理化学研究所 新技術説明会
日時:2017年05月30日(火) 09:55~15:25
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、理化学研究所
後援:特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- デバイス・装置
1)薄くて軽い、伸縮自在な有機太陽電池
理化学研究所 染谷薄膜素子研究室 研究員 福田 憲二郎
新技術の概要
非常に薄くて軽い有機太陽電池を実現することに成功した。全体の膜厚は数μm程度であり、これにより驚異的な柔軟性を実現可能にしている。このような薄さ・軽さのために衣服や皮膚の上に直接貼り付けても違和感なく装着でき、また動きに追従して変形しても壊れないという特徴を実現した。
従来技術・競合技術との比較
フレキシブル太陽電池は膜厚が数10μmオーダー、であり、曲げられるがくしゃくしゃにすることはできなかった。これに対して本新技術では圧倒的な薄さ・軽さのためにくしゃくしゃにしても壊れないと言う技術的優位性を有している。また、これほどまでに薄い素子でありながら安定性に関してもある程度の能力を有している。
新技術の特徴
・超薄型、超軽量
・くしゃくしゃにしても動作する
・高い安定性
想定される用途
・衣服貼り付け型モバイルデバイス充電端末
・形状・場所を選ばない大面積給電システム
・無知覚な健康状態常時モニタリングデバイス
- 環境
2)環境の変化を電気でモニターする技術
理化学研究所 環境資源科学研究センター 生体機能触媒研究チーム 特別研究員 庄野 暢晃
新技術の概要
現在、水産資源への需要の高まりから、世界的に水産資源の乱獲や養殖魚への過度な飼糧投与による生態系の破壊、環境破壊は深刻化しており、環境調和型の水産漁業が求められている。そこで、私たちは電気化学の専門家として、沿岸域の生態系を簡便にモニターし、投与可能な飼料の量を予測する技術の開発を行った。
従来技術・競合技術との比較
これまでの養殖場の環境モニタリング技術は継続的なサンプリングと生物学的・化学的な多種パラメータの測定を要する点で、煩雑なものであった。本技術は、電極を用いて測定した電位を元に、環境中の生物と化学物質の状態をまとめて評価するものであり、簡便かつ継続的に環境のモニタリングを行うことができる。
新技術の特徴
・電位の変動データを元に生態系を“シンプル”かつ“包括的” に理解することができる。
・電位をリアルタイムで計測することで、生態系が許容できる飼料の投与量を常に予測し、評価できる。
・情報技術と相性がよく、データを蓄積、統合し、環境変動を詳しく解析することができる。
想定される用途
・養殖漁場における試料投与の最適化
・養殖漁場選定のための環境評価
・その他、様々な環境の簡便な評価
関連情報
・サンプルあり
- 計測
3)エネルギー変換デバイスにおける分子界面のナノスケール分光
理化学研究所 Kim表面界面科学研究室 主任研究員 金 有洙
新技術の概要
原子スケールの空間分解能を有する走査トンネル顕微鏡を用いた単分子発光・吸収分光法を独自で開発しました。エネルギーの移動や変換の過程を個々の分子に対して詳細に記述し、有機ELや太陽電池などのエネルギー変換デバイスにおけるエネルギー利用の高効率化・高機能化につなぐ研究を進めています。
従来技術・競合技術との比較
有機半導体分子が電極表面上に形成する「分子界面」は、様々なエネルギー変換デバイスに置いて重要でありながら最も観測が難しいとされている。従来の分光法は空間分解能が低く、顕微鏡法は構造や元素のみの情報を提供しているのに対して、本手法は分子レベルの構造のみならず、化学組成や電子構造に関する分光を行うことができます。
新技術の特徴
・エネルギー変換デバイスにおける分子界面の分子レベルイメージング
・化学組成及び電子状態の分子レベル可視化
・エネルギー移動・変換の実空間直接観察
想定される用途
・太陽電池・有機ELなどの電極近傍の分子界面研究
・(光)触媒の化学反応の直接観察
・リチウム電池・燃料電池における電極表面の直接観察
- デバイス・装置
4)高感度で広帯域なリモート光超音波検出センサ
理化学研究所 光量子工学研究領域 光量子制御技術開発チーム 専任研究員 佐々 高史
新技術の概要
高性能フォトリフラクティブポリマーと独自の素子化技術を用いて従来になく高感度で広帯域なリモート光超音波センサを実現する技術を紹介します。表皮など光散乱性の対象面に検出レーザーを照射して、内部から発生する超音波を広い周波数範囲で感度よく検出できます。
従来技術・競合技術との比較
当該センサでは無機フォトリフラクティブ結晶が頻繁に使われますが,感度があまりよくありません。また,検出面からの光散乱の影響を十分に除けません。当該技術によっては両者において大幅な改善が期待でき実用レベルの性能に近づきます。
新技術の特徴
・光超音波など表面のナノメートル変位のリモート検出が可能
・光散乱性あるいは不安定な表面に対応
・高感度、広帯域
想定される用途
・非侵襲な皮下診断(医用画像機器)
・構造物の非破壊診断(工業用画像機器)
- 材料
5)超広帯域において光吸収を呈するメタマテリアルフィルム
理化学研究所 石橋極微デバイス工学研究室 専任研究員 岡本 隆之
新技術の概要
メタマテリアルを用いた可視から金赤外域にかけての超広帯域吸収体である。メタマテリアルを用いているため、吸収体の厚さは1ミクロンを切る。また、入射角依存性や偏光依存性を有しない。
従来技術・競合技術との比較
