日本医療研究開発機構(AMED) 生体イメージング 新技術説明会
日時:2016年07月12日(火) 09:55~14:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、日本医療研究開発機構
発表内容一覧
発表内容詳細
- 医療・福祉
1)動脈硬化を検出するための近赤外蛍光プローブ
北海道大学 大学院薬学研究院 生体分析化学研究室 教授 小川 美香子
新技術の概要
脳梗塞や心筋梗塞の原因となる動脈硬化不安定プラークを近赤外蛍光により画像化する技術。プラークの不安定化を左右する細胞であるマクロファージの浸潤度を指標とした診断薬・診断技術であり、光を使っているため放射線被ばくも無い。
従来技術・競合技術との比較
従来技術として頸動脈エコー検査による動脈硬化診断技術があるが、これは形態的な診断技術でありプラークの不安定性を規定する生理機能に基づいた診断はできない。新技術ではマクロファージの浸潤を指標とした機能診断が可能である。
新技術の特徴
・近赤外蛍光を用いた検出法であり、健診に利用できる。
・不安定プラークがあるかないかが判定できる。
・薬剤はマクロファージに取り込まれることで近赤外蛍光を放出する。
想定される用途
・メタボリックシンドロームである人に対する健診
・従来技術である頸動脈エコーにより形態的異常が認められた患者に対する精密診断
・他の疾患への応用
- 医療・福祉
2)5-アミノレブリン酸(5-ALA)とランタニドナノ粒子(LNP)併用による深部微小癌局在診断・治療技術の構築
京都府立医科大学 大学院医学研究科 教授 大辻 英吾
新技術の概要
光による癌の診断・治療は、その手軽さ・安全性が特長だが、組織深達性の低さが主な問題点であった。当技術では、深達性の高い近赤外線を可視光に上方変換できるランタニドナノ粒子と、内在性光増感剤プロトポルフィリンIXを癌選択的に蓄積できる5-アミノレブリン酸を併用して、上記問題点を克服する方法を開発した。
従来技術・競合技術との比較
5-アミノレブリン酸のみを用いた光線力学診断・治療は皮膚癌など表層部位の疾患に適用が限定される。また、ランタニドナノ粒子の表面に光増感剤を結合させた光線力学診断・治療法は、癌選択性が低く実用的でない。
新技術の特徴
・安価な装置と消耗品で癌の診断、治療を可能にする。
・癌以外の疾病の診断、治療に応用可能。
・背景蛍光がゼロ、退色しない、発光寿命が数ミリ秒。
想定される用途
・外科手術におけるモダリティ装置
・小規模医療機関または家庭用の小型医療装置
・動物病院での設置
関連情報
・サンプルあり
- 医療・福祉
3)時間分解計測システムによる光CTの開発
浜松医科大学 光尖端医学教育研究センター フォトニクス医学研究部 生体医用光学研究室 教授 星 詳子
新技術の概要
近赤外線を用いて生体などを3次元画像表示する光CTは体に優しく安全であるが、X線CTと異なり拡散光を利用するため画像再構成は難しい。高分解能の画像を取得するために、新たに時間依存輻射輸送方程式を順問題とする画像再構成アルゴリズムを開発し、性能評価のためにマルチチャンネル時間分解計測システムを試作した。
従来技術・競合技術との比較
脳機能計測に用いられている光トポグラフィは、皮膚、骨、脳組織を区別することなく、平均的な相対的ヘモグロビン(Hb)変化量のマッピングである。一方、光CTは、組織ごとにHb濃度絶対値をマッピングすることができる。また、OCTに比べてより深い組織(数10mm)の変化を検出でき、光音響では難しい吸収・散乱係数の定量的計測が可能である。
新技術の特徴
・生体における吸収係数(Hb濃度などが算出)の定量的3次元マッピング
・生体における散乱係数(肝臓の線維化など構造の変化を反映)の定量的3次元マッピング
・装置が小型であるため、ベッドサイドでの計測が可能。
想定される用途
・医療→癌・循環障害・炎症部位・筋疾患等の定量的診断、新生児モニター、光線力学療法などの治療計画など
・動物実験→創薬、光遺伝学、認知脳科学など
・植物→農作物の鮮度評価、樹木における水の動態評価など
関連情報
・展示品あり
- 医療・福祉
4)蛍光L型ブドウ糖を用いたがんの悪性度診断の可能性
弘前大学 大学院医学研究科 統合機能生理学講座 准教授 山田 勝也
新技術の概要
生物が利用せず自然界にみられないL型ブドウ糖の蛍光誘導体fLGは、高悪性のがんに取り込まれ、蛍光によりがん細胞が光ることを見出した。この性質を利用すれば、生物の利用するD型ブドウ糖を使用する従来法よりも、がんを精度よく可視化できる可能性がある。
従来技術・競合技術との比較
がんの再発検査等で使用するPET検査は、放射性標識したD型ブドウ糖を使用するため、1mm以下の微小ながんを発見できない。蛍光標識したブドウ糖を用いれば、より小さながんを可視化できるが、更にL型ブドウ糖を利用することで、正常細胞への取り込みを最小限としながら、がんを従来法よりコントラストよく検出する。
