理化学研究所 新技術説明会
日時:2013年09月03日(火)
会場:JST東京別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 材料
1)保持温度を自由に選択できる新しいタイプの蓄熱材
理化学研究所 河野低温物理研究室 研究員 新髙 誠司
新技術の概要
電子相転移を利用した新しいタイプの潜熱蓄熱材。氷に匹敵する潜熱を有し、保持温度を室温を含む低温域(100℃以下)から中温域(150℃~250℃)において自由に選択することができる。粉末状、ブロック状いずれの形態においても使用することが可能。
従来技術・競合技術との比較
従来の多くの潜熱蓄熱材において採用されている固液相転移の代わりに電子相転移を利用するため、固体状態のまま使用でき扱いやすい。熱伝導率が高く、熱応答性に優れている。セラミックス材料であるため、高温まで化学的に安定であり、また利用時に分解を起こさず半永久的に繰り返し使用が可能。
新技術の特徴
・室温を含んだ広い温度域で作動可能な潜熱蓄熱材
・遷移金属化合物セミラックス材料
・固液相転移ではなく電子相転移を利用した、固体状態のまま使用できる蓄熱材
想定される用途
・粉末状およびブロック状の保冷材・保温材
関連情報
・サンプルの提供可能
・展示品あり(講演後に、粉末状およびブロック状の蓄熱材サンプルをお見せします)
- 分析
2)中エネルギーイオン刺激脱離を用いた軽元素、特にリチウム分析
理化学研究所 東原子分子物理研究室 専任研究員 小林 峰
新技術の概要
リチウムイオン電池は正極と負極の間をリチウムイオンが移動することによって充放電がなされることから、その電池中でのリチウムの分布状況を知ることは重要である。しかし、一般にはリチウムが三番目に軽い軽元素であることから分析は難しい。我々はリチウムを分析できる中エネルギーイオン刺激脱離現象を発見した。
従来技術・競合技術との比較
薄膜(100nm以下)試料のリチウム分布状況を知る方法(走査型透過電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光とを組み合わせた方法)は従来技術としてあるが、実際に使われているリチウムイオン電池は薄膜ではない。中エネルギーイオン刺激脱離分光法では薄い試料でも厚い試料でも分析可能である。
新技術の特徴
・高感度軽元素(特にリチウム)分析
・重い母材を壊さない非破壊分析
・ナノメートル・実空間分析
想定される用途
・材料(例えば全固体リチウムイオン電池)表面・表層及び内部のリチウム分布状況の可視化
・材料(例えば燃料電池)表面・表層及び内部の水素分布状況の可視化
- 製造技術
3)多結晶ダイヤモンド工具による先進セラミックスの微細加工
理化学研究所 大森素形材工学研究室 専任研究員 片平 和俊
新技術の概要
多結晶ダイヤモンド工具およびナノ精度加工機を用いることにより、セラミックスや超硬合金といった高硬度難加工材料に対し、研磨レスで表面粗さが3nm Ra以下の高品位微細形状を創ることができる。
従来技術・競合技術との比較
一般的な超精密機械加工に用いられる単結晶ダイヤモンド工具は、強度に異方性があり脆いためセラミックスを加工することはできない。他の加工手法(レーザー加工、放電加工、研削加工等)では本プロセスと同じレベルの微細形状・表面性状を得ることは不可能である。
新技術の特徴
・マイクロパターンを有する超精密小型セラミックス部品を作製可能
・ガラス製蛍光分析デバイス用微細金型をオンデマンドで作製可能
・化学エッチングでは得られない滑らかな表面を創成可能
想定される用途
・マイクロ流路(μTAS)や細胞培養細容器等のバイオデバイス用微細金型
・携帯情報端末やLED向け電子部品などの微細オプティクス金型
・耐食高強度セラミックス製マイクロリアクター
- 情報
4)主観的気分や心地を簡便に記録できるKOKOROスケール
理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター 細胞機能評価研究チーム チームリーダー 片岡 洋祐
新技術の概要
「KOKOROスケール」は、安心感と不安感、ワクワク感とイライラ感などの気分スケールを横軸・縦軸にした二次元空間タッチパネルに点を打ったり、線で変化を入力することで、主観的な気分や心地を簡便に入力し、データ化できるシステムである。
従来技術・競合技術との比較
