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JST発 新技術説明会(3)

日時:2014年03月11日(火)

会場:JST東京別館ホール(東京・市ヶ谷)

参加費:無料

発表内容一覧

発表内容詳細

  • 医療・福祉

1)外耳の動きを入力情報とする常時装用型ヘルスケア装置

広島市立大学 大学院情報科学研究科 システム工学専攻 講師 谷口 和弘
広島市立大学 社会連携センター 連携推進室長 社会連携コーディネータ 野村 啓治

新技術の概要

本技術は、表情の変化による外耳(耳の中)の動きを光学式距離センサで計測することで手を用いることなく(ハンズフリーで)PCや家電製品などの電子機器を操作したり咀嚼の計測をしたりできる装置(愛称:みみスイッチ)に関するものである。例えば、咀嚼の計測結果から食事の間隔や食事にかけた時間などが推定でき、その推定結果を食事の管理に役立てることで、糖尿病やメタボリック症候群などの生活習慣病の予防に活用できる。

従来技術・競合技術との比較

従来技術・競合技術(カメラで顔を撮影し画像処理する方法)に比べ、必要なハードウェアのスペックが低くても良いため低コストで実現可能である。また従来技術・競合技術に比べ、利用者のプライバシーを守りつつ表情の計測が可能である。

新技術の特徴

・使用者のプライバシーを侵害せず食事の管理ができる(厚生労働相の進めている健康づくり対策の推進に役立つ)
・常時外耳に装用してハンズフリーでいつでも・どこでも使用できる
・文化の差異や障がいの有無に関係なく誰でも使用できる(共用品)

想定される用途

・健康支援機器:糖尿病予防、メタボリック症候群対策、そしてダイエット支援に役立つ
・障がい者用生活支援機器:ハンズフリーで機器を操作する装置などに活用できる
・身に着けるコンピュータ(ウェアラブルコンピュータ)用入力装置:米調査会社ABIリサーチは2018年の出荷を4億8500万台と予測

関連情報

・外国出願特許あり

  • 医療・福祉

2)MRエラストグラフィによる生体組織弾性率計測と新しいMRエラストグラフィ機器の開発

首都大学東京 大学院人間健康科学研究科 放射線科学域 准教授 沼野 智一
首都大学東京 産学公連携センター コーディネート担当係長 中西 俊彦

新技術の概要

本研究はMR Elastography(核磁気共鳴画像法を用いた組織弾性イメージング:MRE)で使用する新しい加振器として、ボールバイブレータ型のものを試作し、その効果を検証した。本研究の基礎理論等は国際特許(JST特許出願制度)に申請済である。新しい加振器は圧縮空気によるボールバイブレータ振動を利用する。本手法は撮影対象の直接加振が可能で、振動エネルギーのロスが低減することから、データの確度の向上が期待できる。これにより、従来型装置を使用した場合のMRE画像分解能よりも高分解能化が可能となる。またその成果は、GE、SIEMENS、PHILIPS等が製造するMRI 装置への導入も期待できる。

従来技術・競合技術との比較

従来の加振方式(音圧式)は低い振動周波数(50Hz程度) では十分な変位量を得られるものの、加振周波数の上昇と共に変位量が急激に減少する。MREにおいて、振動周波数が高くなると画像分解能が向上するため、現状の音圧装置によるMREの画像分解能は決して高くない。一方、本手法は加振周波数が上昇しても変位量が減少しない特徴を有し、MRE画像分解能の向上が期待できる。