新技術の特徴
・ドラッグデリバリーシステムとしての利用
・培養がん細胞やスフェロイド等の評価
・食品衛生分野における種々の微生物の評価
想定される用途
・がんの体内診断
・がんの体外診断
・微生物検査
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
5)深部の微小ガンを診る
防衛医科大学校 医用工学講座 教授 石原 美弥
新技術の概要
発表者らは、がん細胞に取り込まれると初めて蛍光を発する「蛍光プローブ」と呼ばれる分子の開発に成功し、微小がんをであっても数分以内に可視化できることが明らかとなっている。この技術を発展的に活用し、がん部位でのみ光音響シグナルを出すプローブとこれを可視化する光音響イメージングシステムを開発した。
従来技術・競合技術との比較
蛍光プローブを用いた蛍光イメージングに比べて光音響イメージング技術を利用すれば深部の画像化が出来る。光と超音波を組み合わせた技術である光音響イメージングは、医療の現場で汎用されている超音波イメージングに比べて機能画像が得られる利点がある。
新技術の特徴
・食品検査
・非破壊検査
・ナノ粒子全般
想定される用途
・ガン診断
・基礎生物学(バイオテクノロジー)
・スクリーニング
- 医療・福祉
6)生体内の酸素濃度を可視化する発光プローブの開発
群馬大学 大学院理工学府 分子科学部門 教授 飛田 成史
新技術の概要
イリジウム錯体の発光が酸素によって消光される現象を利用して、細胞・組織内の酸素レベルを低侵襲的に検出しイメージングする技術。顕微鏡、発光寿命測定装置と組み合わせることにより、細胞のような微小領域の酸素レベルを画像化することができる。
従来技術・競合技術との比較
ポルフィリン金属錯体、ルテニウム錯体を用いて同様の原理に基づいて生体内の酸素測定がなされているが、イリジウム錯体はこれらの錯体に比べて細胞内への移行効率が高く、適度の酸素感受性をもつため、組織の細胞内の酸素レベルをイメージングできるという特徴を有する。
新技術の特徴
・高空間分解能で酸素濃度を画像化できる。
・リアルタイムでの酸素計測が可能。
・生体への応用が可能。
想定される用途
・酸素濃度測定試薬
・低酸素組織診断試薬
・DO(dissolved oxygen)センサー
関連情報
・サンプルあり
- 医療・福祉
7)表面から組織等散乱体内部に含まれる蛍光体の位置などを定量する技術
北海道大学 電子科学研究所 助教 西村 吾朗
新技術の概要
散乱体の中に含まれる蛍光体の位置や濃度などを定量的に評価するのは難しい。本技術は時間領域の光子検出技術を用い前方からの計測のみで、超高感度での蛍光検出を可能とすると共に、その深さなどの情報を取り出す計測装置とそれを解析する数学的なアルゴリズムとからなる技術である。
従来技術・競合技術との比較
表面からの単純な蛍光像観察と比べ感度が高く深い位置まで観測可能である。また、断層像を得る方法は全周囲あるいはそれに近い計測が必要であるが本手法は前方のみに計測で位置などを決定することができる。また、超音波を利用した方法に比べ、検出感度が高い。
新技術の特徴
・濁った媒体中にある蛍光物質の定量
・濁った媒体中入った光子伝播の定量的解析
・拡散媒質中での定量的計測を可能とする測定技術
想定される用途
・生体組織中に局在する蛍光プローブの存在および位置の非侵襲計測
・農産物などの内部にある蛍光物質などの非侵襲計測
・エマルジョンや粉体など濁った工業用材料内部に含まれる蛍光物質評価
- 医療・福祉
8)染めずに見る顕微鏡とその周辺技術
大阪大学 大学院基礎工学研究科 准教授 橋本 守
新技術の概要
波長の異なる超短パルスレーザー光を照射することで生じる非線形ラマン散乱を用いることで、無染色に細胞や組織を分別可視化する技術。これを実現するための、同期しながら波長走査可能な光源や並列検出法、高速変調された光を読み取るカメラ。
従来技術・競合技術との比較
非線形ラマン散乱現象を用いることで,高速に無染色に細胞や組織を分別可視化することが可能となってきた。新技術は、二次元に配置したディテクタによって高速に誘導ラマン散乱を検出できるため、生体・細胞に影響を与えないイメージングが可能になる。
新技術の特徴
・同期しながら、高速に波長走査できるピコ秒パルスレーザー
・無染色な細胞、組織の分別可視化
・高い背景光の下で、高速に強度変調された光を可視化するカメラ
想定される用途
・無染色細胞イメージング
・ロボット支援外科手術用内視鏡
・照明下での蛍光観測
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