JST推薦シーズ 新技術説明会(2)
日時:2013年02月25日(月)
会場:JST東京本部別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
- 生体イメージングに最適化された新規高度免疫不全マウス
- 臓器標的化遺伝子ベクターによるin vivo siRNA送達技術の開発
- 逆転の発想に基づくナノ純薬による抗癌剤の開発
- 海洋天然物をモチーフとした新規抗がんリード化合物
- カルパイン阻害薬のin vitro神経細胞遊走活性による探索
- 経口投与型レドックスナノ粒子による潰瘍性大腸炎治療
- 優れた空間分解能を有するポータブル光音響診断装置の開発
- 前立腺癌の過剰診断を克服する診断マ-カ-の開発
- MAPキナ-ゼTNNI3Kを用いた新しい心疾患診断薬の展開研究と開発
- カチオン化を利用したタンパク質細胞内導入技術の開発
- ニワトリ遺伝子組換えによる有用蛋白質大量生産技術の試み
- 核酸医薬DDSを可能とする絹タンパク質を用いた創傷被覆材料
- 絆創膏型生体センサ
- インフルエンザウイルスと結合する糖鎖修飾核酸
- トンネル電流計測に基づくDNA単一分子の検出・診断法
- ALSの発症機序解明並びに診断薬開発に関する研究
- トラス型創外固定器PinFix
- バイオイメージング技術に基づく診断法の開発
- 布製電極シートを用いた心電2種類と呼吸2種類の非接触・無拘束・同時計測技術
発表内容詳細
- 創薬
1)生体イメージングに最適化された新規高度免疫不全マウス
熊本大学 エイズ学研究センター/大学院医学教育部 教授 岡田 誠治
熊本大学 マーケティング推進部 産学連携ユニット 研究コーディネーター 松本 泰彦
新技術の概要
Nude-RJマウスは、無毛でヒトがん細胞や正常細胞が生着可能な高度免疫不全状態にある。本マウスは、ヒト細胞が生着可能で同定しやすいばかりでなく、生体イメージング(生体情報を非侵襲的・経時的に可視化・定量化して解析する技術)に最適化されたマウスであり、医学・生命科学研究において大きな貢献が期待される。
従来技術・競合技術との比較
Nude-RJマウスは、ヒト腫瘍の研究や生体蛍光イメージングに従来から用いられてきたNudeマウスに比べて高度な免疫不全を示す事から、ヒト腫瘍や正常細胞の生着が容易であり、ヒト腫瘍や感染症研究において大きな貢献が期待できる。
新技術の特徴
・ヒトの正常細胞・腫瘍細胞が生着可能
・体毛が欠如しているため、皮下に生着した腫瘍などが観察しやすい
・生着した細胞の同定が容易(蛍光を使用する事で生きたまま経時的に体外から生着した細胞の同定が可能)
想定される用途
・ヒト疾患研究と治療薬開発(抗腫瘍薬や抗ウイルス薬の有効性と副作用の評価)
・再生医療研究(iPS細胞やES細胞から分化した細胞の評価など)
・異種動物の細胞や臓器移植
関連情報
・サンプルの提供可能
・外国出願特許あり
- 創薬
2)臓器標的化遺伝子ベクターによるin vivo siRNA送達技術の開発
長崎大学病院 薬剤部 教授 佐々木 均
長崎大学 産学官連携戦略本部 知的財産部門 助教 藤原 雄介
新技術の概要
siRNAは特異的な遺伝子発現を抑制することが可能であり、癌、感染症、遺伝性疾患を含む広範囲の疾患に対する治療薬として期待されている。しかし、細胞取り込みが低く、分解が速い。我々は、pDNAのベクター開発において新しい理論を構築し、細胞毒性、血液毒性、急性毒性を示さず、組織選択的に高い遺伝子発現を示すベクター開発に成功した。そこで、この技術をsiRNAに応用した結果、安全で臓器選択的に抑制効果を示すsiRNA製剤を開発できた。
従来技術・競合技術との比較
従来技術は安全性や製造に問題があるが、我々の技術は生体適合性の高い成分を自己組織化して構築するため、安全性が高く、無菌的大量作製が可能である。
新技術の特徴
・siRNA以外の核酸やたんぱく質、抗原などにも応用が可能である
・ベクター構築成分の種類や混合比を最適化することで、様々な臓器へ指向性を付与できる
・ベクター表面がアニオン性を示すため、従来技術と比較して低毒性であり、安全性が極めて高い