新技術の特徴

・食品の軟らかさ(歯ごたえ)の定量的・非破壊的な計測
・圧縮試験機等の計測器で(軟らかすぎで)測れなかった材料等の定量的な計測

想定される用途

・画像診断技術
・触診の代用(定量性を持った触診)
・ゲル状物質の弾性率計測

関連情報

・展示品あり(講演後、試作した装置を希望者にお見せする)
・外国出願特許あり

  • 医療・福祉

3)尿を用いた膀胱癌の簡便なスクリーニング法の開発

東京大学 医科学研究所 腫瘍細胞社会学分野 准教授 越川 直彦
高知大学医学部付属病院 特任教授(東京大学 名誉教授) 清木 元治

新技術の概要

我々は浸潤癌の特異的な腫瘍マーカーであるラミニンγ2単鎖(モノマーγ2鎖)が膀胱癌の患者尿中に高頻度に検出されることを見出し、ELISAによるモノマーγ2鎖の測定系を確立した。高齢化社会となり膀胱癌患者数も増加傾向を示しているが、早期に膀胱癌を診断可能な腫瘍マーカーは存在しない。現在使われている尿細胞診の診断感度は3割程度である。そのため、高感度且つ簡便で非侵襲的な検査法の確立は喫緊の課題である。そこで、我々は健康検診、人間ドックで簡便に膀胱癌のスクリーニングを行うため、γ2モノマー鎖を検出できる検出法の開発を行う。

従来技術・競合技術との比較

我々はELISAによる尿中のモノマーγ2鎖の測定により、早期膀胱癌を診断する方法を確立した。また、開発を予定しているモノマーγ2鎖を検出できる尿試験紙は、高齢化で患者数の増加が見込まれる膀胱癌を早期にスクリーニングすることが可能であり、専門医の不在な医療施設、健康診断での使用が見込まれる。

新技術の特徴

・在宅健康チェックシステム『インテリジェンストイレ』などの建築分野への応用
・ドラッグデリバリーシステム(DDS)などのがん治療への応用

想定される用途

・検診、人間ドックでの膀胱癌のスクリーニング
・膀胱癌治療の奏効マーカー
・膀胱癌の診断マーカー

  • 医療・福祉

4)ファージ分子を利用した細菌検出技術の開発

高知大学 教育研究部 医療学系 助教 内山 淳平
株式会社テクノネットワーク四国 技術移転部 シニアアソシエイト 安田 崇

新技術の概要

抗原抗体反応を利用した反応迅速細菌検出キットの市場が急成長してきた。しかし、抗体の品質と生産などに問題が生じることも少なくない。それゆえ、これら問題点を改善した技術開発が必要である。本技術は、抗体の代替えにバクテリオファージ(ファージ)の細菌種特異的に吸着する分子を利用した技術である。黄色ブドウ球菌をターゲットにした開発を行い、検出技術開発を行っている。

従来技術・競合技術との比較

本技術の競合技術は、主に、抗原抗体反応を利用した簡易迅速細菌検出キットである。既存キット技術と比較した場合、本技術の優位性は、特異性、感度であると考えられる。

新技術の特徴

・ファージ分子を利用した細菌検出用プローブ(研究用)
・ファージ分子を利用した細菌濃縮(検査・研究用)
・ファージ分子を利用した抗菌薬デリバリーシステム

想定される用途

・細菌検出技術:ビーズ凝集法による視覚的判定法や比色判定法
・細菌検出技術:イムノクロマト法
・ナノテクノロジーを利用した細菌検査技術

  • 医療・福祉

5)抗血管内皮細胞抗体を検出するための新たなELISA法

藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 抗体プロジェクト 講師 三浦 惠二
名古屋産業科学研究所 中部TLO技術移転部 部長 羽田野 泰彦

新技術の概要

自己免疫疾患、感染症、そして腎移植拒絶の患者血清中に抗血管内皮細胞抗体(AECA)が存在することが知られている。AECAは、血管内皮細胞の活性化や血管炎に繋がる免疫反応への関与が知られているが、AECAを測定するための標準化された方法はまだない。CSP-ELISAというAECAを検出するための新しい方法を開発した。CSP-ELISAが、臨床の場におけるAECAの検出に役立つと考えている。

