理化学研究所 新技術説明会(2)
日時:2014年06月13日(金)
会場:JST東京別館ホール(東京・市ヶ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- 創薬
1)グリオブラストーマ治療抗体薬の開発
独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター 創薬抗体基盤ユニット 基盤ユニットリーダー 竹森 利忠
新技術の概要
人工グリオブラストーマ幹細胞(GIC)よりGIC特異的膜タンパク質Glimを同定し、その発現がグリオーマの悪性度と相関していることを見出した。Glimを標的とする悪性グリオーマ治療抗体薬の開発を目指し、取得した抗Glim抗体を用いて種々の検討を行っている。
従来技術・競合技術との比較
グリオブラストーマを含む悪性グリオーマの外科的手術による奏効率は芳しくなく、安全性の高い優れた治療法の開発が求められている。本発明はグリオーマの悪性度と相関する膜タンパク質Glimを標的とする新規抗体医薬の基盤を提供するものである。
新技術の特徴
・グリオーマの悪性度に相関が認められる膜タンパク質が標的である
・抗体−薬物複合体による抗体医薬開発も可能
想定される用途
・グリオブラストーマ治療薬
・グリオーマ診断薬
・Glimの発現が認められる他のがん種に対する治療薬
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
2)新規がんワクチン「人工アジュバントベクター細胞」の開発
独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター 免疫細胞治療研究チーム チームリーダー 藤井 眞一郎
新技術の概要
がん抗原由来mRNAとNKT細胞リガンド受容体mRNAを導入した人工アジュバントベクター細胞を開発した。自然免疫と獲得免疫の両者を誘導できるaAVCは、がんワクチンとして動物モデル実験において優れた抗腫瘍効果を示した。
従来技術・競合技術との比較
既存のがんワクチンには高額な費用、HLA拘束性や自家細胞利用による患者の限定、不十分な臨床効果、等様々な課題が残されている。aAVC技術はこれらの問題を解決しうる新たながんワクチンの開発につながるものである。
新技術の特徴
・NKT細胞療法と樹状細胞免疫療法の両者の効果が得られる方法で、従来にない優れた抗腫瘍効果を示す
・大量生産、保管、輸送といった通常の薬のビジネスモデルが適用可能
・抗原を変えることにより、他のがん種や感染症等にも展開可能
想定される用途
・がんワクチン
・感染症治療ワクチン
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
3)急性骨髄性白血病幹細胞の分子標的医薬の開発
独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター ヒト疾患モデル研究グループ グループディレクター 石川 文彦
新技術の概要
急性骨髄性白血病(AML)幹細胞で発現している治療標的候補分子の探索を行い、リン酸化酵素「HCK」を同定した。化合物ライブラリーのスクリーニングによって見出したHCK低分子阻害剤は、細胞レベルおよびモデル動物系で、白血病細胞の根絶が期待できる高い有効性を示した。
従来技術・競合技術との比較
AMLは原因となる遺伝子異常が多岐にわたり治療薬開発が困難であるが、本化合物では実際に再発している患者由来の検体を用いた検証を行っている。従来の抗がん剤に抵抗性を示す、最も予後不良な遺伝子変異であるFLT3-ITD症例に対しても、他薬剤とは異なる有効性が認められている。
新技術の特徴
・新規標的分子に基づいたAML治療薬の開発である
・ヒト化マウスを用いた系で、優れた治療効果を示すことを確認している
・特に予後不良なAMLの幹細胞レベルでの治療効果を確認した
想定される用途
・単剤、及び他剤との併用によるAML治療薬
・診断薬との組み合わせによる、本剤が有効なFLT3-ITD変異症例のAML治療薬
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
4)C型肝炎に伴う肝硬変治療抗体薬の開発
独立行政法人理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター 微量シグナル制御技術開発特別ユニット 特別ユニットリーダー 小嶋 聡一
