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理化学研究所 新技術説明会

日時:2016年05月31日(火) 10:00~15:25

会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)

参加費:無料

主催:科学技術振興機構、理化学研究所

発表内容詳細

  • 製造技術

1)NMR・MRI感度の飛躍的向上につながる核偏極法

理化学研究所 仁科加速器研究センター 上坂スピン・アイソスピン研究室 主任研究員 上坂 友洋

新技術の概要

材料開発や生化学研究に広く用いられている核磁気共鳴(NMR)分光法や磁気共鳴映像法(MRI)の感度には、まだ大きな改善の余地が残されている。我々は、NMR・MRI感度の飛躍的向上につながる、ペンタセン誘導体を用いた核偏極法の開発に成功した。このペンタセン誘導体はほぼ全てのNMR溶媒に溶け、高い汎用性を持っている。

従来技術・競合技術との比較

従来の核偏極法は、液体ヘリウムなどを用いて達成できる極低温環境に依存しており、これが装置の複雑化とコスト増に繋がっていた。私達が発明した方法では、液体ヘリウムを必要としないより高温領域 (77ケルビンから常温)において、様々な溶媒に適用可能であり、分解能を損なうことなく低コスト化・高感度化を実現することができる。

新技術の特徴

・液体ヘリウムを必要としない核偏極
・分解能低下の原因となるラジカルを不使用
・ほとんどのNMR溶媒に適用可能

想定される用途

・NMR分光法の超高感度化
・MRIを用いたリアルタイムイメージング(代謝・pHなど)

関連情報

・外国出願特許

  • 材料

2)インドシアニングリーンに代表される生体イメージング用近赤外蛍光色素の蛍光増強および安定化技術

理化学研究所 生命システム研究センター ナノバイオプローブ研究チーム チームリーダー 神 隆

新技術の概要

生体蛍光イメージングでは、インドシアニングリーン(ICG)等の近赤外発光有機色素が蛍光プローブとして用いられるが、これら近赤外色素では一般に共役系が長くなるため疎水性が増大し水への溶解性(安定性)が低下する。また同時に水溶液中での蛍光輝度が著しく低下する傾向がある。本技術は、ICGに代表される近赤外蛍光有機色素の水中での蛍光および安定性を増強し、高感度な生体蛍光イメージングを実現することにある。

従来技術・競合技術との比較

従来は、近赤外蛍光色素の蛍光および安定化を増強するためにリポソームやポリマーからなるナノ粒子に蛍光色素を封入する方法などが用いられているが、化合物の製造にコストがかかること、リポソームあるいはナノ粒子の調整に時間がかかること、リポソームあるいはナノ粒子のサイズが大きくなること(腎クリアランスしにくい)等の問題があった。

新技術の特徴

・近赤外蛍光色素の発光輝度の著しい改善(200%以上)
・近赤外蛍光色素の安定性の著しい改善(水中で1ヶ月以上安定)
・蛍光増強、安定化剤は大量合成が容易で細胞毒性がない

想定される用途

・近赤外蛍光色素水溶液の安定化、長期保存
・近赤外蛍光色素を用いた細胞イメージング
・近赤外蛍光色素を用いた生体蛍光イメージング

関連情報

・サンプルあり

  • 材料

3)スキルミオンを使った超高速、超低消費電力の完全不揮発性大規模磁気メモリ

理化学研究所 創発物性科学研究センター 強相関物性研究グループ 上級技師 金子 良夫

新技術の概要

私たちは膨大な情報を0、1にデジタル化して記録している。いままでの記憶媒体は電子の電荷のありなしや磁石のNS極の向きを0、1に対応させてデータを記録している。このような記憶媒体として、理化学研究所はスキルミオンを提案している。スキルミオンとは、磁石の磁気モーメントがつくる数ナノメータの極小の渦のことである。パルス電流を使ってスキルミオンを作ったり、消すことができる。電流パルスの必要な時間は数10ピコ秒の時間である。数10ピコ秒とは10のマイナス11乗秒の極短時間のパルスである。このような短時間の電流パルスで、スキルミオンを作ったり、消すことができる。この結果、情報を記録するために必要な時間が数100倍以上早くなることになる。また、スキルミオンを保持するために電力を必要としない。この結果、低消費電力の超高速不揮発性メモリが実現できる。

