JST発 新技術説明会(2)
日時:2014年03月07日(金)
会場:JST東京別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
- フライアッシュ(石炭灰)とセメントを配合した造粒物による閉鎖性水域の底質改善材(硫化水素除去材)
- 沖縄産月桃フローラルウォーター(Essential Oil Water Extract)の機能性と衝撃波処理効果
- キチン・キトサンナノファイバーにより抗菌性を付与した農業資材の開発
- 家畜繁殖において人工授精(AI)の成功率を上げる"精液のその場処理技術"~元気な精子の捕集と性分離の両立
- 革新的特性をもつ次世代燃料電池(高分子電解質膜形)の開発
- 水を燃料とする光燃料電池
- バインダ配合制御による導電性ペーストの新規材料設計
- 高次機能シェル層を有するコアシェル微粒子の作製
- 耐アルカリ性に優れる可視光応答型酸化タングステン光触媒
- フルスペクトル対応!夜でも働く高感度な蓄光型光触媒の開発
- 安価な汎用基板上での機能性酸化物結晶薄膜の自在な配向制御技術
- 分相性ナノポーラスガラスの室温・大気雰囲気下インプリント技術
- ドライプロセスによる新しい微粒子表面修飾法とその応用
- 還元糖(キシロース、グルコースなど)を用いた抗菌活性を有する繊維材料の開発
- バイオマスを原料としたスーパーエンプラの調製
- ヘキサンに可溶なポリチオフェン誘導体
- クロスカップリング用高活性ボロン酸誘導体『有機トリオールボレート塩』
発表内容詳細
- 材料
1)フライアッシュ(石炭灰)とセメントを配合した造粒物による閉鎖性水域の底質改善材(硫化水素除去材)
神戸大学 内海域環境教育研究センター 海事科学部 海洋安全システム科学科 助教 浅岡 聡
神戸大学 連携創造本部 客員教授 河口 範夫
新技術の概要
閉鎖性水域の底泥からは、しばしば有毒な硫化水素が発生し、漁業被害や青潮、悪臭などをもたらしている。閉鎖性水域の環境を保全するためには底泥中の硫化水素の低減が有効である。石炭火力発電所からの副産物であるフライアッシュとセメントを混合し、造粒した石炭灰造粒物によって硫化水素を酸化し除去できることがわかった。現場試験では5年以上にわたって硫化物イオンの抑制効果が持続することが確認された。
従来技術・競合技術との比較
一般的な底質改善技術である覆砂は2?3年で効果が低下するとの報告もある。本法では現場にて5年以上にわたって硫化物イオンの抑制効果が持続することが確認された。従来法よりも本法は硫化物イオンの低減効果の持続性が長い。
新技術の特徴
・多孔質・軽量・強度もあり人工干潟造成材、コンクリート骨材としても応用可能
・閉鎖性水域の底泥からのリン溶出抑制(リン酸カルシウム生成なので好気・嫌気環境でも性能を発揮する)
・国内で年間800万トン以上発生する電力事業由来の石炭灰の新たな有効利用法
想定される用途
・閉鎖性水域や湖沼・ダム湖・鑑賞池などの人工池の底質改善
・地熱発電所や温泉からの硫化水素発生の低減
・下水道などからの硫化水素発生の低減
関連情報
・展示品あり(石炭灰造粒物)
- アグリ・バイオ
2)沖縄産月桃フローラルウォーター(Essential Oil Water Extract)の機能性と衝撃波処理効果
沖縄工業高等専門学校 生物資源工学科 助教 嶽本 あゆみ
琉球大学 地域共同研究センター 准教授 玉城 理
新技術の概要
衝撃波は高速剥離現象により植物の細胞や組織を破壊し、物質の通路を形成することで植物からの高効率抽出を可能とする。沖縄に自生する月桃は特有の芳香成分が珍重され、伝統的菓子や茶に用いられ、近年では化粧品などに用いられる。本研究では月桃の水蒸気蒸留により得られたフローラルウォーター(Essential Oil Water Extract:水蒸気蒸留から得られた蒸留水に、水溶性成分が溶解したもの)について、衝撃波処理による抗酸化活性や含有成分の増加を調査した。
従来技術・競合技術との比較
