スマートテクノロジー 新技術説明会
日時:2016年11月29日(火) 10:00~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、大阪府立大学、大阪市立大学、兵庫県立大学
後援:特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- 環境
1)液中懸濁ナノ粒子の高効率低コスト回収方法
兵庫県立大学 工学研究科 化学工学専攻 准教授 佐藤根 大士
新技術の概要
ナノ粒子懸濁液に圧力応答性ポリマーを添加し、粒子を凝集させることで急速に沈降堆積させ、得られた堆積物に圧力を印加することで、含水率をさらに50%以上低減できる。固液分離工程の大幅なコスト低減効果をもたらす。
従来技術・競合技術との比較
従来の凝集剤添加法とは異なり、可逆的な粒子の凝集が可能である。競合技術に温度応答性ポリマーを用いた方法があるが、圧力の伝播速度は温度よりも圧倒的に速く、また、圧力応答性ポリマーは安価という利点がある。
新技術の特徴
・ナノ粒子の可逆的な凝集が可能なため、水処理だけでなく、成形プロセスへの応用も可能。
・液中にポリマーの残存がないため、二次処理コストが不要。
・化粧品等、粒子懸濁液そのものが製品の分野へも適用可能。
想定される用途
・鉱山等の洗浄水中に含まれるナノサイズの有価物の効率的な回収。
・工業排水処理への応用。
・上下水処理等の希薄溶液にも問題なく適用可能。
- アグリ・バイオ
2)耐性菌が蔓延しにくい新たな抗卵菌剤の開発にむけて
大阪府立大学 生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 講師 谷 修治
新技術の概要
ジャガイモ疫病菌 Phytophthora infestans の遊走子嚢の形態変化をステージ特異的に阻害する化合物のスクリーニング法を確立した。本スクリーニングによりシスト発芽阻害物質として同定されたβ-rubromycinが、P.infestans だけでなくPythium aphanidermatumの植物感染も阻害することを見出した。以上より、β-rubromycinが卵菌の植物感染を広く阻害する事が示唆された。
従来技術・競合技術との比較
ジャガイモ疫病菌に殺菌効果のある薬剤は既に存在しているが、耐性菌が蔓延する危機にさらされており、新たな薬剤の開発が求められている。また、耐性菌の蔓延を防ぐために、複数の薬剤を同時に使用するなど、薬剤の使用量増加を招いている。静菌的に作用する薬剤の開発は、これらの問題解決の一助となる。
新技術の特徴
・抗卵菌剤のスクリーニング
・静菌的作用により、耐性菌が蔓延しにくい抗卵菌剤の開発
・既知化合物の活性再評価
想定される用途
・卵菌類による植物病の防除
・卵菌類による魚病の防除
- デバイス・装置
3)既設光学機器に様々な機能を付加する偏光光学素子
兵庫県立大学 工学研究科 機械系工学専攻 助教 吉木 啓介
新技術の概要
偏光、位相の分布を制御することによって様々な付加機能を光学機器に与えることが出来る。特に集光したときの焦点の形状、偏光を制御する技術はフォーカスエンジニアリングと呼ばれ、顕微鏡、レーザー加工などの分野において応用されている。本発明は既設の光学機器にこれらの機能を簡単に実装する装置である。
従来技術・競合技術との比較
ラジアル偏光、アジマス偏光など、単純な構造の偏光の生成を行う素子は存在するが、偏光、位相分布を自由に変更する機能をもつ素子は存在しない。また、偏光分布の中に任意の楕円偏光を含む偏光状態を生成する素子も存在しない。本発明は、様々なアプリケーションに求められるより複雑な偏光、位相分布を作り出すことができる。
新技術の特徴
・偏光分布の制御
・位相分布の制御
・小形、簡便、低コスト
想定される用途
・顕微鏡
・レーザー加工
・その他、あらゆる光学機器
- 環境
4)生活を快適にする化学製品の生産支援用デバイス
大阪府立大学 工学研究科 物質・化学系専攻 教授 武藤 明徳
新技術の概要
