高専 新技術説明会 ~材料分野~
日時:2017年02月21日(火) 13:25~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、国立高等専門学校機構
後援:特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- 材料
1)超音波噴霧法を用いた有機発光素子の製造
津山工業高等専門学校 総合理工学科 准教授 香取 重尊
新技術の概要
ミストデポジション法は超音波により原料溶液を霧状にして、基板に吹きつけ薄膜形成を行う手法である。本技術では溶液を気体として扱うことができ、従来は真空蒸着法でしか成膜できなかった材料を非真空下で成膜することが可能である。この手法により有機ELなどの半導体デバイスを実現することが可能である。
従来技術・競合技術との比較
Alq3などの低分子系の発光材料は、溶液に溶け難い性質であるため、真空蒸着法によって成膜が行われてきた。本技術では、従来は溶解しにくいと考えられてきた材料を溶かす良溶媒を見出すとともに、超音波噴霧法という新しい手法により、非真空プロセスで薄膜の形成に成功した。
新技術の特徴
・非真空・省エネルギープロセス
・様々な材料へのコーティング
・ロール to ロールプロセス
想定される用途
・有機EL照明
・ディスプレイ
・ペロブスカイト発光素子、太陽電池
- 材料
2)超臨界流体を用いた含浸法によるナノ粒子の固定化技術
久留米工業高等専門学校 生物応用化学科 准教授 松山 清
新技術の概要
超臨界二酸化炭素の特性を生かした多孔質体へのナノ粒子の固定化、ナノ粒子の複合化技術について提案した。本技術により、アークプラズマやスパッタを用いて製造したシングルナノサイズの微粒子の固定化や複合化が可能である。
従来技術・競合技術との比較
超臨界二酸化炭素が有する低粘性・高拡散性・界面張力ゼロの特徴を生かして、従来の液体溶媒や機械的処理では困難とされてきたナノ粒子の複合化や固定化が可能である。シングルナノサイズの細孔へのナノ粒子の固定化も達成可能である。
新技術の特徴
・ナノ粒子を凝集させることなく多孔質体などに固定化できる。
・二酸化炭素中での操作であるため、残留溶媒の心配がなく、医薬品や食品などへの応用が可能。
・均一なナノ粒子の分散、固定化、複合化が可能。
想定される用途
・触媒や電極材料などのナノ粒子が固定化された多孔質材料
・医薬品や食品などの複合粒子
・粉体装置メーカーによる製造装置の開発
関連情報
・サンプルあり
・展示品あり
- 材料
3)低摩擦で強靭なゲル・固体ハイブリッドマテリアル
鶴岡工業高等専門学校 創造工学科 教授 佐藤 貴哉
新技術の概要
ゴム並の強度とスケート面のような潤滑性を兼ね備えたゲルをセラミックスや金属表面に接合する技術を開発しました。ゲルに耐熱性と不揮発性をもつイオン液体を利用することで高温や高真空でも乾かない、非常にタフなゲルによる潤滑技術を開発しました。
従来技術・競合技術との比較
ゲルは人工関節やすべり軸受などへの応用が期待されているが、基材にゲルを接合する技術開発の不足や、乾燥したら使えなくなるなどの問題から実用化に至っていないのが現状である。我々は、新たにイオン液体含有ゲルをセラミックスや金属表面に強固に接合した新しい低摩擦部材を開発した。
新技術の特徴
・ゲルはゴム並の強度(圧縮破断強度30MPa)で極めて低い摩擦係数を示す。
・ゲルは固体表面に化学結合で接合される為、高い接着強度を有する。
・高真空(2x10-4Pa)でも乾かず安定に低摩擦を発現する。
想定される用途
・摺動表面の潤滑コーティング
・宇宙機器や真空機器の潤滑コーティング
・シール材の潤滑コーティング
- 材料
4)タンパク質の凝集・結晶化の促進技術と分析技術
福島工業高等専門学校 電気工学科 教授 若松 孝
新技術の概要
当技術は、タンパク質結晶作製の効率化、タンパク質凝集・結晶化の分析技術に関するものである。電極に透明導電膜を使用した結晶化溶液セルで、数ボルトの低電圧印加によって、タンパク質の結晶化を促進させる技術である。また、前方小角散乱法によって、結晶化前段階におけるタンパク質凝集体の形成過程を高感度で高精度に分析でき、タンパク質結晶化を評価できる技術である。さらに、電圧印加状態下で、タンパク質の凝集化促進も分析できる。
従来技術・競合技術との比較
当結晶化促進技術により、タンパク質の結晶作製装置の小型化・低コスト化が実現可能である。また、当凝集・結晶化分析技術により、光回折法では分析が困難である、溶液中のタンパク質凝集体を高感度に評価できる。
新技術の特徴
・タンパク質の凝集・結晶化を促進できる。
・溶液中の凝集体形成を高感度に分析評価できる。
・比較的小型で低コストで装置を構築できる。
想定される用途
・科学分野:タンパク質等の結晶作製や凝集体の制御、分析
・生体・医薬品分野:診断薬や治療薬の研究開発、分析、製造管理
・食品・産業分野:機能性食品や化粧品及び機能性微粒子の研究開発、分析、品質管理
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
5)新たな糖質マテリアルの創製に向けたアルキルアルコールの新規配糖化反応の開発
小山工業高等専門学校 物質工学科 教授 上田 誠
新技術の概要
微生物酵素反応により6-ジンゲロールやゲラニオールなどの難水溶性アルキルアルコールを配糖化する反応を見出した。炭素鎖が10程度の1~3級アルコールにマルトースからグルコースを転移し、α体の配糖体を生成できる。また、エタノールからエチルグルコシド(日本酒活性成分)の生成も可能である。
従来技術・競合技術との比較
ポリフェノールなどのフェノール性水酸基への酵素配糖化反応を良く知られており、アルブチンなどの実用化例もある。しかしながら、6-ジンゲロールなどのアルキルアルコールへの配糖化反応は十分に知られていなかった。また、UDP-グルコースなどは関与せず、単純な転移反応である。
新技術の特徴
・アルキルアルコールの配糖化
・水難溶性化合物の水溶性向上
・刺激性の低下
想定される用途
・ショウガ活性成分6-ジンゲロールの配糖体による食品等での利用
・バラ香料成分ゲラニオールの配糖体による機能性香気成分としての利用
・糖を含んだ乳化剤やポリマー素材など
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