医療・福祉・創薬 新技術説明会
日時:2016年07月26日(火) 09:55~16:00
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、宮崎大学、山口大学、大分大学、佐賀大学、鹿児島大学、琉球大学
協力:鹿屋体育大学、都城高等専門学校、鹿児島高等専門学校
発表内容一覧
発表内容詳細
- 創薬
1)温度を感知して拍動する微粒子
佐賀大学 工学系研究科 准教授 成田 貴行
新技術の概要
特定の温度にさらされると体積振動を示す微粒子を発案した。特定の患部に薬物投与を持続的かつ周期的に行うことのできる薬剤担体や、体内時計や自律神経を調整する製剤、など高度に時間をコントロールした薬物担体への応用が期待される。
従来技術・競合技術との比較
自ら拍動する材料としてベロウソフ・ジャボチンスキー反応を組み込んだハイドロゲルが知られているが、使用環境が限られているため、薬剤担体の利用や産業への応用が難しい。以前、発明者らは特定基質の存在下で拍動する材料を発明しているが、酵素を用いるため薬剤としては高価になる。本発明材料は生体由来の高分子の温度感受性を用い、前者に比べ、機能性、生体適合性、材料コストの面から優位な拍動材料である。
新技術の特徴
・特定温度において拍動を開始する。
・生体適合性に優れる。
・周期的な徐放が外部環境の変化無なしに行われる。
想定される用途
・農薬等の薬剤担体
・患部に特異的に働く薬剤の担体
・持続性の高い徐放材料
- 医療・福祉
2)共有結合による迅速かつ定量的な抗体の機能的修飾法
鹿児島大学 大学院理工学研究科 生命化学専攻 教授 伊東 祐二
新技術の概要
抗体のFcに特異的に結合する親和性ペプチドをもとに、共有結合にて抗体Fcを選択的に修飾するシステムを開発した。本発明によって、親和性ペプチドに種々の機能性リガンドを連結させることで、迅速かつ定量的な、また他のタンパク質などの夾雑物の存在下での抗体の標識、種々のリガンドの導入が可能となる。
従来技術・競合技術との比較
抗体の化学修飾には、Lysのアミンカップリングや還元Cysの修飾法が多く用いられてきたが、これらの方法は、抗体の抗原結合能や安定性を低下させる。本手法では、Fc領域に限定的にリガンドを導入できるため、修飾による抗原結合能や安定性に影響を与えないのが大きな特徴である。
新技術の特徴
・迅速かつ定量的な抗体の特異的修飾
・抗体への機能性リガンドの簡便かつ効率的な導入
・抗体の材料表面などへの機能的な固定化
想定される用途
・新しい機能性抗体の創出(医薬品を含む)
・抗体の機能的、迅速な標識法の提供
・抗体を表面に機能的に固定化した機能材料、基盤センサーの創出
関連情報
・サンプルあり
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
3)低コスト生産が可能な安定型VHH抗体の迅速開発法
琉球大学 大学院医学研究科 助教 村上 明一
新技術の概要
本技術は、80度以上の高温に曝されても抗原結合能を保持できるほどに、非常に高い熱耐性を有し、かつ、標的抗原に強く結合する抗体を、独自に構築した200億以上のレパートリーから構成されるファージライブラリーから迅速(10日以内・動物免疫不要)に開発するシステムである。
従来技術・競合技術との比較
抗体は標的物質を特異的に検出できる分子として、医療、環境保全、危機管理、食品など広い分野で使用が試みられているが、分子の安定性が悪い、製造コストが高い、開発時間が長いなど課題が多い。本技術により、安定性が高く安価で生産できる抗体を、200億以上の抗体群からなるライブラリーから迅速に開発できる。
新技術の特徴
・熱耐性をはじめとする変性耐性の高い抗体である。
・低分子抗体であり安価に大量生産が可能である。
・高い特異性と親和性を有するセンサー分子である。
想定される用途
・既存抗体製品の保存安定性強化および低コスト生産化
・内服薬
・電気機器に組み込むセンサー分子としての利用
