東京理科大学 新技術説明会
日時:2016年11月08日(火) 10:25~15:30
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、東京理科大学
後援:特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- 電子
1)ウェアラブル端末に向けた高効率な電波式ワイヤレス給電・通信
東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 教授 楳田 洋太郎
新技術の概要
ミリ波または準ミリ波帯のアレーアンテナを用いることにより、電波方式ワイヤレス給電により、数m以上の遠隔から、ウェアラブル端末に、従来にない高効率の給電を行う。また、送信機部分に全ディジタル方式の包絡線パルス幅変調技術を適用することにより、高効率な通信を簡易かつ均一に実現する。
従来技術・競合技術との比較
ウェアラブル・携帯端末に対し、近傍磁界を用いた非接触給電が実用化されているが、充電中は端末の使用が制限される。これに対し、遠くまで届く電波による給電が実現すれば、この問題は解消される。また、従来のアナログ回路の送信機をディジタル回路の送信機で置き換えることにより、簡易・均一・高効率化が図れる。
新技術の特徴
・ミリ波または準ミリ波の利用による電力伝送効率の向上
・全ディジタル方式による簡易、均一、高効率な送信機
・電波伝搬の制御を用いた高効率な信号、電力同時伝送技術
想定される用途
・腕時計型、腕輪型、めがね型、着衣内蔵型等のウェアラブル端末への遠隔ワイヤレス給電
・携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器への遠隔ワイヤレス給電
・高効率、耐環境変動、低コストなディジタル送受信機
- 製造技術
2)シームレスナノパターンロールモールドの作製方法
東京理科大学 基礎工学部 電子応用工学科 教授 谷口 淳
新技術の概要
電子ビーム露光によりロール側面へナノパターンを形成する技術である。電子ビーム露光をするにあたって、シームレスな線パターンを描画するために、ロールを回転させながら、その側面に電子ビームを照射して作製した。この手法で、100nm程度の線パターンが1周シームレスでつながって作製できた。
従来技術・競合技術との比較
ロールモールドはプリンテッド・エレクトロニクス等の金型として用いることができる。従来技術はレーザーや切削などで加工しているため、微細なパターニングが難しかった。本手法は、解像度がナノオーダーの電子ビームを用いることによりナノオーダーのパターンをロール上に作製することができる。
新技術の特徴
・ロールにナノパターンを作製することが可能
・ロールにシームレスにパターンを形成することが可能
・作製されたロールモールドによりロールナノインプリントによる転写も可能
想定される用途
・プリンテッド、エレクトロニクスなどの印刷による電子部品作製用のマスターモールド
・ロールナノインプリント用のマスターモールド
・ワイヤグリッド偏光子などの光学デバイス
関連情報
・サンプルあり
- 計測
3)時分割ロックイン検出法による非線形性・応答遅れ計測
東京理科大学 理学部第一部 物理学科 助教 瀬戸 啓介
新技術の概要
時々刻々変化する大きさの刺激を入力し、刺激の大きさ毎に分割してロックイン検出することで、非線形性と応答遅れを計測する方法である。刺激の波形は任意に設定可能で、これにより目的の量(非線形性や含まれている応答遅れの種類など)を感度・精度良く測定できる。
従来技術・競合技術との比較
周期的な刺激を試料に与え、大きなバックグランドに隠れた、その微小な応答を計測する方法にロックイン検出法があるが、刺激に対して線形な応答しか計測できない。本方法はロックイン検出法の高い信号雑音比を有しながら、応答の非線形性と遅れを検出することができる。
新技術の特徴
・周期的刺激に対する応答の非線形性を信号雑音比良く検出
・周期的刺激に対する応答に含まれている複数の遅れ要素を弁別可能
・電気化学における電流vs電圧曲線(サイクリックボルタモグラム)のような信号を、大きなバックグラウンドに乗る微小信号でも測定
想定される用途
・透過率変化など、大きいバックグラウンド(=透過光)に乗る微小で複雑な時間応答関数の測定
・固体ポリマーやポリマー溶液など、非線形性とヒステリシスが強く現れる試料の粘弾性挙動や関連する量の測定
・揺らぎなどで信号雑音比が小さくなるような生体試料の刺激に対する非線形性とヒステリシスが現れる応答の測定
関連情報
・サンプルあり
- 電子
4)大容量光アーカイブメモリ技術
東京理科大学 基礎工学部 電子応用工学科 教授 山本 学
新技術の概要
データセンタのアーカイブ用ストレージ技術として、多重度に優れ安定な記録再生を可能とする3次元クロスシフト多重方式を開発し、5インチディスクで、DVDの400倍となる2テラバイトの大容量記録再生技術を可能とするメモリ技術の開発に成功。
従来技術・競合技術との比較
(1)本方式は大容量化に有利であり、今後年率40%で高密度化が可能、(2)メディアは低コストで長期保存(50年以上)が可能、(3)従来の記録再生方式に比べ、トレランスが非常に高い、(4)記録と再生を分離するドライブ構成でSSDやHDDを凌駕する再生速度が可能、などの技術的優位性がある。
新技術の特徴
・大容量化、低ビットコスト化に優位
・トレランスが高い
・長期保存可能
想定される用途
・ビッグデータを保管・処理するハイパースケールデータセンタのアーカイブメモリ
・IoTデータをオンプレミスで保管するデータサーバのストレージシステム
・8kなどの高精細映像を蓄積するストレージシステム
