物質・材料研究機構 新技術説明会
日時:2016年09月06日(火) 13:25~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、物質・材料研究機構
後援:特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- 医療・福祉
1)未来医療を拓くキーマテリアル:スマートポリマー
物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノライフ分野 メカノバイオロジーグループ MANA准主任研究者 荏原 充宏
新技術の概要
様々な官能基をポリマー骨格中に組み入れるポリマー製造技術を応用した、外部の環境変化(温度や光、pH、磁場など)に応答してその性質を変化させることができる“スマートポリマー”を用いて、従来技術では不可能な特異な化学物質の吸着/放出性能を実現するメッシュなど新たな医療用材料の開発を行っている。
従来技術・競合技術との比較
局所投薬:外科手術時の体内留置により、内服や静注など従来の方法では実現不可能だった高濃度(10³~10⁴倍)の薬効成分を作用させることができる。また、ポリマーの環境応答性を利用して薬効成分の放出を外部から低侵襲の処置により調節できる。これらの特長を活かして、患者の負担が少なく、より治療効果の高い医療が実現できる。
新技術の特徴
・体内に入れたまま長期間放置したり、体内組織や血液などと接触させても安全なポリマーが作れる。
・様々な官能基をポリマー骨格中に組み入れることで環境応答性を精密にコントロールできる。
・モノマーやコモノマーの選択肢が広いだけではなく、適切な選択により、様々な物質の高濃度充填を実現できる。
想定される用途
・癌治療
・透析治療
・感染症の診断
関連情報
・サンプルあり
- アグリ・バイオ
2)「生体の窓」で明るい蛍光観察を可能とする生体無毒なナノ粒子
物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 独立研究者 白幡 直人
新技術の概要
シリコン結晶をコアにもつ水溶性ナノ粒子を開発した。二光子励起により、明るく・コントラストが高く・解像度の良いバイオイメージングが可能になった。該ナノ粒子の細胞毒性は非常に低い。ナノ粒子の表面にはさまざまな官能基を導入できるので、マーカーに標識体を結合させ、生体分子識別機能を付与することも可能である。
従来技術・競合技術との比較
「生体の窓」におけるイメージングに利用できる蛍光体は存在するが、その大半は発光効率が悪く、発光効率の良い蛍光体には生体毒性のある鉛、砒素、水銀などが含まれるという問題があった。本研究では、有害元素を含まないシリコンを主成分とするナノ粒子を用い該波長域に対して効率良く発光する蛍光体を開発した。
新技術の特徴
・二光子励起法を利用することで、絶対発光量子収率30-48%の高い効率で近赤外光を放射する。
・粒子の650-1000nmの波長域で発光波長を連続的にチューニングできる。
・分子識別機能を付与することが可能である。
想定される用途
・バイオマーカー
・約毒物簡易検査キット
・ハイパーサーミア
- 製造技術
3)ZnOコーティングボールベアリングシステム ~環境に優しいグリーントライボ材料の開発とジェットエンジン発電機の省エネ化
物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 エネルギー構造材料分野 トライボロジーグループ グループリーダー 土佐 正弘
新技術の概要
環境に優しく埋蔵量の豊富な亜鉛(Zn)に着目して耐環境性に優れた酸化物として酸化亜鉛(ZnO)の潤滑性コーティングをこころみてきた結果、コンビナトリアル手法を駆使して結晶配向性の割合の最適化をはかることで低摩擦化に成功するとともに、さらに、ベアリングボールにZnOを均一かつ一様にコーティングすることをこころみ、膜構造や組織を観察してコーティングとしての品質を確認し、ついでZnOを表面にコーティングしたボールを組み込んだボールベアリングを作製してその高速回転性能を評価するとともに、さらに、小型ジェットエンジンに組み込み、ターボシャフトにより直結した発電機の発生電力を計測することにより燃料消費量の低減に成功した。
従来技術・競合技術との比較
酸化物は、耐熱性、耐酸化性、耐食性、耐摩耗性に優れ、安全で環境にも優しい材料であるが、摩擦係数が高く、従来の作製手法では潤滑材料としては用いることができなかった。そこで、NIMSでは酸化物の結晶構造を開発したコンビナトリアルスパッタコーティング手法を駆使して精密に結晶構造をコントロールすることによって亜鉛酸化物でも低摩擦化を実現することに成功した。
新技術の特徴
・酸化物(ZnO)コーティング
・低摩擦潤滑材料
・ピエゾ効果による低摩擦化促進
想定される用途
・ジェットエンジン
・自動車エンジン
・耐環境性駆動系部材
関連情報
・サンプルあり
・展示品あり
- 材料
4)FRPケーブルの性能を最大限に引き出す定着構造体
物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 輸送機材料分野 高分子系ハイブリッド複合材料グループ 主幹研究員 小熊 博幸
新技術の概要
繊維強化プラスチック(以下、FRP)ケーブルは比強度が高く、耐食性に優れることから、適用範囲は広がっている。FRPケーブルの両端部には定着構造体が設けられ、張力が集中しやすい定着構造体の近傍で損傷が生じやすい。本発明の目的はFRPケーブルの端部を良好に保持可能とする技術を提供することにある。
従来技術・競合技術との比較
従来の定着構造体の多くは金属材料で構成されているため、大型化に伴う重量の増大や腐食の問題が生じる。本発明では定着構造体に繊維強化プラスチックを用いることで上記の問題を解決する。また、FRPケーブルを保持するための荷重の分散状態を最適化し、FRPケーブルの性能を最大限に引き出すことを可能とする。
新技術の特徴
・軽量化、耐食性
・確実な荷重伝達、応力集中の低減、定着部の形状安定性の向上
・現場重合ならびに施工
想定される用途
・長大構造物(軽量化:高圧電線、吊り橋、コンクリート構造体)
・海洋構造物(耐食性:緊張係留式プラットフォーム)
・材料強度試験(静的、疲労)
関連情報
・サンプルあり
- 計測
5)電子線モアレ法・モアレ法を用いた変形・変位測定手法の開発とその応用技術
物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 構造材料基礎科学分野 構造材料組織解析技術グループ 主席研究員 岸本 哲
新技術の概要
電子線モアレ法やモアレ法を用いて、ミクロンサイズからメートルサイズの領域までの変形量を視覚的に観察し、かつ計測できる技術を開発した。この手法を用いるとステージの位置合わせや熱膨張係数計測、ひずみ計測、規則的パターンの乱れや変位計測等が観察・計測できる。
従来技術・競合技術との比較
従来の計測器を用いた計測ではなく、資料に描いたグリッドより変形量を求めるため、安価に、容易に変形量を計測できる。特に1画面内の変形を視覚的にとらえることができ全体の変形量分布を1画面でとらえることができる。
新技術の特徴
・走査型電子顕微鏡や光学顕微鏡を用い、新たな装置を付加することなく変形量を観察できる。
・橋梁等の大型建築物のたわみなどの変位を簡便に計測できる。
・変形の様子は特殊な装置を介することなく、視覚的にとらえることができる。
想定される用途
・電子顕微鏡・レーザー顕微鏡などの精密測定機器のステージの位置合わせ
・熱膨張係数、界面すべり、ひずみ集中等の物理的現象の観察・測定、損傷量の評価
・橋梁やビルディングのたわみ量の簡易計測、異常変形部位の検出
関連情報
・デモあり
・展示品あり
お問い合わせ
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