京都大学 新技術説明会 <新技術概要【当日資料PDFあり】>
日時:2015年05月19日(火) 09:50~16:30
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)化合物を用いたシンプルかつ安価なヒトES/iPS細胞用培地
京都大学 物質-細胞統合システム拠点 NCBS-inStemサテライトラボグループ 特定拠点講師 長谷川 光一
新技術の概要
この培地は、ヒトES/iPS細胞の維持と増殖、ヒトiPS細胞の作成に使用します。培養にはフィーダー細胞や特殊な継代試薬を必要とせず、接着培養と浮遊培養の両方が可能です。この培地は、動物由来成分やbFGFやTGFβを含んでおらず、これまで報告されているどの培養液よりもタンパク質成分の種類と量が少ないため、より安定で安価にヒトiPS細胞を培養可能で、高品質で高安全性が求められる移植等への応用利用に適していると期待されます。
従来技術・競合技術との比較
近年、市販および利用されているヒトES/iPS細胞用の培養液で、最もタンパク質成分が少ないものはE8培地で、 このE8培地は4種のタンパク質を含んでいます。これに対し、今回開発した培地は2種しかタンパク質を含んでいないため、より品質管理が容易で、安価で安定してヒトES/iPSの培養と、iPS細胞株の作成が可能です。
新技術の特徴
・シンプルな培地で、医療現場で既に使用されている2種類のタンパク質しか含まない。
・市販の培地に2種のタンパク質と3種の化合物のみ添加するのみで、調整が容易。
・使用している化合物は市販物で、かつ合成が容易。
想定される用途
・ヒトES/iPS細胞を利用した基礎研究・薬剤スクリーニング
・ヒトiPS細胞の医療応用
・ヒトiPS細胞の作成と細胞バンク
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
2)抗うつ薬様作用を示す大豆由来の新しいペプチド
京都大学 大学院農学研究科 食品生物科学専攻 准教授 大日向 耕作
新技術の概要
大豆タンパク質を食品添加可能な酵素で処理した消化物から、抗うつ・抗不安薬様作用を示す新規ペプチドを同定した。経口投与で強力な効果を示す食品由来成分であるため、医薬品のみならず、サプリメントや健康食品、栄養関連食品への応用が期待される。
従来技術・競合技術との比較
ペプチド単体の経口投与における最少有効量は0.3 mg/kgであり医薬品に匹敵し、酵素消化物の場合でも30 mg/kgという低用量で効果を示す。市販の大豆タンパク質を食品添加可能な酵素で処理するため、低コストで大量生産が可能で、高い安全性が期待できる。
新技術の特徴
・意欲向上作用や精神的ストレス緩和作用を示すことが期待できる。
・吸収を前提としない消化管を標的とした新しい作用機構を介する。
・低用量で効果が認められる。
想定される用途
・健康食品・サプリメント
・健康補助食品
・高齢者用食品・介護食品
関連情報
・サンプルの提供可能
- アグリ・バイオ
3)生体内で利用可能なpH応答性シアニン系近赤外色素
京都大学 大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻 准教授 三木 康嗣
新技術の概要
塩基性や中性条件では近赤外領域での吸発光特性を示さないが、弱酸性条件において近赤外領域に吸発光特性を示すシアニン系色素を開発した。腫瘍組織近辺の弱酸性環境のみを描出可能な造影剤としての利用が期待される。
従来技術・競合技術との比較
血管造影剤として知られるインドシアニングリーンなどのシアニン系近赤外色素は、常時吸発光特性を示すため、ノイズの低減が困難であった。今回開発した色素は、弱酸性を示す腫瘍組織のみを特異的に認識すると考えられ、微小腫瘍の可視化や高コントラストな像の描出に有効であると考えられる。
新技術の特徴
・高分子やフィルムなどの材料に容易に化学結合させることができる。
・疎水性の色素(主な有機溶剤に易溶)
・生体内環境で安定
想定される用途
・光励起を用いる腫瘍造影剤
・刺激応答性光学材料
・ラベル化剤
関連情報
・サンプルの提供可能
- アグリ・バイオ
4)ヒトES/iPS細胞から肝臓様細胞の微小3次元分化誘導法
京都大学 物質-細胞統合システム拠点 特定拠点助教 亀井 謙一郎
新技術の概要
本発明では、ヒトES/iPS細胞から肝臓様細胞への高効率・高純度な分化誘導法を確立した。また、マイクロ流体デバイスを用いることによって、3次元的な肝臓様細胞の培養とその成熟化にも成功した。
従来技術・競合技術との比較
従来法と比較し本発明では、合成培地を用いることで効率よくヒトES/iPS細胞から内胚葉細胞への分化誘導に成功した。また、マイクロ流体デバイスによる3次元培養は、他の培養法と比較し高効率に肝臓様細胞の成熟化を促した。
新技術の特徴
・格子整合しないSi基板への窒化物のエピタキシャル成長
