海洋研究開発機構 新技術説明会
日時:2014年11月25日(火)
会場:JST東京本部別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)リグニンからフェニルプロパン系モノマーを微生物/酵素で作る
JAMSTEC 海洋生命理工学研究開発センター 深海バイオ応用研究開発グループ 主任技術研究 大田 ゆかり
新技術の概要
木質バイオマスのリグニンは石油に依存しない芳香族化合物原料として期待されている。我々は、微生物および酵素を活用して、プラスチック原料にもなるフェニルプロパン系(C6-C3芳香族)モノマーをリグニンから特異的に直接生産する技術を開発した。
従来技術・競合技術との比較
リグニンの高温高圧処理で得られる芳香族化合物は複雑な混合物であり、高機能物質として有効利用するには至っていない。またリグニン分解能が良く知られている白色腐朽菌を利用した場合も、反応生成物の再重合やCOZへの代謝変換が起こるため、反応生成物の回収利用には適さない。我々が発見した新しい微生物や酵素群を用いて初めてC6-C3芳香族モノマーをバイオマスから特異的に直接生産することが可能となった。
新技術の特徴
・未利用の大きなバイオマスであるリグニンを、深海微生物の持つ優れた機能を利用して変換する技術
・リグニン・リグニン関連物質をフェニルプロパン構造を有する有用化合物に変換する新規微生物・酵素の提供
・フェニルプロパン構造を有する有用化合物を化学処理することにより機能性樹脂を製造する技術
想定される用途
・機能性樹脂(樹脂、接着剤、レジスト材料、医薬品原料など)
・グリーンバイオケミストリー
・バイオマス利活用
関連情報
・サンプルの提供可能(応相談)
- アグリ・バイオ
2)細胞の増殖抑制遺伝子の開発と細菌の再生法
JAMSTEC 海洋生命理工学研究開発センター 深海バイオ応用研究開発グループ 主任研究員 小林 英城
新技術の概要
本新技術は、人工的に低頻度コドンのみで合成した緑色蛍光蛋白質遺伝子を用いて、細菌、ウイルス、各種細胞の増殖を抑制させることが出来る。また、接合現象を利用した新しい細菌細胞が構築できる。
従来技術・競合技術との比較
コドン使用頻度という生物が容易に変化できない因子を用いているため、生物種を問わず、変異しやすいウイルスの増殖も抑制できる。一方、細菌合成は、様々な形質を一回で多種の変換が可能である。
新技術の特徴
・無細胞系のミニセルを用いた有用物質の生産系の提供
・低頻度コドンの利用による標的細胞の増殖を抑制する方法
想定される用途
・有用物質の生産
・ウイルスの増殖抑制剤及び増殖予防剤
・がん細胞の増殖抑制剤
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
3)深海の極限環境にヒントを得た超高速ナノ乳化プロセス
JAMSTEC 海洋生命理工学研究開発センター 研究開発センター長 出口 茂
新技術の概要
高温・高圧の極限である超臨界状態の水が様々な油と自由に相溶する性質を利用して、10秒以内という短時間でナノエマルションを製造するプロセスを開発した。
従来技術・競合技術との比較
MAGIQと呼ばれる新プロセスは、10秒以内にナノ乳化、乳化物組成を自由に選択可能、O/WとW/Oの双方に適用可能、乳化剤の選択の幅が広いなど、従来法にはない様々な特徴を有する。
新技術の特徴
・ナノリアクター、ドラッグキャリアーなどに応用可能な超微細油滴の製造
・超臨界水を利用したソフトナノマテリアルの合成
・油分子の自己組織化によるナノ液滴の生成
想定される用途
・乳化を必要とする広範な産業分野で利用可能(化学工業、インク・塗料、医薬品、食品、ナノテクノロジーなど)
関連情報
・外国出願特許あり
- エネルギー
4)深海に眠る資源を開拓するアイデアと戦略
JAMSTEC 深海・地殻内生物圏研究分野 分野長 高井 研
新技術の概要