想定される用途
・肺疾患や肝疾患に対するsiRNAの医薬品としての実用化
・疾患モデルの作成
・siRNAのin vivoデリバリー用試薬
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
3)逆転の発想に基づくナノ純薬による抗癌剤の開発
東北大学 多元物質科学研究所 准教授 笠井 均
東北大学 未来科学技術共同研究センター 細胞治療創製プロジェクト 准教授 渡邉 君子
新技術の概要
本発表では、抗癌効果を有する難水溶性化合物のみで構成されたキャリアフリーのナノ粒子「ナノ純薬(Pure Nano Drugs(PND))」を創製した後、現行の抗癌剤として広く使用されているイリノテカンという分子と比べて、約10倍希薄な低濃度のPND水分散液を癌細胞の培地に投入することで、癌細胞をイリノテカン以上に死滅させることができることを報告します。将来的には、少量の使用で効果的なPNDによるドラッグデリバリーの実用化を目指します
従来技術・競合技術との比較
薬理活性部位を有する化合物を水に対する溶解度がより低くするために、二量体化するか、または難水溶性置換基を化学的に付けた化合物へと合成した(これは、従来の製薬合成の発想とは真逆のものである。)後、再沈法により、薬剤ナノ粒子の分散液を得ており、従来には無い技術である。
新技術の特徴
・難水溶性ナノ薬剤とする点
・再沈法を用いて、サイズ制御する点
・使用量が少量で、且つ既に使用されている薬剤化合物がリリースされる薬剤設計のため、強い副作用がでる可能性が低い点
想定される用途
・抗がん剤
・点眼薬
・塗り薬
関連情報
・サンプルの提供可能(少量であれば、ナノ薬剤水系分散液を提供可能)
・外国出願特許あり
- 創薬
4)海洋天然物をモチーフとした新規抗がんリード化合物
大阪大学 大学院薬学研究科 創成薬学専攻 助教 古徳 直之
新技術の概要
以前に我々は、海綿の抽出エキスから強力な血管新生阻害作用を有する新規アルカロイドcortistatin Aを見出している。VEGF経路を阻害しない新規作用メカニズムを有する本化合物を抗がんリード化合物へと展開すべく、構造単純化アナログの創製を検討した結果、10工程程度の化学合成により容易に供給が可能であり、経口投与で顕著なin vivo血管新生阻害作用および抗腫瘍活性を示す化合物を見出した。
従来技術・競合技術との比較
本化合物は、最も代表的な血管新生因子であるVEGFのシグナル伝達経路を阻害しない、既存の血管新生阻害剤とは異なる作用メカニズムを有することが最大の特徴である。化学合成が容易な低分子化合物で経口投与でも有効であることから、新規な抗がん剤としての展開が期待できる。
新技術の特徴
・従来にない作用メカニズムで血管新生を阻害する
・短工程で化学合成が可能な低分子化合物
・経口投与で顕著な活性を示す
想定される用途
・抗がん剤
・糖尿病性網膜症の治療薬
・関節リウマチの治療薬
関連情報
・サンプルの提供可能
・外国出願特許あり
- 創薬
5)カルパイン阻害薬のin vitro神経細胞遊走活性による探索
大阪市立大学 大学院医学研究科 細胞機能制御学 准教授 山田 雅巳
大阪市立大学 産学連携推進本部 新産業創生研究センター 副所長 中島 宏
新技術の概要
我々は、滑脳症の原因因子・LIS1がカルパインによって分解されることを発見し、カルパイン阻害薬がその疾患モデル動物(LIS1ヘテロ欠損マウス)に対して個体レベルで滑脳症(様)症状を改善することを報告した。今回私は、滑脳症のような神経細胞の遊走障害を伴う先天性神経疾患に対して有効な低分子量カルパイン阻害薬を小脳顆粒細胞を用いたin vitroアッセイ系により探索することができた。神経細胞の遊走活性測定による薬剤スクリーニングの有用性と汎用性について述べたい。
従来技術・競合技術との比較
マウス小脳由来の顆粒細胞を用いたin vitro神経細胞遊走活性の測定は以前から報告されていた。今回私は、低分子量カルパイン阻害薬の滑脳症に対する治療薬のスクリーニングとして独自に改良することができた。また、この細胞レベルでの薬効評価は、個体レベルでの薬効と密に相関していた。