従来技術・競合技術との比較

不揮発性メモリでありながら、アクセス時間が数10ピコ秒の超高速で、ビットあたりの消費電力が1フェムト以下の超低消費電力のメモリ素子。

新技術の特徴

・超高速不揮発性メモリ
・超低消費電力不揮発性メモリ
・大規模不揮発性メモリ

想定される用途

・ランダムアクセスメモリ(RAM)
・高速、低消費電力、大規模フラッシュメモリ
・高密度ハードディスク

関連情報

・デモあり

  • 製造技術

4)高品質・高アスペクト比微細加工を実現するフェムト秒ベッセルビーム最適化技術

理化学研究所 光量子工学研究領域 理研-SIOM連携研究ユニット ユニットリーダー 杉岡 幸次

新技術の概要

ベッセルビームとは、微小な集光スポット(直径数μm程度)が長い距離(数mm以上)伝搬する光であり、固体材料の高アスペクト比、テーパーフリー加工を実現する。本発明は、ビーム整形技術によりサイドローブエネルギーを低減した最適なベッセルビームを設計し、高品質な材料加工を提供する。

従来技術・競合技術との比較

従来の固体貫通穴加工では、反応性イオンエッチングが用いられているが、エッチング速度が遅く、かつフォトリソグラフィプロセスが必要であった。フェムト秒ベッセルパルスを用いると、マスクレス高速加工が行えるが、加工穴周辺にベッセルビームのサイドローブに起因する損傷が生じる。本発明はこの問題点を解決し、高品質、高アスペクト比、テーパーフリー加工を実現する。

新技術の特徴

・ベッセルビームの最適化
・高アスペクト比加工
・テーパーフリー加工

想定される用途

・固体材料の穴あけ加工(貫通孔(TSV、TGV等))
・固体材料の切断、ダイシング
・バイオイメージング

  • デバイス・装置

5)三次元メタマテリアルを用いた温度可視化装置および赤外線可視化装置

理化学研究所 田中メタマテリアル研究室  田中 拓男

新技術の概要

赤外線の吸収による温度変化を可視〜近赤外域に共鳴を持つ微小共振器で検出することで、赤外線を高感度に検出できる小型かつ高解像度な赤外線検出デバイスを提供する。

従来技術・競合技術との比較

従来の赤外光検出素子もしくはサーモグラフィカメラでは、素子の受光面積を大きくして信号強度を稼ぐ必要があり、その結果、素子の大型化や、撮像素子の画素数を増やせないという問題がある。本特許は、可視〜近赤外に応答する光共振器を用いて赤外線を検出することで小型・高感度・高解像度な赤外線検出器を提供する。

新技術の特徴

・高感度な赤外線(熱線)の検出が可能
・検出波長を金属の構造を変化させるだけで制御可能
・大面積化、高密度化が可能

想定される用途

・高感度赤外線検出器
・赤外線カメラ
・サーモグラフィー

  • デバイス・装置

6)究極的な高分散透過型回折格子

理化学研究所 光量子工学研究領域 先端光学素子開発チーム 研究員 海老塚 昇

新技術の概要

Quasi-Bragg(QB)回折格子は平行平面のミラー基板をブラインドや鎧窓のように積層した、新しい透過型の厚い回折格子であり、次数が高いほど回折効率が高くなることが数値計算により確認されている。また、QB回折格子は結像機能を持ち、3次元空中映像投影装置用の結像光学素子等としても利用可能である。

従来技術・競合技術との比較

従来の階段形状の表面刻線型回折格子は透過型の場合に回折角が大きくなる(分散が大きくなる)のに従って格子媒質の屈折率を大きくしなければならない。Volume phase holographic(VPH)回折格子は高次回折光の効率が低く、高次回折光を利用するエシェル分光用には利用できない。