・シリコン基板上のTiNおよびNbNを緩衝層とした薄膜デバイス作製技術
・NbNをバッファーとしてその他の薄膜を製膜する等の多層膜技術へ応用可能
想定される用途
・ヒトES/iPS細胞からも高効率・高純度な内胚葉細胞への分化誘導と肝臓様細胞の獲得
・マイクロ流体デバイスなどの微細加工技術を用いて、肝臓様細胞をより成熟化
・既知の化合物を用いることによる、分化誘導の単純化
関連情報
・創薬スクリーニング
・再生医療
・病態モデル開発
- 材料
5)超撥水性を有する新規材料-多孔性配位高分子-
京都大学 物質-細胞統合システム拠点 北川進グループ 助教 樋口 雅一
新技術の概要
金属イオンと有機架橋配位子からなる多孔性配位高分子(PCP/MOF)をプラットフォームとして、フッ素やアルキル基を使用せず超撥水性を発現し、二酸化炭素や有機物を吸着する超撥水多孔性材料を開発した。
従来技術・競合技術との比較
通常、超撥水機能は、フッ素原子やアルキル基など表面自由エネルギーの小さくなる元素や原子団を使用する。しかし、今回それらの原子は一切使っておらず、低環境負荷となっている。さらに、350度以上の耐熱性を備えた多孔性材料のため、他の材料との複合化も検討できる材料となっている。
新技術の特徴
・非フッ素
・撥水性
・多孔性
想定される用途
・壁紙
・特殊衣服
・カーペット
関連情報
・サンプルの提供可能(MTA契約により。)
・展示品あり
・外国出願特許あり
- 材料
6)高活性貴金属触媒の開発に!単分散多結晶相分離ナノ粒子
京都大学 化学研究所 物質創製化学研究系 助教 佐藤 良太
新技術の概要
触媒反応の要となる活性点(ナノ粒子)表面に、表面エネルギーの高いステップやキンク密度の高いいわゆる「荒れた面」を、従来法より少ない貴金属量で均一に形成させる技術を確立した。これにより、新規奇コアシェル構造を有する貴金属ナノ粒子の作製が可能となり、高性能な担持固体触媒としての応用が期待できる。
従来技術・競合技術との比較
コアシェル構造において最小限の貴金属から最大限の触媒能を引き出すためには、コアとシェルの構造を単原子層オーダーで均一かつ精密に制御し、ナノ構造を厳密に同定する技術が必要であった。本技術では、シェル層の厚さを0.5層単位で精密に制御することが可能であり、かつ高指数面を意図的に高頻度露出させた粒子をほぼ100%の高収率で得ることができる。またその平均粒径も相対標準偏差10%以内で均一に制御が可能であり、単一特性を安定的に発現できる。
新技術の特徴
・高指数面を意図的に高頻度露出させた粒子である:多くの触媒反応において触媒活性の向上が期待できる。
・シェル層の厚さを0.5層単位で精密制御可能:触媒活性に関わるシェル層の精密構造制御が可能である。
・高単分散粒子(2nm~)が得られる:平均粒径の相対標準偏差が10%以下であり、単一特性を安定的に発現する。
・ほぼ100%の高収率:貴金属原料の使用量に対しほぼ100%の収率を実現している。
想定される用途
・燃料電池用触媒
・石油精製用触媒
・自動車排ガス用触媒
関連情報
・サンプルの提供可能(Pd-Ptコアシェル型ナノ粒子担持カーボン触媒(その他の金属種や担体種については要相談))
・展示品あり(コアシェル型ナノ粒子溶液、コアシェル型ナノ粒子担持固体触媒)
- 材料
7)貴金属使用量を飛躍的に低減化する排ガス浄化用触媒
京都大学 学際融合教育研究推進センター 触媒・電池元素戦略研究拠点 講師 細川 三郎
新技術の概要
有機溶媒中での高温反応を利用した無機材料合成法(ソルボサーマル法)で調製した六方晶希土類ーFe系複合酸化物を触媒担体に用いることで、自動車排ガス浄化触媒の飛躍的な貴金属使用量の低減化に成功した。
従来技術・競合技術との比較
貴金属種(Rh、Pd、Pt)は自動車排ガス浄化触媒として高い活性を示し、自動車に欠かせない元素である。しかし、これらの貴金属種は希少元素であり、価格変動が激しいという問題がある。本研究で開発したFe系複合酸化物にPdを担持した触媒は、従来のRh含有触媒やPd含有触媒よりも貴金属使用量が少ないにもかかわらず、自動車排ガス浄化触媒として優れた性能を有することを明らかにした。
新技術の特徴
・貴金属使用量の低減化およびRh触媒の代替
・六方晶希土類ー鉄系複合酸化物の触媒担体への応用
・ソルボサーマル法による触媒材料合成
想定される用途
・自動車排ガス浄化触媒
・揮発性有機化合物等の完全燃焼用触媒
- デバイス・装置
8)太陽電池評価システム
京都大学 化学研究所 附属元素化学国際研究センター 教授 金光 義彦
新技術の概要
本技術は多接合タンデム型太陽電池(単接合も含む)の各サブセルの内部特性を評価できる技術です。各サブセル層の電界発光の絶対強度を実測し、太陽電池効率に変換する測定・解析技術を開発しました。これにより、各サブセル層の電流電圧特性などが評価可能となりました。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、電界発光の相対的な強度のみを測定し、さらに多接合太陽電池全体の電流電圧特性から理論予想に一致するようにパラメーターを調節して、各サブセル層の電流電圧特性を評価していました。一方、本技術は電界発光の絶対強度を直接測定し、パラメーターの調整なしに、各サブセル層の電流電圧特性の絶対評価が可能となりました。