従来技術・競合技術との比較

自己抗体測定に関して、現在の臨床検査の多くが細胞内に局在する自己抗原に対するものである。細胞表面の自己抗原に対する抗体の測定法は新しく、しかも病態把握に直結する抗体を測定できる可能性を持つ独創的なものである。

新技術の特徴

・立体構造が不安定になりやすい膜タンパクの固相化
・細胞に対する生理活性を持つ自己抗体の検出

想定される用途

・自己免疫反応が関与する様々な疾患の新たな診断法
・病態に直結する自己抗体の特定と抗体価測定による患者のプロファイリング、個別化医療への利用
・新規自己抗原同定による新たなバイオマーカーの発見

  • 医療・福祉

6)さまざまな自己免疫疾患における自己抗体検出キットの開発

大阪大学 微生物病研究所 免疫化学分野 教授 荒瀬 尚

新技術の概要

自己免疫疾患の診断、治療や予後の判定において、自己抗体の測定は非常に重要である。しかし、現状の検出方法は、必ずしも生体内での自己抗体の標的分子を抗原として用いていないため、陽性率が低いことが問題であった。本研究チームはMHC/ミスフォールド蛋白質複合体が生体内での自己抗体の標的分子であるという新たな発見に基づき、MHC/ミスフォールド蛋白質複合体に対する自己抗体の測定方法を発明した。

従来技術・競合技術との比較

従来用いられてきた抗原と構造が異なるため、いままで検出が不可能であった自己抗体を検出できるようになり、様々な自己免疫疾患の診断、そして治療や予後の判定に重要な手法である。

新技術の特徴

・特定の自己免疫疾患だけでなく、様々な自己免疫疾患の自己抗体の検出に応用できる
・いままでの検査と異なる特異性の自己抗体を検出できるため、治療や予後の新たな判定に重要になると考えられる
・MHC/ミスフォールド蛋白質複合体を標的にした新たな自己免疫疾患の治療薬の開発に応用できる

想定される用途

・関節リウマチの自己抗体検出キット
・抗リン脂質抗体症候群の自己抗体検出キット
・橋本病の自己抗体検出キット

関連情報

・外国出願特許あり

  • 医療・福祉

7)あらゆる臓器を簡便かつ短時間で透明化する技術~医学生物学領域への展開

国立病院機構本部 北海道東北ブロック研究室 特任上席研究員 小野寺 宏

新技術の概要

光学顕微鏡の進歩により厚みのある標本の構造観察が可能になったが、臓器の3次元的描出には組織を透明化する必要がある。従来の臓器透明化方法は十分な透明度が得られない、発癌性溶媒使用、長期間の煩雑操作(3週間)等の大きな問題を抱える。我々は数日間(最短24時間)で安全かつ簡便に全臓器を透明化できる技術を開発した。本技術は癌、基礎生物学、臨床研究など多くの分野において活用可能である。

従来技術・競合技術との比較

従来の臓器透明化方法は十分な透明度が得られない、発癌性溶媒使用、長期間の煩雑操作(3週間)等の大きな問題を抱える。我々は数日間(最短24時間)で安全かつ簡便に全臓器を透明化できる技術を開発した。

新技術の特徴

・簡単操作で全ての臓器を透明化でき(骨を除く)、透明化後の免疫染色や組織染色が可能
・発癌性・爆発性試薬は使用せず、特殊装置も不要。同時に多数の試料を処理可能
・再生医学(三次元培養による臓器構築の解析~試料を破壊せずに立体観察が可能)、癌研究(癌幹細胞の3次元分布)

想定される用途

・生物学全般 ノックアウトマウスの全身構造迅速解析、骨以外のすべての臓器の透明化と3次元解析
・創薬 動物実験における治療効果解析、臓器の副作用解析、とくに抗がん剤・分子標的薬開発
・臨床医学 臨床病理迅速検査(厚い組織標本の迅速診断。癌細胞の見落とし防止)

