JST戦略的創造研究推進事業 新技術説明会 ~グリーン・ナノテクノロジー~
日時:2017年12月21日(木) 10:25~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構
後援:特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- 材料
1)洗濯も出来る超薄型有機太陽電池 【さきがけ】
理化学研究所 染谷薄膜素子研究室 研究員 福田 憲二郎
新技術の概要
伸縮性に優れ、かつ水にも安定な有機太陽電池を実現することに成功した。新しい有機ポリマーを利用することでエネルギー変換効率を飛躍的に向上させ、大気中での安定動作も可能にした。また、透明なゴムでサンドイッチするという技術によって水に120分間つけても、水を付けながら曲げ伸ばししても壊れないという性能を達成した。
従来技術・競合技術との比較
フレキシブル太陽電池は膜厚が数10μmオーダー、であり、曲げられるがくしゃくしゃにすることはできなかった。これに対して本新技術では圧倒的な薄さ・軽さのために曲げ伸ばし壊れないと言う技術的優位性を有している。このような伸縮可能太陽電池で水への圧倒的な安定性を有しているものは無く、特徴的な性能である。
新技術の特徴
・高い伸縮性
・高いエネルギー変換効率
・高い水安定性
想定される用途
・衣服貼り付け型モバイルデバイス充電端末
・形状・場所を選ばない大面積給電システム
・無知覚な健康状態常時モニタリングデバイス用電源
関連情報
・サンプルあり
- 材料
2)やわらかく 生体に優しい インジェクタブルポリマーゲル 【さきがけ】
東京大学 工学研究科 バイオエンジニアリング専攻 准教授 酒井 崇匡
新技術の概要
FDAに認可されている、生体適合性の高分子であるポリエチレングリコールからなるハイドロゲルです。生体内における、安全性もある程度確認されています。1%以下という極めて低い高分子成分を含み、10分以内の時間でゲル化します。生体内で1年以上安定に存在させることも、1ヶ月程度で分解させることもできます。
従来技術・競合技術との比較
従来のハイドロゲルの多くは、生体内における長期使用の後に膨潤し、生体組織を傷害する可能性を有している。本技術は、高分子成分量を適切に制御することにより、ゲルの膨潤傾向を許容範囲内に収めているため、感覚器など外部刺激に対して敏感な組織の周辺での使用に適している。また、ゲル化時間も制御可能なので、止血などの用途にも適していると考えられる。
新技術の特徴
・生体適合性の高分子であるポリエチレングリコールのみからなるゲル
・1%以下という極めて低い高分子成分からなるゲル
・生体にインジェクションが可能で、生体内部で速やかにゲル化
想定される用途
・癒着防止剤
・止血剤
・細胞封入剤
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
3)フッ素置換基をもつ芳香族化合物の触媒的合成 【ACT-C】
群馬大学 大学院理工学府 分子科学部門 教授 網井 秀樹
新技術の概要
トリフルオロメチル基(CF3)などのフッ素置換基をもつ芳香族化合物は、医農薬、液晶などの材料に広く利用されている。私たちは、銅触媒によるクロスカップリング反応を用いて、フッ素置換基をもつベンゼン類の製造を研究してきた。今回、フッ素置換基を有する化合物の合成技術の進展を紹介する。
従来技術・競合技術との比較
触媒を用いる芳香族トリフルオロメチル化合物、ジフルオロメチル化合物の合成法を開発した。この技術が起爆剤となり、世界中でトリフルオロメチル化、ジフルオロメチル化反応の開発研究が活発になり、1つの研究ブームを築いた。
新技術の特徴
・触媒を用いる新手法
・反応操作の簡便性、試薬の取扱いなどの容易性
・生成物の有用性(芳香族トリフルオロメチル化合物、ジフルオロメチル化合物は医薬品などに見られる鍵骨格)
想定される用途
・医薬品中間体
・農薬中間体
・電子材料中間体
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
4)ペンタフルオロスルファニルピリジンの製造 【ACT-C】
名古屋工業大学 大学院工学研究科 生命・応用化学専攻 教授 柴田 哲男
