先端計測分析技術・機器開発プログラム 新技術説明会
日時:2018年03月08日(木) 09:55~14:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構
後援:特許庁
発表内容一覧
発表内容詳細
- 分析
1)うもれた界面の状態をその場で観察できる「超高分解能ラマン散乱法」
早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 研究院教授 柳沢 雅広
新技術の概要
表面増強ラマン散乱分光法を汎用表面・界面化学分析として応用できる手法を開発した。本法は新しい光学デバイスと精密機構により感度は通常ラマンの75000倍以上、面分解能100nm、深さ分解能は0.1nmを実現した。また本法は非破壊で埋もれた界面(固/液、固/固)の静的および動的観察が可能である。
従来技術・競合技術との比較
通常ラマン分光法に比べ、感度は75000倍以上、空間分解能は3分の1(100nm)、深さ分解能は1万分の1(0.1nm)である。XPSなどに比べ詳細な化学構造が観察でき、TOF-SIMSなどに比べて非破壊測定が可能なので、オペランド観察など動的観察も可能である。
新技術の特徴
・表面から界面までの化学構造深さプロファイル測定
・多層膜熱分析(温度と化学構造の同時測定)
・時間分解化学構造変化の観察(電界、力、熱など)
想定される用途
・薄膜デバイス
・トライボロジー
・電池
関連情報
・デモあり
- デバイス・装置
2)透過型電子顕微鏡での超高精度ナノ組成分析の実現
物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 構造材料解析プラットフォーム プラットフォーム長 原 徹
新技術の概要
透過型電子顕微鏡による組織解析は材料開発に広く用いられるが、ナノ領域での組成分析の精度は必ずしも十分ではない。分析に用いるX線検出器の分解能が低いことがその一因である。そこで我々は、超伝導検出器を電子顕微鏡に応用し、従来比一桁以上高いエネルギー分解能で高精度に組成分析を行える電子顕微鏡を開発した。
従来技術・競合技術との比較
電子顕微鏡での組成分析には特性X線が利用される。従来技術では半導体検出器が用いられているが、エネルギー分解能が120eV程度と低い。今回開発した、超伝導検出器を用いた電子顕微鏡では、10eV以下の高いエネルギー分解能を達成しており、そのことによりほぼすべての元素からのX線ピークを分離して測定できる。
新技術の特徴
・透過型電子顕微鏡の高い空間分解能を活かした組成分析。
・超伝導検出器の高いエネルギー分解能を活かした組成分析。
・微量添加元素の検出限界が一桁向上。
想定される用途
・構成元素が未知の、例えば鉱物試料等の含有元素の決定。
・微量な添加元素の、試料内での偏析量の測定。
・多種の元素が含まれる、例えば鉄鋼材料等の組成の精密な決定。
- 分析
3)分子が個々に動く様子を原子レベルで見ることができる動画撮影技術
東京大学 大学院理学系研究科 化学専攻 特任准教授 原野 幸治
新技術の概要
原子分解能電子顕微鏡を用いて、分子一つ一つの構造や形状の時間変化を原子分解能で追跡する分析手法を提供する。分子が折りたたんで高次構造を形成する様子や、金属原子が触媒する反応過程、さらには分子が集合して結晶になる過程などの動的プロセスを、分子ひとつひとつをみることで解明できる革新的実験手法である。
従来技術・競合技術との比較
動かない多数の分子を観察して平均化するクライオ電子顕微鏡法や結晶構造解析とは異なり、分子、もしくは構造の異なる多数の分子の混合物を、分離精製することもなく、また構造変化や化学反応など動的挙動も含めて、そのまま観察できる。
新技術の特徴
・平均像ではなく、物質の中での個々の分子の振る舞いを視覚的にとらえることができる。
・分子1つだけでなく、分子集合体の構造変換の過程を分子レベルで追跡することができる。
・時々刻々と変化する三次元分子構造を原子レベルの精度で求めることができる。
想定される用途
・生体分子のダイナミクスを解明し創薬デザインに応用
・結晶構造を合理的に予測し機能性結晶材料の創製に展開
・工業スケール反応における高効率触媒の開発や合理的な化学反応プロセスの設計
- 計測
4)液体でも気体でも非接触・少量・洗浄不要で簡単に粘性測定!
東京大学 生産技術研究所 教授 酒井 啓司
新技術の概要
電磁駆動(EMS)方式により試料中に置かれたプローブを遠隔で操作して粘性を測定するまったく新しい計測機をご紹介します。サンプルはディスポセルに完全密閉で装置とは非接触、さらに使用量はわずか0.5mL以下。医療、バイオ、特殊環境などこれまでに適用できなかった領域にレオロジー計測の可能性を広げます。
従来技術・競合技術との比較
粘性は力学的な性質です。だからこれまでは測定装置本体の中を流すか、装置から伸びたプローブを試料に接触させ動かすかしか粘性を測定することはできませんでした。これだと洗うのは大変だし、周囲には飛び散るし、かといって精度はそれほどでもないし…このお悩みを一挙に解決します。
新技術の特徴
・試料はディスポーザブルセルに密閉可能で測定機本体とは非接触。だから洗浄いらず。しかも純水で精度2%!
