福岡大学 新技術説明会
日時:2016年06月07日(火) 10:55~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、福岡大学
発表内容一覧
発表内容詳細
- エネルギー
1)産廃が純国産エネルギーに変わる!?
福岡大学 工学部 機械工学科 助教 麻生 裕之
新技術の概要
これまで竹が木質ペレットの様にボイラーなどで利用されてこなかった最大の理由は、その含水率の高さである。そこで、本技術を使用して、自動で乾燥・選別し、そのまま竹チップボイラーに供給することで、ビニールハウスの加温が可能となる。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、竹の運搬コストおよび乾燥時間が大きな問題であったが、本技術を用いることによって、その二つの問題を大幅に改善できる。さらに、もう一つの大きな問題であった燃焼時のクリンカの発生に対しても、この乾燥が非常に効果的な抑制効果になることが分かってきた。
新技術の特徴
・生竹の乾燥および任意の含水率による自動選別
・未利用エネルギー(産業廃棄物)の有効利用およびエネルギーの地産地消
・第1次産業(農業・林業)の再生による地方創生、再生
想定される用途
・農業用ビニールハウス用ボイラー
・社会福祉施設などにおける温浴施設用ボイラー
・バイオマス発電
関連情報
・サンプルあり
- アグリ・バイオ
2)RNA編集機構を利用した部位特異的RNA変異導入法
福岡大学 理学部 化学科 助教 福田 将虎
新技術の概要
本技術は、A-to-I RNA編集を担う編集酵素(ADAR)を誘導し、任意の標的RNAに部位特異的な変異を導入する機能性RNA(編集ガイドRNA)に関するものである。本RNA変異導入技術は標的タンパク質機能制御に応用でき、基礎研究用ツールはもちろん、新たな創薬の基盤技術に展開できる。
従来技術・競合技術との比較
外来の変異体ADARタンパク質が必須である従来技術に対して、本技術は、細胞内在の天然型ADARを利用し変異を導入する。従って本技術は、簡便な配列設計かつADAR発現細胞にガイドRNAを導入するだけで目的変異導入が達成できるという大きな利点がある。
新技術の特徴
・簡便な配列設計で標的変異導入部位を設定できる。
・細胞内在性の機構を利用するため、ガイドRNAを導入するだけで合目的な変異導入が達成できる。
・タンパク質機能制御だけでなく、スプライシングや生体内RNAの機能調節にも適用可能。
想定される用途
・核酸医薬品
・研究用試薬
- 材料
3)側鎖結晶性ブロック共重合体の無電解Niめっき前処理への利用
福岡大学 工学部 化学システム工学科 助教 中野 涼子
新技術の概要
無電解Niめっきは、金属触媒であるPdを効率的かつ安定的に基板表面上に形成することが求められる。しかし、PE等の高結晶性プラスチックへのエッチング手法は煩雑であり、簡易な手法が望まれる。今回、側鎖結晶性ブロック共重合体を用い、Pd触媒を効率よく吸着できるか、また無電解めっきが可能か検討した。
従来技術・競合技術との比較
一般に、無電解Niめっきのための前処理としてプラズマや強酸・アルカリなどで不導体表面にエッチングを施すが、装置や後処理が煩雑である。特にABS樹脂のエッチングには六価クロムを用いているため、環境への負荷が大きい。今回我々が検討した手法は改質液に浸漬するという非常に簡易なものであり、環境負荷が低い。
新技術の特徴
・ブロック共重合体の希薄溶液に浸漬する、あるいは塗布するだけでPEを改質できる。
・必要な個所のみの改質が可能であり、複雑な構造体の改質も可能である。
想定される用途
・プラスチック表面の鏡面化による装飾用途
・多孔膜細孔内部の改質による排水処理の高次処理膜としての利用
関連情報
・展示品あり
- 建築・土木
4)鋼材とコンクリートをつなぐ革新的な接合デバイスの開発
福岡大学 工学部 建築学科 助教 田中 照久
新技術の概要
鋼とコンクリートの異種材料部材の接合効果において、せん断耐力と剛性を大幅に向上させることができ、経済性・施工性にも優れた新しいずれ止めを用いた複合構造の接合部を提供する。これにより、建築構造物や土木構造物などの高度化・長寿命化・環境負荷低減ならびに工期短縮・低コスト化における手段として幅広く活用できる。
従来技術・競合技術との比較
異種の材料や部材の接合において、新ずれ止めは、従来の頭付きスタッドと孔あき鋼板ジベルに比べ、約2倍以上のせん断耐力を有する。また、荷重と変位の関係から求まるずれ剛性は、頭付きスタッドの約4~6倍であり、孔あき鋼板ジベルと同等以上である。さらに、新ずれ止めの鋼材量は、孔あき鋼板ジベルの半分以下とできる。
新技術の特徴
・本接合デバイスのずれ止めは、プレス加工によって容易に製作でき、シンプルな形状のため、生産性に優れる。
・鋼とコンクリートのずれ止めとして、高剛性・高耐力・高靱性を有しており、優れた疲労特性も期待できる。
・異種の材料や部材の接合において、“ずれ”を容易に防止または抑制できるため、合理的な設計が可能となる。
想定される用途
・建築構造物全般(鋼とコンクリートのあらゆる混合構造の接合部や合成部材、仮設工事の構真柱工法など)
・土木(鉄道や道路の橋梁、トンネル、港湾・海洋、原子力格納容器など)における複合構造物
・建築土木構造物の増築、改築に伴う耐震補強接合部
関連情報
・サンプルあり
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
5)生細胞の微弱電流印加による細胞死抑制効果の誘導
福岡大学 医学部 再生・移植医学講座 主任教授 小玉 正太