- 医療・福祉
4)身体情報に基づき身体状態や動作を推定する携帯端末システム
宮崎大学 工学教育研究部 環境ロボティクス学科 教授 田村 宏樹
新技術の概要
近年急速に普及している身近なデバイスであるスマートフォンを用いて、スマートフォンを持って行動するだけで、【1】運動器障害(ロコモティブシンドローム、ロコモ)の指標値、【2】腰部椎間板圧迫力の値(労働作業の負担)を推定することを可能とした。これらあわせて、人間の注視空間を推定するシステムについても紹介する。
従来技術・競合技術との比較
従来のロコモを診断するには医師や看護師の診断が必要であり、他方、労働作業負担を評価するにはカメラ等で撮影し、後で解析するという手間が必要であった。しかし本技術はスマートフォンをもって特定の行動をするだけで、ロコモや労働負担が準リアルタイムで素早くわかる。
新技術の特徴
・歩行状態をスマートフォンをポケットに入れて歩くだけで算出可能。
・ロコモの診断結果を算出可能。
・スマートフォンを身に着けることで、腰部椎間板圧迫力を算出可能。
想定される用途
・健康診断
・工場作業、農作業、土木現場などの労働負荷の見える化
- 医療・福祉
5)適応AE信号処理による膝関節炎症診断
佐賀大学 工学系研究科 准教授 Md.Tawhidul Islam Khan
新技術の概要
膝関節部位から発生する弾性波(AE)を検出し、関節部位の炎症の有無や位置を特定する新技術の紹介。本技術は、AEパラメータを用い簡単な設備で膝関節の異常を検出し、分析することを目的としている。
従来技術・競合技術との比較
膝関節の病気の一例に、変形性膝関節症がある。この病気の検査方法は、現在X線やMRIなどを用いることが一般的だが、それらは膝関節の静的検査しかできず、また検査設備が複雑になることが欠点としてあげられる。それに対し、本技術による検査方法はシンプルかつ体に安全であり、得られたAEパラメータを用いて膝関節の異常を検出、完全分析できる。
新技術の特徴
・検査対象患部にx線、MRI等のようにエネルギーの照射必要がない。
・利用が簡単、体に安全、動的な診断も可能なので、感度の高い検査分析結果が得られる。
・リアルタイムで分析可能なので、関節部位の炎症の有無や位置を完全に特定出来る。
想定される用途
・医療診断設備
関連情報
・サンプルあり
- 医療・福祉
6)睡眠時無呼吸症候群の独創的診断ツールの開発と治療への展開
鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 小児歯科学分野 准教授 岩崎 智憲
新技術の概要
CT(MRI)データから3次元画像構築ソフトを用いて対象部位の気道モデルを構築し、流体解析ならび流体構造連成解析ソフトを用い、吸気、もしくは呼気の上気道流体シミュレーションを行うことで、鼻腔抵抗値や鼻腔、上咽頭、中咽頭、下咽頭などの上気道各部の圧力、速度からより生体に近い気道通気状態が評価する。
従来技術・競合技術との比較
睡眠時無呼吸症候群は上気道の通気障害が原因とされるものの、現在行われている内視鏡、エックス線写真、CT、MRIなどの単純な形態評価だけでは、上気道の形態が複雑なため、原因となる障害部位の特定は困難とされている。しかし、本システムではそれを可能にし、必須の検査ツールになり得ると考えている。
新技術の特徴
・気道通気状態を単純な形態評価(長さ、断面積、体積)ではなく、流体解析ならびに流体構造連成解析で評価している点。
・器具等を用いない間接的な評価なため、安静時の生体の評価ができる。
・手術後のモデルを作成できるため、予知性の高い治療計画が立案できる。
想定される用途
・睡眠時無呼吸症候群の治療で用いる持続陽圧呼吸器(日本で30万台)の使用に際し、補助的検査システムに応用できる。
・睡眠時無呼吸症候群の治療で用いる口腔内装置、外科的治療の適応ための診断に応用できる。
・あらゆる上気道通気障害を認める呼吸器疾患(COPD、喘息等)の診断に応用できる。
関連情報
・デモあり