衝撃波がもたらすスポーリング破壊は、植物細胞の部分的破壊によって従来技術と比べて抽出効率の大幅な向上が期待される。衝撃波処理は非加熱であり、細胞破壊により高効率で有用成分を得ることができる。
新技術の特徴
・含有量が微量の香気成分や機能性の高効率抽出
・非加熱前処理による揮発性香気成分の高品質抽出
想定される用途
・化粧品
・食品(香り付け素材)
・機能性アロマ
関連情報
・展示品あり(月桃フローラルウォーター)
- アグリ・バイオ
3)キチン・キトサンナノファイバーにより抗菌性を付与した農業資材の開発
鳥取大学 大学院工学研究科 プロジェクト研究員 江草 真由美
産学・地域連携推進機構、知的財産管理運用部門 副部長・助教 山岸 大輔
新技術の概要
キチン・キトサンは一般の溶媒に不融、不溶であるため成型加工において課題が多い。本研究では、キチン・キトサンをナノレベルの繊維に調製し、高強度、高弾性、高耐熱性などの物性および成形性に優れている新規素材「キチン・キトサンナノファイバー」を開発している。シート状に成形したキチン・キトサンナノファイバーによる、種々の植物病原糸状菌に対する胞子発芽抑制活性を明らかにしており、病害防除における農業資材への利用が期待できる。
従来技術・競合技術との比較
キチンは膨大なバイオマスであるため安定的に供給できる。キチン・キトサンは、既にヒトおよび環境に対する安全性が保証されている。ナノファイバー化により、ポリマー形状での水分散性に優れ、成形加工における問題を克服できる。
新技術の特徴
・水中で均一に分散するため材料としての操作性が向上している
・物性が優れるため、素材を強化する補強繊維として利用できる
・生体適合性、分解性、抗菌性がある
想定される用途
・果実袋、マルチ
・シード―ペーパー、育苗マット
・包装フィルム、梱包資材
関連情報
・サンプルの提供可能
・展示品あり(キチン・キトサン分散液、キチン・キトサンナノファイバーフィルム)
- アグリ・バイオ
4)家畜繁殖において人工授精(AI)の成功率を上げる"精液のその場処理技術"~元気な精子の捕集と性分離の両立
産業技術総合研究所 生産計測技術研究センター 主任研究員 山下 健一
産業技術総合研究所 九州センター 福岡サイト イノベーションコーディネータ 犬養 吉成
新技術の概要
精子や卵子、受精卵などについて、質の良いものを選別することは、不妊治療や動物繁殖の成否に直結する。加えて、所望の性別の個体を得るための技術開発は、畜産における生産性向上に必須である。このような問題の解決のため、精子が自力で運動することに着目した"マイクロ流体による選別手法"の研究を行い、牛を対象として、人工授精(AI)にも使える処理量で、高い運動能力の精子を回収する技術を確立した。さらに、運動能力別に精子を捕集できる本技術に、性特異的な生化学的性質を融合することで、性比に偏りのある精液の調製技術とした。
従来技術・競合技術との比較
精子の運動の理解と適切な流路設計によって、従来法の百万倍の処理効率を実現し、そのまま人工授精(AI) に用いることができる濃度と量と処理時間を実現した。さらに生化学分野の知見を融合し、精子を傷つけない性選別手法とした。
新技術の特徴
・その場で使えるコンパクトな装置・器具、元気な精子を従来法の百万倍の効率で捕集
・元気な精子を集めるだけでなく、性比を偏らせた精液調製技術
・外国の特許に左右されず、任意の種牛の精液を処理できる性選別技術
想定される用途
・牛などの畜産現場での受胎率向上を通した生産性と計画性の向上
・不妊治療における、人工授精(AI)や体外受精(IVF)の精液前処理の簡略化
・自発運動する細胞の分離や、ダメージの少ないセルソータなどの、新しい分離技術
関連情報
・展示品あり(流れだけで精子を誘導している様子を撮影した動画をタブレット端末等でお見せできます)
・外国出願特許あり
- エネルギー
5)革新的特性をもつ次世代燃料電池(高分子電解質膜形)の開発
九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 教授 中嶋 直敏
新技術の概要