新技術の特徴

・高次回折光の効率が高い
・入射角と回折角を等しくできる(完璧なリトローマウントを実現できる)
・結像機能を有する

想定される用途

・小型高分散分光器
・波長多重光通信用の波長混合・弁別光学素子(AWGと同等の機能)
・3次元空中映像投影装置用の結像光学素子

関連情報

・サンプルあり
・外国出願特許あり

  • 計測

7)テラヘルツ光で見える!半導体キャリア特性

理化学研究所 光量子工学研究領域 テラヘルツ光研究グループ 客員研究員 大野 誠吾

新技術の概要

テラヘルツ光の波長をキャリア密度に敏感な波長と、影響を受けない波長とで切り替えながら反射率測定を行う。それにより様々な半導体基板のキャリア密度に関係する特性の面内分布を高速、非接触、非破壊、アズカットで調べることができる。これは広帯域波長可変単色テラヘルツ光源を用いることで初めて実現できた。

従来技術・競合技術との比較

従来の半導体のキャリア特性を測るために用いられてきたホール測定は、試料への電極の設置が必要であり、オンデマンドな計測は難しかった。テラヘルツ波を用い特性を調べることで非破壊、高速に面内分布の計測が可能となり、試料の作成から評価までが迅速に行えるようになった。アズカットの試料を調べられるのもこの手法ならではである。

新技術の特徴

・半導体基板のキャリア密度、移動度、抵抗率の面内分布が測定可能
・高速、非接触、非破壊、高分解能な測定が可能
・アズカット、アズグローンの試料でも測定可能

想定される用途

・工場での製品検査、評価、作製へのフィードバック
・研究室レベルでのウエハの評価、可視化
・パワー半導体、太陽電池など

  • 材料

8)フタロシアニン色素・ロイコ色素の吸収特性を長波長化する分子技術

理化学研究所 内山元素化学研究室 専任研究員 村中 厚哉

新技術の概要

フタロシアニン色素やロイコ色素は様々な用途で利用されている現在社会に欠かせない機能性有機色素である。今回私たちは従来のフタロシアニン色素、ロイコ色素に比べてより長波長領域に吸収を持つ新しい分子を開発した。

従来技術・競合技術との比較

通常のフタロシアニン色素は赤色領域の約700nmに主吸収帯を持つが、独自の分子技術で800-1200nmの近赤外領域に強い吸収を持つ色素を合成した。通常のロイコ色素は一つの色しか出せないが、ロイコ色素の骨格を二つつなげた色素を新しく開発し、桃色・青緑色の二色を出せることがわかった。

新技術の特徴

・近赤外領域に主吸収帯を持つフタロシアニン系色素
・色調が二段階に大きく変化するロイコ色素

想定される用途

・近赤外光電変換材料
・光線力学療法における光増感剤
・サーモクロミズムを利用した温度センサーや玩具

関連情報

・サンプルあり
・展示品あり

  • 材料

9)超高屈折薄膜の開発による光エンジニアリング

理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発ソフトマター機能研究グループ 基礎科学特別研究員 宮島 大吾

新技術の概要

光学特性に際立った特徴を有し、かつ透明、軽量でフレキシブル、熱的安定性も高く(400℃以上)、有毒な元素が一切ない丈夫な有機薄膜の開発に成功した。この規格外の材料による光技術に関する応用を発表する。

従来技術・競合技術との比較

有機材料はもちろんのこと、無機材料でも達成が困難な光学特性を、可視帯域での透明性を犠牲にせずに達成し、既存の材料では実現できない高い光学機能を確認した。

新技術の特徴

・透明かつ際立った光学特性
・軽く、固く、フレキシブル
・有機膜材料

想定される用途

・発光デバイス用光学機能膜
・顔料、光輝材、化粧料
・産業資材用構造色着色材

関連情報

・サンプルあり
・外国出願特許あり

お問い合わせ

新技術説明会について

〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町

TEL:03-5214-7519

Mail:scettアットマークjst.go.jp

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