関連情報

・展示品あり(各種透明化標本(動物臓器:全身、脳、肺、心臓、腎臓、腸など)
・外国出願特許あり

  • 医療・福祉

8)短い脳波信号から遅延なく麻酔深度を測定する新しい技術

京都府立医科大学 大学院医学研究科 総合医科学専攻 麻酔科学 客員講師 林 和子
京都府立医科大学 研究支援課 産学連携研究コーディネーター 水野 康男

新技術の概要

秒単位の脳波信号の状態空間分布(Poincare plot)から脳波の非線形短期変動性を定量化することで、麻酔深度を推定するシンプルな非線形解析法を紹介する。本法は麻酔深度推定にモデルや仮定を用いず、すべての麻酔鎮静薬に応用できる。短時間の脳波を利用するため、演算負荷も小さく瞬時に推定できるので、麻酔深度の変化に俊敏に追従し術中覚醒等の速やかな検知と対処に有益である。よりリアルタイム性を有する簡易で安価な麻酔深度モニタリング装置への応用が期待できる。

従来技術・競合技術との比較

従来の麻酔深度計は高価である上、麻酔薬が限定される、解析演算が複雑で時間がかかる、分単位の脳波が解析に必要、急激な変化に対応できない、実時間からの遅延、深度推定の信頼性等の点で問題を有し、術中覚醒の予防に有用でない。

新技術の特徴

・ブレイン・マシン・インターフェイス、ニューロ・コミュニュケーター(四肢麻痺患者、身障者、高齢者の動作支援機器)
・ヘルスケア・サイエンス(例:健診等での高齢者の脳機能の簡易評価)
・ヒューマン・センシング(居眠り運転防止機器、アミューズメント機器)

想定される用途

・麻酔深度計、既存の麻酔深度モニタリング機器に組み込むことも可
・周術期の鎮静モニター、脳低体温療法時の脳機能モニター
・自動麻酔薬投与、自動麻酔システム( フィードバック制御をかけ、麻酔深度を自動調節する)

関連情報

・展示品あり(事前に収集した麻酔中の脳波から麻酔深度を測定する概念の提示)
・外国出願特許あり

  • 創薬

9)新しい蛍光ナノプローブによる癌の検出に加え、光で発生する活性酸素による癌治療が可能になる画期的な癌治療法

崇城大学 DDS研究所 特任教授 前田 浩
崇城大学 DDS研究所/薬学部 助教 中村 秀明

新技術の概要

癌にのみ集積する蛍光ナノプローブを開発した。そのプローブにより蛍光による固型癌の画像化も可能で、かつその蛍光分子は光により活性酸素を生成し、殺癌効果を示すが、このプローブは癌部のみに集まるので、正常の組織・臓器は傷害をうけない。即ち、副作用なしにラット乳癌で著効であることを証明した。本法は高額なレーザーを用いず、通常の内視鏡光源で乳癌を照射すると癌部が蛍光を発すると同時に活性酸素(一重項酸素)を発し、癌は死滅した。本法では副作用は皆無であった。消化管やその他、体腔内の多くの癌に応用できる。

従来技術・競合技術との比較

1) 100年前から知られている光照射療法(PDT)は、病巣のみに集積する光増感剤(プローブ)がなかった。即ち、在来のプローブは全身に分布し、特に皮膚に分布すると皮膚傷害になり、毒性が出た。2) 照射する光源が635nmの単波長を出すHe/Neレーザーであるため、在来型光増刊プローブの吸収波長(390-450nm)と全くあわない。そのため、活性酸素の一重項酸素が全く発生せず、薬効は全くない。

