金沢大学 新技術説明会
日時:2014年08月22日(金)
会場:JST東京別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 医療・福祉
1)検査時間が短縮できるABR聴覚閾値推定法~新生児の聴覚検査へ~
金沢大学附属病院 検査部 副臨床検査技師長 大江 宏康
新技術の概要
新生児聴覚スクリーニングから脳幹脳死判定まで、本発明は、聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response;ABR)検査に対して有用な聴覚閾値推定法を提供する。本発明は、高精度でありながら、ABRの検査所要時間を大幅に短縮することができ、被験者の負担を軽減することができる。
従来技術・競合技術との比較
本発明によるABR聴覚閾値検査は、検査所要時間を従来法の半分から3分の1に短縮できる。本発明による正確なABR波形の同定により、検査の結果の判定に経験を要しない。また、検査中断による再検査の必要がない。
新技術の特徴
・最大エントロピー法(数学的手法)によるノイズ処理技術
・大脳・脳幹誘発反応における刺激応答特性の高精度な解析法
・覚醒時、自由行動下における生体信号の記録解析
想定される用途
・新生児聴覚スクリーニング
・術中神経モニタリング
・法的および臨床的脳幹脳死判定
関連情報
・サンプルの提供可能
- 計測
2)カメラ方向からのみ光を出す高精度3次元形状計測
金沢大学 理工研究域 機械工学系 教授 安達 正明
新技術の概要
段差を含む粗面に波長可変レーザー光を照射し、参照光との干渉光強度をカメラで取込み、光路差が不規則に変る時の光強度変化から干渉位相を抽出する。波長を変えた時の位相変化量から3次元形状を高精度に計測する。
従来技術・競合技術との比較
従来、光強度変化から干渉位相を抽出するには光路差は不規則に変わってはいけなかった。新技術では光路差は不規則に変わっても良い。その結果、精密測定室以外でも3次元形状計測をカメラ方向から行えるようになった。
新技術の特徴
・光路差が不規則に変化する状況下で使える
・測定高さ範囲約10mmを分解能10μmで測定できる
・機械的に0.01mm以上動かす部分を持たない
想定される用途
・微小振動や空気擾乱が残る環境での電子基板等の3次元形状計測
・穴奥部の底面の形状測定(開口部は直径20mmで奥行き150mmぐらい)
・縞投影等の三角測量では影ができて測定できない物体の3次元形状計測
- 計測
3)生体や工業材料に含まれる微量ラジカルの完全電子式センサチップ
金沢大学 理工研究域 電子情報学系 教授 北川 章夫
新技術の概要
化学プロセスを用いない電子式ラジカルセンサ。従来は、大型の装置が必要だった電子スピン共鳴測定法を1mm以下のチップ上に集積化する技術を提案する。材料劣化のその場観察や、マイクロリアクタの化学分析にも利用できる。
従来技術・競合技術との比較
活性酸素などのフリーラジカルを高感度検出する唯一の方法として電子スピン共鳴法が知られているが、従来は、装置が大型で測定に時間がかかった。提案技術により、同装置を1mm以下に縮小したセンサチップの上でリアルタイムにラジカルを微量分析することができる。
新技術の特徴
・磁界とマイクロ波を用いた完全な電子式測定法
・標準的な集積回路プロセスで製造可能
・電圧掃引によるスペクトルから反応性物質の種類と濃度の情報が得られる
想定される用途
・マイクロ流路による化学計測
・生体の活性酸素測定
・有機材料の劣化モニタリング
関連情報
・センサチップを試作中
- エネルギー
4)極値探索法を利用した太陽光発電の最大電力追従制御
金沢大学 理工研究域 電子情報学系 教授 山本 茂
新技術の概要
極値探索法は限られた情報の下で極大点あるいは極小点を動的に実時間で探索する手法である。この極値探索法を太陽光発電パネルの出力電力を自動的に最大化することを目的とする最大電力追従制御に適用し、日射量の変動に柔軟に対応することを可能にする。
従来技術・競合技術との比較
太陽電池パネルの出力-電圧特性や、電流電圧特性を事前に知る必要がない。特に部分影の対応法と極値探索法の欠点を補う方法を考案した。
新技術の特徴
・出力変動にも瞬時に対応できる
・部分影などに対応できる
・構成が簡易
想定される用途
・太陽光発電システムのパワーコンディショナー
- 製造技術
5)転動・摺動作用を組み合わせたバニシング加工法
金沢大学 理工研究域 機械工学系 助教 岡田 将人
新技術の概要
金属表面を高効率に平滑処理できるバニシング加工において、ローラによる転動作用と摺動作用を制御可能な加工方法を開発した。また、自由曲面が加工可能なダイヤチップバニシング加工法を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来のローラバニシング加工では、加工対象面に転動作用を付与することが主であったが、開発したローラバニシング加工法では、転動に加え摺動作用も同時に付与できる。また、円柱内外周面に対し用いられていたダイヤチップバニシング加工法を自由曲面上で適用可能とした。
新技術の特徴
・金属製品表面へのひずみ付与による改質層生成
・金属製品表面への熱的作用による高硬度層の生成
想定される用途
・柱状金属製品表面の平滑処理
・樹脂成形金型表面の平滑処理
- 材料
6)遠心力を利用したサブミクロン粒子除去用エアフィルタ
金沢大学 理工研究域 自然システム学系 教授 大谷 吉生
新技術の概要
従来のエアフィルタでは捕集が困難なサブミクロン粒子を遠心力を利用して、効果的に除去する技術。
従来技術・競合技術との比較
回転する円筒状フィルタの軸方向に粒子を通し、サブミクロン粒子を効果的に除去、排出する技術。
新技術の特徴
・翼列を付け、 モータで回せば圧損ゼロのフィルタが実現
・捕集粒子の再飛散がないエアフィルタ
・洗浄液を満たして回転させれば、フィルタの自動洗浄も可能
想定される用途
・PM2.5除去用フィルタ
・オイルミストの除去、回収
・分級径を可変な粒子分級装置
- 材料
7)エレクトロスプレーを利用した高効率な発光性ナノカーボン製造法
金沢大学 理工研究域 自然システム学系 助教 比江嶋 祐介
新技術の概要
本技術では、エレクトロスプレーを用いて原料溶液を噴霧し、生成した液滴中で発光性ナノカーボン材料を合成する。マイクロメートルサイズの微小な液滴を反応場として利用し、その液滴自体も制御することで、従来法よりも高度なナノカーボンの反応制御を実現する。
従来技術・競合技術との比較
本技術は、従来の液相中での合成法よりも生成する不純物が少なく、発光波長の制御も比較的容易である。従来のレアメタルなどの希少資源を利用した発光材料とは異なり、本技術で合成される発光性ナノカーボンは炭素由来であり、原料も安価である。
新技術の特徴
・反応制御性が高い
・不純物が少なく、水への分散性が高い
・発光波長が可変
想定される用途
・ディスプレイ等の発光体
・インクや塗料
・生化学用蛍光プローブ
関連情報
・展示品あり(本技術で合成した発光性ナノカーボンの溶液)
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