中国地域さんさんコンソ 新技術説明会
日時:2013年09月20日(金)
会場:JST東京別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 医療・福祉
1)虫歯を予防するバイオフィルム形成阻害物質
鳥取大学 農学部 生物資源環境学科 准教授 薮田 行哲
新技術の概要
虫歯の原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンスが生成するグルカンシュークラーゼ(GTF)は歯垢(バイオフィルム)形成の中心的役割を果たす。我々はセロトニンが菌の生育を阻害すること無く、GTFを阻害し、バイオフィルム形成を抑制することを見出した。
従来技術・競合技術との比較
現在までに様々なバイオフィルム形成抑制剤などが報告されている。それにもかかわらず、現在でもより効果が優れた、しかも安全性の高いバイオフィルム形成阻害剤の開発が望まれている。我々が見出したセロトニンは食品などに含まれる安全性の高い物質であり、従来の阻害剤と組み合わせて利用することで、より効果の高い阻害剤としての利用が期待される。
新技術の特徴
・食品などに含まれる安全性の高い物質である
・ストレプトコッカス・ミュータンスの生育を阻害しないことから、耐性菌の出現の恐れが少ない
想定される用途
・歯磨き粉
・チューインガム
・キャンディー
- 医療・福祉
2)脳で音楽を感じるスピーカ(ニューロ スピーカ)
広島市立大学 大学院情報科学研究科 システム工学専攻 講師 谷口 和弘
新技術の概要
音楽にあわせた周期と強度で経頭蓋磁気刺激を行うことで、音楽を聴覚のみならず脳でも感じることができる。脳の刺激部位や強度などを調整することにより、音楽のノリをよくしたり、リラックスさせることができる。
従来技術・競合技術との比較
従来の音響用出力装置は、スピーカやヘッドフォンといった耳に聴覚刺激を出力する装置やディスプレイなど目に音楽から生成した視覚刺激(映像、波形など)を出力する装置、そしてスピーカでは再現しきれない音域(重低音)振動を椅子などを振動させることで触覚に出力する装置であった。本技術は音声を聴覚(5感)のみならず脳でも直接感じることができる。
新技術の特徴
・音楽を聴覚(5感)のみならず脳でも直接感じることができる(脳では音として経頭蓋磁気刺激を認識するのではなく、5感以外の新たな感覚で音声を認識する)
・脳を活性化させ聴覚を敏感にも鈍感にもすることができる見込みがある
・脳の刺激部位や刺激タイミング、刺激強度などを調整することで、音楽をノリよく鑑賞したり、リラックスして鑑賞したりできる見込みもある
想定される用途
・アミューズメント分野:映画館やコンサートホールの音響設備、ゲーム用出力装置
・クリエーティブ支援分野:音楽分野のクリエータの創作活動を支援する装置
・家電分野:ホームシアターなどの音響システム
- 情報
3)非線形システムに対するPIDパラメータの自動調整法
広島大学 大学院工学研究院 システムサイバネティクス専攻 教授 山本 透
新技術の概要
非線形システムを対象としたPID制御器の一設計法として、小脳演算モデル(CMAC)を用いたPIDパラメータ調整法を紹介する。その際、一回の試行実験データに基づいてPIDパラメータを調整する方法、ならびにGMDHネットワークを導入することで、使用メモリを削減する方法について詳述する。
従来技術・競合技術との比較
従来手法のほとんどは、PIDパラメータの調整に、制御対象のモデルが必要であった。本手法は、そのようなモデルの構築が不要であるという大きな特徴の上に、対象が非線形システムであるにも関わらず、一回の試行実験データのみでPIDパラメータの調整が可能である点が、従来法と大きく異なる点である。
新技術の特徴
・一回の試行実験データからPIDパラメータを自動調整できること
・線形システムにとどまらず非線形システムを制御することが可能であること
・低規格のコンピュータで実装化が可能であること
想定される用途
・熱プロセスや化学プロセスに代表されるプロセスシステムの制御