新技術の特徴

・治療と検出が同時にできる
・このナノプローブは癌部に選択的に集まる
・レーザー不要で、内視鏡光源で治療が可能になる
・動物の乳癌で有効性証明済み

想定される用途

・光照射による癌治療剤:リンパ節転移癌、食道以下の消化管、膀胱、子宮、その他の体腔、転移癌(胸膜、胸壁、大網、腹膜、腹壁)
・肺、肝の表層の癌
・乳癌など

関連情報

・外国出願特許あり

  • 創薬

10)ミトコンドリア標的型分子送達技術(薬物・タンパク質・核酸)の開発

北海道大学 大学院薬学研究院 医療薬学専攻 助教 山田 勇磨
北海道大学 産学連携本部 産学連携マネージャー 須佐 太樹

新技術の概要

ミトコンドリア(Mt)と様々な疾患との関連が報告されており、本オルガネラを標的とした薬物治療が注目されている。申請者はこれまでに、膜融合を介して内封分子をMt内へ送達するナノカプセル、MITO-Porterの開発に成功している。本技術を用いた『Mt標的型DDSによるMt関連疾患治療』の実現を目指した研究に着手しており、疾患モデル動物を用いたMt分子送達および治療効果の検証に成功している。

従来技術・競合技術との比較

既存のMtを標的とした薬物送達戦略は、送達薬物の大きさや種類を著しく制限するため、疾患治療への応用は困難であった。MITO-Porterを用いた戦略では、送達分子種を制限しない送達を可能とする。

新技術の特徴

・小分子・タンパク質・核酸など送達分子種によらないミトコンドリア導入を実現する
・臓器特異性・細胞選択性を付加する事が可能なため、様々な目的部位への送達が可能
・ウイルスを用いる手法のような毒性・抗原性・癌化等の懸念がない

想定される用途

・ミトコンドリア送達用薬物キャリア(神経変性疾患、虚血性疾患、ガン、糖尿病)
・ミトコンドリア用遺伝子導入試薬(モデル疾患細胞・動物の作出)
・アンチエイジング・メタボリックシンドローム予防用のサプリメント製剤

関連情報

・試作可能

  • 創薬

11)ヒトの体内で増殖不可能なヒトサイトメガロウイルス弱毒ワクチン株の作成

群馬大学 大学院医学系研究科 分子予防医学 教授 磯村 寛樹
群馬大学 研究・産学連携戦略推進機構 知的財産コーディネーター 早川 晃一

新技術の概要

本技術は、ヒトサイトメガロウィルス(HCMV)後期遺伝子の転写に必要なウイルス由来のトランス因子を欠損した弱毒HCMVである。この組換えウイルスはヒトの体内では増殖不可能であるが、ほとんどのウイルスたんぱくを発現するため、宿主のHCMVに対する細胞障害性T細胞(CTL)を誘導できると考えられる。このウイルス株はDisabled Infectious Single Cycle(DISC)ワクチンとして、免疫不全で再活性化するHCMV感染症の予防を目的に、移植医療やエイズ患者などへの応用が期待される。

従来技術・競合技術との比較

HCMV感染症の治療には抗ウィルス薬のガンシクロビルが用いられているが、副作用が強く耐性株の報告もある。また様々なHCMVワクチンが開発中であるが、現時点で安全で有効なワクチンはない。

新技術の特徴

・ヒトの体内では増殖不可能なDISC ワクチンである
・細胞性免疫の誘導が可能である
・免疫不全のヒトに投与可能である

想定される用途

・癌の化学療法、HIV感染及び臓器・骨髄移植などにより免疫力が低下した患者へのHCMV再活性化予防のためのワクチン
・HCMV 未感染の妊婦への感染予防のためのワクチン

  • 創薬

12)アシルジュグロンを母核とした新規抗がん・抗炎症・抗アレルギー剤の開発

京都府立大学 大学院生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 准教授 倉持 幸司
京都府立大学 大学院生命環境科学研究科 特任教授 市原 謙一

新技術の概要

研究代表者らは植物由来成分であるプルンバギンの水酸基をアシル化したアシルプルンバギンの化学合成に成功した。合成したアシルプルンバギンの中から既存技術を凌駕する優れた抗腫瘍活性、抗炎症活性、抗アレルギー活性を有する化合物を見出した。またラットへの単回大量投与試験の結果、化合物に急性毒性が認められなかったことから、アシルプルンバギンは副作用が少ない理想的な抗がん剤・抗炎症剤の有力候補と判断できる。

