ライフサイエンス系 新技術説明会
日時:2017年01月26日(木) 10:00~14:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、北海道大学産学・地域協働推進機構
後援:特許庁、室蘭工業大学、北見工業大学、帯広畜産大学、北海道立総合研究機構
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)高機能性ゼリー素材で失われつつあるコンブの森を育てる
北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 准教授 四ツ倉 典滋
新技術の概要
近年の海洋環境の変化により、各地でコンブなど大型海藻の減少が著しい。本技術は、コンブの胞子や幼体を生分解性のゼリー状素材(ゲル)に混和・塗布することにより、あるいは、ゲル薄膜でコーティングすることにより天然石や糸資材表面に固定化するものである。また、コンブが発芽・定着するまでの期間これを保護するものである。
従来技術・競合技術との比較
従来のコンブ場育成現場では、天然コンブが放出する胞子が付着する足場を用意し、あとは自然に任せて葉体が繁茂するのを待つ方式が主であった。本技術は、減少する天然資源に依存せず、培養保存した幼体を活用できる点と、更に初期の着生効率の向上に加え、着生後の根張りまでの脱落リスクを低減する点で従来技術とは異なる。
新技術の特徴
・混和する植物種の着生期間、環境に合わせて、ゲルの耐久性や生分解速度を調整可能。
・基質に対する株の接触確率向上と、株の脱落リスク低減(ゲル基材による保護・固定効果)による着生効率の向上。
・コンブを生やしたい基質の種類や形状を選ばない。(垂直面や入り組んだ場所でも施工可能)
想定される用途
・海藻等の海上養殖(水産分野)
・海に面していない内陸部での海藻養殖技術(ヨード確保、サプリメント開発などの原料生産・医療分野)
・通常では植物を生やすことが難しい垂直面や不定形基質表面への植物栽培技術(農業分野・土木分野)
- 創薬
2)パーキンソン病患者の短期記憶を正常化する薬
帯広畜産大学 基礎獣医学研究部門 薬理学教室 教授 石井 利明
新技術の概要
パーキンソン病に併発した認知障害に対して、ホスホジエステラーゼ阻害薬、アデニル酸シクラーゼ活性化薬又はcAMP誘導体を有効成分とする薬は有効であることを見つけ、また、当該認知障害に対する治療薬開発のためのin vivoスクリーニング方法を確立した。
従来技術・競合技術との比較
パーキンソン病に併発した認知障害はパーキンソン病の治療薬であるレボドパ等のドパミン前駆体薬に無効、有効あるいは増悪させるとの様々な報告があり、確固たる見解が得られていない。
新技術の特徴
・パーキンソン病に併発した認知障害に特異性の高い治療薬。
・海馬記憶の消去促進により低下した記憶保持能力を回復させる。
・中脳黒質の神経細胞変性や傷害に起因した認知障害の治療薬。
想定される用途
・パーキンソン病に併発した認知障害の治療薬開発。
・恐怖記憶の消去を調節する薬の開発。(PTSDの治療薬)
・パーキンソン病に併発した認知障害に対する治療薬開発のためのin vivoスクリーニング方法の提供。
- アグリ・バイオ
3)新規酢酸耐性菌を用いたリグノセルロース系バイオマスからのエタノール生産
北見工業大学 工学部 バイオ環境化学科 准教授 小西 正朗
新技術の概要
新規酢酸耐性酵母を利用したリグノセルロース系バイオマスからの新規バイオエタノール生産方法を提案する。本菌株は酢酸を優先的に利用できるため、バイオマス中の糖源を消費することなく菌体を生産可能であり、高い効率で糖からアルコールに物質変換できる。
従来技術・競合技術との比較
従来のバイオエタノールはSaccharomyces cerevisiaeが利用されることが多く、発酵効率がよいものの、バイオマス糖化液に含まれる様々な阻害物質による発酵阻害が問題となっていた。新技術は糖化液中に含まれる酢酸に耐性が高く前処理の簡略化が期待できる。酢酸を増殖に、糖をアルコール発酵に優先的に利用するため歩留まりが高い。
新技術の特徴
・従来利用されていない酵母の活用。
・酵母では最高の酢酸耐性。
・副産物である酢酸を増殖に利用。
想定される用途
・バイオマスからのアルコール生産
・廃液中の酢酸処理
・酢酸を含む糖化液からのバイオ産物の生産
・その他、バイオプロセス用宿主
- 医療・福祉
4)抗認知症効果が期待されるアミロイドβ凝集阻害物質の微量探索システム
室蘭工業大学 大学院工学研究科 准教授 徳樂 清孝
新技術の概要
認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病はアミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳内に凝集蓄積することが発症の引き金になる。本技術は、量子ドットナノプローブによるイメージング技術を応用し、アミロイドβ凝集阻害物質を微量かつ効率的に探索する技術である。
従来技術・競合技術との比較
従来の手法と比較し、微量かつハイスループット(同時に多数サンプルを扱う)な解析が可能である。また、従来の手法では解析が困難であった、様々な夾雑物が含まれる天然物質の粗抽出物や、ジュースやドレッシング等の加工食品等でも活性を評価することが可能である。
新技術の特徴
・微量(5 μL)
・ハイスループット(最大1536サンプルの解析)
・天然物質の粗抽出物や加工食品の解析も可能。
