国立情報学研究所 新技術説明会
日時:2013年09月13日(金)
会場:JST東京別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 情報
1)探したい情報のイメージを直観的に伝えるためのリング状検索手法
青山学院大学 理工学部経営システム工学科 助教 梶山 朋子
新技術の概要
星座早見盤のような仕組みで、各属性(検索の切り口)に対する属性値を配置したリングを操作することによって情報を絞り込む。検索に使用したいリングを選択し、回転させることにより検索条件を変更できるため、リング内に表示された検索結果を次々に閲覧することが可能である。
従来技術・競合技術との比較
キーワード入力が不要のため、探したい情報のイメージが曖昧な場合でも、検索を続けることが可能である。検索に利用しているリングを確認することにより、情報空間における自身の立ち位置を把握できるため、検索を進めやすい。複数のリングを自由に組み合わせることにより、動的な階層構造を生成し、柔軟なAND検索を提供する。
新技術の特徴
・各人で異なる検索の切り口を指定しながら、楽しく検索が続けられる
・色や雰囲気などの感覚的な検索条件を入力でき、予想外の情報に出会いながら発想を広げられる
・タイピング不要で、離散量や連続量など属性の種類を問わず、同一のリング操作で利用できる
想定される用途
・アパレル、店舗、レシピ、人物、不動産、人材派遣などの検索支援
・製品デザイン、商品コーディネートなどの創造活動支援
・企業におけるデータマイニング支援、小中高における発見学習支援
関連情報
・サンプルの提供可能(アプリ検索「Wonder Search」をApp Storeにて無料で提供中)
・展示品あり(画像検索・内装コーディネート・植物図鑑・国図鑑システム)
- 情報
2)プライバシーバイザー:カメラの写りこみによるプライバシー侵害を防止する技術
国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授 越前 功
新技術の概要
盗撮やカメラの写りこみによるプライバシー侵害を、被撮影者から防止する新技術を世界で初めて開発した。新技術は、人の視覚に影響を与えず、カメラへのみ影響を与える近赤外線光源を配置したプライバシーバイザーを被撮影者が装着することで、撮影時のみ被撮影者の顔検出を不能にすることが可能となる。
従来技術・競合技術との比較
従来手法に、顔面を物理的に隠すことで人物のプライバシーを保護する手法や、顔面への着色や髪形の変更により人物の顔検出を失敗させる手法があるが、顔面の大部分の隠ぺいや着色が必要なため、物理空間における人対人のコミュニケーションに支障をきたすという問題があった。
新技術の特徴
・盗撮や写りこみによるプライバシー侵害を被撮影者側から防止
・近赤外線光源の代わりに光吸収・光反射素材を用いることで電源を必要としない安価なプライバシーバイザーも開発可能
想定される用途
・携帯端末やSNSの顔認識機能によるプライバシー侵害を被撮影者側から防止可能
・Google GlassなどのAR(拡張現実)アプリケーションの普及による被撮影者のプライバシー侵害を防止可能
関連情報
・展示品あり(開発したプライバシーバイザーのデモ・展示)
- 情報
3)人気が出れば自動的に商品に格上げされるディジタルコンテンツ販売方法
国立情報学研究所/総合研究大学院大学 情報社会相関研究系 研究主幹・教授 曽根原 登
新技術の概要
本発明は、ディジタルコンテンツをネット販売する際に、段階的に開示しながら評判を高めて販売するコンテンツ販売方法に関するものである。ディジタルコンテンツについて、販売前にコンテンツの評判を高められ、購入前に品質を確認できるような開示の仕組みを提供する。販売対象であるディジタルコンテンツを蓄積するコンテンツデータベースと、ディジタルコンテンツの一部を段階的に開示するテストコンテンツサーバと、ディジタルコンテンツを有料で販売する有料コンテンツサーバとコンテンツ販売制御装置から構成される。また、開示度と利用度との関係データに基づいてディジタルコンテンツの新たな開示度を設定し、かつディジタルコンテンツを2つのサーバのうちいずれのサーバから提供すべきかを判定するコンテンツ販売制御装置からなる。
従来技術・競合技術との比較