従来技術・競合技術との比較

アシルプルンバギンの抗炎症活性は既存の抗炎症剤であるグリチルレチン酸よりも1.5倍、抗アレルギー活性は既存の抗アレルギー剤であるトラニラストよりも2倍以上強力であった。

新技術の特徴

・新規物質アシルプルンバギンは高い抗がん、抗炎症、抗アレルギー活性を有する
・新規物質アシルプルンバギンは高い物理化学的安定性を有する
・アシルプルンバギン類は簡便かつ高収率で合成できる

想定される用途

・新規物質である「プルンバギン オレイン酸エステル」の抗がん剤としての開発
・新規物質である「プルンバギン DHAエステル」の抗炎症剤としての開発
・新規物質である「プルンバギン DHAエステル」の抗アレルギー剤としての開発

関連情報

・サンプルの提供可能(要事前相談)

  • 創薬

13)緑膿菌の病原因子及び多剤排出ポンプを標的とした新規スクリーニング系の開発

東北大学 農学研究科 生物産業創成科学 准教授 米山 裕
東北大学 未来科学技術共同研究センター 准教授 渡邉 君子

新技術の概要

近年公衆衛生上問題となっている多剤耐性菌による感染症を制御するために、緑膿菌の多剤排出ポンプの機能をレポーターとして用い、新規標的に対する2つのスクリーニング系を開発した。標的は、緑膿菌の病原性に関与する鉄獲得代謝系と病原因子の分泌に関わることが最近見いだされたタンパク質分泌系(Tat系)である。約3,000種類の化合物からなるケミカルライブラリーの初期スクリーニングを行った結果、鉄獲得代謝系を標的としたスクリーニング系で一つの新しい活性化合物を発見した。

従来技術・競合技術との比較

多剤排出ポンプの機能を利用した本スクリーニング系は、評価系に添加した指標薬剤に対する感受性変化として簡便に評価することができるこれまでにないスクリーニング系である。加えて、多剤排出ポンプ自体の阻害剤も同時にスクリーニングすることができる利点がある。

新技術の特徴

・鉄獲得代謝に関連したシグナル伝達系を標的とする
・病原因子の分泌に関与する新規タンパク質分泌系(Tat系) を標的とする
・レポーターとして用いた緑膿菌の多剤排出ポンプを標的とする

想定される用途

・抗感染症薬
・消毒薬
・試薬(細菌の鉄獲得系シグナル伝達系阻害剤、新規タンパク質分泌系Tat阻害剤)

  • 創薬

14)インドキシル硫酸産生阻害薬 ~腎保護作用を有する尿毒症治療薬の開発

熊本大学 大学院生命科学研究部 臨床薬物動態学分野 教授 齋藤 秀之
熊本大学 マーケティング推進部 研究コーディネーター 松本 泰彦

新技術の概要

腎不全患者では、尿中へ排泄される尿毒症物質が血液や臓器に蓄積し、慢性腎臓病への進展だけでなく心血管系合併症等のリスク要因となることが提示されている。本技術では、肝臓で産生される強毒性の硫酸抱合型尿毒症物質に着目し、その体内産生を抑制するとともに腎保護作用および高尿毒素血症改善作用を有する薬物の探索・開発を企図する。

従来技術・競合技術との比較

腎不全患者における尿毒症物質の除去を目的として人工透析や医薬用吸着炭(クレメジン)投与による治療が行われているが、尿毒症物質の体内合成と蓄積を根本的に抑える薬物は開発されていない。

新技術の特徴

・未だ開発されていない”高尿毒素血症”改善治療薬の創製
・強毒性尿毒症物質の体内合成を阻止する薬物の探索スクリーニング
・腎障害・腎不全の治療ターゲットとしての尿毒症物質産生系の有用性検証

