九州工業大学 新技術説明会
日時:2012年12月07日(金)
会場:JST東京別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- デバイス・装置
1)宇宙用太陽電池で発生するアーク放電の継続を抑制する技術の開発
九州工業大学 大学院工学研究院 電気電子工学研究系 准教授 豊田 和弘
新技術の概要
人工衛星に搭載されている太陽電池アレイ上で発生するアーク放電が持続すると、人工衛星が運用不能になる大事故になる場合がある。このアーク放電をコンデンサとコイルを用いた単純な回路で遮断する技術を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来は接着剤で放電が発生する可能性のある部分を埋める必要があった。これには多大な労力を要し、接着剤の重量もかさむ。また、更に高電圧になれば太陽電池アレイの全てを覆う必要が出てくるため難しくなる。新技術では高電圧にも対応できるため将来の需要が見込まれる。
新技術の特徴
・コンデンサ、コイルといった単純な素子でアーク放電を遮断
想定される用途
・アーク放電の遮断
関連情報
・外国出願特許あり
- デバイス・装置
2)弾性歪みを利用した新しい電子デバイスの設計指針
九州工業大学 大学院工学研究院 基礎科学研究系 教授 美藤 正樹
新技術の概要
磁化、電気分極、歪みテンソルには、それぞれ磁場、電場、応力という共役な外場が存在する。通常、磁化をリアルタイム制御したければ磁場を使う必要があるが、それを応力によって行い、これまでデバイス化が困難であった物質群をデバイスの候補にする。
従来技術・競合技術との比較
応力を利用した物性操作として、超伝導体の臨界電流密度やその伝導性を準静的なタイムスパンで操作するという技術報告は過去にあるが、本技術は短いタイムスパンでの機能性制御を可能にし、磁性体・半導体・超伝導体・誘電体という多分野に適用可能な技術要素である。
新技術の特徴
・物理的多体効果をリアルタイム制御し、デバイス化へとつなげる基盤技術
・磁場クリーン環境下での磁性体の物性操作・物性評価
・磁性体・半導体・超伝導体・誘電体という多分野に適用可能なデバイス化を図るための技術要素
想定される用途
・外部磁場フリーでの磁気測定システム
・外部磁場フリーでの磁気デバイスの動作機構
・歪みによるダイオードの整流作用制御技術
- デバイス・装置
3)ターボ分子ポンプに代替可能な、安価で高性能な真空排気ポンプ
九州工業大学 大学院工学研究院 先端機能システム工学研究系 教授 小森 望充
新技術の概要
本発明は、超電導磁気軸受を用いて軸受けに油を使わずにメンテナンスフリーでクリーンな真空を実現し、コールドトラップ効果を活用して、安く排気時間の短縮及び到達圧力の低下を促進できます。
従来技術・競合技術との比較
最近の半導体製造分野におけるターボ分子ポンプ(真空ポンプの一種)に対し、性能・機能・耐久性の要求が厳しくなってきていますが、結構高価な製品でもあります。本発明は、油拡散ポンプ程度の価格で、ターボ分子ポンプ以上の性能を発揮するものです。
新技術の特徴
・高価なターボ分子ポンプ以上の高性能化が実現できる。
・ターボ分子ポンプより安価な油拡散ポンプと同程度の価格で実現できる。
・停電しても、安定浮上したまま高速回転できる。
想定される用途
・高価なターボ分子ポンプ(真空排気装置)の代替
・油拡散ポンプの代替(同じ冷媒を用いるなら高性能な本発明の方が良い)
- デバイス・装置
4)SOI基板を用いたFe3Siデバイス作製に関する研究
九州工業大学 大学院工学研究院 基礎科学研究系 教授 中尾 基
新技術の概要
半導体スピントロニクスデバイスの実現には高スピン偏極率を有する材料開発及びデバイスの微細化が重要である。そこで、高スピン偏極率材料として期待されるハーフメタルFe 3 Siの極微細ドメイン形成技術を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来のハーフメタル開発ではハーフメタル性を失うA2、B2構造が混在していた。本技術では自己組織化したSOI基板上Siを利用することで完全なハーフメタル性を有するDO3構造のドメイン形成技術を開発した。