新技術の特徴
・遺伝性神経疾患・滑脳症に対して有効な低分子量カルパイン阻害薬の探索
・特定遺伝子を発現させた新生マウス小脳の顆粒細胞凝集塊を用いた神経細胞遊走アッセイ
・タンパク質分解酵素阻害薬等の薬剤としての有用性の評価
想定される用途
・滑脳症治療薬としてのカルパイン阻害薬の薬剤(一次)スクリーニング
・神経細胞遊走障害を伴う先天性神経疾患に対する簡便な治療薬の薬剤スクリーニング
・神経細胞遊走障害を有する遺伝子の網羅的解析
関連情報
・サンプルの提供可能(試作可能)
- 創薬
6)経口投与型レドックスナノ粒子による潰瘍性大腸炎治療
筑波大学 大学院数理物質科学研究科 物性・分子工学専攻 教授 長崎 幸夫
筑波大学 産学連携本部 技術移転マネージャー 山本 信行
新技術の概要
潰瘍性大腸炎は、難病指定されている病気であり、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患である。デキストラン硫酸誘発性潰瘍性大腸炎モデルマウスを用いてpH応答性のないRNPOと低分子TEMPO誘導体の治療効果を比較検討した結果、我々の開発したレドックスナノ粒子は、低分子量TEMPO誘導体や実際に使用されている5-ASAと比較して、潰瘍性大腸炎の予防・治療効果を発揮することを見出した。
従来技術・競合技術との比較
のみの効果しかなく、緩解と再燃を繰り返すのがこの疾患の問題である。我々のレドックスナノ粒子は、高い局所治療効果と安全性で、患者の負担が大幅に軽減することができる。
新技術の特徴
・レドックスナノ粒子を経口投与することによって、粘膜・炎症部位に集積する。
・集積したレドックスナノ粒子は、活性酸素を消去し、炎症を抑えることで、潰瘍性大腸炎を治癒する。
・経口投与後、血中に取り込まれないため、全身の副作用がない。
想定される用途
・潰瘍性大腸炎治療薬
・クローン病治療薬
・大腸がん治療薬
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
7)優れた空間分解能を有するポータブル光音響診断装置の開発
京都府立医科大学 大学院医学研究科 細胞分子機能病理学 助教 山岡 禎久
京都府立医科大学 大学院医学研究科 特任教授 羽室 淳爾
新技術の概要
再生医療分野において、損傷を受けた様々な臓器の機能復元評価に、小血管構造、微小循環の観察が必要とされている。我々はそのような機能評価のために、光音響イメージングと周波数フィルタリングとを組み合わせた高空間分解能、高コントラスト、生体深部観察可能という特徴を有する簡便な可視化技術を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来の光音響イメージングに比べて、我々の方法は周波数フィルタリングと微小空間励起により高空間分解能を保ちながら生体深部観察に有利な低周波超音波を利用するため、生体内部を観察するのに極めて有効である。
新技術の特徴
・生体深部の高空間分解分子イメージング可能
・小血管イメージング可能
・光散乱体内部構造の可視化可能
想定される用途
・再生医療分野における損傷臓器の機能復元評価
・がんの正確な範囲診断
・恒常性、代謝に関係する病態診断
- 医療・福祉
8)前立腺癌の過剰診断を克服する診断マ-カ-の開発
弘前大学 大学院医学研究科 先進移植再生医学講座 助教 米山 徹
弘前大学 地域共同研究センター 産学官連携コーディネーター 工藤 重光
新技術の概要
前立腺特異抗原(PSA)検査による前立腺癌の診断は特異度が低く、それに伴う過剰診断が問題となる。我々は、前立腺癌患者血清に糖鎖末端がシアル酸α2,3ガラクトースへと変異した癌関連free-PSA(S2-3PSA)が増えることに着目し、ルミネックスシステムを基盤とした癌関連S2-3PSA測定法を発明した。本発明は、従来PSA検査よりも感度、特異度ともに優れた新規前立腺癌検査法としての臨床応用が期待される。
従来技術・競合技術との比較
