金沢大学 新技術説明会
日時:2017年08月17日(木) 12:55~16:00
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、金沢大学、金沢大学ティ・エル・オー
後援:特許庁、北陸銀行、日本政策金融公庫
発表内容一覧
発表内容詳細
- 材料
1)キラルアミンの立体配置を色の違いや蛍光発光で識別できるセンサー
金沢大学 理工研究域 物質化学系 教授 前田 勝浩
新技術の概要
広範囲のアミン化合物のキラリティーを、特殊な装置を用いることなく、溶液の色の変化と紫外光照射における蛍光発光の一方または両方の違いによって、目視で簡便に識別することができるらせんポリマーを開発した。本ポリマーは共有結合型および非共有結合型の化学センサーとして機能する。
従来技術・競合技術との比較
非共有結合相互作用を利用した従来センサーと比較して、測定条件(濃度等)に依存せず、微量の試料でも再現性良く識別できる。HPLC等の従来技術において正確な測定が困難な低い光学純度の試料でも精度良く識別することができる。
新技術の特徴
・溶液の色の変化または蛍光発光の両方の違いによって目視でキラルアミン化合物立体配置を識別できる
・キラルアミン化合物の低い光学純度の違いを精度よく識別できる
・広範囲のキラルアミン化合物に適用できる
想定される用途
・キラルなアミン化合物の立体配置の識別
・キラルなアミン化合物の光学純度の決定
- 計測
2)プラスチックにおける劣化状態の非破壊非接触診断
金沢大学 理工研究域 自然システム学系 助教 比江嶋 祐介
新技術の概要
我々はラマン分光法を利用することで、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂材料における劣化状態を、短時間で非破壊かつ非接触で診断する技術を開発した。我々はラマンスペクトルにおけるピーク位置の変化から劣化によるわずかな構造変化を検出し、劣化の初期状態の診断を実現した。
従来技術・競合技術との比較
透明度や色合いなどの外観変化、赤外分光測定による分子の化学変化など、経験的な指標による従来の樹脂劣化の評価試験と異なり、試料特性の影響が小さい一般的かつ汎用な評価法である。また、試料調製も不要で、10秒程度の短時間で非接触にて、分子や結晶構造などのわずかな変化を高感度に検出可能である。
新技術の特徴
・試料形状によらず、10秒程度の測定時間で、非破壊かつ非接触で診断が可能
・分子構造、結晶構造などの微視的なわずかな変化を高感度に評価可能
・小型分光器を利用すれば、アタッシュケース程度のサイズで、電池でも駆動可能なので、屋外での診断も可能
想定される用途
・プラスチック成形体の劣化状態の非破壊診断と寿命予測
・水タンクやガス配管など大型の樹脂成形体の使用現場での劣化診断
・ロボットなど自動計測技術を利用した劣化状態のリアルタイムモニタリングシステム
- 材料
3)化学変換を利用した液体可変抵抗/低毒性セルロース溶媒
金沢大学 理工研究域 自然システム学系 特任助教 黒田 浩介
新技術の概要
(1)我々は、新規の有機塩を開発した。この有機塩からなるイオン液体は、CO2・N2ガスの添加により電気伝導率をmS/cmオーダーで変化させることができ、その逆数である抵抗値も大きく変えられることがわかった。CO2ガスの分圧で抵抗値を制御することも可能である。
(2)また、我々は、植物バイオマスあるいはセルロースを溶解するが、微生物細胞へ毒性が非常に低い新規溶媒も開発した。
従来技術・競合技術との比較
(1)従来のイオン液体でもCO2・N2で抵抗値を多少変えることはできていたが、それを上回る性能を今回の発明では得ることができた。また、CO2ガスの分圧で抵抗値を制御できることも新しい。
(2)従来のセルロース溶媒は高毒性であり、そのまま微生物での発酵工程で利用できなかったが、本発明では可能である。
新技術の特徴
・化学変換やCO2分圧によって抵抗値が6.7倍変化する(技術1)
・電極間の距離を変える従来型に比べ、液体可変抵抗器の小型化が可能(技術1)
・従来の溶媒と比べ、毒性が20分の1(技術2)
想定される用途
・可変抵抗、スイッチ(技術1)
・バイオマスの連続発酵(技術2)
- 製造技術
4)3Dプリンターで製作した金型の高精度化に向けた内部配置水管の表面加工
金沢大学 理工研究域 機械工学系 教授 古本 達明
新技術の概要
3Dプリンターを用いて製作した各種金型について、金型内部の任意位置に配置した水管内面を砥粒で加工し、課題である不十分結合層を除去するとともに、冷却性能が優れた内部水管を製作する技術を開発した。
従来技術・競合技術との比較
3Dプリンターで製作した金型内部の水管表面は、従来は未加工のまま水管として使用しており、不十分結合層が剥がれることによる水管の詰まりや、冷却性能の低下が課題であった。これらの課題を解決する手法を提案する技術であり、同様の技術は他に無い。
新技術の特徴
・任意形状の内部水管内面がワンプロセスで加工できる
・3Dプリンターで製作した金型だけでなく従来手法で製作した金型内部の水管にも適用できる
想定される用途
・3Dプリンターで製作した各種金型の水管内面加工
・従来方法で製作した金型内部水管の内面クリーニング
・各種流路の内面加工
関連情報
・サンプルあり
- 機械
5)人の動作の正確さを補助するスキルアシスト装置
金沢大学 理工研究域 機械工学系 教授 立矢 宏
新技術の概要
ロボットアームとの協調により人の動作を正確に補助する装置。力や、速度加減は、人間が行い、位置や姿勢はロボットが正確に行うことで、症状に応じた複雑なリハビリテーションや、人またはロボットのみでは困難な高度な作業を可能とする。
従来技術・競合技術との比較
人の動作の補助としては、パワーアシストの開発が盛んであるが、本装置は人の運動軌跡を補助するものであり、リハビリや、麻痺した四肢の補助による軽微な動作(食事など)、さらに、高度な動作を可能とし得る。また、基本的に力制御を用いないため、安定した動作が可能である。
新技術の特徴
・人の動作の補助
・力制御や,高度なセンサなどが不要
・人とロボットの協調により複雑な運動と作業を実現
想定される用途
・リハビリテーション
・麻痺患者などの食事動作の補助
・高度なスキルやセンシングが必要な製造作業,工芸技術の容易化
- 計測
6)重要部品の検査のためのリアルタイムX線残留応力計測装置
金沢大学 人間社会研究域 人間科学系 教授 佐々木 敏彦
新技術の概要
金属やセラミックスの残留応力を1秒以下で高精度に測定する技術。装置が小型化でき、しかも高精度に行うことが出来る。新型半導体検出器を用いるので、回折環の画像を高精細に得ることができ、視覚的に材質や結晶の状態を判断することにも有効に利用できる。
従来技術・競合技術との比較
残留応力の測定速度は、世界標準技術の600倍以上。最新の同型機に比べても60倍以上高速化が可能。データ処理を工夫することでさらに10倍高速にすることも可能。回折環の精細さに関しては、最新技術の約10倍であり、40倍高速化も技術的に可能。
新技術の特徴
・測定が高速
・装置が小型
・低価格化に有効
想定される用途
・製造ラインでの製品検査
・大型の構造物やインフラの検査
・狭い箇所への適用
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