農研機構 新技術説明会
日時:2015年03月03日(火)
会場:JST東京本部別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)高品質なグルテンフリー米粉パンと玄米粉パン製造を可能にする新技術
農研機構 作物研究所 稲研究領域 米品質研究分野 上席研究員 鈴木 保宏
新技術の概要
米粉に身近な材料である米麹を添加することで、膨らみの向上した100%米粉パンを作ることができます。また、膨らみや食味が良く、機能性成分を多く含む玄米粉パンに適した玄米粉を簡単に製造することができます。
従来技術・競合技術との比較
100%米粉パンは増粘多糖類等を添加するため、消費者の添加剤に対する抵抗感や、食味・食感の低下、コスト高等の問題がありました。一方、玄米粉を用いた米粉パンでは十分な膨らみが得られないという問題点がありました。
新技術の特徴
・身近な材料“米麹”を用いて、かつ簡易に100%米粉パンを製造する方法
・損傷デンプン含有率が低く、粒度の細かい玄米粉を調整する方法
・膨らみと食味が良く、米粉臭さがない玄米粉パンを製造する方法
想定される用途
・100%米粉パンは、欧米等を中心に500万人以上とも言われている小麦にアレルギーがある方も食することができる。
・玄米粉は、米国における小麦全粒粉のように機能性成分を多く含むので、健康的な食品としての利用が可能である。
・玄米粉パンは、風味が良い。
関連情報
・麹等カビによる前発酵工程を含む米粉パンの製法(2012-115197)
・新規なパン用玄米粉製造方法及び該方法で製造された玄米粉(2012-010660)
- 機械
2)野菜等の出芽を安定化させるために畝の上に溝を成形する装置
農研機構 東北農業研究センター 畑作園芸研究領域 主任研究員 松尾 健太郎
新技術の概要
野菜等の直まき栽培において、畝立てと同時に畝の上部に溝を確実に成形し、この溝に施肥と播種を行う技術である。これによって、過湿や乾燥および低温による出芽の低下を防止することができる。
従来技術・競合技術との比較
ハウス栽培においては、低温期に出芽を促進させる方法として溝の底に播種する溝底播種方法があるが、露地圃場で畝を立てずに溝を作ると溝に水が溜まり、逆に出芽を抑制する可能性がある。また、畝を形成した後に溝を作ろうとすると畝を崩し、良好な溝を形成されない。
新技術の特徴
・畝形成機の内側から溝形成部が外側に伸びており、確実に畝の上部に溝を形成する
・溝に局所施肥をして、薄く覆土した後に播種して再度覆土する工程を1度にできる
想定される用途
・圃場に直接、種をまき栽培する場合
・移植栽培においても、低温期での栽培時の畝立ておよび局所施肥を行う場合
- アグリ・バイオ
3)GABA含有チーズを製造するための乳酸菌発酵スターター
農研機構 畜産草地研究所 畜産物研究領域 上席研究員 野村 将
新技術の概要
本チーズスターターは乳酸菌3株の混合培養物であり、チーズの風味をよくする株、乳酸生成力が強い株、およびGABA生成力の強い株が長期間安定した比率で存在し、常に均一なGABA含有チーズの製造を可能とする。
従来技術・競合技術との比較
乳製品にGABAを生成させるには、通常の発酵スターター想定される用途の他にGABA生成菌を各々用意し原料乳に混合接種する必要があったが、本3種混合スターターを用いれば、1種類の培養物を接種するだけで、GABA含量が高く風味に優れたチーズの製造が可能となる。
新技術の特徴
・血圧降下作用やストレス軽減作用が期待できるGABA含有チーズを作ることができる
・GABA含量が高い風味の良いチーズを安定して製造できる
想定される用途
・乳製品へのGABA付加
・ダイレクトバットセットスターターの製造・販売
・漬け物等の乳酸発酵食品へのGABA付加
関連情報
・展示品あり(GABA含有チーズの実物展示)
- アグリ・バイオ
4)抗酸菌の増殖促進剤