本発明は従来PSA検査でグレーゾーン(4-10 ng/mL)の患者で、診断特異度が83.3%(ROC解析でAUCが0.98)であり、同患者のPSA検査の診断特異度(50%程度、ROC解析でAUCが0.55程度)およびPSA f/T比(ROC解析でAUCが0.61)等の現在臨床で使用されている測定法よりも、正確に診断可能である。
新技術の特徴
・従来PSA法より感度、特異度ともに優れている
・前立腺特異抗原の癌性糖鎖変異を利用した測定法
・低容量、多検体処理が可能な腫瘍マーカー測定
想定される用途
・前立腺癌早期発見のための血清マーカー
・PSA検査で擬陽性のものに対する2次診断
・糖鎖構造の変異を原因とする疾患の診断への応用
- 医療・福祉
9)MAPキナ-ゼTNNI3Kを用いた新しい心疾患診断薬の展開研究と開発
熊本大学 生命科学研究部 生体機能薬理学分野 助教 頼仲 方一
熊本大学 マーケティング推進部 研究コーディネーター 荒木 寛幸
新技術の概要
TNNI3Kは心筋特異的に発現する細胞質に局在のMAPキナーゼである。最近我々は抗TNNI3Kのポリおよびモノクローナル抗体を用いた、TNNI3Kが虚血性心疾患における病態マーカーとして利用できるような診断薬を開発し、心筋梗塞を中心とした心疾患でTNNI3K血中レベルを測定し既存のマーカーであるcTnIキットとの比較解析を行う、虚血性心疾患の新規、高特異的迅速な診断試薬を開発することを行った。
従来技術・競合技術との比較
TNNI3Kは細胞質及び細胞核内に局在し、心筋虚血や心筋梗塞で細胞死やアポトーシスなど心筋傷害により細胞外に逸脱する可能性がある。TNNI3Kを用いた新しい心疾患診断薬については特異性及び感受性が高い。
新技術の特徴
・早期確診可能:血中TNNI3K濃度は虚血開始2時間後から上昇、12時間後にはピーク、48時間後にも同様な高いレベル
・感受性高い:健常者より十倍以上高かった
・特異性高い:血中TNNI3Kではなく、cTnI濃度の上昇は、急性腎不全患者の血液サンプルにも見られた
想定される用途
・虚血性心疾患の常規診断項目
・虚血性心疾患と腎臓疾患との鑑別診断
・虚血性心疾患の治療効果としての判断指標
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
10)カチオン化を利用したタンパク質細胞内導入技術の開発
岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 細胞生物学分野 助教 村田 等
メディカルテクノおかやま 事務局 コーディネーター 佐藤 寿昭
新技術の概要
タンパク質の化学修飾を利用した動物細胞内へのタンパク質導入技術である。カチオン性ポリマーポリエチレンイミン(PEI)などの試薬を用いてタンパク質を化学修飾(カチオン化)することによって、タンパク質に正電荷を付与し、負に帯電する細胞膜との静電相互作用を介してタンパク質を細胞内に導入し、in vitro、in vivoにおいて導入タンパク質を機能させる。本技術によって転写因子や細胞死抑制タンパク質、抗体などを細胞内に導入し機能させる例について紹介する。
従来技術・競合技術との比較
タンパク質の細胞内への導入は塩基性ペプチドをタンパク質に繋ぐ方法が用いられてきたが、タンパク質によっては導入効率が低かったり、変性・沈殿して利用できないケースがあった。しかし本技術はタンパク質に併せて細胞内導入に最適なカチオンの量を修飾し、変性した場合も細胞内で巻き戻し、機能させることが可能である。
新技術の特徴
・タンパク質の細胞内への導入効率が高い
・通常は変性して使用できないタンパク質も可溶化し、細胞内で巻き戻し機能させることが可能である
・in vivoにおいても使用可能である
想定される用途
・タンパク質導入用試薬
・細胞内を標的する抗体などのタンパク質製剤
・薬物担体
関連情報
・サンプルの提供可能
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
11)ニワトリ遺伝子組換えによる有用蛋白質大量生産技術の試み
産業技術総合研究所 健康工学研究部門 バイオインターフェース研究グループ 主任研究員 大石 勲