深海底に眠る金属資源やエネルギー資源を開発する際、資金や人材といったリソースをジャブジャブ投入する物量作戦は誰しも思い付く方法です。我々は最先端の科学研究からスピンオフされた新しい海底資源の開発法を考えています。そのアイデアとそれを具現化する戦略についてお話しします。
従来技術・競合技術との比較
持続的低環境負荷海底金属資源養殖技術は、従来の方法とは全く異なる「獲る海底資源から育てる海底資源」への転換をもたらす画期的なアイデア。熱水ー海水燃料電池も全く新しい方法による深海熱水発電法であり、他の技術との組み合わせにより画期的な複合深海熱水発電法を構築できる。
新技術の特徴
・持続的低環境負荷海底金属資源養殖技術
・熱水と海水を燃料とする燃料電池
・未利用海底資源開発
想定される用途
・海底資源開発
・海底発電
・音響インターネット技術との組み合わせによる海底ステーション
関連情報
・外国出願特許あり
- 情報
5)海中機器制御システム
JAMSTEC 海洋工学センター 海洋技術開発部 探査機技術グループ グループリーダー代理 石橋 正二郎
新技術の概要
海中高圧環境下における画像補正法、及び情報の共有化により高信頼性を保障するマルチCPU制御システム。
従来技術・競合技術との比較
深海用光学機器では通常、保障していない海水と水圧がもたらす複合的な画像歪みを補正する。複数のCPUをネットワーク制御し、システム情報を共有化することによる負荷分散、機能補填、自己復帰に関する機能。
新技術の特徴
・海中高圧環境下における画像補正
・海中探査機等の高信頼性制御システム
想定される用途
・極限環境認識
・極限環境制御
- 計測
6)カルサイトの双晶変形を利用した応力計測技術
JAMSTEC 数理科学・先端技術研究分野 分野長 阪口 秀
新技術の概要
本技術は応力の度合いによって双晶変形が進展し応力が解放された後も残るカルサイトの性質を利用して、電気を用いずに材料内で過去に生じた最大応力を見積もる技術である。
従来技術・競合技術との比較
電気を用いない応力計測技術として競合するものに応力発光体が挙げられるが、応力発光体は応力解放によって光が消えるため、過去の履歴が残らない点で異なる。
新技術の特徴
・コンクリートにおける内部応力の履歴を測定する方法
・メンテナンスフリーのコンクリート構造物の応力履歴センサー
・単結晶カルサイトを容易に大量生産する方法
想定される用途
・ビルなどのメンテナンス
・高速道路や橋、防波堤などのコンクリート構造物のメンテナンス
・コンクリート構造物の構造解析
関連情報
・外国出願特許あり
- 計測
7)大気や水など流体の流れと熱の解析及び可視化技術
JAMSTEC 地球情報基盤センター 情報システム部 HPC応用グループ 特任技術主幹 福井 義成
新技術の概要
・気象や気候現象を全球から領域、都市まで扱えるようなシミュレーションモデルを用いて大気や水など流体の流れと熱を解析する一連の成果であり、都市における熱の出入りや雲形成、樹木の影響などを解析する手法。・シミュレーション結果の3次元可視化を容易にするための手法。
従来技術・競合技術との比較
・3次元都市キャニオンを扱え、建物の形状配置の制限無。遮蔽物等を考慮した放射エネルギーの計算可。広域を領域分割し、領域内外の放射計算を結合して、効率的に計算し、近くの山丘等の影響も考慮可。・3次元可視化が高速に可。
新技術の特徴
・再開発や都市計画等を行う際の事前影響評価が可能
・都市型豪雨の予測
・2次元画像を用いた簡易な3次元可視化
想定される用途
・都市開発の事前影響評価(ゼネコン、コンサル、自治体の都市整備局や港湾局など)
・都市型豪雨の最適な予報(気象予報会社、コンサルなど)
・シミュレーション結果の3次元可視化だけでなく、ゲーム分野や医療分野での高速かつ低負荷での画像の3次元処理
関連情報
・外国出願特許あり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
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