燃料電池はクリーンでエネルギー効率が高く、かつコンパクトであることから、車や家庭用電源への本格的導入を目指し多くの研究開発が行われている。我々は、加湿なしで 100℃以上でも発電できる高温型高分子電解質膜燃料電池開発を行なってきた。今回、電極触媒としてカーボンナノチューブ/ポリベンズイミダゾール/Ptをさらにポリビニルホスホン酸でコートした新しい触媒を開発した。この触媒を用いた燃料電池は、耐久性が大幅に向上し、40万回の耐久試験に耐える超高耐久性燃料電池として作動することがわかった。
従来技術・競合技術との比較
i) 加湿なしで作動するため加湿装置が不要ii) 100℃以上の高温で作動するために燃料水素ガス中の不純物である一酸化炭素によるPt被毒がない。iii) 従来型触媒に比べて、圧倒的にPtの劣化が少なく、超寿命である。
新技術の特徴
・触媒分野
・CO2還元
・C1化学
想定される用途
・次世代のエネファーム用燃料電池
・次世代の燃料電池車への搭載
・災害時等の補助電源としての燃料電池
関連情報
・外国出願特許あり
- エネルギー
6)水を燃料とする光燃料電池
千葉大学 大学院理学研究科 基盤理学専攻 化学コース 准教授 泉 康雄
千葉県産業振興センター 新事業支援部 産学連携推進室 研究開発コーディネーター 横山 直也
新技術の概要
水を光酸化し、セル内で再び水へと光還元することで光触媒のバンドギャップ相当の起電力(3V)を得る光燃料電池を実現した。ありふれた元素より成る光触媒を組み合わせ、水と光のみから発電できる長所をもつ。二酸化炭素を発生することなく、また原理上、単セルで3Vの大起電力を得られる点も特徴である。水と酸素をセル内で完全に循環させることで、場所に制約されることなく自然光からコンスタントに電力を得る新デバイスとなる。
従来技術・競合技術との比較
シリコン太陽電池や色素増感太陽電池と同様に、光エネルギーを電力に変換するが、単セルで3V得られる点で差別化される。さらに、ありふれた元素より成る光触媒を組み合わせて用いるため、より安価である。水素やアルコールを要する燃料電池と比較すると、水を燃料とする点で差別化される。
新技術の特徴
・環境モニタリング機器、監視カメラ、警備システム用機器の電源
・汚れやカビが付きにくい外壁表面加工と間接照明を兼ねた、エコ住宅・商業施設、高速道の外壁やトンネル
・自動車内での補助電源
想定される用途
・野外使用機器電源
・携帯機器電源
・緊急時や災害時のバックアップ電源
関連情報
・展示品あり(光燃料電池の動作)
- エネルギー
7)バインダ配合制御による導電性ペーストの新規材料設計
群馬大学 先端科学研究指導者育成ユニット 先端工学研究チーム 講師 井上 雅博
群馬大学 産学連携・共同研究イノベーションセンター 群馬大学TLO 知的財産コーディネータ 佐藤 和浩
新技術の概要
金属ナノ粒子などの特殊なフィラーを用いることなく、有機高分子バインダの配合組成の工夫だけで高性能導電性ペーストを実現する。例えば、汎用の銀フレークを使った導電性接着剤において、150~200℃の温度範囲でのキュアプロセス中にバインダ樹脂が存在する状態でフィラーの低温焼結を導き、バルク銀の数倍程度の電気抵抗率を得ることができる。可撓性や伸縮性などの機械的機能付与と両立させることにより高性能導電性ペーストを実現することができる。
従来技術・競合技術との比較
従来の導電性ペーストの材料設計は特殊形状フィラーをできる限り高充填するという導電フィラーを中心に考える設計思想に基づいて行われてきた。本技術では、有機高分子バインダの配合を工夫するだけで、特殊なフィラーを用いることなく、高性能導電性ペーストを実現できる。
新技術の特徴
・バインダ樹脂の工夫により、従来の基板材料だけでなく、布などの幅広い基材への電子回路形成が可能である
・バインダ樹脂の工夫により電子回路に可撓性や伸縮性を付与することができ、フレキシブルデバイス実装に使用することができる
・優れた電気伝導特性を維持しながら、超撥水性や疲労劣化からの回復性など、従来のペーストにはない特性を付与することができる
