産総研 新技術説明会
日時:2016年05月26日(木) 10:25~14:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、産業技術総合研究所
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)コレステロール動態解析のための化学プローブ技術
産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 健康維持機能物質開発研究グループ 主任研究員 小川 昌克
新技術の概要
コレステロールの疎水性部分を損なうことなく、コレステロールの水素結合能を保持したままで蛍光基などの標識官能基をコレステロール分子に結合し化学プローブを合成する技術を開発した。本プローブの使用により、培養細胞の細胞膜におけるコレステロールの自然に近い動態を観察することが可能になった。
従来技術・競合技術との比較
従来のプローブと比較して、本プローブはコレステロールとして認識される構造をよく保存している。そのため、生体膜における本プローブのふるまいは、従来のプローブより自然に近いと考えらる。また、蛍光基を付けた本プローブは容易な方法により培養細胞膜へ取り込ませることが可能である。
新技術の特徴
・コレステロールが含まれる生体膜(培養細胞の細胞膜など)がよく染まる。
・細胞膜から細胞内へコレステロールが取り込まれる過程が観察可能。
・エクソソームなどコレステロールが含まれる脂質膜に取り込まれる。
想定される用途
・蛍光顕微鏡による細胞内コレステロール観察用の蛍光プローブ
・細胞内で遊離コレステロールと相互作用するタンパク質(未知を含む)精製用プローブ
・エクソソーム精製用プローブ
- アグリ・バイオ
2)修飾核酸を用いた高機能核酸アプタマーの開発
産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 分子複合医薬研究グループ 研究グループ長 宮岸 真
新技術の概要
核酸アプタマーは、抗体のように物質を認識し、識別することができる核酸プローブである。1990年代に取得技術が開発されたが、安定性や特異性に問題があることから、実用化された例は非常に少ない。今回、Deep Sequenceによる修飾核酸を含む高機能核酸アプタマーの取得技術についてご紹介したい。
従来技術・競合技術との比較
特に抗体が作製できないターゲット(低分子化合物、毒物、糖)等に対しても核酸アプタマーの取得が可能である点が大きな特徴である。また、酵素活性を阻害する核酸アプタマー、受容体に対するアプタマー等、医薬品、ライフサイエンスへの応用も期待されている。
新技術の特徴
・抗体が作製できないターゲットに対しても核酸アプタマーを取得可能。
・これまでの核酸アプタマー取得法とは違い非常に短期間で取得することができる。
・取得後、さまざまな修飾により、安定化、高機能化が可能である。
想定される用途
・診断薬、検出法として、ELISA等
・ドラッグデリバリーシステムとして、医薬への使用
・酵素活性の調節阻害(ライフサイエンスへの応用)
- アグリ・バイオ
3)DNA認識能を持つ核酸塩基をタンパク質の任意の位置に導入する手法
産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 主任研究員 加藤 義雄
新技術の概要
DNA認識能を持つ核酸塩基をタンパク質のポリペプチド鎖に直接導入する手法を開発した。タンパク質上の任意の箇所に核酸塩基を導入できるため、DNA認識タンパク質としてゲノム編集技術やDNA検出プローブ等に応用展開が可能である。
従来技術・競合技術との比較
DNA認識能を持つタンパク質には、ジンクフィンガーやTALE等ならびに、CRISPR/CasのRNA-タンパク質複合体が知られているが、前者は配列認識能が低く、後者は分子量が非常に大きいという難点がある。核酸塩基をもつタンパク質は分子量が小さく設計が容易である。
新技術の特徴
・DNA認識能を持つ核酸塩基を、タンパク質に直接導入する手法を開発。
・遺伝子から翻訳反応を経て合成するため、タンパク質上の任意の箇所に核酸塩基を導入することが可能。
想定される用途
・DNAを認識するまたは改変するゲノム編集関連技術
・タンパク質への核酸塩基のタグ化、ラベル化技術
- アグリ・バイオ
4)バイオ材料への応用を目指したポリアミド4
産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 細胞マイクロシステム研究グループ 主任研究員 川崎 典起
新技術の概要
ポリアミド4は、高融点、高強度という優れた性質を持つ材料であり、その原料モノマーである2-ピロリドンは、バイオマス(グルタミン酸)からγ-アミノ酪酸を経て、高効率生産が可能である。また、環境中や生体内で容易に生分解されることから、生体との親和性の高いバイオ材料としての応用が期待される。