・貴重サンプルやバイオ・生体材料もわずかな量で測定可能。密閉式のため蒸発や雰囲気の影響も排除できます。
・オープンな空間にサンプルセルを置くだけで測定完了。バイオや特殊環境などへの応用の可能性も多彩。
想定される用途
・血液などの生体試料の粘性測定による健康管理
・超高精度を活かした気体など低粘性材料の状態モニタリング
・超高/低温・超高/低圧など特殊環境への応用
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
・展示品あり
・外国出願特許あり
- 分析
5)1000倍以上に感度が向上した高分解能固体NMR
大阪大学 蛋白質研究所 教授 藤原 敏道
新技術の概要
高圧ヘリウムガスを循環させることにより、30K程度の極低温で試料ローターを10kHzで回転させる。これを高磁場下でのサブミリ波照射と組み合わせて、電子スピン分極を利用する動的核分極法により高分解能固体NMRの感度を1000倍以上向上させた。
従来技術・競合技術との比較
従来の液体ヘリウムを気化させてローター回転する方法に比べて、ヘリウムガスを局所的に再利用するので超高感度NMR実験を経済的かつ安定に長時間実施できる。また、窒素ガスを用いる方法に比べてより低温を利用できるためNMR測定の感度も向上する。
新技術の特徴
・ヘリウムガスの再利用により、ヘリウムの消費がない
・冷凍機による冷却で長時間安定した極低温ガス流を供給できる
・高出力ラジオ波およびサブミリ波に対して絶縁性の高い環境をもたらす
想定される用途
・高分解能磁気共鳴測定の超高感度化
・より微量な試料を対象にした分子構造解析
・材料界面や生体分子に関する原子分解能での構造および機能解析
関連情報
・外国出願特許あり
- 分析
6)自動座標再現分析技術により質量分析の限界を突破!医療・創薬分野へ展開
名古屋大学 環境医学研究所 教授 澤田 誠
新技術の概要
座標再現機能を搭載したホットメルト-レーザーマイクロディセクション技術を用いた試料作製により、質量分析イメージングで生体高分子の3μmの空間分解能を達成。また、これまで不可能であった高速液クロ-質量分析による質量イメージングも実現。この技術を新規なバイオマーカー探索に応用した例や創薬支援の例として動態-作用-毒性の同時解析への応用を紹介します。
従来技術・競合技術との比較
空間分解能3μmでの質量イメージングを実現。ペプチドなどMW15,000程度の生体高分子のイメージングが可能(質量顕微鏡等、従来技術では5-10μmでMW〜2,000程度。)また、これまでMALDI-MSが中心であった質量イメージングをLC-MSなどでも実現できる。
新技術の特徴
・高分解能、高精度でかつ安価な質量イメージングの実現
・LC-MS、GC-MSなど多種類の分析装置で質量イメージングが可能
・ポリマーのイオン化干渉効果で生体高分子のイメージング、高感度分析が可能
想定される用途
・単一細胞分析や空間分解能〜1μmの質量イメージング
・LC-MSによる薬物動態-薬効解析-毒性予測などへの応用
・新規バイオマーカー探索
関連情報
・外国出願特許あり
- 計測
7)超高速1蛍光分子顕微鏡システム -生きている細胞内の1分子がはたらく瞬間を捉える-
京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点 iCeMS解析センター 特定准教授 藤原 敬宏
新技術の概要
1蛍光分子高速追跡に特化した高感度・高速度カメラシステムと、それを活用した生細胞内での超解像・超高速蛍光観察顕微鏡技術。1分子ごとの位置・動き・活性化・結合と、分子複合体の挙動を手に取るように観察できる。
従来技術・競合技術との比較
汎用の高感度カメラ(EMCCD、sCMOSカメラ)では不可能な、サブミリ秒時間分解能(最高22マイクロ秒分解能)での1蛍光分子観察を実現するカメラを開発し、生細胞での観察に適した蛍光色素の選定、顕微鏡光学系の最適化と組み合わせて、従来にはない超解像・超高速1蛍光分子観察顕微鏡システムを構築した。
新技術の特徴
・有効画素数256x256以上、100マイクロ秒分解能以上(最高22マイクロ秒)での生細胞内1蛍光分子観察
・1分子局在ベースの超解像観察の高速化により、秒オーダーの頻度での生細胞超解像観察
・蛍光色素の光褪色と暗状態を抑止する化学的方法の開発により、1,000フレーム以上の連続1分子高速追跡
想定される用途
・細胞内シグナル伝達にともなう、タンパク質分子間の会合検出
・薬剤(酵素、ホルモン、サイトカイン、抗体等)のターゲット分子への作用研究
・タンパク質の構造遷移、短寿命の不安定中間体 (<100マイクロ秒) の検出
- 計測
8)透過像、走査像同時計測可能なクライオ電子顕微鏡の開発と応用
名古屋大学 理学研究科 構造生物学研究センター 研究員(名誉教授) 臼倉 治郎
新技術の概要
透過像と表面像が同時計測できるクライオ電子顕微鏡を開発した。本顕微鏡は30kVと低加速、小型であるが、分解能0.34nmと高性能である。スラッシュ窒素を利用するため−180℃での観察が可能である。また、透過像はSTEM光学系を利用しているため、正焦点で高コントラスト観察が可能であり、位相伝達関数(CTF)の補正をせずに単粒子解析が出来る。
従来技術・競合技術との比較
これまで、透過像と表面像が同時計測できる小型のクライオ電子顕微鏡はなかった。また、低加速電圧(30kV)であるが、その分、高コントラストである。STEM光学系のため、正焦点での観察が可能。フィールドエミッション(FE)電子銃を装備により、極めて細い(0.34nm)電子ビームによる走査透過像が得られる。これにより、CTFの補正を必要とせず、少数での単粒子解析が可能である。
新技術の特徴
・加速電圧30kV、分解能0.34nm、−180℃での観察が可能
・透過像と表面像が同時計測できる小型のクライオ電子顕微鏡
・CTFの補正を必要とせず、少数での単粒子解析が可能
想定される用途
・新鮮状態の細胞内微細構造の観察
・タンパク質分子の単粒子解析による構造解析
・ソフトマテリアルの構造解析
関連情報
・サンプルあり
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