・自動車や建設機械に代表されるメカトロニクスシステムの制御
・人を対象とした福祉機器やリハビリテーション機器などの制御
- 情報
4)高圧縮・高セキュリティ・高速処理を実現する幾何学的データ暗号方式
島根大学 大学院総合理工学研究科 情報システム学領域 講師 六井 淳
新技術の概要
本研究では、幾何学的アプローチに基づいた新しい共通鍵暗号方式を提案する。具体的には、提案する暗号方式は木構造の構造情報とデータの配置情報の幾何学的組み合わせを利用した暗号方式である。
従来技術・競合技術との比較
提案する暗号方式は広く普及した共通鍵暗号方式であるストリーム暗号、ブロック暗号のいずれにも属さない新しい暗号方式であり、高い安全性を有している。チップセットオプション指定のない環境であればAES比5倍程度の高速処理も可能である。
新技術の特徴
・従来の暗号方式のいずれにも属さない新しい暗号方式
・ジョイントステレオ符号化と組み合わせることで安全かつ高圧縮なデータ保存が可能
・ソフトウェア実装で十分な高速処理が可能
想定される用途
・高圧縮、高セキュリティ性能を利用した医療用画像の転送技術
・高速処理性能を利用した安全な高速無線通信
・高圧縮、高セキュリティ、高速処理性能を利用した安全な大容量保存方式の確立
- 情報
5)波線グリッドパターン投光器とカメラを用いた画像3次元形状復元方法
広島市立大学 大学院情報科学研究科 知能工学専攻 准教授 古川 亮
新技術の概要
本発明は、投光器からパターンを対象物体に投影し、それをカメラで撮影することで、3次元形状を取得する方法である。本手法では単色の静止パターンを利用するため、投光器の簡素化が可能であり、また、赤外線やレーザ光などを利用することで、対象表面の模様や外乱光の影響を軽減することができる。
従来技術・競合技術との比較
パターンとして、高密度な格子パターンを利用しており、かつ、格子の間の補間もなされるため、高密度な計測が可能である。さらに、カメラとプロジェクタの間の距離を大きく取れるため、高精度な計測が可能である。
新技術の特徴
・外乱や、対象物体の模様に対する頑健性
・高密度、高精度な計測
・高速度撮影による時系列計測が可能
想定される用途
・人の動きの解析
・生物の表面形状など、微細な形状の計測
・波の動きの解析
関連情報
・外国出願特許あり
- 情報
6)自己組織化マップによる多次元データの有意度の算出法
鳥取大学 大学院工学研究科 情報エレクトロニクス専攻 准教授 大木 誠
新技術の概要
SOMは、種類を判別する対象に応じた複数の要素を含むデータ(ベクトル)を用いて学習させることで得られる。この場合、複数の要素のうち、いずれの要素がどの種別の判別に貢献しているのかを客観的に評価することは、精度のよいSOMの生成のための要素の選択において有用である。本発明は、第1の種別と第2の種別を判別可能な自己組織化マップにおける判別データのデータ要素の有意度について、定量的(客観的)な指標を提示する装置を提供することを目的とする。
従来技術・競合技術との比較
多次元データを分類する場合、多変量解析でも有意度の解析は可能であるが、取り扱いには数学的バックグラウンドが必要である。つまり、データを入れれば解析結果は出て来るが、得られた数字だけを信じる傾向が有る。一方、SOMを用いた場合、学習後の境界の色付け、U-マトリクスの明瞭度を考えて有意度を計算し、その信頼度についても評価が可能である。また、種別が3種になった場合、重回帰では-1,0,1(または0,1,2)と割り当てざるを得なく、順序が無いものに数的順序を割り当てる必要がある。しかしSOMでは次元を増やし、種別のところを3次元にして(1,0,0・・・)とするだけで良い。
新技術の特徴
・金属や半導体、電子材料のスペクトル解析結果による種別判定における高有意度の抽出
・統計データ(多次元)の中から有意なデータの抽出
想定される用途
・健康診断結果の分類による疾病判別における高有意度要素の抽出
・疲労度の判定に関する高有意度要素の抽出
・肝臓病判定データにおける高有意度要素の抽出
- 製造技術
7)バイオマスからスーパーエンプラを作る!
