の除熱は不可能である。沸騰冷却も一部に用いられてはいるが、除熱限界とされる限界熱流束を超えないようにリミッターをかけて使用している。本発明の気泡微細化沸騰冷却技術は、除熱限界を限界熱流束よりはるかに大きくとることができ、限界熱流束以上の高熱流束除熱を安全に行うことが可能であり、競合する技術は見当たらない。
新技術の特徴
・1.沸騰伝熱の限界とされていた限界熱流束を超える高熱流束除熱
・2.冷媒循環用ポンプ動力の低減と省エネ
・3.高発熱を伴う機器の小型軽量化とそれに伴う省空間、材料コストの低減
・4.マルチミニサブクールジェットによる気泡崩壊時の振動低減による低騒音、低振動沸騰冷却器を実現
想定される用途
・1.電気自動車用インバータの冷却
・2.電気鉄道用インバータの冷却
・3.分散型電源設備のインバータの冷却
・4.大型コンピュータ設備、通信用サーバーの冷却
・5.宇宙空間施設における発熱装置の冷却並びに熱輸送
・6.航空機(中、大型)の電子機器の冷却
・7.定置型発熱機器から取り去る熱の暖房・温水への有効利用
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
6)新しい蓄電デバイス“ナトリウムイオン二次電池”
東京理科大学 総合研究機構 助教 薮内 直明
新技術の概要
サスティナブル・エネルギー社会の実現への鍵となるのが風力、太陽光発電など自然エネルギーの効率的な利用である。我々の研究グループではそのエネルギーを保存するための蓄電池として、ナトリウムイオンを利用した新規二次電池に関する研究を進めている。
従来技術・競合技術との比較
車載用電源としての二次電池の需要は今後も大きな成長が見込まれる。しかし、同時に資源埋蔵量の制限からリチウム価格の高騰は不可避である。リチウムイオン二次電池の代替電池として、無尽蔵の資源量を有するナトリウムからなるナトリウム二次電池はコストという観点から大きな利点を有する。また、リチウムではコスト的に難しいより大型の電池への利用も想定している。
新技術の特徴
・低コストでの余剰エネルギー貯蔵
・低温から高温で動作可能な電池
・小型から大型電池まで全ての用途を網羅可能
想定される用途
・電気自動車用電源
・風力発電、太陽光など自然エネルギーの蓄電
・スマートグリッド用電源
関連情報
・電極材料の提供は一部可能
・外国出願特許あり
- 材料
7)高耐熱性樹脂の透明化と機能化
東京理科大学 理工学部 工業化学科 准教授 山下 俊
新技術の概要
ポリイミドなどの高耐熱性樹脂を分子設計し、透明材料を作った。カーボンとの複合化、表面濡れ特性制御、屈折率制御、光発泡パターニング、表面レリーフ形成などによる機能材料構築が出来る。
従来技術・競合技術との比較
350度以上の耐熱性、1GPa以上の力学物性をもち、柔軟で透明なフィルムを形成する材料で、表示、記録、エレクトロニクス等への応用が可能である。
新技術の特徴
・フレキシブルエレクトロニクス
・力学材料
・導電性材料
想定される用途
・ディスプレイ
・半導体
・フォトニクス
関連情報
・サンプルの提供可能
- 材料
8)超短ピッチ液晶材料による高速応答液晶の実現
山口東京理科大学 工学部 電気工学科 教授 高頭 孝毅
新技術の概要
270度ねじれ構造より高エネルギーの90度ねじれ構造中に高分子マトリックスを形成し安定化させた液晶素子。特殊な液晶配向処理の270度ねじれ構造に対する電圧印加、高分子マトリックス形成により作製する。
従来技術・競合技術との比較
90度のねじれ構造(TN構造)の液晶材料の短ピッチ化は(ピッチ)/(液晶層の厚み)=約2が限界でそれよりも短いと270度のねじれ構造となった。本技術より短ピッチな液晶材料が使え高速化が可能になった。
新技術の特徴
・TN液晶の短ピッチ化で、高速化に最も重要な印加電圧減少時の応答速度が大きく高速化する
・低温での高速化も可能になる
・液晶材料に少量の光学活性物質を添加だけで、現行の液晶材料はそのまま使えるため他の特性に悪影響を与えない
想定される用途
・TV用液晶素子・3D用液晶素子(高速性)
・カーナビ用液晶素子(低温高速化)
・携帯電話用液晶素子(低温高速化)
関連情報
・サンプルの提供可能
- 材料
9)光応答性ナノ相分離を発現する液晶高分子化合物の開発とリソグラフィー用フォトマスクへの応用
東京理科大学 理工学部 工業化学科 助教 岡野 久仁彦
新技術の概要
加熱することでナノ相分離構造を発現する新しい液晶高分子を開発した。発現するナノ構造は偏光によって並べることができる。 また非偏光を照射することでナノ構造を消去することができる。さらに熱と光のプロセスを組み合わせることでナノ構造の書き込み、配向、消去を可逆的に制御できる。
従来技術・競合技術との比較
ナノ構造を発現するフィルム材料は数多く報告されているものの、これを光制御した例はあまりない。本開発では、光でナノ構造を並べるだけでなく消去することに成功している。ナノ構造を光で消去した例はこれが初めてである。照射スポットサイズを制御すればより高次にナノ構造を制御できる。
新技術の特徴
・光応答性を発現するナノ相分離フィルムを得る
・光と熱の過程でナノ構造を可逆的に制御できる
・誘起したナノ構造をガラス転移点温度 (70℃程度)以下で保存
想定される用途
・リオトロピック液晶配向膜
・リソグラフィー用テンプレート材料
・ナノインプリントテンプレート
関連情報
・外国出願特許あり
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