従来技術・競合技術との比較
バイオマスからポリアミド類を生産する技術開発が活発化しているが、私たちが開発しているポリアミド4は、その中で高分子鎖の炭素数が最も少ない材料である。これにより、ほかのポリアミド類よりも優れた熱的・機械的性質や親水性を持つ。また、化学合成されるポリアミド類では唯一の生分解性材料である。
新技術の特徴
・優れた熱的・機械的性質
・環境中や生体内での容易な生分解
・原料モノマー(2-ピロリドン)が生物由来資源から容易に生産可能(糖→グルタミン酸→γ-アミノ酪酸→2-ピロリドン)
想定される用途
・生体適合材料(生体内吸収材料、細胞培養基板)
・環境適合材料(農業用部材)
・構造材料(家電構造部材、自動車内装品)
関連情報
・サンプルあり
・展示品あり
- アグリ・バイオ
5)核酸の新規安定化技術の開発と遺伝子分析ならびに医薬品への応用
産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生体分子工学研究グループ 研究グループ長 小松 康雄
新技術の概要
本技術は、核酸の2本鎖構造を簡便にクロスリンクする方法と、クロスリンクされた核酸を用いることで核酸の相補的な結合を安定化させる技術から成る。クロスリンク核酸は、核酸分解酵素に対する耐性が高いため、生体内における安定性も向上する。例えばmicroRNA等の機能制御に有効である結果を有する。
従来技術・競合技術との比較
核酸の標的遺伝子との結合を安定化するには、複数の修飾核酸を結合部位に導入する必要がある。本技術は、2本鎖構造を1箇所でクロスリンクさせることによって隣接する標的遺伝子との結合を安定化する。本手法は新規な構造に基づいた安定化効果であるため、従来の技術との併用による相乗効果が可能となる。
新技術の特徴
・核酸の2本鎖構造の安定化と、その修飾技術
・核酸の相補的結合の安定化
・核酸の低分子化と生体内持続性の向上
想定される用途
・遺伝子等の高感度検出プローブ
・生体内外で用いる機能性核酸の安定化と低分子化
・核酸医薬品
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
6)耐熱性糖化酵素の開発
産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 分子細胞育種研究グループ 連携主幹 石川 一彦
新技術の概要
セロビオハイドロラーゼI(CBHI)はセルロース系バイオマス糖化反応において最も重要な酵素である。本発明では、タンパク質工学的手法により、糸状菌由来の高活性CBHIの耐熱性を20℃向上させることに成功した。
従来技術・競合技術との比較
セロビオハイドロラーゼI(CBHI)はセルロース系バイオマス糖化反応において最も重要な酵素である。多くのCBHIの反応温度は50℃付近であるために、雑菌汚染、バイオマス溶解度等の問題により、その実用化が滞っている。70℃以上の高温で安定に働く当該CBHIにより、高効率バイオマス糖化プロセスが可能になる。
新技術の特徴
・70℃での使用が可能なセロビオハイドロラーゼI(CBHI)の提供。
・糸状菌由来であるため、その他の糸状菌においても大量生産が可能。
・高温下でのバイオマス糖化反応に有効。
想定される用途
・高温下セルロース系バイオマス糖化反応への応用。
・バイオマス糖化糸状菌の改良。
関連情報
・サンプルあり
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
7)セルロース系バイオマスの利活用技術
産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 バイオデザイン研究グループ 研究グループ長 矢追 克郎
新技術の概要
植物由来多糖のうち、非可食部位であるセルロース系バイオマスを有効活用する技術開発。多糖を分解して、オリゴ糖や単糖に変換する酵素開発や、生じた単糖を利用して有用物質を発酵生産する微生物開発。
従来技術・競合技術との比較
酵素開発においては、既存の酵素とは異なる作用でユニークな構造のオリゴ糖を生産する酵素や、従来の酵素製剤より高性能な糖化酵素を開発。発酵微生物は、高効率にエタノールを生産する酵母など。
新技術の特徴
・ユニークな作用機序の酵素
・従来の酵素製剤を凌駕する高性能糖化酵素
・高効率なエタノール発酵酵母
想定される用途
・機能性オリゴ糖生産
・バイオリファイナリー
・バイオ燃料
関連情報
・サンプルあり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
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