京都工芸繊維大学 新技術説明会
日時:2017年08月03日(木) 12:55~16:00
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、京都工芸繊維大学
後援:特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- 材料
1)光学的透明性に優れた新規重合性含フッ素分子性フィラー
京都工芸繊維大学 分子化学系 教授 中 建介
新技術の概要
汎用溶媒に可溶で、かご構造を含む分子構造の明確なシルセスキオキサン材料作製法を提供する。本モノマーを用いてフッ素含有新規ポリマーを合成することができる。得られるポリマーは有機溶媒に可溶であり、トリフルオロプロピル基置換かご型シルセスキオキサンを含む分子構造が明確な含フッ素シルセスキオキサン材料を提供する。
従来技術・競合技術との比較
含フッ素かご型シルセスキオキサン化合物に重合性官能基を導入することで強靭な塗膜への応用展開が行われている。しかし、高密度に含フッ素かご型シルセスキオキサン化合物を含むアモルファスな光学的透明材料を得ることは困難である。本技術は重合性官能基を2個有する含フッ素かご構造を含む分子構造が明確な新規シルセスキオキサン材料によりこれを解決する。
新技術の特徴
・含フッ素かご構造を含む分子構造が明確な材料
・高密度に含フッ素かご型シルセスキオキサン化合物を含むアモルファスな光学的透明材料
・得られる高分子が有機溶媒に可溶
想定される用途
・耐熱性と屈曲性に優れた紫外・可視光透過性透明ガラス代替材料
・低屈折率制御可能なシルセスキオキサン透明材料
・紫外線耐候性透明材料
- 材料
2)型押し成形可能なヒ素・セレンフリー赤外透過ガラス
京都工芸繊維大学 材料化学系 教授 角野 広平
新技術の概要
本技術は、赤外透過ガラス材料に関するものである。このガラスは「大気の窓」の波長帯をカバーする赤外線(0.9~13um)を透過し、赤外線カメラ用レンズなどの光学部品の作製に用いることができる。型押し成形が可能で、複雑な形状の光学部品を大量生産することができる。また、成分調整によって可視光も一部透過可能となる。
従来技術・競合技術との比較
現在用いられているゲルマニウムや硫化亜鉛、セレン化亜鉛などの結晶材料に比べて格段に成形加工が容易である。従来の赤外透過ガラス材料用いられているヒ素やセレンを全く含有しない。また、大気の窓とよばれる波長帯をカバーすることができ、さらには、成分を調整することによって600 nm程度までの可視光も透過する。
新技術の特徴
・型押し成形が可能で複雑な形状の光学部品を大量生産可能
・ヒ素やセレンを全く含まない
・大気の窓をカバーする赤外透過性能を有する
想定される用途
・赤外光学機器用光学部品
・赤外透過光ファイバ
・可視赤外透過レンズ等光学部品
関連情報
・展示品あり
・外国出願特許あり
- 材料
3)固体近赤外発光を示す非晶質ポルフィリン金属錯体: ポルフィリンガラス
京都工芸繊維大学 分子化学系 助教 森末 光彦
新技術の概要
固体状態で非晶質状態となるポルフィリン金属錯体「ポルフィリンガラス」を開発した。ポルフィリンガラスは固体凝集状態においてエキシマー形成し、およそ1000 nm付近の近赤外発光を示す特異な発光材料となった。
従来技術・競合技術との比較
量子ドットなどの毒性の懸念される材料を除くと、1000 nm付近の近赤外発光を示す有機色素は極めて限定される。とりわけin vivoイメージングなど、水中での利用では凝集状態での発光特性を維持することが極めて困難であるが、エキシマー発光を利用した材料設計により、この問題を克服した材料技術である。
新技術の特徴
・およそ1000 nm付近での固体近赤外発光特性
・ポルフィリン金属錯体をアモルファス化する分子技術
想定される用途
・非侵襲in vivoイメージング
・光線力学療法
・セキュリティー
- デバイス・装置
4)GaNとほぼ格子整合する新しいITO膜の形成技術
京都工芸繊維大学 電気電子工学系 助教 西中 浩之
新技術の概要
ミストCVD法を用いたITO透明導電膜の新しい結晶構造である菱面体晶構造の形成技術を提供する。この菱面体晶構造のITO膜はサファイアと同じ結晶構造で、GaNとほぼ格子整合することから、GaN用のバッファ層として利用することができれば、高い透明性と導電性を有する下地電極として利用できる可能性を有している。
従来技術・競合技術との比較
ITOの菱面体晶構造は、その合成に高圧が必要であったため、薄膜の形成例はなかった。本技術では、ミストCVD法の水の擬似的な高圧状態とエピタキシャル成長を利用することで、その菱面体晶構造の形成に成功した。
新技術の特徴
・GaNと格子整合する透明かつ導電性を有する基体を提供することができる
・サファイア基板の面方位に対応した同じ面方位での形成が可能
想定される用途
・LED用透明導電性基体
・パワーデバイス用(GaNやGa2O3)基体
- 創薬
5)カテキンとゼラチンでつくる再生医療材料
京都工芸繊維大学 繊維学系 助教 田中 知成
新技術の概要
緑茶に含まれるカテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(EGCG)とゼラチンを用いて、長期間にわたってEGCGが徐放される再生医療材料を開発した。合成したEGCG担持ゼラチンは、骨再生を促進する効果があることを確認した。この再生医療材料は水中で合成できる。
従来技術・競合技術との比較
EGCGなどの水溶性生理活性物質は患部に直接取り入れても流出するため、効果の持続が困難であり、その応用に制約があった。本技術では、EGCGを母材のゼラチンに化学的に結合させ、EGCGとゼラチンをつなぐ結合が徐々に分解されることで、骨再生治療に対して優れた効果が見られた。
新技術の特徴
・薬理効果が長期間持続する
・水中で合成できる
・本材料の合成に使用した技術は、さまざまな水溶性化合物に適用可能
想定される用途
・骨再生治療
・細胞培養足場材料
・歯科材料
- 通信
6)誘電体/磁性体からなる電磁メタマテリアルの無線応用
京都工芸繊維大学 電気電子工学系 教授 上田 哲也
新技術の概要
非相反メタマテリアルの共振構造からなる小型で高効率なビーム走査アンテナにおいて、非相反性の増大によりビーム走査角の増大を図ると共に、非相反性の周波数分散を抑えることにより、ビームスクイントを低減する技術を紹介する。また、誘電体メタマテリアルの3次元化およびゼロ屈折率を用いた指向性アンテナの紹介も行う。
従来技術・競合技術との比較
漏れ波アンテナは簡易に構成可能なビーム走査アンテナであるが、線路終端での反射は不要なサイドローブを発生させるので、反射抑制のため整合回路が挿入されるが、放射効率の低下を招く。本発明では、アンテナに非相反メタマテリアルの共振構造を採用することにより、小型で高効率な漏れ波放射を実現する。
新技術の特徴
・非相反メタマテリアルによる漏れ波ビーム走査アンテナの小型化と高効率化
・メタマテリアルの非相反性設計法:ビーム走査角の増大とビームスクイント低減技術
・誘電体による3次元等方性メタマテリアル
想定される用途
・アンテナ、レーダー応用
・センサー
関連情報
・展示品あり
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