新技術の特徴
・Si技術への応用が容易
・サブミクロンオーダーの極微細加工技術
・室温における高いスピン分極率
想定される用途
・高集積CMOS回路
・MRAM等の磁気メモリーデバイス
関連情報
・サンプルの提供可能(要相談)
- 材料
5)次世代省エネ用シリコン・パワー半導体
九州工業大学 大学院工学研究院 電気電子工学研究系 教授 大村 一郎
新技術の概要
省エネに広く用いられているシリコン・パワー半導体の性能を、微細化技術等を駆使して飛躍的に向上させる技術を紹介する。量産性にすぐれたシリコン技術をベースに、構造や駆動方法による損失低減、微細化技術的用による量産効率の更なる改善について説明する。
従来技術・競合技術との比較
従来のシリコンパワー半導体と比較し、①損失を大幅に改善できる、あるいは②量産効率を改善できるなどのメリットがある。
新技術の特徴
・微細化プロセス適用により大幅に性能向上
・大口径ウエハ工程が使えるため、量産性と歩留が向上
・新しい構造と駆動方法により、超低損失化
想定される用途
・モータやエアコン
・風力発電等の半導体装置
・電気機器の電源
関連情報
・外国出願特許あり
- 電子
6)耐素子ばらつき・超低消費電力の新オンチップメモリ回路:レシオレスSRAM
九州工業大学 マイクロ化総合技術センター 教授 中村 和之
新技術の概要
最先端微細CMOSのSRAMに向けた新規メモリセルと、回路構成を提案。提案回路の特長は、完全なるレシオレスでスタティックな設計コンセプト。素子ばらつきの影響を全く受けず、かつ超低電圧下でも動作が保証される回路構成である。
従来技術・競合技術との比較
本技術によれば、従来のSRAM回路の設計で必要であったスタティックノイズマージン法等によるアナログ設計から解放される。これにより、素子ばらつきが大きいデバイスであっても、回路として問題なく動作する。
新技術の特徴
・トランジスタサイズに依存しない、レシオレスな回路動作
・超低電圧下でも動作可能な回路構成
・動作マージン確保の設計要素が排除され、デジタル設計者でもメモリ設計が可能
想定される用途
・超低消費電力メモリ
・超先端プロセスを用いたオンチップメモリ
・FPGA等のデジタル回路向けオンチップメモリ
関連情報
・サンプルの提供可能
- デバイス・装置
7)有機トランジスタのチャネル空乏化による高性能化
九州工業大学 大学院情報工学研究院 電子情報工学研究系 助教 永松 秀一
新技術の概要
本技術は環境により容易にドープされてしまう導電性高分子を半導体層に用いた有機電界効果トランジスタにおいて、そのチャネル領域を簡便に空乏化することで、そのトランジスタ性能を向上させる技術である。
従来技術・競合技術との比較
導電性高分子は、その合成過程において容易に不純物を取り込みやすいが、その精製は困難である。故に酸化準位の深い導電性高分子を新たに設計することで、そのトランジスタ性能の向上を図ってきた。本技術は従来から報告されている容易に酸化される既知の導電性高分子を用いたトランジスタの性能向上を図る技術である。
新技術の特徴
・有機トランジスタ性能の向上
・有機トランジスタ性能の再現性向上
想定される用途
・フレキシブルディスプレイのバックプレーン
・フレキシブルRFIDTag
・フレキシブル回路
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
8)脈波や心電信号など、生体信号の高圧縮化技術
九州工業大学 産学連携推進センター 若松分室 教授 佐藤 寧
新技術の概要
電子機器へ組み込み可能な、生体信号のロスレス圧縮や非可逆圧縮技術で、生体情報を最大約1/50の大までに圧縮できます。この圧縮技術を利用して、医療電子データ保存、電子カルテや遠隔医療への応用が期待できます。
