ナノ・マイクロテクノロジー 新技術説明会
日時:2016年09月15日(木) 13:00~15:25
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、中央大学、上智大学、東洋大学
後援:大学知的財産・産学連携担当者ネットワーク、特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)1細胞の機能や構造を計測するためのマイクロチップ技術
中央大学 理工学部 精密機械工学科 教授 鈴木 宏明
新技術の概要
細胞の機能と構造を、簡便・安価な方法で、1細胞レベルで計測するためのマイクロチップを、2件開発した。
【開発1】1細胞に対する薬剤応答検出や遺伝子解析用マイクロチップ
【開発2】上皮細胞等の培養細胞を垂直断面で観察できる蛍光顕微鏡観察用マイクロチップ
従来技術・競合技術との比較
【開発1】
現在利用されている、複雑で高価な1細胞解析用マイクロ流体回路チップの簡略化、またはシンプルなマイクロウェルチップの高機能化が可能に。
【開発2】
共焦点顕微鏡等の高額設備を用いなくても、より高解像度な細胞の断面像が得られる。
新技術の特徴
・マイクロ3次元構造の、シリコーン樹脂への一括成形により、製造工程の簡略化とローコスト化を実現
・本チップを用いた細胞解析プロトコールを、すでに開発開始
・共焦点顕微鏡や超解像顕微鏡を用いずとも細胞の垂直方向の動態を、ライブイメージング可能
想定される用途
・がん、免疫、発生・分化などで生じる細胞の不均一性の解明
・1細胞の薬剤応答の高感度検出
・上皮細胞等、極性を持つ細胞の構造と機能を明らかにする基礎研究
関連情報
・サンプルあり
- 材料
2)DNAナノマテリアル・ナノメディシンのStructure-Based Design
上智大学 理工学部 物質生命理工学科 准教授 近藤 次郎
新技術の概要
X線結晶解析によって得られる高精度の立体構造情報を利用して、DNAナノマテリアルやナノメディシン(核酸医薬品)をデザイン・合成する技術である。これによって、世界最細で最大レベルのアスペクト比をもつDNA-銀ハイブリッドナノワイヤーの開発に成功した。現在は核酸医薬品のデザイン・開発も進行中である。
従来技術・競合技術との比較
創薬分野で行われている低分子医薬品のStructure-Based Designの手法をDNAのデザイン・開発に応用することで、低コスト・短期間でより確実にDNAナノマテリアル・ナノメディシンを開発できる。この技術で得られたDNA-銀ハイブリッドナノワイヤーは、「材料を混ぜるだけ」という極めて単純な方法で作製できる。
新技術の特徴
・すべての生命が遺伝物質として持っている低環境負荷なDNAを材料として用いている。
・Structure-Based Designによって、ブロックを組み立てるように分子をデザインできる。
・X線結晶解析で用いるDNAの結晶化技術は、核酸医薬品などの高純度精製にも活用できる。
想定される用途
・透明導電フィルム
・微細電子回路
・難治性疾患治療用の核酸医薬品
- 医療・福祉
3)金属原子内包フラーレンの選択的堆積技術
東洋大学 理工学部 生体医工学科 教授 本橋 健次
新技術の概要
【1】メタロセン分子で終端した単分子膜を内壁に吸着したイオンビーム流路にフラーレンイオンビームを入射し、【2】内壁表面とのイオン散乱により金属原子を内包させ、【3】イオンビーム流路の出口から真空中に飛び出した金属原子内包フラーレンを、静電界により質量電荷比に応じて軌道分離しながら基板上に堆積する。
従来技術・競合技術との比較
従来技術ではプラズマやイオン注入による内包フラーレンの生成が主流である。プラズマの場合、所望の原子を所望の分子に内包させることが難しい。イオン注入法では、基板に堆積した分子の中から内包フラーレンを単離することが難しい。新技術では、内包過程と堆積過程を選別しながら同時に行うことができる。
新技術の特徴
・斜入射イオン散乱法による内包反応の制御
・メタロセン分子で終端した単分子膜表面を内壁とするイオン流路内での高効率内包
・質量電荷比により軌道分離された内包フラーレンの選択的堆積
想定される用途
・MRI(磁気共鳴画像診断)の造影剤
・DDS(ドラッグデリバリーシステム)
・単分子メモリー/スイッチ/トランジスター
- アグリ・バイオ
4)マイクロ波刺激を用いた植物の迅速育成法の開発
上智大学 理工学部 物質生命理工学科 准教授 堀越 智
新技術の概要
通信などで利用されている微弱なマイクロ波を、植物に短時間照射し、通常の植物の栽培をすると、2倍以上のスピードで開花や実をつけることを発見した。ごく短時間のマイクロ波処理で、作物の収穫を2倍以上にできることから、大掛かりな装置や複雑な手順を必要とせず、農業、緑地化、バイオマス、その他への応用が期待できる。
従来技術・競合技術との比較
本発明は、長期間の間、光、温度、化学物質などを制御する必要がないため、類似の他の技術はないと考えられる。
新技術の特徴
・植物の初期育成段階でマイクロ波処理を短時間行うだけで、だれでも植物の迅速育種が可能となる。
・いくつかの野菜等でも迅速育種の実証を行い、味に対しても問題ないことを確認している。
・遺伝子的な組み換えが起きておらず、残留化学物質もないことを確認している。
想定される用途
・種苗ビジネスでの利用
・野菜工場や砂漠の緑地化などの悪条件下での利用
・IoTとの連動による作物の計画収穫
関連情報
・外国出願特許あり
- 環境
5)ナノ触媒が叶える廃棄物資源循環型社会
中央大学 理工学部 応用化学科 助教 田口 実
新技術の概要
日常身近にあるプラスチック材料「ポリカーボネート」を、温和な水熱条件下で原料(モノマー)化する画期的な技術を開発した。触媒には、金属酸化物である酸化セリウム(CeO₂)ナノ結晶を用いる。本技術は、プラスチックと水と触媒のみを、低温・短時間で反応させることで100%解重合する。モノマー回収率は90%であり、企業との共同研究・開発により実用化を展開したい。
従来技術・競合技術との比較
従来モノマー化手法に比べ、モノマー回収率90%であることから、モノマー選択性が高く、生成物の二次反応や混雑物との副反応をほぼ起こさない。さらに、分離・精製プロセスも容易である。触媒活性が減衰しないので、無制限使用あるいは再利用できる。本プロセスは180℃という低温の水熱法のため、従来技術よりもプロセスの簡素化とコスト低減化を実現できる。
新技術の特徴
・分離、精製プロセスが簡便で、触媒の無限、繰り返し使用が可能。
・100%プラスチック解重合とモノマー90%収率が可能。二次反応、副反応なし。
・水熱法、低温(180 ℃~)、短時間(~3 h)、大量処理可能。
想定される用途
・廃棄プラスチック等の産業廃棄物回収・処理業界(廃プラのモノマー化リサイクル)
・耐久消費財製造業界(携帯電話、自動車部品、テレビ、パソコンなどの筐体のリサイクル)
・化学薬品会社(プラスチック原料及び可塑剤や難燃剤などの成分抽出)
関連情報
・サンプルあり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
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URL:http://www.chuo-u.ac.jp/research/industry_ag/clip/
上智大学 研究推進センター
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東洋大学 産官学連携推進センター
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