大阪府立大学・大阪市立大学 新技術説明会(1)
日時:2011年10月13日(木)
会場:科学技術振興機構 JSTホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 環境
1)糸状菌セルロース系バイオマス分解酵素の大量生産技術の開発
大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 助教 谷 修治
新技術の概要
セルロース系バイオマスの完全酵素糖化実現に向けて、ボトルネックである酵素生産コストを削減するために、糸状菌におけるセルラーゼ・ヘミセルラーゼ生産調節に関わる因子を同定し、その機能を利用して酵素を大量生産する技術を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来のランダム変異による微生物の育種では、望ましくない変異が潜在している可能性がある。本法では、目的の遺伝子の機能改変のみを行うことにより、効率よくターゲット酵素の生産量を増大させることに成功した。
新技術の特徴
・糸状菌の酵素生産調節に関わる因子のポジティブスクリーニング系を構築
・同定した新規転写因子の機能改変により、種々の基質特異性を有す酵素の大量生産に成功
・モデル微生物ではない自然界から単離した糸状菌の分子育種に成功
想定される用途
・セルロース系バイオマスの酵素糖化
・産業上有用糸状菌の分子育種
・連結バイオプロセスによる化成品・燃料の発酵生産
- エネルギー
2)スリット式防波堤を利用した波力発電システム
大阪市立大学 工学研究科 機械物理系専攻 教授 加藤 健司
新技術の概要
スリット式防波堤内の、加速整流された水流を利用するミニ波力発電システムを提案する。スリット後方にサボニウス水車を設置して、往復水流に対して連続的な発電を行うことのできる装置を開発する。
従来技術・競合技術との比較
我が国では、海上への構造物設置が厳しく制限されている。長大な防波堤内部にシステムを組み込むことで、より現実性のある発電方法を考案した。機器の保守が容易であり、スリットで加速整流されたエネルギー密度の高い水流を利用できる利点を有する。
新技術の特徴
・発電システムを利用した消波構造物の設計
・新たな発電用水車の開発
・適切な形状の消波ブロックの設計
想定される用途
・波力発電
・潮力発電
・河川における小規模発電システム
- 計測
3)磁気抵抗効果を利用した磁性薄膜電力センサ
大阪市立大学 大学院工学研究科 電子情報系専攻 教授 辻本 浩章
新技術の概要
磁気抵抗効果型電力センサデバイスは、まったく新しい概念に基づく電力計測・センシング技術であり、発電、送電、電気使用等の多様な用途での適用が可能で、従来技術よりも高精度の制御を実現し、省電力・安全使用の最大化に寄与できるものである。
従来技術・競合技術との比較
従来の電力センサは、電流と電圧を別々に計測し、それらのデータを演算装置にて演算し電力計測をおこなっていたのに対して、本電力センサは、電力(電流×電圧)パラメータをそのまま計測できる原理から、超小型で、消費電力も少なく、正確かつリアルタイムに計測できることが大きな特長である。
新技術の特徴
・素子単独で力率を含む電力が測定できる
・小型集積化可能
・交流、直流ともに動作可能
想定される用途
・スマートグリッド用制御素子
・各種電池充放電制御素子
・直流送配電制御素子
関連情報
・サンプルの提供可能(ただし、要相談)
・展示品あり(サンプル)
- エネルギー
4)スマートグリッドにおける太陽光発電出力の推定法
大阪府立大学 大学院工学研究科 電気・情報系専攻 教授 石亀 篤司
新技術の概要
小容量の装置が多数連系される太陽光発電は、個別にセンサを設置するような方法をとることは困難であり、独立成分分析を用いてできるだけ少ないセンサで精度よくその出力を推定する方法を提案した。
従来技術・競合技術との比較
日射量との関係からの推定、一部の測定データからの類推、過去の統計データを用いてモデルパラメータを最適化する方法などがあるが、本手法は現在の潮流量からのみ出力を推定できるという利点がある。
新技術の特徴
・配電線を流れる電力から負荷需要と太陽光発電出力を分離する
・混合された信号から所望の信号を分離する
・ある情報の中からその特徴量を抽出する