従来技術・競合技術との比較
従来技術はウェーブレット変換や出現頻度による方式が主流で、圧縮率は最大で1/7程度ですが、本アルゴリズムは、非可逆では最大1/50、ロスレスでは1/5程度の高圧縮が可能です。
新技術の特徴
・ロスレス圧縮が可能で圧縮率は1/5を実現。(他方式は1/3)
・非可逆(Lossy)圧縮では1/50まで圧縮が可能。
・組み込み機器やソフトへの搭載が容易。
想定される用途
・電子カルテのデータ保存、ホルター心電計の記録
・遠隔医療等での生体情報データ通信,携帯電話による健康管理
・大量の生体信号の保存,バックアップ
関連情報
・サンプルの提供可能
- 計測
9)折り曲げ可能タッチパネルと簡単設置侵入検知センサ
九州工業大学 大学院工学研究院 電気電子工学研究系 教授 芹川 聖一
新技術の概要
任意の形状に折り曲げ可能で、剪断可能なタッチパネルを紹介する。このため、今まで使用できなかった任意の場所に設置できる。もうひとつは、光軸合わせが不要で、任意の場所に簡単に設置できる侵入者検知センサを紹介する。
従来技術・競合技術との比較
従来のタッチパネルは、フラット形状で、サイズ変更不可。本発明は、任意形状に折り曲げ可能、剪断可能。従来の侵入者検知センサは、光軸合わせが必要で、設置工事を必要とする。本発明は、光軸合わせが不要で、工事不要。
新技術の特徴
・好きな形に変形でき、好きな形状にカットできるタッチパネル
・あらゆる場所に貼り付けることができるタッチパネル
・光軸合わせを必要とせず、置くだけの調整不要侵入者検知センサ
想定される用途
・非健常者の新たしい補助入力装置(寝具、枕、体の一部に貼り付けたタッチスイッチ)
・壁、テーブル、体の一部、車のハンドルなど任意の場所を入力デバイスとした電気機器
・設置と取り外しが簡単なため低コストで実現可能な玄関先・店舗入口・文化財等の監視システム
- デバイス・装置
10)近赤外センサの高感度化と色フィルタ無しでのカラー撮像
九州工業大学 マイクロ化総合技術センター 助教 有吉 哲也
新技術の概要
シリコン基板の側面から近赤外光を入射させる。PN接合は光の入射方向に沿って形成され、その長さは近赤外光の侵入長程度にする。また、このPN接合を4つに分割することで、4色(青、緑、赤、近赤外)撮影ができる。
従来技術・競合技術との比較
センサの裏面から近赤外光を照射する方法があるが、感度は従来よりも数倍改善する程度である。また、カラー撮影する方法としてカラーフィルタを用いるBayer法があるが、偽色やモアレが発生してしまう。
新技術の特徴
・通常のシリコンCMOSプロセスを利用した安価なデバイスおよびシンプルな画素構造
・撮像系の小型化と大幅な省エネ効果
・近赤外光の高感度化(10倍以上)
想定される用途
・近赤外光を用いた暗視カメラ
・偽色やモアレを無くしたカラー撮影
・高速撮影が求められる分野
- 計測
11)化学センサー情報をニューロン素子を活用して符号化する方法
九州工業大学 大学院生命体工学研究科 脳情報専攻 准教授 立野 勝巳
新技術の概要
特性が均一でない化学センサーアレイを用いて、センサー情報の質と量を分類するためにニューラルネットワークを用いる。ニューラルネットワークに必要であったワイヤリングを減らす工夫もある。
従来技術・競合技術との比較
先行発表していたアルコールガスセンサーアレイは、濃度のみを検出可能であったが、質の違いも分類して表現できるようになった。これまでに発表されているニューロモーフィック回路を利用した情報処理に利用できる。
新技術の特徴
・センサーは化学センサーに限らない。
・センサーアレイに含まれる個々センサーの精度はばらついていてもよい。
想定される用途
・入力手段の特性が均一でないシステム
・ニューロモーフィック回路(神経形態回路)の応用例として活用
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