従来のメタマテリアルを用いた吸収体の帯域は2オクターブがやっとであったのに対して、本吸収体は可視から赤外域にかけての3オクターブに達する超広帯域を有する。さらに大面積吸収体の作製が安価に容易に行なえる。
新技術の特徴
・超広帯域
・極薄膜
・大面積化が容易
想定される用途
・光熱変換
・熱光変換
・放射冷却
関連情報
・サンプルあり
- デバイス・装置
6)複数の放射性トレーサーを追跡できるPETイメージング装置
理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター 次世代イメージング研究チーム 研究員 福地 知則
新技術の概要
PETは生体内における放射性同位体トレーサーの分布を非侵襲的に可視化する技術であり、感度と定量性の高さからライフサイエンスの基礎研究から臨床診断にまで広く利用されている。従来のPETでは複数のトレーサーをイメージングすることは困難であったが、我々は複数のトレーサーを同時にイメージング可能なPET装置を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来のPETは単一のトレーサーのみのイメージング技術でしたが、新技術では複数のトレーサーの同時イメージングが可能となった。SPECTやコンプトンカメラにより複数トレーサーの同時イメージングはすでに実現しているが、感度と定量性の高いPET装でこれを実現したことにより、複数のトレーサー動態の詳細な解析が期待できる。
新技術の特徴
・複数の放射性トレーサー分布を非侵襲的に同時イメージング可
・高感度であり短時間でのイメージングが可能かつ定量性が高い
・多種の放射性トレーサーが分布する撮像対象において特定トレーサーのみの分布を抽出可能
想定される用途
・複数の疾患を同時に検査できる核医学臨床診断
・創薬基礎研究のための動物イメージング
・工業用非破壊イメージング検査
関連情報
・外国出願特許あり
- デバイス・装置
7)非破壊検査利用を開拓する光変換テラヘルツ波検出器
理化学研究所 光量子工学研究領域 テラヘルツ光源研究チーム 研究員 縄田 耕二
新技術の概要
独自の波長変換技術を利用して検出の難しいテラヘルツ波から検出の容易な光波へと変換し、近赤外カメラによってテラヘルツ波画像情報を取得します。新技術によって室温で高感度なテラヘルツ像の取得が可能となり、様々な状況におけるテラヘルツ波測定を可能にします。
従来技術・競合技術との比較
レーザー技術を基盤とした新技術は光のコヒーレンスを最大限に利用しています。背景ノイズである黒体放射に対してインセンティブな検出手法であり、結果として、室温で高感度テラヘルツ波検出を実現できます。黒体放射が従来の熱型検出器による信号ノイズ比を劣化させる問題を新技術によって解決しています。
新技術の特徴
・リアルタイム2次元画像計測
・室温で高感度検出
・回折限界程度の空間分解能
想定される用途
・非破壊検査・品質管理
・粉体異物混入検査
・テラヘルツOCT
- 計測
8)低コストで光子相関計測の精度を改善する新技術
理化学研究所 田原分子分光研究室 専任研究員 石井 邦彦
新技術の概要
蛍光相関分光法・動的光散乱法で用いられる光子相関計測において、検出器に由来するアフターパルスがしばしば問題となる。本技術では、比較的安価な半導体レーザーに時間変調をかけて測定に用いることで、アフターパルスの影響を正確に評価する方法を提供する。
従来技術・競合技術との比較
従来は検出器を2台用いてそれらの相互相関を取ることでアフターパルスの影響を除去する方法が主流であったが、本技術は検出器1台のみで実現できることから、コストの低減、装置の単純化、光子信号利用効率の向上が期待できる。
新技術の特徴
・最小限のハードウェア変更で光子相関計測の精度を改善
・キャリブレーション不要
・自動化が可能で、ユーザー側での特殊な知識・操作が不要
想定される用途
・蛍光相関分光を用いた生体分子相互作用計測
・動的光散乱を用いた粒子径計測
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
9)高比表面積・高分散性・表面改質可能な生体適合性ナノシート
理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発生体関連ソフトマター研究チーム 特別研究員 内田 紀之
新技術の概要
低毒性かつ高い比表面積を有する無機ナノシートと生体由来の高分子を混合するだけで、簡便かつ汎用的に生体適合性ナノシートを作成することに成功した。また、その生体適合性ナノシートがタンパク質のNMR構造解析において高い安定性、配向力を示す理想的な配向試薬として利用できることを見いだした。
従来技術・競合技術との比較
ナノシートは汎用的に用いられる粒子状のものとは異なり、巨大な構造体においても高い比表面積が保持される魅力的な材料であり、細胞培養の足場材料など、様々なバイオマテリアルへの応用が期待できる。本技術は生体環境下での分散安定性などの生体適合性を無機ナノシートに付与し、革新的バイオマテリアルの創成を可能にする手法を提供する。
新技術の特徴
・生体適合性ナノシートの作成
・高い配向力、安定性、汎用性を有するNMR構造解析用配向試薬
・ナノシートの磁場配向を利用した異方環境の構築
想定される用途
・タンパク質構造解析試薬
・機能性ハイドロゲル
・細胞工学材料
関連情報
・サンプルあり
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連携・ライセンスについて
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