フロー技術を取り入れた有機合成プロセスは著しく進歩し、従来に比べ収率が格段に向上するなどの利点が明確で実用化され始めている。しかし、この技術に適した有機反応後の抽出や発生したエマルジョンの破壊(解乳化)方法が遅れている。本研究はフロー有機合成に適した抽出や解乳化のための反応デバイスについて提案する。
従来技術・競合技術との比較
従来の有機合成後の抽出操作は回分法もしくは連続法であり、装置も大きくなりがちであった。エマルジョンが発生すれば、その相分離に長時間を必要とした。このことはフロー法による迅速な有機合成プロセスには適さず、フロー法の有機合成プロセスに制限を与えていた。本技術はこの弊害を解決する方法を提案する技術である。
新技術の特徴
・1-3分程度で、解乳化や抽出が完了できる。
・連続操作が可能でプロセスの連続に適している。年間、数トン程度の溶液処理が可能である。
・溶液中の溶存物に影響を与えることはほとんどない。
想定される用途
・有機合成(特にファインケミカルズの製造)
・エマルジョンや微小油滴含有水の油水分離(相分離)による処理の容易化
・有機物や溶存イオン類の分離回収
- 材料
5)光スタート型低温温度上昇センサー分子の開発
大阪市立大学 工学研究科 化学生物系専攻 教授 小畠 誠也
新技術の概要
食品や医薬品などの低温輸送や低温保存時における温度管理は極めて重要である。物品が一度でも管理温度以上の条件下に曝されたか否かは、物品を見ただけでは容易に判別し難い。本技術説明会では、40℃以下の低温下で機能し、温度と同時に時間の履歴が明らかになる温度インジケータを紹介する。
従来技術・競合技術との比較
既存の不可逆性温度インジケータとしては40℃以上で機能するものがほとんどである。温度インジケータの製造段階から機能する温度以下に保つ必要があるため、低温で温度上昇を感知する温度インジケータには、何らかのスタート機能が必要である。これまで冷却起動型やプッシュスタート型が存在するがいまだ問題も多い。
新技術の特徴
・温度センサー使用前には室温で保存ができる。
・温度センサーとして使用したいときには紫外光を照射することでセンサー機能がスタートする。
・色変化(退色度合)で温度上昇を感知できる。
想定される用途
・冷凍輸送時や冷凍保存時における温度上昇インジケータラベル、インク
・紫外線チェッカー
関連情報
・デモあり
- 建築・土木
6)三次元的に斜交配置されたケーブルを用いた耐震吊り天井
大阪市立大学 工学研究科 都市系専攻 准教授 吉中 進
新技術の概要
本技術は、斜交したケーブルを三次元的に配置して天井板を吊るだけのシンプルな構成であるが、ケーブルの配置や角度を適切に設定することにより、従来の技術と比較して、地震時の天井板の振動を大幅に低減することが可能となる。本工法は施工性にも優れるため、安全で且つコストの低い新しい吊り天井の工法を提案することが可能である。
従来技術・競合技術との比較
従来の吊り天井は安価で施工が容易なメリットがあった。東日本大震災で吊り天井が多数落下したことにより、建築基準法が改正され、主構造体と同様の耐震設計法が導入され、部材が重厚となり、コストの増加、施工性の悪化などが生じている。本技術はシンプルな部材構成でありながら、地震時の応答も小さく様々なメリットが存在する。
新技術の特徴
・シンプルな部材構成。
・地震時の応答が小さい。
・施工性に優れる。
想定される用途
・吊り天井
・吊り床
・設備機器を吊る工法
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
・展示品あり
- 計測
7)高速・高精度・高分解能ホログラフィックエリプソメータ
兵庫県立大学 工学研究科 電子情報工学専攻 教授 佐藤 邦弘
新技術の概要
本技術は、ホログラフィック顕微鏡を用いた高速かつ高精度な薄膜測定に関する。ホログラフィを使って薄膜反射光の振幅位相情報を正確にワンショット記録し、記録光情報を使って膜厚や光学定数およびその空間分布を高精度測定する。
従来技術・競合技術との比較
分光エリプソメトリーで用いられる分光器、回転偏光子や光弾性変調器が不要なため装置構成が簡単であり、かつ、測定時間も大幅に縮小することが出来る。さらに、一度のホログラム取得で2次元平面内の膜厚分布を得ることが可能である。