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
- 情報
5)模様の複雑さを使う新しい識別技術
東京理科大学 工学部 電気工学科 講師 増田 恵子
新技術の概要
撮像された2つの模様の同一性を統計的な複雑さ(フラクタル次元)を用いて識別する技術である。大量生産物でなければ、用途は無限にある。例えば、指紋、葉脈、虫の紋様などにも適用可能で類似性の定量化が行える。
従来技術・競合技術との比較
指紋認証では指紋のミクロな特徴(マニューシャ)を抽出して個人を特定するが、この技術を使うと指紋のマクロなフラクタル次元の分布(統計量)を用いて認証するため、指紋採取時の回転や擦れなど変動の影響を受けにくい技術である。
新技術の特徴
・マニューシャ抽出を行わないため、指紋などへの限定不要
・模様の複雑さしか利用しないため、プライバシーの考慮が不要
・模様を取得する領域を変えることで、認証精度と認証時間のトレードオフを変更可能
想定される用途
・乗っただけ、触れただけで個人が認識され日々の健康管理(体重、体脂肪率など)を行える機器
・商品売買時に顧客カードの持参がなくても個人認証される顧客管理システム
・模様のある野菜や果実などの生産管理や個体管理技術(すり替え防止など)
関連情報
・デモあり
- 材料
6)ガラスビーズを用いた医療・センシング用機能材料の作製
東京理科大学 基礎工学部 材料工学科 教授 安盛 敦雄
新技術の概要
特定粒径のガラスビーズを焼結することにより、曲面細孔形状からなる多孔質材料を作製する。この材料は特定サイズの液体中の粒子の捕捉・分離が迅速に可能であり、血中循環がん細胞の捕捉・回収等への応用を進めている。また高分子ラメラ膜との複合化によるグルコース比色センサとしての活用も進めている。
従来技術・競合技術との比較
曲面細孔形状からなる3次元的な多孔質構造のため、従来のガラスフィルタと比較して細胞のような柔軟構造の粒子の分離・大量処理が可能となる。また高分子材料と比較して、化学耐久性や耐熱性が高く、高分子との複合化等の化学処理がしやすいこと、高温の液体や硬度の高い粒子にも適用可能であること等が特長となる。
新技術の特徴
・曲面細孔形状からなる3次元的な多孔質構造
・汎用のガラス材料・作製プロセスを使用
・高分子ラメラ膜等との複合化が容易
想定される用途
・粒子捕捉、回収用フィルタ(血中循環がん細胞の捕捉・回収など)
・バイオセンサ(グルコース比色センサなど)
・高温下での液中からの粒子の分離
関連情報
・サンプルあり
- 情報
7)秘密分散を用いた秘匿演算システムに関する計算装置
東京理科大学 工学部 電気工学科 教授 岩村 惠市
新技術の概要
秘密分散法はn個に分散した分散値のうちk個を集めることによって秘密情報を復元できる。よって、n-k個の分散値が失われても秘密情報は復元可能で、k-1個の分散値が攻撃者に知られても秘密情報は漏洩しない。新技術はこの秘密分散法の特徴を維持しながら、1つの鍵から分散値を生成できるため後述の特徴を実現できる。
従来技術・競合技術との比較
従来の秘密分散法は秘密情報を分散した後、そのオーナの手を離れ、秘密情報の意図しない復元や利用(秘匿計算等)が行われる可能性がある。それに対して、新技術である非対称秘密分散法はk-1個以下の分散値をオーナが1つの鍵から生成しサーバ数をk-1台以下とできるため、オーナの意図しない秘密情報の復元・利用が行われない。
新技術の特徴
・秘匿する情報が膨大でも、1つの鍵を管理するだけで全ての情報の保護と秘匿計算が可能
・公開鍵暗号を用いないため高速処理が可能で、スマートフォンなどで秘匿化処理・秘匿計算が可能
・秘密情報のオーナのみが分散後も秘密情報の復元・利用に関して制御可能
想定される用途
・医療分野などにおける個人情報を秘匿したままでの統計処理
・マイナンバーに関連付けられた情報を秘匿したままでの統計処理(マイナンバーの秘匿も可能)
・個人が自分の情報を管理し、かつクラウドを利用したライフログアプリケーション
関連情報
・デモあり
- 材料
8)セルロース液晶エラストマーによる応力センシング
東京理科大学 理学部第一部 応用化学科 准教授 古海 誓一
新技術の概要
環境に優しくリサイクル可能なセルロースに着目し、独自の分子デザインによって全可視波長領域で反射特性を示し、さらにゴム弾性も示すセルロース液晶エラストマーの開発に成功した。開発したセルロース液晶エラストマー膜に機械的な圧縮応力を加えると、圧縮した部分だけ反射色が可逆的に変化する特性があり、応力センシングが可能である。
従来技術・競合技術との比較
これまで液晶エラストマーは、石油資源を原料として人工的に化学合成されている。一方で、本発表者らは、環境・人体に優しくリサイクル可能な天然高分子であるセルロースを原料として、新しいセルロース液晶エラストマーの創製に成功した。不要になった紙やパルプをリサイクルすることができ、将来の社会に貢献できる。
新技術の特徴
・セルロース誘導体の薄膜を一定の温度に保ちながら紫外線照射をすると、多種多様な反射型フルカラーイメージングが可能
・セルロース液晶エラストマー膜に機械的応力を加えると、反射特性(反射色)が変化
・セルロースを用いてソフトフォトニックデバイスを創製することができるので、貴重な石油資源を使わず、今日直面している資源・環境問題に貢献
想定される用途
・社会インフラセンサー
・ウエアラブルセンサー
・反射型ディスプレイ
関連情報
・サンプルあり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
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