新技術の概要
C型肝炎ウイルス(HCV)感染に伴う肝硬変において、HVC NS3タンパク質のTGF-β疑似活性が肝線維化に深く関与することを見出し、本活性を抑制する抗体の開発を行った。得られた抗NS3抗体は、マウスモデル実験においてHCV誘導肝線維化を半分以下に阻害した。
従来技術・競合技術との比較
HCV感染の既存薬物による治療成績は近年向上しているが、未だ無効例も多く、新たな治療薬の開発が望まれている。本技術は新規ターゲットに基づく薬剤開発の可能性を提供し、既存薬剤との併用によって一層の治療成績の向上が期待できる。
新技術の特徴
・NS3プロテアーゼドメインの、プロテアーゼ活性以外の作用に着目した発明である
・新規薬剤ターゲットであり、 既存薬剤無効例への効果も期待できる
想定される用途
・HCV治療における既存薬物との併用薬
・既存薬物無効例に対するHCV治療薬
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
5)GP2タンパクを標的とする新規経口粘膜ワクチンの開発
独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ グループディレクター 大野 博司
新技術の概要
腸管上皮M細胞上に発現するタンパク質「GP2」が、腸管免疫応答の誘導に重要な役割を果たす抗原取り込み受容体であることを明らかにした。GP2をデリバリーシステムとして利用することで、新たな経口粘膜ワクチンの開発が可能となる。
従来技術・競合技術との比較
粘膜ワクチンはIgGと分泌型IgAの両者の産生を促し、感染予防により適している。GP2を標的として抗原分子を粘膜免疫系に効率良く受け渡すことで、樹立の難しかったインフルエンザウイルスをはじめ、多くの病原体に対する効果的な経口粘膜ワクチンの開発につながる。
新技術の特徴
・種々の抗原に関する効率的な経口粘膜ワクチンの開発が可能
・弱毒生ワクチンである現行の粘膜ワクチンで問題となる、ワクチン原性の感染の危険を回避できる
想定される用途
・インフルエンザ、その他感染症の予防に用いる経口投与粘膜ワクチン
・アレルギー症状軽減のための経口投与粘膜ワクチン
・GP2を標的とした薬物送達に基づく医薬品
- アグリ・バイオ
6)新規アミノ酸の組込みによる酵素の構造安定化技術
独立行政法人理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター 生命分子制御研究グループ グループディレクター 坂本 健作
新技術の概要
遺伝暗号の改変によって、新規アミノ酸(非天然のアミノ酸)をタンパク質の望みの位置に組込むことが可能になった。ハロゲン化チロシンを組込むことで酵素などのタンパク質の構造安定性を増大することができる。
従来技術・競合技術との比較
タンパク質・酵素の構造安定化には、従来、類縁タンパク質を好熱性細菌から見出すか、進化的手法によって改変する以外の方法がなかった。特定のタンパク質を目的とする場合にはいずれも得られる結果が不確かである。
新技術の特徴
・目的のタンパク質の構造や性質に影響を与えずに安定化が可能である。
・安定化したタンパク質の大量生産に適している。
・立体構造情報を利用して簡単に安定化を試みることができる。
想定される用途
・バイオロック(タンパク質性医薬品)の性質改善。
・不安定なタンパク質の安定化によるタンパク質科学の促進。
・工業用酵素の熱安定化。
- 医療・福祉
7)造血幹細胞(HSC)と白血病幹細胞(LSC)との識別を可能とする白血病幹細胞マーカー:再発(微小残存病変)の早期診断
独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター ヒト疾患モデル研究グループ グループディレクター 石川 文彦
新技術の概要
急性骨髄性白血病の患者由来の白血病幹細胞(LSC)発現プロファイリングを網羅的に解析し、正常の造血幹細胞(HSC)と区別可能なLSC特異的マーカー群の同定に成功し、再発の早期発見に役立つ精度の高い診断方法を発明した。
従来技術・競合技術との比較
従来のAMLを標識する抗原分子は、幹細胞レベルでの解析に基づくものでなく、また、白血病幹細胞と正常造血幹細胞の違いを明確にできていなかった。本発明は、非幹細胞とLSCとの識別のみならず、これまで識別が困難とされてきた正常のHSCとLSCとの識別を可能とする。
