JST戦略的創造研究推進事業 新技術説明会 ~ ライフサイエンス CREST/さきがけ ~
日時:2018年02月01日(木) 11:55~15:25
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構
後援:特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- 医療・福祉
1)量子技術で室温のスピンを揃えてMRIの感度を千倍にする 【CREST】
大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻・電子光科学領域 教授 北川 勝浩
新技術の概要
NMRとMRIは様々な分野で広く使われている不可欠な分析技術である。しかし、核スピンの向きが偏っている割合(偏極率)が小さいことが原因で、その感度は光やX線を用いる手法よりも低い。トリプレットDNP法は室温のままで試料の高偏極化を可能にするものであり、これによりNMR/MRIの感度を飛躍的に高めることができる。
従来技術・競合技術との比較
高磁場・極低温で熱平衡化された電子を用いる従来のDNP(動的核偏極)法は、大型で高価な設備が必要であった。光励起三重項電子を用いるトリプレットDNP法は、低磁場かつ室温で高偏極化できるため、装置は非常に小型で、一般の病院や研究室にまで広く普及可能である。
新技術の特徴
・感度向上率は従来のNMRやMRIに比べて1000倍程度を目指している。
・超伝導磁石が必要ないほどの低磁場で高偏極化可能で、従来法では約100GHzの電磁波が必要であるのに対して、扱いやすい約10GHzの電磁波で良い。
・これまで本技術で論文を出版したことがあるのは我々とポールシェラー研究所の2チームで、後者は中性子フィルタ用途を指向しており、分析用途は独占状態である。
想定される用途
・医療診断、とくに、がん治療の効果判定。高偏極化した薬剤を生体内に注射し、その代謝をリアルタイムに画像化することにより可能になる。
・創薬。生体に模した試験管において高偏極化した薬品を滴下し、その変化の様子をリアルタイムで調べる。
・材料開発。界面や表面、微量不純物など従来低感度が原因で見えなかった微小部位のダイナミクスの測定を可能にする。
- アグリ・バイオ
2)七色クロレラと希少カロテノイドを用いた健康食材 【CREST】
東京大学 フューチャーセンター推進機構 機能性バイオプロジェクト 特任研究員(名誉教授) 河野 重行
新技術の概要
クロレラは、緑藻植物門、トレボウキシア藻綱に属し本来緑色であるが、蓄積するカロテノイドの種類と含有量で、青緑、黄緑、萌葱、黄、橙、赤、紅、茶、えび茶などの鮮やかな色調を示す「七色クロレラ」になる。爽やかな香りの七色クロレラは、そのまま健康食材として食することもでき、カロテノイドの抽出にも使える。
従来技術・競合技術との比較
カロテノイドは限られた微生物(ヘマトコッカス藻によるアスタキサンチン)や植物(マリーゴールドによるルテイン)により生産されており価格も供給量も限定されている。クロレラを含むトレボウキシア藻綱は、増殖が速く、培養が容易であることから大量培養に適しており、香りもよく食経験もあるのでそのまま食材にもなる。
新技術の特徴
・青緑、黄緑、萌葱、黄、橙、赤、紅、茶、えび茶などの繊細で鮮やかな色彩のクロレラができる。
・クロレラ細胞という天然のマイクロカプセルに詰められているので高温(120℃)でも色落ちしない。
・ネオキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチンなどの希少カロテノイドの製造も可能となる。
想定される用途
・天然色素、スムージーなどのカラフルな食品、抗鬱・抗認知症機能性成分を生かした健康補助食品
・飼料などの酸化防止剤、脂肪酸(ω3など)抽出に際してはカロテノイドを生かした天然抗酸化剤
・希少カロテノイドに関しては抽出して試薬品として販売(市販のカタログ価格で148,500円/mg)
関連情報
・展示品あり
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
3)微生物由来酸化鉄ナノ粒子を利用した植物病害防除技術 【CREST】
岡山大学 大学院環境生命科学研究科 農生命科学専攻(植物病理学) 教授 豊田 和弘
新技術の概要
鉄酸化細菌の産生する微生物由来酸化鉄(BIOX)は、植物保護・植物病害防除への利用可能性について検討した結果、直接的な抗菌性及び細胞毒性がほとんど認められず安全である上に、病原菌の侵入を顕著に阻害できる活性を有し、更に植物に抵抗性を誘導する活性も有する。
従来技術・競合技術との比較
従来の微生物農薬は、一般に保存や取扱いが難しいなどの問題点があるが、当該植物保護剤は、取扱いが簡便で安定的な保存が可能である。また、従来の微生物農薬は、微生物が多様なストレス下で十分な効果が発揮できないことや、有害な代謝産物を産生する可能性があるが、当該植物保護剤ではそのような問題はなく、安定的且つ安全に使用できる。
新技術の特徴
・病原菌の侵入を顕著に阻害する活性を有し、発病を防ぐ。
・ヒト、植物に対する安全性が高い。
・植物に抵抗性を誘導する活性を有する。
想定される用途
・カビ病原菌に対する有効な植物保護剤としての使用
・環境にやさしい特定防除資材(特定農薬)としての適用
・植物病害抵抗性誘導剤としての適用
関連情報
・サンプルあり
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
4)多光子蛍光顕微鏡の深部イメージング能力向上 【さきがけ】
理化学研究所 光量子工学研究領域 研究員 磯部 圭佑
新技術の概要
