九州工業大学 新技術説明会
日時:2016年12月22日(木) 10:25~16:00
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、九州工業大学
後援:特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- デバイス・装置
1)無人搬送車走行ガイドシステム
九州工業大学 大学院工学研究院 電気電子工学研究系 助教 楊 世淵
新技術の概要
本技術は、通常、照明として使われているLED照明で周波数変調されたLED照明と、向きを変えられるPSDカメラを搭載した搬送車を使って、無人で走行できるようにした無人搬送車の誘導システムです。また、自走ロボットにも応用できます。
従来技術・競合技術との比較
無人搬送車は、走行誘導として磁気誘導方式・ジャイロ誘導方式・レーザー誘導方式などが使われており、LED照明を利用した方法はありません。従来方式は、生産ライン・レイアウトの変更に磁気テープ等の貼り直す作業が必要となります。本技術は、プログラムを変更するだけで、特別な作業は発生しません。
新技術の特徴
・高精度の位置検出が可能。
・任意の走行ルートを簡単に設定可能。
・走行ルート変更時にプログラムを変更するだけで特別な作業は不要。
想定される用途
・自動車製造工場の無人搬送車の走行誘導
・病院内の自動搬送ロボットの走行誘導
関連情報
・サンプルあり
- 材料
2)高加工性と高耐食性を併せもつ高クロム鉄合金
九州工業大学 大学院工学研究院 物質工学研究系 教授 惠良 秀則
新技術の概要
クロム量が50%を超えた超耐食性鉄合金に加工性を付与できる(例えば95%冷間圧延が可能)ことを見出した。この合金は、比較的多量の酸素を含有するが、このことは逆に、その製法において真空や不活性ガス雰囲気などの設備が必ずしも必要でなく、製造コストの低下が期待される。
従来技術・競合技術との比較
本合金は、50%までクロム量を高めた鉄合金であり、酸素が大量に混入しても脆くならなず、従来のステンレス鋼(JIS:SUS304,SUS430)よりも非常に優れた耐食性を示す。このことは耐火物(酸化物)を使った溶解法により製造ができる可能性があることを示している。また、鋼材生産において熱間加工は必須であるが、これまでの製造方法と同様に特殊な雰囲気を必要とせず空気中で製造できうる可能性がある。
新技術の特徴
・クロム量が高い鉄合金
・加工が容易(塑性加工により部品製造が可能)
・著しい耐食性の向上
想定される用途
・生体材料(例えば、ステント(ニッケルフリー))
・超耐食性部品
・原子炉材料
関連情報
・サンプルあり
- 情報
3)産業用無線LANネットワークにおける高精度時刻同期
九州工業大学 大学院情報工学研究院 電子情報工学研究系 客員准教授 長尾 勇平
新技術の概要
近年、ファクトリーオートメーションの分野はロボットなどの産業用機器の制御に対する無線化の要望が高まっている。無線ネットワークはいくつかの理由で産業用ネットワークには利用できず、この分野では未だに有線ネットワーク(産業用イーサネット)が利用されている。その一つの理由が時刻同期の困難さである。本技術では、無線ネットワークにおける高精度時刻同期を提供する。
従来技術・競合技術との比較
従来、無線ネットワークにおける時刻同期はミリ秒オーダーの精度しか得られないものがほとんどであった。本技術では、無線ネットワークにおいてマイクロ秒以下の高精度時刻同期を提供する。
新技術の特徴
・高精度時刻同期
・産業用無線LAN
・オートメーション
想定される用途
・ファクトリーオートメーション
・時刻同期
・産業用無線ネットワーク
関連情報
・デモあり
- 情報
4)Robot OS(ROS)とFPGAを融合したロボットや自動車のための新しい計算機システム
九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 准教授 田向 権
新技術の概要
知的ロボットや自動運転の実現には、深層学習による画像認識をはじめ、多数の知的処理の実現が必要となる。これらの組込みのためには、高速・省電力かつ柔軟なField Programmable Gate Array(FPGA)が必須である。提案手法により、ROSのインタフェースでFPGA内部回路に簡単にアクセス可能となる。
従来技術・競合技術との比較
FPGAによる知的回路の組込み化により、省電力で高速な計算システムの構築が可能となる。しかしながら、FPGAは一般のプログラマには扱いにくい。そこで本発明では、ロボットや自動運転システムの開発に広く使われているRobot Operating System(ROS)とFPGAの協調動作を行う仕組みを提案する。
新技術の特徴
・ROSとFPGAの融合
・省電力かつ高速なエッジ向け計算機システム
想定される用途
・ロボットの知的処理の組込み化
・自動運転の知的処理の組込み化
・オープンソースからのFPGA活用
- 機械
5)昇降式コイルを適用した連続鋳造における新たな気泡除去技術
九州工業大学 大学院情報工学研究院 機械情報工学研究系 准教授 河野 晴彦
新技術の概要
本発明は、溶鋼から鋳片を生産する連続鋳造工程において、生産スループット向上の要求に対しても、浸漬ノズルから鋳型内部の溶鋼に混入される気泡を安定的に取り除くことを可能とするものであり、それと同時に鋳型内の溶鋼流れを電磁ブレーキにより適切に制御することを可能にする装置および手法である。
従来技術・競合技術との比較