岡山大学 大学院環境生命科学研究科 環境科学専攻 教授 木村 邦生
新技術の概要
持続的資源循環型社会の構築を目指し、スーパーエンプラの石油依存度を低減させることを目的として、バイオマス由来であるフランジカルボン酸を原料とした芳香族ポリエステルや芳香族ポリエーテルケトンを調製した。特に芳香族ポリエーテルケトンは、イオン媒体中での特殊な重合技術により始めて調製が可能となった。
従来技術・競合技術との比較
フランジカルボン酸からポリアミドやポリウレタンなど多くのプラスチックは合成されているが、スーパーエンプラを代替できる耐熱性や耐化学安定性などの高性能を有するプラスチックは調製されておらず、今回紹介するスーパーエンプラ類が初めてである。
新技術の特徴
・バイオマス由来の化合物を必須としたスーパーエンプラ
・石油枯渇問題の解決に貢献
・再生可能成分を含むために、カーボンニュートラルへの貢献
想定される用途
・自動車関連の高性能エンプラ代替
・航空・宇宙用材料
・電気・電子材料
- 環境
8)ナノカルシウムを用いる複合汚染土壌の浄化技術
県立広島大学 生命環境学部 環境科学科 准教授 三苫 好治
新技術の概要
ナノカルシウムを用いて重金属類含有汚染土壌を常温常圧下で迅速に不溶化あるいは分離除去する技術を提供する。このプロセスは全く廃水を出さず、必要に応じてワンポットでPOPsの脱塩素化や放射性セシウム汚染土壌の同時除去も可能とする。
従来技術・競合技術との比較
重金属類やPOPs汚染土壌の無害化を個別に達成する多くの技術がある。例えば、前者では湿式分級、キレート固化、あるいは抽出技術が知られており、他方、後者では熱分解技術などである。本開発技術は、常温常圧下、ナノカルシウム系薬剤を用いて廃水を出さずに重金属類の不溶化並びにPOPsの分解を同時に達成可能な新技術である。
新技術の特徴
・無水条件下で開発薬剤との混合により土壌改良が可能
⇒排水を出さず、省エネ&エコ仕様
・無水条件下、汚染土にカルシウム系被膜を迅速に形成することで不溶化を達成可能
⇒シンプルな固化ゆえに対象範囲の広い処理技術&溶出試験もクリア
・ナノカルシウムに幅広い追加機能を付加可能
⇒磁力選別による高濃度汚染物の分離除去や高含水土壌用へ
想定される用途
・土壌改良を必要とする建築・建設業界
・処理装置を開発するプラントメーカー
・廃棄物の取扱い&処分業者
関連情報
・サンプルの提供可能
- 環境
9)微生物を用いた消化汚泥の資源化
山口大学 農学部 生物機能科学科 准教授 藤井 克彦
新技術の概要
下水処理で発生する余剰汚泥は、嫌気消化によるメタンガス生産に利用されているものの生分解されにくい成分(消化汚泥)が残渣として大量に残る。本技術では我々が発見した消化汚泥を生分解できる微生物を用いて消化汚泥の資源化を目指すものである。これによって産業廃棄物でもある消化汚泥の利用と低減が図れる。
従来技術・競合技術との比較
余剰汚泥を生分解できる微生物種は嫌気消化に利用されるメタン生産菌群や高温処理槽から分離された好熱細菌などである。しかし、これらの微生物は消化汚泥に対する分解能は持っていない。我々は消化汚泥そのものを基質として生育する微生物種を発見したことによって、消化汚泥の有効利用を初めて可能にした。
新技術の特徴
・これまで生分解が困難であった消化汚泥を減容できる
・消化汚泥を基質とした新規農業資材として利用できる
・増殖した分解微生物バイオマスを新規資源として利用できる
想定される用途
・暖房用固形燃料(温室栽培用、農村ローカル利用など)、産業用燃料
・即効性肥料
・畜産飼料
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