産業技術総合研究所 関西センター 関西産学官連携センター イノベーションコーディネーター 堀野 裕治
新技術の概要
近年、抗体医薬など有用蛋白質の需要は増大していますが、高い生産コストが問題となっています。鶏卵は安価で豊富な蛋白質を含むことから、遺伝子組換えにより卵白成分の一部を有用蛋白質に置き換えることができれば、有用蛋白質を安価に生産可能です(いわゆる金の卵を産むニワトリの樹立)。本研究では抗体医薬をモデル蛋白質とし、卵白に効率良く抗体医薬を分泌する技術や組換えニワトリ作製技術の開発を行い、鶏卵中に有用蛋白質を大量生産する技術の開発を目指しています。
従来技術・競合技術との比較
鶏卵中に有用蛋白質を生産する為に、卵管特異的に高効率に有用蛋白質を発現誘導することが必要です。私たちは従来の40倍以上の高効率でニワトリ卵管細胞に抗体医薬を発現誘導しました。さらに、始原生殖細胞を用いてニワトリ遺伝子組み換えに取り組んでいます。
新技術の特徴
・ニワトリ卵管細胞に高効率に外来蛋白質を発現誘導
・始原生殖細胞を用いた細胞ベースの組換え技術開発
・生殖巣キメラニワトリを樹立、鶏卵バイオリアクター化に繋げる
想定される用途
・抗体医薬、診断薬等医薬品の大量生産への展開
・動物用医薬品大量生産への展開
・機能性化粧品素材大量生産への展開
- 医療・福祉
12)核酸医薬DDSを可能とする絹タンパク質を用いた創傷被覆材料
新潟大学 大学院医歯学総合研究科 分子細胞機能学 准教授 武内 恒成
新潟大学 研究支援部 産学官連携コーディネーター 定塚 哲夫
新技術の概要
我々は中枢神経再生治療を目指して、損傷部の神経再生環境を整えるためにsiRNAによる遺伝子抑制と今後のiPS細胞や幹細胞移植による治療のために損傷部被覆材料の検討を行っている。生体に反応性がなく吸収材料でもあるバイオマテリアルとして絹タンパク質と核酸医薬デリバリー能を備えた複合材料を選択し動物実験で効果を示すことができた。
従来技術・競合技術との比較
生体への安全性と、生体への(iPSやES細胞などの)移植細胞保持、さらに患部における薬物徐放や再生治療環境を保持する能力を兼ね備えたバイオマテリアルという新しいコンセプトである。
新技術の特徴
・複合生体内材料
・皮膚・臓器への薬物デリバリー(DDS)
想定される用途
・脊髄損傷治療・中枢神経機能再生
・神経再生
・核酸医薬(DDS)
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
13)絆創膏型生体センサ
兵庫県立大学 大学院工学研究科 電気系工学専攻 教授 前中 一介
科学技術振興機構 前中センシング融合プロジェクト 技術参事 樋口 行平
新技術の概要
胸や背中に貼り付けた小型の絆創膏型センサにより、日常生活を妨げることなく心電(あるいは筋電)、体温等の生体情報、活動量およびその他環境情報を取得する。一端、貼り付ければ入浴時や睡眠時にも取り外したりすることなく数日間身体情報を取得し、無線でデータをベースステーション(スマートフォン、PC等)へ送信する。
従来技術・競合技術との比較
従来のホルタ―心電計、血圧計あるいは万歩計・活動量計は大きい、重い、このままお風呂に入れない、寝にくい、付け忘れる(置き忘れる)、稼働時間が短いという課題があったが、本システムは小型で絆創膏のように貼り付けることができ、入浴時や睡眠時でも取り外すことなく使用できる。
新技術の特徴
・ワイヤレスセンサを利用した応用分野
・温室の環境管理、構造物・建築物のモニタリング
想定される用途
・継続的生活モニタリングによる健康維持管理
・独居者、乳幼児などの継続的見守りと非常時検出・警報
・劣悪環境下での作業者の体調管理
関連情報
・サンプルの提供可能
・展示品有り
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
14)インフルエンザウイルスと結合する糖鎖修飾核酸
神戸大学 人間発達環境学研究科 人間環境学専攻 准教授 江原 靖人
神戸大学 連携創造本部 特命教授・産学連携コーディネーター 大内 権一郎
新技術の概要
インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)と高い親和性で結合する糖鎖修飾核酸を合成した。HAは、ウイルスが変異しても糖鎖結合部位の構造は保存される確率が高いため、HAと結合する化合物は、変異したあらゆるインフルエンザに対しても結合すると期待される。また核酸を骨格としているため、抗体のように変性することはなく安定である。この糖鎖修飾核酸はインフルエンザウイルスの除去、感染治療薬としての応用が考えられる。
従来技術・競合技術との比較
開発した糖鎖修飾核酸は、合成高分子にランダムに糖鎖を修飾した材料に比べて、高い親和性でインフルエンザウイルスと結合する。また糖鎖の数、密度、配向をコントロールした材料を、煩雑な有機合成を行わずに、誰でも数時間で調整することができる。
新技術の特徴
・空気清浄機などと組み合わせた、環境中からインフルエンザウイルスを除去するシステム
・公共機関・施設内におけるインフルエンザウイルス量のモニタリング
想定される用途
・従来のイムノクロマトグラフィー法と組み合わせることによる、インフルエンザウイルス感染の診断
・各種電子、光学デバイスに修飾することによる、インフルエンザウイルスの高感度検出
・インフルエンザ感染治療(予防)薬
- 医療・福祉
15)トンネル電流計測に基づくDNA単一分子の検出・診断法
大阪府立大学 21世紀科学研究機構 ナノ科学・材料研究センター 特別講師 西野 智昭
大阪府立大学 地域連携研究機構 統括コーディネーター 井上 隆
新技術の概要
単一分子の超高感度にて、簡便、かつ迅速にDNAを検出できる手法を開発した。プローブDNAを固定した探針と検体DNAのハイブリダイゼーションに伴うトンネル電流の増加を指標として検出する。本手法は、単一DNAのミスマッチやメチル化をも検出でき、高次な遺伝子解析が可能となる。本技術は、超高感度、簡便・迅速な遺伝子検査デバイスの創製を可能とするものである。
従来技術・競合技術との比較
DNA単一分子が検出できる極めて高い感度を有するため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法等による増幅が不要である。ラベル化・検出試薬による情報変換を介さず著しく迅速・簡便にDNA検出ができる。小型で安価な装置開発が可能である。
新技術の特徴
・DNA単一分子検出
・生体分子の電気伝導計測
・電流検出型化学センサ
想定される用途
・遺伝子診断(SNPsタイピング、がん診断)
・ゲノム創薬における疾患遺伝子同定
・ゲノム情報に基づく生体認証
- 医療・福祉
16)ALSの発症機序解明並びに診断薬開発に関する研究
岐阜薬科大学 大学院薬学研究科 薬学専攻 教授 原 英彰
名古屋産業科学研究所 中部TLO 技術移転部 部長 羽田野 泰彦
新技術の概要
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は有効な治療薬・診断薬共に存在しない不治の病である。我々はGlycoprotein transmembrane nmb (GPNMB) が運動ニューロン死に深く関与しており、またALS患者血清および脳脊髄液中でGPNMB量が健常人と比べ上昇することを見い出した。本発見はGPNMBがALSの新規治療標的として、さらにバイオマーカーとして有用である可能性を強く示唆する世界で初めての知見である。
従来技術・競合技術との比較
従来技術の問題点として、ALSに対する有効な治療薬がない点、確定診断法が確立されていない点が挙げられる。GPNMBを標的としたALS治療薬および診断薬の開発は実施されておらず、本発明がALS患者さんに与える臨床的価値は非常に高い。
新技術の特徴
・GPNMBの神経保護作用
・GPNMB受容体の存在可能性
・化合物スクリーニング系の構築による治療薬の探索
想定される用途
・ALS治療薬としての利用
・ALS診断および治療成績評価のための指標
・他の神経変性疾患への応用
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