想定される用途
・天然物ライブラリーからのアミロイドβ凝集阻害物質の探索。
・化合物ライブラリーからのアミロイドβ凝集阻害物質の探索 。
・アミロイドβ凝集阻害物質の構造活性相関の解析。
- 医療・福祉
5)粘着性ゲルを用いた新しいコンセプトの歯科用器具
北海道大学病院 高次口膣医療センター 講師 金子 知生
新技術の概要
粘着性ゲルのPCDME(Poly-N-(carboxymethyl)-N,N-dimethyl-2-(methacryloyloxy) ethanaminium)ゲルをポリカーボネートフレームなどに接着させ、歯科用器具に応用し、ゲルの粘着力により、口腔内で粘膜と接着させることができる。
従来技術・競合技術との比較
義歯や口蓋閉鎖床、矯正床装置などは歯科用即時重合レジンや床用加熱重合レジンなどを使用し、維持装置のクラスプを付加する必要がある。脱酢酸タイプの常温縮合型液状シリコーンゴムに低重合ポリ酢酸ビニル樹脂を添加攪拌して溶解せしめた義歯安定剤があるが、これは耐久性が悪い。
新技術の特徴
・粘着性がある。
・柔軟性と強度がある。
・抗タンパク質で雑菌が付きにくい。
想定される用途
・口蓋閉鎖床など床装置
・義歯
・マウスガード
関連情報
・サンプルあり
- アグリ・バイオ
6)これからの大規模酪農場で必要となる名脇役な新技術
北海道立総合研究機構 農業研究本部 根釧農業試験場 研究部 地域技術グループ 研究主任 大越 安吾
新技術の概要
スタックサイロのサイレージ品質向上のための密封技術。スタックサイロは品質が低下しやすいサイロであるが、敷設したシート上でサイレージを調製し、カバーシートを布設するアンダーラッピング法スタックサイロ技術と、長重石の布設により密封性を高め、布設作業性の向上による省力化を図ることができる。
従来技術・競合技術との比較
サイロの被覆資材の重石は使用済みタイヤなどが使われているが、機密性・密封性・布設作業性に問題がある。本技術では、シートを上下に敷設・布設するアンダーラッピング法と長重石で密封性と布設作業性を高めることにより、粗飼料サイレージの品質向上を図った。
新技術の特徴
・スタックサイロの法面部を単独で押さえることができる長重石
・排水用ホースに砂などの重量物を充填し、両端を特殊金具で固定し、重石同士で連結も可能。
・敷設したシートとサイロに被せたシートの端部を丸めて機密性を高めることでの腐敗対策。
想定される用途
・スタックサイロやバンカーサイロにおける被覆資材用重石
・収穫した農作物のストックヤードにおける被覆資材用重石
・雨水誘導用の土嚢
- アグリ・バイオ
7)ホタテガイの高精度資源量推定を実現する画像処理装置
北海道立総合研究機構 水産研究本部 網走水産試験場 調査研究部 主査 桒原 康裕
新技術の概要
砂泥底に生息する生きたホタテガイは殻縁の外套膜を白い楕円弧として視認可能である。本技術は海底の撮影画像を二値化して得られる白点が楕円の弧状に存在する場合に、ホタテガイとみなしてその数を自動計数し、同時にホタテガイとみなしたときの殻の大きさの楕円を自動表示する画像処理方法である。
従来技術・競合技術との比較
地まきホタテガイ漁場内の資源量調査は桁網と呼ばれる小型底曳き網による漁獲調査が主体である。桁網の調査効率は40~70%であるが、本技術は90%以上に改善可能である。本技術と海底動画撮影技術を組み合わせることで、漁場環境を破壊しない効率的な非破壊資源量調査が実現可能である。
新技術の特徴
・外套膜の特徴から生きているホタテガイのみを砂泥底から自動判別。
・漁場環境を破壊しない非破壊資源量調査が可能。
・漁獲試験による従来法と比較して極めて高精度な密度推定が可能。
想定される用途
・ホタテガイ以外の底在性イタヤガイ科二枚貝判別への利用。
・自動判別によるイタヤガイ科二枚貝の選択的漁獲装置開発。
- 医療・福祉
8)光を使ってin vivoでタンパク質の発現を精密に制御
北海道大学 創成研究機構 特任助教 小笠原 慎治
新技術の概要
メッセンジャーRNAからタンパク質への翻訳を2つの波長(370nmと430nm)の光を使って可逆的にON/OFF制御する光応答性capを開発した。ゼブラフィッシュの胚でタンパク質を発現させる期間を精密に制御できることを確認した。
従来技術・競合技術との比較
従来技術はトランスジェニック生物を作製し、転写を光制御する方式であり、倫理的問題、取扱いの煩雑さ、不正確な制御、といった問題がある。本技術はメッセンジャーRNAを使う翻訳の光制御であるため、遺伝子組み換え技術を要せず手軽に使えて安全である。さらにタンパク質の発現期間を精密に制御できる。
新技術の特徴
・カルタヘナ法に抵触しない安全で簡便な遺伝子操作技術。
・タンパク質の発現期間を正確に制御できる。
・初期の受精卵でも使える。
想定される用途
・生命科学の研究ツール
・遺伝子治療
・再生医療
関連情報
・サンプルあり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
北海道大学 産学・地域協働推進機構
TEL:011-706-9561 FAX:011-706-9550Mail:jigyomcip.hokudai.ac.jp
URL:http://www.mcip.hokudai.ac.jp
新技術説明会について
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
TEL:03-5214-7519
Mail:scettjst.go.jp