農研機構 動物衛生研究所 細菌・寄生虫研究領域 主任研究員 永田 礼子
新技術の概要
抗酸菌にウシ腸管C型レクチンであるRegⅢγの遺伝子組換え体を添加し、数時間前処理後、培地へ接種することにより、抗酸菌の増殖が促進されることを発見した。結核菌やヨーネ菌等の遅発育抗酸菌を迅速かつ高感度に検出する培養法への応用が期待できる。
従来技術・競合技術との比較
抗酸菌増殖促進剤で前処理を行う寒天培養法や液体培養法は、前処理を行わない従来法と比較して、菌検出までの日数が5日以上短縮される。また、抗酸菌種によっては従来法に比べ10倍以上多くの菌数が検出でき、高感度の培養法となる。
新技術の特徴
・従来、抗菌物質として知られている腸管C型レクチンRegⅢγに、抗酸菌増殖促進活性があることを発見
・培養前にウシRegⅢγで検体を処理することにより、菌の増殖が速まり、検出される菌数が10倍以上となるため、効率の良い抗酸菌培養検査が可能
想定される用途
・結核、鳥型結核菌感染症(MAC症)、ヨーネ病等の培養検査法への応用
・抗酸菌不活化試験等における効果の判定試験への応用
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
5)抗菌シルクの開発
農研機構 動物衛生研究所 動物疾病対策センター 主任研究員 土屋 佳紀
新技術の概要
遺伝子組換えカイコの作出により、天然の抗菌タンパク質であるブタリゾチームを含有する抗菌シルクを開発した。絹糸の表層にブタリゾチームが蓄積され、食塩水(汗など)に浸ると糸から容易に溶出して高い抗菌性を発揮する。
従来技術・競合技術との比較
従来、細菌感染症の治療には抗生物質が使用されて来たが、耐性菌の出現により、抗生物質が効かない感染症が問題となって来ている。ブタリゾチームは抗生物質と作用機序が異なるので耐性菌にも効果がある。
新技術の特徴
・細菌を溶解する強力な抗菌性を有する絹糸である。
・ブタリゾチームは絹糸に含有されることで熱や乾燥に安定となっており、室温での長期保存も可能である。
・ブタリゾチームは通常は絹糸中に留まり、汗など食塩水に浸漬された時に絹糸から溶出して抗菌性を発揮する。
想定される用途
・細菌感染症の治療薬
・ガーゼや包帯、マスクなど医療用品
・人工血管などの素材
関連情報
・サンプルの提供可能
- アグリ・バイオ
6)食品の抗アレルギー活性評価に利用できるマウスモデルの紹介
農研機構 食品総合研究所 食品機能研究領域 機能性成分解析ユニット 主任研究員 後藤 真生
新技術の概要
ヒトと同じ機序でアレルギーを発症するマウスモデルを開発し、アレルギー症状の強さを指標として食品成分の抗アレルギー活性評価を可能にした。本技術を用いることで、食品等のアレルギー症状の抑制効果だけでなく、予防効果なども評価することができる。
従来技術・競合技術との比較
アレルゲン特異的な免疫細胞を持つマウスを用い、アレルゲンの経口投与でアレルギーを発症させることができるモデルである。試料の投与時期を任意に決定できるため、予防・炎症抑制など様々な抗アレルギー活性が評価可能。評価指標には症状の重症度を用いるが、その測定法も、これまでの類似技術より精度が高く、測定時間も1/10に短縮できる。
新技術の特徴
・ヒトの食品アレルギー同様に、アレルゲンの経口投与のみでアレルギー体質を誘導。
・アレルギー性炎症の重症度を患部が発する蛍光の強さにより定量することから、精度が高い。
・感作から発症までを模し、抗アレルギー活性の評価は重症度を指標に行うため、様々な作用機序の活性を検出可能。
想定される用途
・食品や漢方薬など様々な成分を含む試料の抗アレルギー活性やアレルギー予防活性の評価
・免疫調節機能を有する食品等の探索
関連情報
・展示品あり(成果の概略を示したフライヤー)
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