北海道地域3大学2公設試 新技術説明会(2)
日時:2014年09月09日(火)
会場:JST東京別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 計測
1)超高速細胞メカニクス計測技術:原子間力顕微鏡
北海道大学 大学院情報科学研究科 生命人間情報科学専攻 教授 岡嶋 孝治
新技術の概要
単一細胞の力学物性(複素弾性率の周波数依存性)を高速かつ高精度に計測できる原子間力顕微鏡(AFM)技術を開発した。従来法と比べて1桁以上高速な細胞物性の定量化を実現し、細胞力学的スクリーニング・細胞力学診断技術に応用可能である。
従来技術・競合技術との比較
単一細胞力学特性の網羅計測に関する従来法として、マイクロ流路を用いた計測技術が広く用いられているが、測定対象は浮遊状態の細胞に限定されている。本技術は接着細胞の計測に適用でき、計測速度および物性の定量性の点で従来技術よりも優れている。
新技術の特徴
・ソフトマテリアルのナノ力学物性計測
・ソフトマテリアル表面のナノ力学物性イメージング
想定される用途
・単一細胞診断技術(正常細胞・がん細胞や未分化・分化の単一細胞診断)
・単一細胞スクリーニング(例:抗がん剤によるがん細胞の力学特性の検査)
・ソフトマテリアル(高分子系・細胞系等)の定量的力学特性イメージング
- 環境
2)新たな水素製造の道を拓く木炭の利用技術
北見工業大学 工学部 バイオ環境化学科 教授 鈴木 勉
新技術の概要
通常の500℃木炭に自家生産可能で再生・回収が容易な木酢酸鉄の適量を水溶液含浸で添加し、800℃で水蒸気ガス化するとC+2H20→CO2+2H2の反応が著しく促進され、高速高効率の水素製造が可能となる。
従来技術・競合技術との比較
現行水素は9割がメタンの水蒸気改質、1割が水の電気分解や製鉄時の副産物として生産される。これらの大型プロセスに比べて本技術は小規模操業が可能であり、燃料電池自動車の高普及に向けた水素ステーションの分散設置構想に叶う。
新技術の特徴
・生木材ではなく木炭を使用し、安価で高活性な鉄触媒を新開発した画期的なバイオマス水素製造法である。
・現行のバイオマスガス化プロセスがそのまま適用でき、基本技術は完成している。
・未・低利用木材を原料とするので、地域の林業、林産業の活性化と復興(雇用増大等)につながる。
想定される用途
・燃料電池負極活物質としての水素ガス生産
・ガスエンジン用燃料の製造
・多目的ガスの生産(木酢酸鉄坦持木炭は、ガス化温度やガス化剤等の変更により、CO、CO+H2、CH4の製造が可能)
関連情報
・サンプルの提供可能
- デバイス・装置
3)Time to digital converterのA/D変換器への利用とその低消費電力化
北海道大学 大学院情報科学研究科 情報エレクトロニクス専攻 准教授 池辺 将之
新技術の概要
シングルスロープAD変換器は、アナログ値を時間に変換してデジタル化する。Time to digital converter(TDC)を用いることで、変換時間を大幅に削減できる。しかしながら、消費電力が大幅に増加する。本特許は、TDCを間欠動作させることで、低消費電力と高速動作を両立するものである。
従来技術・競合技術との比較
従来技術は、シングルスロープAD変換器にTDCを組み合わせた高速化のみであった。そのため、変換時間の削減に伴い、消費電力が増加してしまう問題があった。本特許を適用することで、TDC部の消費電力を数十分の一に削減でき、低消費電力と高速動作を両立できる。
新技術の特徴
・高精度・粗精度な計測を2つのステージに分けて整合性を保ちながら低電力化できる。
・小面積な実装が可能である。
・AD変換特性が連続的で、補正がしやすい。
想定される用途
・イメージセンサ用A/D変換器
・厳しい環境下でのセンシング用A/D変換器
・高精度時間計測器
- アグリ・バイオ
4)きのこを活用してGABA富化素材を作る