本発明は、ネットワーク型のディジタルコンテンツビジネスにおいて、どのようにしてコンテンツの評判を高め、利用者がそのコンテンツに関心を抱くようにするか、一方、購入者側にとって、それがどうようなコンテンツであるかを無料または低料金で一部を見ることによって、購入前にコンテンツの品質を確認できる仕組みを提供する。
新技術の特徴
・ディジタル権利の動的ライフサイクル管理方法
・ディジタルコンテンツの自費出版や販売サイト構築
・ディジタルコンテンツの自動開示制御方法
想定される用途
・ディジタル権利管理・仲介ビジネス
・ディジタルコンテンツの流通ビジネス
・ディジタルコンテンツの評判駆動の開示制御ビジネス
- 医療・福祉
4)ビッグデータ解析時代を支える電子カルテ統合技術
高知大学 医学部附属医学情報センター 助教 片岡 浩巳
新技術の概要
各病院で実施されている臨床検査値は、測定法の違い等により分析精度が異なる。このため、各病院を統合した共有の電子カルテや長期時系列管理が可能なデータウエアハウスを作成しても、総合的な評価ができない問題があった。これらの病院間精度や長期時系列精度の問題を解決する補正技術を提供する。
従来技術・競合技術との比較
健常人が多い健診分野で適用可能な方法はあったが、患者データでは、多様な患者層や年齢層の違いに対応できない問題があった。本法を用いることで、病院間の違いや長期時系列のシームレスなデータ統合環境を提供できる。
新技術の特徴
・臨床検査値の測定精度の可視化
・多次元的なデータ選択および推定
・生涯電子カルテやデータ2次利用を目的とした臨床検査値の補正技術
想定される用途
・医療情報2次利用データベース
・地域統合型生涯電子カルテ
- 計測
5)超音波による物体位置・速度の高精度画像化技術
国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系 教授 橋爪 宏達
新技術の概要
音波(超音波)を使用して、空中、水中、体内、などの物体を速度情報とともに画像化する技術である。特に広い範囲の速度を高精度に画像化することができる。速度検出精度は従来技術の30倍に達する。ログステップマルチキャリア波という新しい信号波形を使うことでこれを可能としている。
従来技術・競合技術との比較
これまでも医療用超音波診断装置などに同様の機能が搭載されており、画像中の速度をもつ箇所(たとえば血流)を色づけして表示できた。しかし検出できる速度範囲や精度は十分でなく、血流の存在を示せる程度であった。本発明の技術によれば、計測精度を向上させ、血流量の定量的測定なども可能となるであろう。
新技術の特徴
・音波計測を生かした非接触の位置・速度計測
・高精度計測による運動・流量の定量評価
・ミリ波レーダー応用による暗視物体検出、気流観測等にも応用可能
想定される用途
・医療用超音波診断装置
・海中資源探査
・車両用衝突回避装置
- デバイス・装置
6)「量子光」を生成する光源(日本語による発表)
国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 助教 Tim Byrnes
新技術の概要
非古典(非ガウス)光を定常的に出力可能な光源を開発した。提案されるデバイスは半導体中の励起子ポラリトン粒子のボーズ・アインシュタイン凝縮を利用している。この現象によって、レーザーのようにコヒーレンス(光の位相の揃い)が自然に粒子間に現われる。しかし、同じコヒーレンスを示すレーザーと異なり、励起子ポラリトンはその間で相互作用があることによって、光に特殊な特性を持たすことが可能になる。
従来技術・競合技術との比較
現在はスクイーズド光などのガウス状態と呼ばれる光は比較的簡単に生成できるが、非ガウス状態の光を定常的に生成するのは極めて困難である。非ガウス状態光の一例として、単一光子状態があるが、現在は単一光子をon-demand、確率1で作ることは不可能である。また、数光子レベル以上の非ガウス状態を生成するのも単一光子と似た問題があり、on-demand、確率1で生成することは現在不可能である。本発明のデバイスでは、非ガウス光をレーザーのように定常的に発振することが特徴である。
新技術の特徴
・非古典光がレーザーのように定常的に生成される
・非古典光が従来の技術に比べて明るい
・半導体中の励起子ポラリトン凝縮の現象を利用している
想定される用途
・量子情報
・量子通信
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