新技術の特徴
・ワンショットホログラフィを使った高速薄膜測定
・ノイズ除去後の多量なホログラムデータを使った高精度薄膜測定
・分光器や回転偏光子、光弾性変調器が不要で、構成が簡単な測定装置
想定される用途
・半導体デバイスの薄膜測定および構造解析
・薄膜形成やエッチング、酸化・熱処理などの実時間計測やフィードバック制御
・有機デバイス材料評価やドライアイ診断
- デバイス・装置
8)室温異種材料接合で作る革新的グリーンデバイス
大阪市立大学 工学研究科 電子情報系専攻 教授 重川 直輝
新技術の概要
表面活性化接合法により結晶構造や格子定数が異なる半導体材料等の異種材料を室温で貼り合わせます。ワイドギャップ材料とナローギャップ材料を使ったダイオード、トランジスタ、更にタンデム太陽電池等これまでの方法では実現困難であった創エネ・省エネ素子を低環境負荷で実現します。
従来技術・競合技術との比較
従来、ヘテロエピタキシャル成長技術により異なる半導体材料の積層構造(ヘテロ構造)が作製されています。この方法では、結晶構造、格子定数、熱膨張係数が大きく異なる半導体材料の成長が困難という問題があります。表面活性化接合法を用いることでこれらの困難を回避し、所望の半導体からなるグリーンデバイスが実現されます。
新技術の特徴
・異種材料を室温、短時間で貼り合わせ可能。
・貼り合わせ後の処理により界面の抵抗を低減。
・半導体以外の材料(たとえば金属)も貼り合わせ可能。
想定される用途
・パワー半導体素子(高耐圧かつ高周波応答)
・タンデム太陽電池(サブセル間の接合)
・様々な電子部品
関連情報
・サンプルあり
- デバイス・装置
9)動画像から重心移動を周波数解析した人物同定
大阪市立大学 工学研究科 電子情報系専攻 准教授 中島 重義
新技術の概要
監視カメラなどの二つの動画像から、撮影された人物が同一人物かどうかそうでないかを決める技術である。一般的なカメラ動画では背景と人物の服などが間違えられるが、本手法ではそれを集積画像により軽減する。さらに、そこから重心の移動を取り出して比較するので、動画によって服などが違っていても、人の歩き方が同じならば同じ人であることをみつけることができる。
従来技術・競合技術との比較
従来手法として動画のフレームを集積画像にしてそれを比較して人物を区別する技術がある。しかしその技術では人が服装を変えたり、または鞄を持ってたりすると集積画像が異なるので区別の結果を間違うことがある。またシルエット動画に限定した歩き方で人物を区別する手法もある。その技術では人物の輪郭が異なっていると、区別ができない。本手法では画像を集積することによって動画の一部で背景と人物の服などが間違えられて輪郭が異なっている場合にも対応できる。本手法では100%区別できるわけではないが、他の併用することで全体の精度を向上させるのに貢献できる。
新技術の特徴
・集積画像の微分と各フレームの輪郭マッチングを使う。
・2次元重心の時間的変化を離散フーリエ変換する。
・ステップとストライドの高調波に注目した重心移動の周波数分布マッチング。
想定される用途
・駅や繁華街に設置した監視カメラによるテロリストの追跡。
・町内に監視カメラを設置して認知症徘徊老人の追跡。
・病院や高齢者施設の中において患者や利用者の移動の追跡。
- 材料
10)多孔構造を利用した新規異種材料接合法の開発
大阪府立大学 工学研究科 物質・化学系専攻 教授 松本 章一
新技術の概要
被着体表面に形成した多孔構造のアンカー効果によって多様な異種材料間の高強度接合に有効な新規接合法を提案する。ステンレス、アルミニウム、銅などの金属と汎用樹脂やエンジニアリングプラスチックの接合以外に、ガラス、セラミクス、木材、有機材料などに適用でき、被着体の形態に制約がなく広範囲の用途に応用できる。
従来技術・競合技術との比較
自動車、航空機、各種機器等の軽量化を目的として、樹脂材料への代替や複合材料化が進み、金属と樹脂などの異種材料間での新規接合手法の開発が求められているが、特殊な薬液や専用設備を必要とせず、多様な素材、形態の被着体の接合に適用できる点が従来の金属表面の化学処理、プラズマ処理、レーザー照射などと異なる。