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
7)2次元X線画像を用いた脊椎の3次元的動きの把握
山口大学 大学院創成科学研究科 准教授 森 浩二
新技術の概要
腰痛などに代表される背骨に関する疾患は、患者数は多いが、その原因を探ることは容易ではない。背骨は複数の骨が隣接しており、その動きを把握することが出来れば、新たな知見が得られる可能性がある。我々は、X線画像に映った骨のうち、輪郭線の一部があれば、その骨の3次元位置・姿勢を推定(動態解析)できる方法を開発している。これを頸椎に利用した方法について紹介する。
従来技術・競合技術との比較
本技術は2D/3Dレジストレーションという技術分野に属している。精度自体は、X線画像に映った骨の濃淡から推定する手法と比べて、劣るが、輪郭線だけで3次元位置・姿勢が推定できる。そのため対象物の形状や材質(密度)に制約が少なく、適応範囲が広いのが特徴である。
新技術の特徴
・2次元画像から頸椎の周辺の骨の3次元位置・姿勢を推定(2D/3Dレジストレーション)
・輪郭線を用いて推定
・複数の開曲線を用いても推定可能
想定される用途
・腰痛などの原因解明
・血管内治療における支援
・工業製品等でのX線を用いた非破壊内部検査に対しても応用可能
- 医療・福祉
8)HTLV-Iの感染拡大を防御する受動免疫ワクチン
琉球大学 大学院医学研究科 教授 田中 勇悦
新技術の概要
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I)の感染者の総数は世界で1000~2000万人、日本全国で100万人と推定される。母子間の垂直感染および性行為等による水平感染で伝染し、悪性の白血病である成人T細胞白血病(ATL)を誘発する原因となる。現在、ATLの効果的治療法もHTLV-I感染を予防するワクチンもない。我々は、HTLV-I感染を完全に阻止する単クロン抗体(LAT-27)を開発した。
従来技術・競合技術との比較
これまでHTLV-Iの感染を完全に阻止する単クロン抗体はない。LAT-27はラット由来であるが、ヒトへの応用のため、すでにそのヒト化に成功している。
新技術の特徴
・HTLV-I感染拡大阻止医薬
・安全なヒト化抗体を用いる受動免疫
・日本では感染が問題視されているHTLV-Iの感染阻止
想定される用途
・HTLV-Iの母子感染の阻止
・HTLV-I感染者からの臓器移植の際のHTLV-I感染阻止
・HTLV-Iの水平感染の阻止
関連情報
・サンプルあり
- 医療・福祉
9)2次元ヒストグラムによる肺結節明瞭化法
大分大学 医学部 医療情報学講座 客員研究員 原田 義富
新技術の概要
1枚の胸部X線画像から、2次元ヒストグラムを用いて、偽陽性となりやすい肺門部肺血管やその正接像などの陰影を抑制し、血管や骨に重なる肺結節を相対的に明瞭化する。具体的には、閾値処理のみでは捉えにくい血管陰影とその正接像を、低輝度を示す線状(連続する)陰影として検出する。
従来技術・競合技術との比較
これまでに提案されている肺結節検出法には、空間や周波数フィルタを用いたもの、差分処理を用いたもの、機械学習を用いたものなどがある。これらの手法は肋骨や鎖骨などの骨陰影の抑制に重きを置いているが、本手法はヒストグラムを用いることで、偽陽性となりやすい肺血管とその正接像を抑制する。
新技術の特徴
・偽陽性候補となりやすい肺血管陰影やその正接像を2次元ヒストグラムを用いて輝度値を制御する。
・肺血管の正接像が、線状陰影の中でも強い低輝度を示すことを利用する。
・肺結節自動検出法では捉えにくい肺門の血管陰影を、連続する陰影として捉え、血管陰影を抑制する。
想定される用途
・肺結節自動検出法としての利用。
・肺結節自動検出法での偽陽性陰影の削除。
・胸部X線画像の生(投影)データを加工して出力するため、CTの画像再構成への応用。
関連情報
・サンプルあり
- 創薬
10)昆虫のストレス応答機構を創薬に利用できないか?