想定される用途
・風力発電の出力推定
・需要予測精度向上のための特徴成分抽出
・複雑システムからの所望の埋もれた信号の分離
- エネルギー
5)全固体ナトリウム電池を指向した無機固体電解質の開発
大阪府立大学 大学院工学研究科 物質・化学系専攻 応用化学分野 助教 林 晃敏
新技術の概要
ポストリチウムイオン電池として、資源的制約の小さいナトリウムイオンを伝導種とする二次電池の開発が注目されている。本技術において、全固体ナトリウム電池への応用を展望できる、新規なナトリウムイオン伝導性無機固体電解質を開発した。
従来技術・競合技術との比較
本技術によって開発した無機固体電解質は、室温での粉末成形によって、高いナトリウムイオン伝導性と広い電位窓が実現できるため、安全面で有利な全固体電池への適用が容易になるというメリットがある。
新技術の特徴
・高安全性と高エネルギー密度を兼ね備えた全固体電池の実現が期待
・資源量が多く、地域による偏在のないナトリウムを用いることで、電池の低コスト化が可能
・ボールミル装置を使用したシンプルな合成手法
想定される用途
・家庭用蓄電池
・電力貯蔵用蓄電池
・自動車用蓄電池
- 材料
6)水素製造用Ni基金属間化合物合金触媒
大阪府立大学 大学院工学研究科 物質・化学系専攻 准教授 金野 泰幸
新技術の概要
Ni基金属間化合物合金がメタンの水蒸気改質反応に対して高い触媒活性と水素選択性を有することを見出した。高価な貴金属触媒に代わる安価な触媒としての利用のほか、高温高強度特性を活かした構造体と触媒を一体化した水素製造用装置等への応用が期待される。
従来技術・競合技術との比較
本金属間化合物合金は反応中に触媒機能を有する表面構造が自己形成するため、従来の金属触媒のようにアルミナやシリカなどの担体を必要としない。このため、耐衝撃性や熱伝導性に優れるとともに、自由な形状の触媒に加工することが可能である。
新技術の特徴
・高い触媒活性と水素選択性
・貴金属を含まない汎用元素からなる合金成分
・セラミックス担体が不要な高熱伝導性触媒
想定される用途
・水素製造用改質触媒
・触媒と容器を一体構造化した水素製造装置
・高耐食性・高耐酸化性・高強度を活かした化学装置部材
関連情報
・サンプルの提供可能
- アグリ・バイオ
7)分子診断型植物工場システムの開発
大阪府立大学 大学院工学研究科 機械系専攻 助教 福田 弘和
新技術の概要
遺伝子発現や有用成分の蓄積状況などの分子レベルの情報を取得しながら、最適な栽培環境を調節することができれば、植物工場におけるコストパフォーマンスの向上と付加価値創出効果が期待できる。分子診断情報を用いて最適な環境調節を行う植物工場を「分子診断型植物工場」と呼ぶ。本技術は、植物工場内におけるルシフェラーゼ発光を利用した概日リズム遺伝子のリアルタイム計測と、概日リズム制御による植物生産の効率化に関するものである。
従来技術・競合技術との比較
通常、植物工場における栽培は24時間周期の明暗サイクル条件で行われている。しかしながら、概日リズムの周期はLEDなどの照明の波長に依存することが近年明らかとなっており、非24時間周期の照明サイクルが最適である可能性が示唆されている。本技術は、これに対応できる技術である。
新技術の特徴
・植物の体内時計を可視化でき、朝採りなどの収穫法が可能となる
・遺伝子発現のリアルタイム計測とダイナミクス解析が可能
・概日リズムに調和した植物生育と物質生産が可能
想定される用途
・植物を利用した有用物質生産への適用
・植物工場における照明コストの削減への適用
・植物工場における高品質野菜の生産への適用
- 環境
8)バイオマスエネルギーの複合化(ゴミから新エネルギーへ)
大阪府立大学 地域連携研究機構 特認教授 前田 泰昭
新技術の概要
低エネルギー消費、廃棄物ミニマムエミッションBDF製造校溶媒法によって、非食用油から高品質なバイオジーゼル燃料(BDF)を製造する。従来廃棄物であった副生グリセリンをマイクロ波加熱で精製し、燃料電池燃料として利用する。
従来技術・競合技術との比較
従来法:多量廃棄物、多量消費エネルギー、低効率燃料電池 新技術:少量廃棄物、少量消費エネルギー、高効率燃料電池
新技術の特徴
・(1)低廃棄物均一反応の開発
・(2)低消費エネルギー精製法の開発
・(3)高性能ナノ微粒子触媒の調製