新技術の特徴
・各サブセル層のI-V特性および材料品質、サブセル間のエネルギー損失内訳、およびキャリア損失内訳を測定可能
・高精度に測定・評価が可能
想定される用途
・多接合タンデム型太陽電池用評価システム
・単層型太陽電池用評価システム
- 電子
9)プラズモニックメソ構造基板の作製と発光増強への応用
京都大学 大学院工学研究科 材料化学専攻 助教 村井 俊介
新技術の概要
光照射により、表面プラズモン共鳴に伴う増強光電場を発生する基板構造を発明した。本発明の構造は、直径が4~19nmの金属ロッドが配向配列した基板であり、ロッド間のギャップ部分に増強光電場が発生する。この基板は、基板上に置いた発光体の発光強度を強めることができ、従来に比べ高輝度かつ省エネルギーなLEDや高性能な光触媒、高効率な太陽電池や高感度な化学センサー等への応用が期待できる。
従来技術・競合技術との比較
表面プラズモン共鳴に伴って増強光電場が発生する基板はこれまでにも知られているが、本基板は従来の基板構造に比べて格段に高密度な増強光電場スポットを特徴とする(増強電場スポットの表面被覆率が10%以上)。また、この程度のスケールで周期構造を作製することは最先端のトップダウン手法である電子線描画を用いても困難であるが、自己組織化によって得られる周期構造をテンプレートとして利用することで、大面積かつ均一な構造を得ることができる。
新技術の特徴
・従来のトップダウンプロセスに比べ、1桁小さな10ナノメートル程度の周期構造が大面積で作製可能
・様々な金属に適用可能
・金属以外の材料(半導体や酸化物)にも適用可能
想定される用途
・照明分野;白色LED、有機EL、ヘッドライト、プロジェクタ、スクリーン等
・計測分野;化学センサー
・太陽電池
関連情報
・試作可能
・展示品あり(プラズモニック基板サンプル)
- 情報
10)操作者の意図が正確に反映された制御指令を生成
京都大学 大学院工学研究科 機械理工学専攻 准教授 小森 雅晴
新技術の概要
操作者の基準部位の動作に基づいて、操作者の意図が正確に反映された制御指令を生成することができる。
従来技術・競合技術との比較
操作者の上肢の動きを検出し、検出した上肢の動きに対応してロボットアームや画面内の仮想物体などの制御対象を動作させるシステムが知られている。しかしながら、従来のシステムでは、操作者が、自然に、直感的に動作すると、制御対象が、操作者の意図からずれて動作をすることがある。
新技術の特徴
・操作者の基準部位の動作に基づいて、操作者の意図が正確に反映された制御指令を生成することができる。
想定される用途
・乗り物、移動装置、ロボット、探査装置、機械装置などの実物の操作や遠隔操作。画面上の操作
・パソコンやコンピュータやスマートフォンやタブレット端末やテレビやカーナビゲーションシステムなどへの入力
・ゲームや情報機器や情報端末などへの入力。画面表示を利用したリハビリテーション
関連情報
・外国出願特許あり
- 情報
11)土砂災害に対する適切な警戒・避難のための降雨データ解析技術
京都大学 農学研究科 森林科学専攻 准教授 小杉 賢一朗
新技術の概要
土砂災害の誘因となる積算雨量と降雨強度を、種々の指標を用いて評価することによって、地点毎の違いを考慮した見逃しのない予測ができる。さらに、雨量指標の既往最大値に着目することで、平易かつ明瞭な危険情報を提供できる。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では全国一律の雨量指標が用いられ、地点毎の特徴を反映できないため、見逃しが無くならない。また、崩壊発生限界雨量の設定方法が難解で、専門的知識を必要とするため、住民の自主的な避難に結び付きにくい。これらの点を改善した。
新技術の特徴
・「過去に経験したことのない豪雨の発生」を客観的かつ厳密に調べることができる。
・地域毎や地点毎に,土砂災害を引き起こす降雨の特徴を調べることができる。
・地震,植生変化,樹木の風倒被害,人為的改変に伴う斜面の崩壊危険度の変化を調べることができる。
想定される用途
・市町村の防災担当部署が,土砂災害に対する警戒・避難の必要性を判断する為のシステムとして導入する
・地域住民が,自主的な防災活動を行う際の,情報入手ツールとして活用する
・気象データ提供会社が,土砂災害の警戒・避難に役立つ情報として,ウェブコンテンツ等に使用する
関連情報
・サンプルの提供可能(解析事例の提供が可能)
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