北海道立総合研究機構(森林研究本部 林産試験場) 利用部 微生物グループ 研究主査 原田 陽
新技術の概要
アミノ酸であるγ−アミノ酪酸(GABA)は、血圧を抑えたりリラックスしたりする効果が期待され、近年注目されている。本技術により、きのこであるエノキタケやシイタケの生鮮品に特定の処理を施して、GABA含量を高めた素材を製造すること、食感を保持したものを含め多様な素材を得ることが可能であり、これらの素材は健康志向の食品素材としての活用が期待される。
従来技術・競合技術との比較
きのこの内在酵素を活性化し、GABA含量を原料当り約7%まで高めた素材製造が可能である。GABA富化素材の製造プロセスの効率化とともに、きのこの食感を保持した素材を含めて多様な素材(エキス、ペースト、パウダー、きのこ)が得られるようになり、用途に応じた素材の選択が可能である。
新技術の特徴
・きのこであるエノキタケあるいはシイタケを原料とする。
・きのこの内在酵素を活性化させ、低中温でGABA含量を高める。
・GABAを富化したきのこ、ペースト、パウダーおよびエキス素材の製造に適している。
想定される用途
・健康志向の食品素材として、シチュー、カレー、炊き込みご飯の素、各種惣菜、菓子等の食品への利用
・健康志向の食品素材として、各種スープ、ソース、調味料、ふりかけ等の食品への利用
・顆粒および錠剤等のサプリメントへの利用
- 創薬
5)血清マイクロRNAによる免疫体質判定法の確立とコンパニオン診断薬への応用
北海道大学 遺伝子病制御研究所 疾患制御研究部門 准教授 北村 秀光
新技術の概要
被験者の血清マイクロRNAをバイオマーカーとして解析し、免疫体質や免疫応答型を予見あるいは判定する新技術を開発した。さらにこれらのマイクロRNAは免疫応答の制御剤としても使用できる。
従来技術・競合技術との比較
従来、マイクロRNAは、がんの悪性度、患者の生命予後の予測などのバイオマーカー又は診断薬としての利用が検討されているが、本技術により被験者の免疫体質を判定し、免疫疾患の治療効果・有害事象の予見、治療過程のモニタリング、さらに患者の免疫応答を制御することもできる。
新技術の特徴
・過剰な免疫応答等による有害事象の発生の予見
・免疫細胞の機能制御による細胞治療への応用
・iPS・幹細胞、がん細胞の機能制御による再生治療、がん治療への応用
想定される用途
・免疫関連疾患のコンパニオン診断薬
・ワクチン治療の免疫モニタリングマーカー
・免疫体質の改善薬
- 製造技術
6)道産カラマツによるくるいと割れの少ない住宅用柱の開発
北海道立総合研究機構(森林研究本部 林産試験場) 技術部 生産技術グループ 研究主幹 中嶌 厚
新技術の概要
北海道産カラマツ人工林材は産業用資材・合板・パルプなどに利用されていますが、今後は建築用材としての用途拡大が課題です。そこで、住宅用の管柱としてくるいと割れの少ない心持ち正角材の乾燥技術を開発しました。
従来技術・競合技術との比較
現状の乾燥技術では、概ね柱サイズより大きい構造材内部までの均一な乾燥が難しく、住宅の高気密化や冷暖房等により過乾燥化が進むため、構造材にくるいや割れが生じてトラブルとなるケースがあります。本技術では、柱内部も適正に乾燥するため、居住環境に適応できかつ割れの少ない管柱が提供できます。
新技術の特徴
・柱の内部含水率を平均含水率から推定し、住宅使用中にくるいが生じないように内部含水率を15%以下とした乾燥材
・蒸煮、一次乾燥、二次乾燥を順次行い、内部含水率を低下させるとともに、表面割れ・内部割れの発生を抑えた乾燥技術
・材長3mの柱の表面割れの平均面積が10㎠以下で、材長中央部付近の内部割れの平均総長さが15mm以下の乾燥材
想定される用途
・在来軸組工法住宅の柱や梁桁
・カラマツ以外にもくるいや割れの発生が懸念される、例えば北海道産トドマツやアカエゾマツ等に適用可能性がある
関連情報
・サンプルの提供可能