新技術の概要
細胞そのものに特殊な電気エネルギーを与える事で細胞の活性度(cell viability)を高め、細胞の自己崩壊となる細胞死のアポトーシス(プログラム細胞死)を抑え、加えて酸化による細胞死のネクローシス(壊死)を抑える事を、分子生物学的手法によるDNA評価を用いて繰り返し検証し、その再現性を含めて確認した。
従来技術・競合技術との比較
・生細胞への微弱電流印加が細胞レベルで抗アポトーシス及び抗ネクローシス効果を有し、分子生物学的にその効果発現遺伝子を特定している。
・磁場等が関与すると宣伝する類似製品(細胞凍結保存効果など)はあるが、英文学術誌で発表された、科学検証を経た技術でない。
新技術の特徴
・生細胞の微弱電流印加では、細胞増殖を抑制しない。
・生細胞の微弱電流印加では、アポトーシスとネクローシスによる細胞死抑制効果を認めた。
・生細胞の微弱電流印加は抗アポトーシス遺伝子であるHells 遺伝子の増加により細胞死抑制効果を認めた。
想定される用途
・本技術の特徴を生かすためには、凍結解凍時に生鮮食料品へ適用することでの鮮度保持のメリットが大きいと考えられる。
・抗アポトーシス、抗ネクローシス効果に着目すると、細胞保存や培養といった生命工学分野の用途に展開することも可能。
・新たな臓器保存方法となり、新たな移植臓器運搬方法となる。
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
6)廃棄容器包装樹脂の高性能ペレット作成手法
福岡大学 工学部 化学システム工学科 教授 八尾 滋
新技術の概要
廃棄プラスチックの再生に関し我々は、劣化原因が物理劣化であり、成形方法の最適化で再生ができることを見出してきた。今回さらにペレタイズ条件の最適化で、射出成形品の物性も改善できることを見出した。この知見は廃棄プラスチックのリサイクル適用範囲を大幅に広げ、新たなリサイクルプロセスの構築を示唆するものである。
従来技術・競合技術との比較
これまでの廃棄プラスチックは、物性再生が不可能とされていたために、リサイクルペレット製法もほとんど工夫がされてこなかった。今回の我々の研究成果は、ペレタイズ条件の重要性を見出したものであり、またリサイクル樹脂の適用範囲を大幅に広げるものである。この知見は新たな産業を生み出す可能性がある技術である。
新技術の特徴
・廃棄容器包装樹脂のリサイクル適用範囲の拡張
・ペレタイズ機械産業への波及と新規構造のペレタイザーの創製
・プラスチック加工技術の進展
想定される用途
・廃棄樹脂の利用範囲の拡充による新たな産業の創成
・プラスチックマテリアルリサイクルの進展
・地球環境に優しい高度循環社会の実現
関連情報
・展示品あり
- 環境
7)有明海再生を可能にするフルボ酸鉄シリカ資材を用いた干潟浄化実証研究
福岡大学 工学部 社会デザイン工学科 教授 渡辺 亮一
新技術の概要
有明海では、アサリなどの二枚貝類の漁獲高が激減し、かつてのような豊かな海が失われている。それは、干潟に堆積したヘドロによって、二枚貝類の生息環境が劣化していることが主要因である。本開発技術では、環境に悪影響を与えないフルボ酸鉄シリカ資材を用いることで、ヘドロを分解し、アサリが干潟で増殖できる環境を再生し、有明海がかつてのような豊かさを取り戻すことを最終目標としている。
従来技術・競合技術との比較
これまでにも干潟に堆積したヘドロを浄化する技術は開発されているが、その効果の実証が難しく、効果が証明されていない場合が多い。本技術は、従来から効果が指摘されているフルボ酸鉄にシリカを加えることによって、その浄化を効率よく行える点が新規性が高い部分である。
新技術の特徴
・ヘドロ浄化
・アサリ復活
・干潟再生
想定される用途
・干潟に直接施行して、干潟を再生する。
・生け簀などの活魚を弱らせることなく、生存させる。
・牡蠣の養殖用の技術
関連情報
・サンプルあり
- アグリ・バイオ
8)ヒトキマーゼ抑制を介する紅タデスプラウトの降圧作用
福岡大学 筑紫病院 循環器内科 教授 浦田 秀則
新技術の概要
ヒトキマーゼはヒト心臓からアンジオテンシンII産生セリン酵素として申請者により純粋化され、過剰食塩負荷で循環血中ではなく、組織活性が増加し高血圧を惹起する。紅タデスプラウトがin vitroでヒトキマーゼを強力に抑制し、乾燥粉末化紅タデスプラウトの経口投与は食塩依存性高血圧マウスで完全に降圧した。軽症高血圧症例の二重盲検前向きプラセボ比較試験でも有意な家庭血圧降圧を示した。
従来技術・競合技術との比較
既存の降圧目標健康食品は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を基にした製品がほとんどである。医療品のACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体阻害薬投与中でも頻回に観察されるが、高食塩摂取症例では降圧効果が減弱する。紅タデスプラウトは組織ヒトキマーゼ抑制を介するので、医療薬を含めた既存品と全く異なる機序を介しており、高食塩摂取者で効能を発揮する新技術である。
新技術の特徴
・組織ヒトキマーゼ抑制を介する新技術である。
・高食塩摂取高血圧症例(本態性高血圧症例のほとんど)で効果を発揮する。
・食品であり、医薬品と異なり副作用がなく安全である。
想定される用途
・正常高値から中等度高血圧症例(本邦だけで約3,500万人)における降圧効果
・降圧に伴う高血圧性臓器障害抑制作用(将来展望)
・抗酸化作用に伴う諸症状の改善への期待
お問い合わせ
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