従来の制御手法では、鋳型の外側に直流磁場を印加するコイルを取り付けることにより溶鋼内に電磁ブレーキを発生させるが、本発明はそのコイルに昇降式可動機構を付加するものであり、この点において先行技術との類似性はない。これにより、従来の技術では困難であった、溶鋼内に混入される微細な気泡の除去が可能となる。
新技術の特徴
・連続鋳造設備の鋳型内の溶鋼に対して、直流磁場による電磁ブレーキの効果を維持しつつ気泡を安定的に除去できる技術であること。
・この技術により、微細な気泡を含んだ状態で溶鋼が固化することにより生じる鋼材の気泡欠陥を防ぐことができる。
・従来用いられている連続鋳造設備の鋳型の外側にコイルを昇降させる機構を取り付けるだけで達成できる技術であること。
想定される用途
・連続鋳造工程において鋳型に注がれた溶鋼内の微細な気泡の除去。
・チョクラルスキー法による単結晶育成過程において融液内に含まれる気泡の除去。
・その他、収容体に入れられて流れが生じている導電性流体中に含まれる気泡の除去。
- 情報
6)同軸ケーブル網を用いたMIMO通信ネットワーク
九州工業大学 大学院情報工学研究院 電子情報工学研究系 客員准教授 長尾 勇平
新技術の概要
TV同軸ケーブル網は、多くの建物(ビル、マンション、アパート)に常設されている。そのTV同軸ケーブル網を用いてインターネット回線を提供する手法が存在する。本技術は、その同軸ケーブル網にて高速通信を実現するものである。
従来技術・競合技術との比較
従来、MIMO通信の考えは無線通信に適用されるものであるが、本技術はTV同軸ケーブル網におけるMIMO通信を提供するものである。
新技術の特徴
・TV同軸ケーブル
・MIMO
・高速化
想定される用途
・ネットワーク
・高速回線
・ビル、マンション、アパート
関連情報
・デモあり
- 情報
7)乱数生成器が不要なニューラルネットワークの回路化の方法
九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 准教授 田向 権
新技術の概要
近年大きく注目を浴びている深層学習は、ニューラルネットワークを多層化したものである。このニューラルネットワークは確率的な処理を行うRestricted Boltzmann Machines(RBM)のようなタイプがある。本発明は、確率演算に必須の乱数生成器無しで、RBMの実装を可能とする手法である。
従来技術・競合技術との比較
ニューラルネットワークを回路化する際、その並列性を生かしてニューロン回路を多数並べて並列演算するアーキテクチャを採用することが殆どである。この際、乱数生成器は大きな回路面積を必要とする。また、並列演算のためには全てのニューロンに乱数生成器が必要になる。この面積が本発明により不要になれば、回路規模の圧縮、省電力化、並列性の向上などが大きく期待できる。
新技術の特徴
・ニューラルネットワークのための新しい乱数生成の方法
・ニューラルネットワークの効率的な回路化
・ニューラルネットワークの計算効率化
想定される用途
・エッジ機器へのニューラルネットワークの実装
・自動車やロボットへのニューラルネットワークの組込み
・ニューラルネットワーク専用チップへの適用
- 医療・福祉
8)起立動作誘導システム
九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授 和田 親宗
新技術の概要
椅子からの立ち上がりが難しい人の中には、上方に身体を持ち上げることはできるものの、前傾ができないため立ち上がることができない人がいる。病院等では、その人に対し背中を押して前傾姿勢をとらせることで、本人の能力を活かして立ち上がり動作を行わせている。本システムは、計測された前傾姿勢をもとに、立ち上がりに最適なタイミングを知らせるものである。その結果、起立動作が促され独力で立ち上がりを行うことができる。
従来技術・競合技術との比較
立ち上がりを支援するシステムとしては、椅子座面が持ち上がるものやアームで身体を引き上げるもの、身体の外に駆動骨格をつけるものなどがある。これらに対し、本システムでは、使用者の残存能力を活かして立ち上がりを行わせる点が異なっている。
新技術の特徴
・対象者の能力に合わせた、動作に対する外部支援機器の制御
想定される用途
・リハビリテーション現場での立ち上がり動作訓練支援
・在宅、日常生活での立ち上がり動作支援
- エネルギー
9)電気自動車利用の負荷平準化と地理情報利用の太陽光発電量評価
九州工業大学 大学院工学研究院 電気電子工学研究系 教授 三谷 康範
新技術の概要
夜間充電した電気自動車のエネルギーを事業所において太陽光発電も適宜利用しつつ昼間放電することによりピーク負荷低減を行うシステムと制御方法、および、地図情報利用による電気自動車が運べるエネルギーや太陽光発電量の評価を行なうシステム。
従来技術・競合技術との比較
近年のスマートグリッド関連のプロジェクトの実証事情において、電気自動車の利用が各種行なわれているが、それらの基本技術として不可欠な要素の提案。他に独自のエネルギー評価技術を提案。
新技術の特徴
・電気自動車エネルギー利用の負荷平準化スマートグリッドの基本構成、制御の提案。
・太陽光パネルの発電量と電気自動車の可搬エネルギーを地理情報(高さ、距離)に基づき評価。
想定される用途
・電気自動車の新しい利用
・太陽光発電の新しいエネルギー評価手法
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
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