・展示品あり(カラマツ管柱(割れなし)(表面・内部割れあり)の材長20cm程度のサンプル材3本
- 材料
7)金属錯体を用いた飽和炭化水素吸着分離材料の開発
北海道大学 電子科学研究所 附属グリーンナノテクノロジー研究センター 准教授 野呂 真一郎
新技術の概要
炭素数の同じ飽和炭化水素と不飽和炭化水素の混合ガスから飽和炭化水素を高選択的に吸着分離できる金属錯体分離材料を製造する技術、および繰り返しガス吸脱着に耐えうる金属錯体成形体作製技術を開発した。
従来技術・競合技術との比較
飽和炭化水素を選択的に吸着する既存材料はこれまでほとんどなかった。本発明技術により、飽和炭化水素を高選択的かつ省エネルギーで吸着分離できる。
新技術の特徴
・従来材料では分離困難であった飽和炭化水素の分離が可能
・繰り返しガス吸脱着に耐えうる成形体作製技術
・省脱着エネルギー
想定される用途
・炭化水素ガス精製
・ガスセンサー
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
8)レトルト食品に緑色を付与できる天然素材~紅藻ダルスの特性
函館地域産業振興財団(北海道立工業技術センター) 研究開発部 食産業技術支援グループ 研究主査 木下 康宣
新技術の概要
我国で産業利用されていない海藻の一つにダルス属がある。これは紅藻に分類される海藻で、収穫直後は赤紫色を呈しているが、特定条件で加熱を行うと緑色化し、120℃で処理しても緑色が失われないことを見出した。
従来技術・競合技術との比較
様々な食品でネギやワカメなどの緑色食材が使われるが、その緑色は熱に弱く加熱殺菌により失われやすい。この色合いの保持効果が期待される添加物もあるが、レトルト食品で緑色を保持することは実現できていない。
新技術の特徴
・未利用海藻を使って、加熱に強い緑色素材を提供できる
想定される用途
・過酷な加熱殺菌を施すレトルト食品に緑色を添えることができる
・二次殺菌を施すチルド食品へ安定した緑色を添えることができる
・冷凍食品などの調理型加工食品に鮮やかな緑色を添えることができる
関連情報
・サンプルの提供可能
・展示品あり(①紅色を呈する原藻、②本技術で処理した緑色を呈するボイル品、③緑色が保持されているレトルト品)
- アグリ・バイオ
9)麹および耐塩性微生物の発酵による高品質水産調味料の製法
北海道立総合研究機構(産業技術研究本部 食品加工研究センター) 食品工学部 食品工学グループ 主査 吉川 修司
新技術の概要
魚介類を原料とし、食塩と麹に加えて3種類の耐塩性微生物(酵母および乳酸菌)で加温発酵することにより、色が薄く、うまみが豊富で、魚臭さが顕著に抑制され、しかも芳香が付与された魚醤油を製造する技術
従来技術・競合技術との比較
・魚臭さに代表される魚醤の不快臭が改善される・麹を使用して発酵を加速させた場合に問題となる色調の褐変が改善される・発酵開始時に添加する微生物スターターにより、野生酵母などの増殖を抑制できる・うま味の豊富な魚醤油が従来(1~2年)の1/4以下の時間で製造可能となる
新技術の特徴
・魚臭さに代表される魚醤の不快臭が改善される
・醤油様の芳香が付与される
・麹を使用して発酵を加速させた場合に問題となる色調の褐変が改善される
想定される用途
・薄い色調が要求される加工食品の調味
・ドレッシングなど非加熱食品の風味向上(従来の魚醤油などでは不快臭なため非加熱使用は困難)
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
国立大学法人北海道大学 産学連携本部
TEL:011-706-9561FAX:011-706-9550Mail:jigyomcip.hokudai.ac.jp
URL:http://www.mcip.hokudai.ac.jp/
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