想定される用途
・回路印刷用導電性ペースト
・放熱用層間充填材
・基板用導電性ペースト
- 製造技術
8)高次機能シェル層を有するコアシェル微粒子の作製
熊本大学 大学院自然科学研究科 複合新領域科学専攻 教授 伊原 博隆
熊本大学 イノベーション推進機構 准教授 緒方 智成
新技術の概要
本技術は、高分子微粒子をコアとし、その周囲のシェル層に様々な機能性素材が固定化できるコアシェル微粒子の作製技術である。モノマー重合時にシェル層素材を添加し、界面および反応環境を制御する事により一段の反応でコアシェル粒子を作製できる。従来法に比べてシェル層の脱着が少なく、かつシェル層の厚み制御や複合素材化も可能であるため、原材料を選択することにより、多彩な機能設計が可能となる。
従来技術・競合技術との比較
複合化過程において、従来必要であった界面活性剤や表面処理などを必要とせず、クリーンかつ容易にコア粒子にシェル層を固定でき、様々なコアおよびシェル素材に応用可能である。
新技術の特徴
・高分子微粒子コアの表層にシェル成分となる無機粒子を一段の反応で均質に固定するコアシェル粒子の製造技術
・高分子微粒子に無機研磨粒子を強く固定したコアシェル型研磨材
・高い光散乱性と分散性を兼ね備えたコアシェル型光散乱材
想定される用途
・研磨材
・光散乱剤
・フィラー
関連情報
・サンプルの提供可能(ご相談に応じます)
・展示品あり
- 材料
9)耐アルカリ性に優れる可視光応答型酸化タングステン光触媒
産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門 太陽光エネルギー変換グループ 主任研究員 小西 由也
産業技術総合研究所 産学官連携推進部 産業技術指導員 小林 悟
新技術の概要
酸化タングステンは助触媒により可視光で環境汚染物質を効果的に分解でき、暗所でも機能する光触媒作用でない抗菌作用もある。それで抗菌性のある環境浄化用の可視光応答型光触媒として有望であるが、アルカリ性で溶解するため実用化には耐アルカリ性の向上が課題であった。ビスマス等の添加により光触媒活性を向上させるか保持したまま耐アルカリ性の向上に成功し、アルカリ性の洗剤等にさらされる環境での実用化が可能となった。; 酸化チタン光触媒は紫外光がなければ作用しないのに対して、酸化タングステンは可視光による光触媒活性を示すため紫外光の期待できない室内等において可視光により光触媒材料として使用できる。また酸化チタンを可視光応答化するよりも可視光を有効利用でき、環境汚染物質の分解除去に優れる。
従来技術・競合技術との比較
酸化チタン光触媒は紫外光がなければ作用しないのに対して、酸化タングステンは可視光による光触媒活性を示すため紫外光の期待できない室内等において可視光により光触媒材料として使用できる。また酸化チタンを可視光応答化するよりも可視光を有効利用でき、環境汚染物質の分解除去に優れる。; ・銅化合物やパラジウムなどの助触媒を添加することで様々な有機物を可視光照射により二酸化炭素にまで完全分解可能
新技術の特徴
・銅化合物やパラジウムなどの助触媒を添加することで様々な有機物を可視光照射により二酸化炭素にまで完全分解可能
・ビスマスを添加した状態で抗菌性・抗かび性を発現(JIS R 1702による抗菌活性値2.0及びJIS R 1705による抗かび活性値1.7を達成)
・ビスマスを添加した状態で超親水性を発現(オレイン酸を塗布しても可視光照射で水接触角5°以下を達成)
想定される用途
・室内用のセルフクリーニング材料(内装建材)
・室内用の抗菌・抗かび材料(内装建材)
・環境汚染物質除去および消臭用の光触媒
関連情報
・展示品あり(酸化タングステン薄膜を表面に製膜したタイル(これから作製のため完成した場合のみ)
・外国出願特許あり
- 材料
10)フルスペクトル対応!夜でも働く高感度な蓄光型光触媒の開発
東北大学 多元物質科学研究所 准教授 殷 しゅう
東北大学 産学連携推進本部 事業推進部 部員 岩渕 正太郎
新技術の概要