・(4)高効率燃料電池の開発
想定される用途
・BDF:ゴミ収集車、バス、トラック、ジーゼル機関車
・マイクロ波加熱:グリセリンの精製、エタノールの精製
・グリセリン燃料電池:パソコン、携帯電話
関連情報
・サンプルの提供可能
・展示品あり
・外国出願特許あり
- 環境
9)都市鉱山からのレアメタル等のバイオ利用リサイクル
大阪府立大学 大学院工学研究科 物質・化学系専攻 化学工学分野 教授 小西 康裕
新技術の概要
エネルギー消費やCO2排出を抑制して、簡便で迅速に、都市鉱山からレアメタル(In、Ga、Pt等)、レアアースが分離・回収できる。コンパクトな本バイオ回収法は、分散型社会でのレアメタルのリサイクルに貢献できる。
従来技術・競合技術との比較
レアメタル・貴金属の本バイオ回収法は、従来技術に比べ、エネルギーと化学物質の使用量、CO2排出量が大幅に削減できる。とくに、白金族金属の回収は、溶液からの分離・回収に、金属ナノ粒子の合成までも付加した新規技術となる。
新技術の特徴
・溶液中の白金族金属や金を、分離・濃縮・ナノ粒子化までもワンステップで達成する高付加価値化リサイクル技術
・インジウム、レアアース等を、迅速・高効率で、溶液から微生物細胞に吸着分離・濃縮できる環境適合技術
・微生物内包カプセルによるレアメタル・貴金属の簡易回収技術
・コンパクトなバイオ回収技術による地域分散型リサイクル技術
想定される用途
・都市鉱山からのレアメタル・貴金属のリサイクリング
・微生物細胞を反応場・担体として活用する貴金属ナノ材料・触媒の開発
・廃水等からのレアメタル・貴金属の回収
- 材料
10)ナノ構造を利用した磁石材料の創製と機能性向上
大阪府立大学 大学院工学研究科 物質・化学系専攻 教授 森 茂生
新技術の概要
数ナノメートルの大きさからなる非磁性相と磁性相のナノ構造を物質中に自己形成させ、磁性遷移金属イオンの一軸性配位を実現し、希少元素を含まない高保持力をもつ新規な磁石材料の作製方法と機能性について報告する。
従来技術・競合技術との比較
アルニコ磁石などのレアメタルを含む磁性材料の代替磁性材料を社会に提供できる。
新技術の特徴
・医療用(MRI)
想定される用途
・磁気メモリー材料
・日常生活での磁石材料
・モーター用磁石材料
関連情報
・サンプルの提供可能
- 機械
11)レアアースフリー高性能PMA同期リラクタンスモータ
大阪府立大学 大学院工学研究科 電気・情報系専攻 教授 森本 茂雄
新技術の概要
レアアースを使用しないフェライト磁石補助形同期リラクタンスモータにおいて、磁石の不可逆減磁を回避し、レアアース永久磁石を使用した従来の高性能モータと同等の出力密度、最高効率を有するモータ構造を開発した。
従来技術・競合技術との比較
高性能モータには、レアアース永久磁石が使用されているが、近年レアアースの価格高騰や安定供給への懸念が高まっている。フェライト磁石を使用した開発モータは、レアアースフリーのため安価であり供給面での不安もない。
新技術の特徴
・レアアースを使用せずレアアース使用モータと同等の出力が得られる
・耐減磁設計により大電流、低温使用環境でも不可逆減磁が生じない
・レアアース使用モータに比べて安価である
想定される用途
・電気自動車・ハイブリッド自動車の駆動用モータ
・家電・民生用モータ
・産業用モータ等
- 材料
12)金属ナノワイヤーを用いた脱レアーメタルの透明導電膜の開発
大阪府立大学 工学研究科 電子物理工学専攻 准教授 川田 博昭
新技術の概要
テンプレートに作製した金属パターンをフィルムに接着、貼り付けることにより金属ナノワイヤーを用いた透明導電膜を作製する。これによりレアーメタルを用いずに低抵抗、平滑な表面を有する透明導電膜を量産するプロセスを実現する。
従来技術・競合技術との比較
代表的な透明導電膜であるITO薄膜と比べ、レアーメタルを用いずに、高分子のフィルム内に平滑な面をもつ良質な導電膜を作製する。さらに、真空プロセスを用いないため効率的なプロセスを実現できる。
新技術の特徴
・多層微細金属構造
・多層構造を用いた複合光学素子
・マイクロマシン
想定される用途
・透明導電膜
・偏光素子
・微細金属配線
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