想定される用途

・高尿毒素血症(尿毒症状)の改善・治療
・腎障害から慢性腎臓病への進展抑制
・腎臓病に伴う心血管系疾患の予防的治療

  • 創薬

15)脳を保護するテルペノイドを生産する褐藻類の植物工場による試験生産

岩手大学 工学部 応用化学・生命工学科 准教授 佐藤 拓己
岩手大学 地域連携推進センター 准教授 小川 薫

新技術の概要

海洋に眠る生物資源を有効に活用して、超高齢化社会に備えることが期待される。この背景から、「生活習慣病を制御する食材分子」として、褐藻類(シワヤハズ)由来のテルペノイド(ゾナロール)に注目している。日本近海に散在するシワヤハズを、植物工場により生産し、新しい食品市場の創製を目指している。またゾナロールはストレス応答を司る転写因子Nrf2を活性化を介して脳を保護し、アンチエイジング因子として注目されるAMPKを活性化して脂肪蓄積を抑制する。

従来技術・競合技術との比較

褐藻類シワヤハズの研究は、佐藤・小山の独創性による部分が大である。佐藤・小山は、150種類ほどの藻類の抗炎症作用や神経細胞死を比較した結果、シワヤハズのゾナロールが、主な活性体であることを明らかにした。

新技術の特徴

・褐藻類のテルペノイド・ゾナロールの新しい生物活性に関する創薬研究
・ゾナロールはマスター調節因子Nr2を介して脳を保護する
・褐藻類シワヤハズの植物工場での生産を目指している

想定される用途

・創薬リード
・健康食品
・植物工場

関連情報

・サンプルの提供可能
・展示品あり
・外国出願特許あり

  • 創薬

16)新規遺伝子Creg1のメタボリックシンドローム予防・治療への応用

中部大学 生命健康科学部 生命医科学科 教授 山下 均
中部大学 研究支援センター コーディネータ 山本 良平

新技術の概要

褐色脂肪細胞は中性脂肪を燃焼して余剰エネルギーを消費する特殊な細胞であり、その減少が肥満や糖尿病の原因となることから、画期的なメタボリックシンドロームの予防/治療法として褐色脂肪細胞を増加させる方法の開発に世界的な注目が集まっている。申請者は、褐色脂肪細胞の分化誘導に関連する新規遺伝子Creg1を見出し、Creg1蛋白質の褐色脂肪細胞分化促進作用およびメタボリックシンドローム改善作用を確認したことから、Creg1遺伝子またはCreg1蛋白質を利用する新しいメタボリックシンドロームの予防/治療法の開発を目指している。

従来技術・競合技術との比較

褐色脂肪細胞の分化誘導剤としてはβ3アドレナリン受容体アゴニストやチアゾリジン系製剤などの薬剤が研究開発されてきたが、副作用などの問題があることから安全かつメタボリックシンドロームの幅広い病態に効果を発揮する薬剤の開発が強く望まれている。Creg1は生体内に存在する分泌蛋白質であることから安全性においても優位性が高く、従来の化合物とは異なる機序により褐色脂肪細胞の分化誘導を促進する。

新技術の特徴

・天然生体分子Creg1の新規機能(褐色脂肪細胞誘導作用)を利用
・従来の薬剤とは異なる作用メカニズムにより褐色脂肪細胞を誘導
・褐色脂肪細胞誘導作用により脂質代謝を改善し、バイオ医薬品としてメタボリックシンドロームの幅広い病態予防・治療への応用が可能

想定される用途

・Creg1遺伝子およびCregl蛋白質の医薬・診断薬への利用
・Creg1と類似作用を示す化合物や食品成分の開発
・褐色脂肪細胞の移植/再生医療への応用

関連情報

・外国出願特許あり

お問い合わせ

連携・ライセンスについて

科学技術振興機構 産学連携展開部 研究支援担当 事業調整グループ

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