新技術の特徴
・HSCとの識別を可能とするLSC特異的マーカー群を提供
・本発明のマーカー群を利用した、急性骨髄性白血病の発症を診断するデバイス開発
・白血病幹細胞の検出を指標とした、急性骨髄性白血病の治療効果をモニタリングするデバイス開発
想定される用途
・急性骨髄性白血病の初発または再発を予測するための試験方法
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
8)粒子線治療計画の三次元検証ツールとしてのナノコンポジットゲル線量計
独立行政法人理化学研究所 仁科加速器研究センター 運転技術チーム 基礎科学特別研究員 前山 拓哉
新技術の概要
粒子線などの放射線がん治療の高度化により、より洗練された三次元線量分布が作成可能となってきています。これに対して、放射線がん治療で計画される三次元線量分布を容易に検証可能な線量計の開発が、放射線治療施設から強く求められています。本件で開発したゲル線量計とは線量に応じて進む化学反応を空間的に保持し、照射後にMRI測定を行うことで、三次元情報を読み出し、線量分布に換算するものです。
従来技術・競合技術との比較
これまでの課題として線量計感度の線質依存性と反応後の生成物の拡散があり、特に粒子線治療での線量評価が困難でありました。この課題に対して、我々は水に可溶なナノクレイをゲル線量計に添加し、反応生成物の拡散を抑制し、水溶液線量計の知見を基に線量計感度が線質に依存しないゲル線量計の開発に成功しました。
新技術の特徴
・粒子線の三次元線量評価を可能とする唯一の線量計
・生体と同様に水が主成分である
・線量計自体をファントムとして用いることで治療計画の検証が可能である
想定される用途
・放射線治療、特に粒子線治療における三次元線量分布のQA・QC
関連情報
・サンプルの提供可能
・照射後のゲル線量計サンプル2-3点
・外国出願特許あり
- デバイス・装置
9)多種蛍光イメージからの個別色素濃度推定法
独立行政法人理化学研究所 光量子工学研究領域 画像情報処理研究チーム チームリーダー 横田 秀夫
新技術の概要
多重蛍光染色した試料のスペクトルイメージングデータに対して、FRET等の非線形現象に対応した蛍光色素濃度を推定する手法である。
従来技術・競合技術との比較
共焦点レーザー顕微鏡等を用いた、多重蛍光染色した試料に対してスペクトルイメージングにより多数の試料を同時に観察して標識色素を分離する手法が用いられている。これらの手法はリニアアンミキシングとして実用化されているが、FRET等の現象により色素間で蛍光反応が生じる際には分離することが出来ない。本手法は非線形分離の手法により、多数の色素を分離する手法である。
新技術の特徴
・スペクトルイメージングでの色素分離
・蛍光色素の非線形反応の分離
・多種蛍光分離
想定される用途
・ライブセルイメージング
・蛍光分析
- デバイス・装置
10)多色・高速・超解像共焦点ライブイメージング顕微鏡
独立行政法人理化学研究所 光量子工学研究領域 ライブセル分子イメージング研究チーム チームリーダー 中野 明彦
新技術の概要
高速スピニングディスク式共焦点スキャナと多色分光ユニットを用い、さらに冷却イメージインテンシファイアと高感度カメラの組み合わせで高S/N顕微画像を取得する。対物レンズの位置の精密高速制御により3次元で情報化する。これを画像情報処理して超解像を得る。
従来技術・競合技術との比較
スピニングディスクと高増倍高精度画像検出系を組み合わせることによって精密な3D画像を高速で得るため、デコンボリューション処理により<50 nmの超解像が達成できる。撮像速度は3Dでサブ秒/コマ、完全同時多色観察が可能である。他の超解像顕微鏡に比べてライブ観察に圧倒的に優位である。
新技術の特徴
・<50 nm の超解像で高速3D動画を得る
・2-5種の蛍光プローブを用い、多色の完全同時観察が可能
・スピニングディスクの特性を生かし、褪色、ダメージの少ない長時間観察が可能
想定される用途
・生細胞内でのさまざまな生命現象を超解像ライブ観察
・細胞内ドラッグデリバリーの観察
・病原体、ウイルス等の感染の瞬間を捉え、免疫応答の機作を探る
お問い合わせ
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