新技術の概要
ペンタフルオロスルファニルとはSF5と記載することの出来る官能基である。この官能基を有する化合物は、高い電子求引性と化合物の脂溶性を上昇させる性質を有するため、医薬品や農薬の分野への利用が期待されている。しかし、その合成方法は限られており、特にペンタフルオロスルファニルピリジンの製造方法は、ほとんどない。ここではペンタフルオロスルファニルピリジンの合成方法について紹介する。
従来技術・競合技術との比較
初の合成法であり、競合技術はない。
新技術の特徴
・SF5基はトリフルオロメチル基に類似している
・高い脂溶性,高い揮発性を持つ
・本手法以外に合成方法はない
想定される用途
・医薬品中間体
・農薬中間体
・電子材料中間体
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
5)近赤外光を可視光へとアップコンバージョンする分子性材料 【さきがけ】
九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 准教授 楊井 伸浩
新技術の概要
近赤外光(> 700 nm)を可視光(< 700 nm)に波長変換(アップコンバージョン)する新しい分子性材料を開発した。太陽電池や光触媒で有効利用できていなかった近赤外光の利用や、また近赤外光の高い生体透過性を生かした生体内光源としての利用も期待される。
従来技術・競合技術との比較
無機系のアップコンバージョン材料と比較して、分子性アップコンバージョン材料は太陽光のような低励起光強度で駆動するという利点がある。その反面、近赤外光の利用が困難であったが、S-T吸収という新しいメカニズムの導入により可能となった。
新技術の特徴
・ポリマー分散によりフィルム化が可能
・酸素バリア能を持つポリマーを用いることで空気中で駆動
・色素集合体自体に酸素バリア能を持たせることで水中でも駆動可能
想定される用途
・近赤外光を利用することによる太陽電池の高効率化
・バンドギャップ以下の光子を利用することによる光触媒の高効率化
・生体透過性の高い近赤外光励起による生体内の可視光源
- 材料
6)新規ペロブスカイト材料による高性能太陽電池およびトランジスタの開発 【ERATO】
九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 (I²CNER) 准教授 松島 敏則
新技術の概要
ペロブスカイト薄膜にベンゾキノンを添加すると高効率・高耐久性のペロブスカイト太陽電池が得られることを見出した。また、NH3I末端を持つ自己組織化単分子膜で基板表面を修飾することにより、ペロブスカイトトランジスタのキャリア移動度を26cm2/Vsまで向上させることに成功した。
従来技術・競合技術との比較
従来、本研究で見出したようなベンゾキノン添加剤や基板の表面修飾はペロブスカイトデバイスに使われてこなかった。簡便な手法によりペロブスカイトデバイスの特性を大幅に向上させることができたことは、産業応用の面からも意義深いと考えられる。
新技術の特徴
・ベンゾキノンの添加により光電変換効率が向上すること。
・ベンゾキノンの添加により耐久性が大幅に向上すること。
・基板表面の修飾によりトランジスタ性能が大幅に向上すること。
想定される用途
・高効率・高安定性の太陽光発電
・低コストで作製できる高速トランジスタ回路
- デバイス・装置
7)電池フリーIoTを実現する磁歪式振動発電デバイス 【CREST】
金沢大学 理工研究域 電子情報学系 准教授 上野 敏幸
新技術の概要
磁歪材料を利用したシンプルで高耐久、高感度、高出力な振動発電デバイス。微小振動やモノの動きから実用的な電力を発生し、リモコンや無線センサモジュールの電池を代替する。電池不要で、人、モノなど数多くの様々な動きの信号をクラウドにあげるシステムができる。
従来技術・競合技術との比較
従来の圧電材料や磁石可動を利用するデバイスよりもシンプルで丈夫、高出力、自由度も高い。
価格は磁歪材料に依存し、将来的にボタン電池と同程度の価格にできる。
新技術の特徴
・シンプルで堅牢、高感度、高出力。量産に適した構造で価格も安価にできる。
・構造の自由度が高く、工夫次第で様々な振動や動きから発電ができる。