新技術の特徴
・基材表面に塗布、硬化するだけで接合用の多孔構造を簡便に形成でき、高強度を達成可能。
・金属、無機、有機材料の種類を問わず多様な組み合わせの接合に適用でき、様々な形態の被着体の接合が可能。
・特殊な薬液や専用設備を必要としない。
想定される用途
・自動車、航空機、家電、OA機器などで使用する機械部品、インサート成型部品、一体成型品など各種基材の接着接合。
・各種金属‐樹脂の直接接合および非金属材料を含む異種材料接合。
・金属表面処理、各種材料表面改質、プライマー処理、表面加工、塗装補助剤など。
関連情報
・サンプルあり
- 計測
11)ウェアラブル人体モニタリングシステム向けトリガシステム
兵庫県立大学 工学研究科 電子情報工学専攻 助教 神田 健介
新技術の概要
加速度に対応した電圧を、無消費電力かつ外部増幅回路不要で出力可能なトリガセンサを開発した。圧電薄膜を用いた構造設計によって、増幅回路無しに大電圧出力と、印加加速度の方角とは独立な無指向性を同時に実現可能である。超低消費電力が要求される人体やインフラのモニタリングシステム等への搭載が期待できる。
従来技術・競合技術との比較
従来の球が慣性力で動いてスイッチをONするような加速度スイッチは低消費電力ではあるが、ウェアラブル機器に搭載可能な小型ではないだけでなく、加速度しきい値に対応したON/OFF動作となる。また、圧電材料を用いた衝撃センサも市販のものがあるが、焼結体を用いたバルク素子であるためやはり小型化に向かない。
新技術の特徴
・無消費電力センサ
・無指向性トリガ
・アンプフリー
想定される用途
・ウェアラブル機器
・インフラモニタリングシステム
・各種低消費電力が要求されるIoT機器
- エネルギー
12)非常に広い電位窓を示すアルミニウム二次電池用電解液の開発
大阪府立大学 工学研究科 物質・化学系専攻 助教 知久 昌信
新技術の概要
リチウムイオン二次電池の次の世代の二次電池として注目されている三価のカチオンになるアルミニウムを負極に用いたアルミニウム二次電池用電解液を発明した。本発明では高い電池電圧を持つアルミニウム二次電池を実現するために不可欠な広い電位窓を実現した。
従来技術・競合技術との比較
これまでに開発されているほぼすべてのアルミニウム二次電池用電解液では、塩化物イオンを含む塩化アルミニウムが用いられているが、本発明では塩化物を含まないアルミニウム塩を使用し広い電位窓と可逆なアルミニウムの析出・溶解を実現している。
新技術の特徴
・広い電位窓を持つアルミニウム二次電池用電解液
・可逆なアルミニウム析出溶解
想定される用途
・アルミニウム二次電池
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
大阪府立大学 地域連携研究機構 URAセンター
TEL:072-254-9128 FAX:072-254-7475Mail:ipbciao.osakafu-u.ac.jp
URL:http://www.osakafu-u.ac.jp/contribution/research/system/system-consulation/
大阪市立大学 産学官連携推進本部 新産業創生研究センター
TEL:06-6605-3614 FAX:06-6605-2058Mail:sangaku-ocuado.osaka-cu.ac.jp
URL:http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/research/collaboration_office
兵庫県立大学 産学連携・研究推進機構
TEL:079-283-4560 FAX:079-283-4561Mail:sangakuhq.u-hyogo.ac.jp
URL:http://www.u-hyogo.ac.jp/research/index.html
新技術説明会について
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
TEL:03-5214-7519
Mail:scettjst.go.jp