従来の心理アンケート調査は設問に対する記述や選択肢で回答させるものが多く、微妙な感覚の差を数値化できないため、数理学的統計計算に不向きであった。さらに、日常生活の中で数分・数時間ごとに調査することが困難であり、こころの動きを把握することは難しかった。KOKOROスケールはこうした問題を解決し、心理動態を簡便に把握することを可能にするシステムである。
新技術の特徴
・タブレット端末で使用するため、いつでもどこでも1,2秒で気分や心地を数値として記録できる
・何度も心理データを入力できるため、心の動き(心理動態)として把握できる
・大量の心理データを取得し、数理計算処理できる
想定される用途
・国民の幸福度の測定やイベント中の気分や心地の測定
・商品の使用感の測定や、印象による商品分類
・アスリートやビジネスマンのメンタルトレーニングの効率化
関連情報
・展示品あり(タブレット端末を用いてKOKOROスケールソフトウエアを紹介する)
- デバイス・装置
5)全ガラス製オンチップバルブの開発と応用
理化学研究所 生命システム研究センター 集積バイオデバイス研究ユニット ユニットリーダー 田中 陽
新技術の概要
髪の毛や蚊の針の太さと同じかそれ以下の微細流路を加工したガラス基板「マイクロチップ」は分析・合成など化学・生化学操作の集積・高効率化を可能とするが、その中で試料操作のためのバルブがなく集積性が生かせていないため、これを新規開発・実証した。
従来技術・競合技術との比較
通常のマイクロチップはシリコンゴムの一種・ポリジメチルシロキサンを材料としており、その柔軟性を活かしてオンチップバルブが実現されているが、有機溶剤・標的分子の使用は吸着や吸収の問題で難しく、本技術はガラスを用いておりこの点が克服されている。
新技術の特徴
・ほとんどの化学薬品・サンプルの使用が可能
・少数・少量分子の操作が可能
・バルブやポンプなどの流体駆動系の集積によるラブオンチップシステムのコンパクト化が可能
想定される用途
・ポータブル分析機器
・細胞個別操作チップ
・生体分子合成チップ
関連情報
・サンプルの提供可能
・展示品あり(マイクロチップのサンプル)
・外国出願特許あり
- デバイス・装置
6)深紫外高効率LEDの開発と応用
理化学研究所 平山量子光素子研究室 主任研究員 平山 秀樹
新技術の概要
殺菌用途として幅広い応用分野が考えられる、深紫外LEDの開発について、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体の新規結晶成長法の開拓とLED構造の革新によって、大幅な動作効率の向上を可能にする。
従来技術・競合技術との比較
従来10%以下と低かった、深紫外LEDの光取出し効率を、透明p型AlGaN層、高反射電極、ピラーバッファーを用いて70%以上に高効率化した。トータル効率60%以上の深紫外LEDを実現する。
新技術の特徴
・透明p型AlGaNコンタクト層を用いた深紫外LEDの高効率化
・高反射電極を用いた高効率化
・ピラーアレイバッファーを用いた光取り出し改善
想定される用途
・殺菌・浄水、医療用LED
・殺菌・除菌装置
・エアコン、冷蔵庫、空気清浄機、浄水器など家電への搭載(殺菌用途)
- デバイス・装置
7)スキルミオニクス 新しい磁気構造とそのダイナミクス
理化学研究所 創発物性科学研究センター 強相関理論研究グループ グループディレクター 永長 直人
新技術の概要
磁性体中に現れる渦状のスピン構造であるスキルミオンは、ナノスケールの大きさを持ち、安定で、超低電流で駆動できる、など多くの特長を持つ。この新しい磁気構造の作成法、回路、電流駆動ダイナミックス、熱運動などを議論し、磁気メモリーへの応用の可能性について述べる。
従来技術・競合技術との比較
磁性体中のバブルはメモリーへの応用が期待されていたが、記憶密度の大きさや磁場による駆動の困難さに問題があった。また、電流駆動の磁壁を用いたメモリーが競合技術として研究されているが、電流密度がスキルミオンに比べて5-6ケタ大きい。
新技術の特徴
・超低消費電力で運動が駆動できる
・安定に存在するが、一方で簡単に生成できる
・ナノスケールのサイズを持つ
想定される用途
・磁気メモリー
・論理回路
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
理化学研究所 連携推進部 技術移転企画課
TEL:048-462-5475FAX:048-462-4718Mail:cs-officeriken.jp
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