・IoTや無線センサモジュールの自立電源として利用できる。
想定される用途
・IoTモジュールの電源
・無線センサモジュールの電源
・LEDの電源
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
・展示品あり
・外国出願特許あり
- デバイス・装置
8)ナノクラスターを電荷保持層とするメモリデバイス 【ERATO】
慶應義塾大学 理工学部 化学科 教授 中嶋 敦
新技術の概要
電荷保持層(フローティングゲート)に原子数を精密に規定したナノクラスターを用いつつ、ナノクラスターを構成する原子数を変えることを基礎とするメモリデバイスの提案です。精密ナノクラスターの利用によって、微細化の実現とともにヒステリシス幅を変更できることを特徴とする有機デバイスに親和性の高いメモリデバイスが可能となります。
従来技術・競合技術との比較
不揮発性メモリとして知られるフラッシュメモリでは、小型化、低消費電力化等が求められ、フローティングゲートの微細化が課題です。しかし、ナノドットを用いたフローティングゲートでは、ヒステリシス幅が狭い、さらには、ドット同士が凝集しやすいため、閾値、電子保持時間等のメモリデバイス特性にばらつきが生じてしまうなどの課題がありました。
新技術の特徴
・電荷保持層(フローティングゲート)に原子数を精密に規定したナノクラスターをもちいたメモリデバイス
・ナノクラスター内のまばらな電子準位によってによって、離散的な電子注入、放出を引き起こす
・有機配位子、構成原子数によってヒステリシス幅を制御できる
想定される用途
・有機デバイス内の不揮発性有機メモリ
・ガス濃度センサー
・高集積メモリデバイス
関連情報
・外国出願特許あり
- デバイス・装置
9)次世代IoTデバイス向け小型パーペチュアル電源 【CREST】
東京大学 生産技術研究所 教授 年吉 洋
新技術の概要
人の動きや建物振動などの振動源から、効率よく電力を回収するMEMS振動発電素子(エナジーハーベスタ)を紹介する。比較的低周波数(50〜100Hz)の領域にある微弱な振動(0.1 G程度)から、10µW〜100µWの電力を回収可能である。タイマIC(0.1µW)やクォーツ時計(10µW)の連続駆動や、近距離無線機器ZigBee(60mW)の間歇動作にも利用可能である。
従来技術・競合技術との比較
夜間・暗所では発電できない太陽電池を補完する電源として、振動発電の良さが注目されつつある。また、電磁型、圧電型の振動発電と比較して、本研究の静電エレクトレット型は低G領域でも一定の出力電圧が得られるとともに、低周波領域での出力低下が小さい利点がある。
新技術の特徴
・エレクトレエット(永久電荷)による静電誘導発電であるため、振動源に合わせた電圧、出力設計が可能
・MEMS/マイクロマシニングプロセスにより小型化が可能
・低G領域、低周波数振動領域でも電圧、電力を発生可能
想定される用途
・近距離無線通信の電源
・無線センサノードの電源
・イベントドリブンセンサ、スイッチ
関連情報
・展示品あり
・外国出願特許あり
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科学技術振興機構 戦略研究推進部(CREST)
TEL:03-3512-3531 FAX:03-3222-2066Mail:crestjst.go.jp
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科学技術振興機構 戦略研究推進部(さきがけ)
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URL:http://www.jst.go.jp/kisoken/presto/
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TEL:03-3512-3528 FAX:03-3222-2068Mail:eratowwwjst.go.jp
URL:http://www.jst.go.jp/erato/
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