微弱可視光で作動できる高感度光触媒を創製すると共に、紫外線だけではなく、可視光及び太陽光の50%を占める赤外光でも励起・作動できるフルスペクトルコンポジット型光触媒材料の創製を行うと共に、昼間だけではなく、消灯後も触媒作用が続くフルタイム稼働型光触媒システムの構築を行い、微弱可視光・赤外光等の長波長光の利用、光の散乱・反射を複数回に渡って利用することによる光触媒の高性能化・利用拡大を目指す。
従来技術・競合技術との比較
これまでの光触媒は紫外線及び可視光の一部しか利用できず、本技術で創製したものは、長波長可視光・弱い可視光・赤外光を利用できる光触媒として、従来型の光触媒に比べ、室内光及び太陽光の利用効率を高めることができ、触媒性能の高性能化が特徴である。
新技術の特徴
・リン酸銀ナノ粒子やカーボンドープ酸化チタンナノ粒子を用いた微弱可視光で作動可能な高感度フルスペクトル光触媒
・長残光蛍光体粒子或はアップコンバージョン蛍光材料に微弱可視光触媒ナノ粒子を均一分散したコンポジット型多機能光触媒
・環境にやさしい制御されたコア/シェル構造ナノコンポジット創成プロセス
想定される用途
・環境浄化(空気浄化、VOC除去)
・太陽電池、蛍光材料、発光デバイス
・多機能性光触媒
- 材料
11)安価な汎用基板上での機能性酸化物結晶薄膜の自在な配向制御技術
物質・材料研究機構 国内ナノアーキテクトニクス研究拠点 ソフト化学ユニット NIMSフェロー 佐々木 高義
新技術の概要
層状化合物を層1枚にまでバラバラに剥離して得られるナノシートを、溶液プロセスを介してガラスやプラスチック等の安価な汎用基板上に隙間なく堆積させ、これをシードとしてその上に構造が類似する結晶薄膜を成長させる新技術である。バラエティーに富むナノシートが多数合成されており、目的の結晶、配向方向に合わせて適切なナノシートを選択することで、ペロブスカイト型酸化物をはじめとした機能性結晶薄膜の自在な配向成長制御、デザインを行うことができる。
従来技術・競合技術との比較
高価な単結晶基板を必要とせず、ガラスなどの基板上に高品位酸化物結晶薄膜を結晶配向方向を自在に制御して成長させることができる。またナノシートの結合様式を反映して、5%以上の大きな構造ミスマッチが存在しても配向成長が可能となる。
新技術の特徴
・高価な大型装置を必要とせず、室温溶液プロセスにより各種基板上にシード層を形成可能
・ガラス、プラスチック等の安価な基板の表面をナノシートで被覆することで、単結晶基板に匹敵するシード層基板として利用可能
・結晶薄膜成長にはPLD法、スパッター法、ゾル・ゲル法など様々な製膜法を適用可能
想定される用途
・強誘電体酸化物結晶薄膜の成長とMEMS、センサー応用
・誘電体酸化物薄膜の成長と誘電デバイス化
・透明導電性酸化物薄膜の成長とタッチパネル、ディスプレイ用途への応用
関連情報
・展示品あり(ナノシートゾル)
・外国出願特許あり
- 材料
12)分相性ナノポーラスガラスの室温・大気雰囲気下インプリント技術
神戸大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 准教授 今北 健二
神戸大学 連携創造本部 知的財産マネージャー 鈴木 茂夫
新技術の概要
室温ナノインプリント用のナノポーラスガラスの開発を行った。ポロシティを高くすることにより、ガラスの硬度を樹脂並に下げることに成功し、室温、大気下のインプリントでサブマイクロメートルオーダーの構造が転写可能であることを確認した。ポーラス構造による光の散乱はなく、透過率は可視域で90%を超えている。フレネルレンズや、モスアイ型反射防止膜等のサブ波長光学素子等を作製できる。分相ガラスを用いて一般的な溶融法で作製することができるため量産性にも優れている。
従来技術・競合技術との比較
従来、インプリントは樹脂を対象として開発が行われてきた。本研究ではナノポーラス構造を有する無機材料を用いる。無機材料の優れた光学特性、化学的耐久性、耐熱性等が求められる分野への応用や、あるいは、ポーラス構造の特徴である比表面積が大きいことを生かしたバイオセンサー等への応用が期待される。