2光子蛍光顕微鏡による生体組織の観察可能な深さや空間分解能は、集光点以外から発生する背景蛍光や組織内部で生じる波面歪みによって制限されている。新技術では、背景蛍光を除去すると同時に空間分解能を向上可能である。また、生体組織内部の焦点面における波面歪みをin situ測定し、補償することが可能である。
従来技術・競合技術との比較
・2光子蛍光顕微鏡による深部イメージングで問題となる背景光を除去することにより、観察可能な深さを2倍に向上させるとともに、空間分解能も波長の1/5倍まで向上できる。
新技術の特徴
・箇焦点面外で発生する背景光を除去することによって、観察可能な深さを向上できる。
・深部観察において、超解像イメージングが可能である。
・散乱媒質中において、ガイドスターなし(無標識)で波面歪み量のin situ測定が可能である。
想定される用途
・光学顕微鏡
・がん検査装置
・再生医療のためのスフェロイドの細胞診断
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
5)酵素のはたらきを「視る」技術により 病気に関わるタンパク質の機能異常を発見する 【さきがけ】
東京大学 大学院薬学系研究科 革新創薬化学教室 特任助教 小松 徹
新技術の概要
生体には数千種類を超える酵素が存在し、その働きの異常は様々な疾患の原因となる。その酵素のはたらきを光らせて「視る」ことを可能にする新たな研究ツール群の開発を通じて、各種疾患における酵素の役割を決定することが可能となる。
従来技術・競合技術との比較
酵素活性を直接的かつ高感度に検出する新規に創製した各種機能性分子「有機小分子蛍光プローブ」を用いて、(A) 生体サンプル中の酵素活性を網羅的に評価する技術、(B) 疾患と関わる代謝活性について、その責任酵素を明らかにする技術、の開発を行った。酵素の生きた機能である「代謝活性」そのものを網羅的に評価する新たな方法論「enzymomics(enzymeのomics)」により、疾患に直結する酵素機能の異常を見出すことが可能となることが期待される。
新技術の特徴
・100種類を超える酵素活性を同時評価し、疾患と関わる生体サンプル中の酵素活性異常を効率的に見出す技術
・0.1 ng以下の微量の酵素について、活性に基づく探索を可能とする高感度タンパク質探索技術
・これらによって見出される酵素の機能解明と制御に資する技術
想定される用途
・疾患と関わる新たな酵素の機能異常を見出し、疾患バイオマーカーの開発に利用する
・疾患の原因酵素を見出し,これを制御する薬剤の開発に利用する
・興味深い代謝活性について、その理解を助ける基礎研究の研究ツールの開発をおこなう
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
・展示品あり
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
6)超高速イメージング技術と機械学習技術の融合が切り拓く1細胞解析の未来 【さきがけ】
科学技術振興機構 さきがけ研究者 太田 禎生
新技術の概要
対象と光構造間の相対的な「動き」を利用する事で、対象の空間情報を時間信号に圧縮・変換することで実現される高速・高感度な1画素イメージング技術。並びに機械学習を融合させた超高速対象判別技術。
従来技術・競合技術との比較
新技術の動的ゴーストイメージング技術の実現により、従来より超高速、高感度、低コスト、コンパクト、高速情報処理が可能な蛍光イメージング技術で、機械学習技術を実装。
新技術の特徴
・超高速・高感度の画像解析を含む細胞解析技術
・機械学習との融合
・コンパクト、全く新しい概念
想定される用途
・細胞検査用理化学機器
・超コンパクト機器
・診断機器
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
7)画期的な生体内ATP濃度の計測技術 【さきがけ】
京都大学 大学院医学研究科 腎臓内科学 特任講師 山本 正道
新技術の概要
マウス全身・全臓器のATP動態を臓器レベルから細胞レベルまで非侵襲的・定量的に計測できる技術。あらゆる疾患時の異常・老化や疲労を細胞レベルで時間軸を持った定量的評価ができる。更に、薬物・栄養などの全身効果・動態・毒性・安全性も評価できる。初代培養細胞などを用いたスクリーニングも可能。脳神経回路や運動など生体の取りうるエネルギー戦略を全身で計測できる。
従来技術・競合技術との比較
ATP量の計測は、従来法では臓器・数百細胞の塊を用いた定点でのATP量を計測キットを使用して1時間程かけて大まかにしか計測、またはMRIなどの高額機器を使用して、空間時間分解能がセンチや分単位での計測しかできなかった。これが全身・全臓器のATP動態を臓器レベルから細胞レベルまで非侵襲的・定量的にライブで計測できるようになった。
新技術の特徴
・マウス全身・全臓器のATP動態を臓器レベルから細胞レベルで非侵襲的・定量的に計測できる技術
・測定誤差が少ないため、ATP量変化(恒常性変化)を正確に同じ個体でも絶対値で評価する事ができる技術
・各種顕微鏡下の実験において一度条件を決定すれば、簡便・再現性良く計測・評価できる技術
想定される用途
・【製薬・食品・化粧品・化学】筋肉・運動機能の定量的な評価(サルコペニア・カヘキシア・疲労・栄養・老化)
・【製薬】脳神経・精神・心循環・代謝疾患・炎症・癌疾患など全ての疾患の病態原因解明と薬効評価・スクリーニング/全臓器・細胞の毒性・安全性・薬物動態評価
・【電気機器・自動車】脳型コンピューター・省エネルギーシステム
関連情報
・デモあり
・外国出願特許あり
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URL:https://www.jst.go.jp/kisoken/accel/
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