佐賀大学 農学部 応用生物科学科 教授 早川 洋一
新技術の概要
全ての生物にストレス順応機構が存在する。昆虫も例外ではなく、最近、私達はストレスを受けた昆虫体内で分泌され、その後のストレスに対する抵抗性を増強させる内在性の生理活性因子を発見しその分子構造を決定した。これが哺乳類においても有効か?もし、効果がなかった場合には、ヒトノストレス順応因子は何か?こうした問題の解明に私達の研究は有効であるはずと考える。
従来技術・競合技術との比較
従来より様々な生物でストレス順応現象は報告されてきた。しかし、ストレスによって誘導される内在性のストレス増強因子の報告はない。今回同定した物質は、初めての例である。
新技術の特徴
・ストレス増強因子の発見
・ヒトのストレス増強因子の発見への昆虫の利用
・ストレス応答性の多方面への利用
想定される用途
・医動物薬
・サプリメント
・ストレス試験(ストレス度の定量測定)
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
11)従来の薬剤探索法では見出すことができなかった新規抗HCV剤グアンファシンの同定
鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 難治ウイルス病態制御研究センター センター長 池田 正徳
新技術の概要
HCVを効率良く増殖させることができるLi23細胞株を用いた新規アッセイ系を用いて、市販薬のグアンファシンが抗HCV活性を示すことを見出した。グアンファシンは降圧剤としての効果が低いために販売中止となったが、新たに小児のADHD剤として開発されている。本研究により、グアンファシンにさらなる抗HCV活性の効果を追加することができた。
従来技術・競合技術との比較
これまでに国内外で開発された抗HCV剤はすべてヒト肝癌細胞株HuH-7のみを用いて抗HCV活性の評価が行なわれてきた。グアンファシンはHuH-7細胞株とは異なるLi23細胞株を用いてその抗HCV活性を見出されたが、HuH-7細胞株では抗HCV活性を示さなかったためこれまでのスクリーニングでは見逃されていた薬剤である。
新技術の特徴
・グアンファシンは従来とは異なるHCV培養細胞系を用いて初めて抗HCV活性を見出すことができた新規性の高い薬剤である。
・グアンファシンは既存の医薬品のドラッグリポジショニングにより見いだされた安全性の高い抗HCV剤候補である。
・現在の高価な抗HCV剤に比べて安価なため世界市場でのすみ分けが可能である。
想定される用途
・C型慢性肝炎の治療
・肝硬変、肝細胞癌の予防
・Li23細胞株を用いた抗HCV剤の探索により、グアンファシンのようなこれまで見逃されていた薬剤を発見することが期待できる。
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
宮崎大学 産学・地域連携センター 知的財産部門
TEL:0985-58-7592 FAX:0985-58-7793Mail:chizaiof.miyazaki-u.ac.jp
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山口大学 大学研究推進機構 産学公連携センター
TEL:0836-85-9961 FAX:0836-85-9962Mail:yuicyamaguchi-u.ac.jp
URL:http://kenkyu.yamaguchi-u.ac.jp/sangaku/
大分大学 研究・社会連携部 研究・社会連携課 外部資金係
TEL:097-554-7375 FAX:097-554-7740Mail:gaibushikinoita-u.ac.jp
佐賀大学 産学・地域連携機構 知財戦略・技術移転部門(TLO)
TEL:0952-28-8151 FAX:0952-28-8186Mail:tlomail.admin.saga-u.ac.jp
URL:http://www.ocir.saga-u.ac.jp/
鹿児島大学 研究国際部 社会連携課 知的財産係
TEL:099-285-3878 FAX:099-285-3886Mail:tizaikuas.kagoshima-u.ac.jp
URL:http://www.rdc.kagoshima-u.ac.jp/index.html
琉球大学 総合企画戦略部 地域連携推進課 産学連携推進係(知的財産担当)
TEL:098-895-8031 FAX:098-895-8185Mail:chizaito.jim.u-ryukyu.ac.jp
URL:http://www.iicc.u-ryukyu.ac.jp/
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