新技術の特徴
・フォトリソグラフィ技術よりも低コスト・高スループットな微細形状加工技術
・室温・大気雰囲気下での大面積インプリント技術
・100nmオーダーの構造体を10nmオーダー精度で実現するインプリント技術
想定される用途
・表面プラズモンラマン増強を用いたバイオセンサー
・マイクロレンズアレイを形成した太陽電池基板
・デジタルカメラ用レンズ(フレネルレンズによる薄型化とモスアイ構造による反射防止)
関連情報
・展示品あり(ナノインプリント技術で加工した光学部品サンプルなど)
- 材料
13)ドライプロセスによる新しい微粒子表面修飾法とその応用
富山大学 水素同位体科学研究センター 教授 阿部 孝之
富山大学 地域連携推進機構 産学連携部門 産学官連携コーディネータ 永井 嘉隆
新技術の概要
「多角バレルスパッタリング法」は、機能性微粒子材料をデザインできる新しい微粒子表面修飾法である、本法では、微粒子表面を種々の材料(金属・合金・金属酸化物等)の薄膜やナノ粒子で均一に修飾することで、新しい機能や高性能な機能を有する微粒子を調製可能である。その応用例として最近ではCO 2 排出量の削減と化石燃料の創成を両立する「CO 2 メタン化反応」の反応温度を従来法より200℃低下させる触媒を開発した。
従来技術・競合技術との比較
めっきや含浸法のような従来の方法(ウェット法)と異なり、ドライ法である多角バレルスパッタリング法は廃液処理の問題がなく、前駆体の使用や加熱工程が不要であることから担持粒子の微細化や合金組成の均一化が容易である。
新技術の特徴
・ナノ粒子
・ナノ薄膜
・量子サイズ効果
想定される用途
・各種触媒(工業用触媒・電極触媒・光反応触媒等)
・電導性微粒子等の電子・電気材料
・その他の機能性微粒子材料
関連情報
・1サンプル程度なら試作可能
・展示品あり(表面修飾した微粒子サンプル)
- アグリ・バイオ
14)還元糖(キシロース、グルコースなど)を用いた抗菌活性を有する繊維材料の開発
大阪市立工業研究所 生物・生活材料研究部 研究主任 大江 猛
大阪市立工業研究所 企画部 コーディネーター 高田 耕平
新技術の概要
食品中に存在する天然色素であるメラノイジン色素が抗菌性を示すことが知られており、本研究では、還元糖を用いて繊維上にメラノイジン色素を人工的に生成させ、繊維自身に抗菌性を付与できることを明らかにした。大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する抗菌力を調べたところ、初期菌数の約1,000分の1以下まで減少しており、抗菌剤の中でも極めて抗菌性の高い抗菌剤(殺菌効果あり)に分類されることが明らかとなった。
従来技術・競合技術との比較
抗菌性の高い化学薬品では皮膚刺激性が高く、逆に、キトサンなどの天然の抗菌剤では抗菌性が低い。本研究で開発した加工技術は、高い抗菌性を示すだけでなく、抗菌剤の原料である還元糖は食品であることから、従来の問題点を解決できる新技術となる。
新技術の特徴
・糖質を原料にするため安価で安全性が高い
・アミノ基を持つ材料であれば材料の形状に問わず利用可能(繊維、フィルム、プラスチック材料に利用可)
・MRSAなどの薬物耐性菌に対しても高い抗菌性
想定される用途
・衣料品などの繊維製品
・マスクなどの医療用ディスポーザル商品
・自動車などの内装材
関連情報
・展示品あり(抗菌加工した材料(布、プラスチック、皮革など))
- 材料
15)バイオマスを原料としたスーパーエンプラの調製
岡山大学 大学院環境生命科学研究科 環境科学専攻 教授 木村 邦生
岡山大学 研究推進産学官連携機構 産学官連携本部 産学官連携コーディネーター 齋藤 晃一
新技術の概要
持続的資源循環型社会の構築を目指し、スーパーエンプラの石油依存度を低減させることを目的として、バイオマス由来であるフランジカルボン酸を原料とした芳香族ポリエステルや芳香族ポリエーテルケトンを調製した。芳香族ポリエステルは現有インフラの転用が可能である。また、芳香族ポリエーテルケトンは、イオン液体中での重合技術により高分子量体が得られるようになった。