17)トラス型創外固定器PinFix
名古屋大学 大学院医学系研究科 手の外科学 教授 平田 仁
名古屋大学 産学官連携推進本部 知財部 特任教授 宮田 令子
新技術の概要
部材の接点をピン接合とし、基本構造として三角形を組上げたトラス構造は、接点を剛接合するラーメン構造やコの字型構造の片梁持ち構造と比較してより軽量単純な構造で高い強度を実現できる。現在実用化されている骨接合材料は総て片梁持ち構造を基本としているが、PinFixは安価な鋼線固定をトラス構造体に変換する汎用背の高い樹脂性ボールジョイントである。
従来技術・競合技術との比較
トラス構造を基本とするPinFixは片持ち梁構造を基本とする従来の創外固定器と異なり部材、接合点のいずれの部分にも大きなモーメントが発生しない。この為より軽量で、汎用性の高い安価な部材で構成できる。
新技術の特徴
・射出成形により製造可能な、安価な樹脂素材で構成され、全身何処にでも適用できる
・装着に特殊な器具をいっさい必要とせず、導入コストが極めて安い
・片持ち梁構造を上回る固定力を実現できている
想定される用途
・新鮮骨折の治療
・矯正骨切り術後の固定
・関節仮固定術
関連情報
・サンプルの提供可能
・展示品有り(トラス型創外固定器PinFixを展示)
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
18)バイオイメージング技術に基づく診断法の開発
理化学研究所 基幹研究所 専任研究員 阿部 洋
理化学研究所 社会知創成事業連携推進部 知財創出・活用課 実用化コーディネーター 二宮 裕一
新技術の概要
細胞内のRNAを検出することによる遺伝子診断法と、細胞内グルタチオントランスフェラーゼを検出することによる癌診断法の基礎技術について紹介する。
従来技術・競合技術との比較
細胞内でRNAや酵素を直接検出できる技術はほとんど報告されていない。
新技術の特徴
・細胞内RNAの検出
・細胞内グルタチオントランスフェラーゼの検出
想定される用途
・癌診断
・細胞内遺伝子診断
・感染菌の同定
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
19)布製電極シートを用いた心電2種類と呼吸2種類の非接触・無拘束・同時計測技術
東京電機大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 教授 植野 彰規
東京電機大学 産官学交流センター 産学連携コーディネーター 中田 英夫
新技術の概要
本技術は、ベッド・布団用シーツの下に後付けで設置した布性電極シートを用いて、ベッド・布団に寝た人の胸部と腹部の呼吸運動(2種類)と心電(2種類)を、非接触かつ無拘束で同時計測する技術です。
従来技術・競合技術との比較
生体と衣類と電極の容量結合に基づき、心電と呼吸情報を非接触で計測している点が従来・競合技術と大きく異なります。また、3箇所の電極から両信号を2種類ずつ同時に計測できるようになっている点も大きな違いです。
新技術の特徴
・胸部と腹部の心電信号・呼吸運動を非接触かつ無拘束で同時に計測できる
・人は、市販の寝巻きを着たまま横になるだけでよい
・提案シートは、市販のシーツの下に敷くだけでよい
想定される用途
・睡眠時無呼吸の簡易スクリーニング装置
・遠隔スマートみまもり用のバイタルモニタ
・心疾患の簡易スクリーニング装置
関連情報
・サンプルの提供可能(NDA締結後に評価用装置の提供可能)
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
科学技術振興機構 産学連携展開部 JST推薦シーズ技術説明会 事務局
TEL:03-5214-8994FAX:03-5214-8999Mail:a-stepjst.go.jp
新技術説明会について
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
TEL:03-5214-7519
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