従来技術・競合技術との比較
フランジカルボン酸からポリアミドやポリウレタンなど多くのプラスチックは合成されているが、スーパーエンプラを代替できる耐熱性や耐化学安定性などの高性能を有するプラスチックは調製されておらず、今回紹介するスーパーエンプラ類が初めてである。
新技術の特徴
・食品系廃棄物から調製できるフランジカルボン酸を用いてプラスチックを創り出す
・イオン液体を合成媒体とすることで芳香族ポリエーテルケトンが合成できる
・芳香族ポリエーテルケトンは耐放射線性材料としても期待できる
想定される用途
・自動車関連の高性能エンプラ代替
・電気・電子材料
・情報・通信材料
- 材料
16)ヘキサンに可溶なポリチオフェン誘導体
神戸大学 大学院工学研究科 応用化学 教授 森 敦紀
神戸大学 連携創造本部 産学連携コーディネーター 浅田 正博
新技術の概要
ポリチオフェンの側鎖置換基にシロキサン結合を導入することにより、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒に可溶なポリマーを合成する方法を確立した。シロキサン結合とチオフェン環上に臭素原子をもつ化合物(モノマー)合成に成功したことでhead-to-tail型に頭尾構造を制御された含シロキサン結合型のポリチオフェン合成が可能となった。
従来技術・競合技術との比較
従来のアルキル基が置換したポリチオフェンは種々の電子材料として高機能を発現するものの、溶解可能な有機溶媒はクロロホルムなどに限定される。本技術により得られるポリチオフェンはヘキサンなどの炭化水素に溶解することを可能としたもので、材料の成型加工性を飛躍的に向上させると期待される。
新技術の特徴
・積層型デバイス(クロロホルム等のハロゲン系溶剤で成膜した基板上層にヘキサン溶液とした含シロキサンポリチオフェン層を構成可能)
・合成法をチオフェンからポリフェニレン、ポリフェニレンビニレンなどのヘキサン可溶誘導体合成も可能
・シロキサン部位の有機基として機能性官能基を導入(撥水性、UV吸収性などの機能)
想定される用途
・有機薄膜太陽電池
・導電性材料
・高分子有機半導体
関連情報
・サンプルの提供可能
- 材料
17)クロスカップリング用高活性ボロン酸誘導体『有機トリオールボレート塩』
北海道大学 大学院工学研究院 フロンティア化学教育研究センター 特任准教授 山本 靖典
北海道大学 産学連携本部 産学連携マネージャー 須佐 太樹
新技術の概要
脱水三量化せず、塩基による活性化を必要としない安定かつ触媒反応に高活性な新規ホウ素反応剤としてトリオールボレート塩を開発した。これにより従来、加水分解により鈴木-宮浦カップリング反応に使用できなかった2-ピリジンボロン酸誘導体が利用できるようになった。銅触媒N-アリール化やロジウム不斉付加反応にも利用できる。
従来技術・競合技術との比較
開発したトリオールボレート塩は、パラジウム触媒クロスカップリング、銅触媒N-アリール化、ロジウム触媒不斉付加反応においてボロン酸、ボロン酸ピナコールエステル、トリフルオロボレート塩に比べて高収率で目的化合物を与える。
新技術の特徴
・クロスカップリング反応用高活性ボロン酸誘導体
・有機合成用高活性ボロン酸誘導体
・安定有機ボレート塩
想定される用途
・医・農薬品候補品合成用途
・キラル医薬品合成用途
・有機エレクトロニクス材料候補品合成用途
関連情報
・サンプルの提供可能
・外国出願特許あり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
科学技術振興機構 産学連携展開部 研究支援担当 事業調整グループ
TEL:03-5214-8994FAX:03-5214-8999Mail:a-stepjst.go.jp
新技術説明会について
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
TEL:03-5214-7519
Mail:scettjst.go.jp