電気通信大学 新技術説明会
日時:2017年05月18日(木) 11:30~16:00
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、電気通信大学
後援:特許庁、一般社団法人目黒会(電気通信大学同窓会)、株式会社キャンパスクリエイト(電気通信大学TLO)
発表内容一覧
発表内容詳細
- 医療・福祉
1)遠隔保育支援ロボット「ChiCaRo」
電気通信大学 大学院情報理工学研究科 機械知能システム学専攻 特別研究員 阿部 香澄
新技術の概要
ChiCaRoは離れた場所から乳幼児とふれあえるコミュニケーションツールである。離れて暮らす祖父母らがタブレットを介して子どもの家に置いたChiCaRoと通信し、会話やその場にある玩具で子どもと遊ぶことができる。家事などで手が離せない間に子どもの保育を遠隔で行うといった、親の育児支援を目指す。
従来技術・競合技術との比較
3歳までの乳幼児は非言語コミュニケーションが主体であり、ビデオチャット等ではやりとりが成立しない。ChiCaRoは身体的コミュニケーションなど、乳幼児にも通じるやりとりを生み出し、乳幼児との遠隔コミュニケーションを継続させる。幼児期を対象とした遠隔コミュニケーションツールは国内外ともに存在しない。
新技術の特徴
・乳幼児と離れた場所からやりとりできる
・身体的コミュニケーション(玩具のやりとりができるハンドデバイス、はいはいする子どもと移動できる移動機構)
・“乳幼児の普通”の使用に耐える安定ボディ
想定される用途
・核家族育児世帯の育児支援
・子どもが大きくなった後に、育児支援から祖父母見守りへのスムーズな移行(逆見守り)
・保育施設での保育者のサポート
関連情報
・デモあり
・展示品あり
- 情報
2)センサ間自律分散通信を利用したIoTシステム
電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報・ネットワーク工学専攻 准教授 策力 木格
新技術の概要
本システムの特徴は自律分散IoT技術を活用して映像データを無線で送信するところにある。具体的な技術は下記2点である:①複数のTCPセッションを活用して、マルチホップアドホック通信の品質を向上させる②経路選択で共通の中継ノードを利用して無線利用効率を上げる。
従来技術・競合技術との比較
本システムは自律分散IoT技術を利用しているため、自動的にネットワークを構築することができ、従来のカメラシステムで実現が困難だったカメラの増設、カメラ設置場所の変更などが容易になる。マルチホップにおける経路選択が自動的に行われるため、関連設定は不要である。
新技術の特徴
・自律分散IoT技術を利用してカメラ映像の転送を実現
・複数のTCPセッションを利用することにより、マルチホップネットワークにおいて、従来方式より高い通信品質を提供する(2-hopにおいて30%のスループット増)
・複数の通信フローで共通の中継ノードを利用するため、無線利用効率が向上する
想定される用途
・駐車場、工場、公園、小中学校等公的施設などへの低コスト監視カメラシステム
- 通信
3)MEMSによるシリコンを用いた光デバイス:赤外線センサや可変偏光フィルタの展開
電気通信大学 情報理工学研究科 機械知能システム学専攻 准教授 菅 哲朗
新技術の概要
当研究室では、マイクロ~ナノサイズの回折格子やピラー構造、または立体らせん構造など、独自のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)機械構造を利用した光センサやデバイスの研究を進めています。具体的な展開として、超小型分光装置や高機能赤外線センサ、または、遠赤外光用の偏光フィルタなどを見込んでおり、今回ご紹介します。
従来技術・競合技術との比較
超小型分光器は、ワンチップの中で分光計測が完了するので、従来のように分散のための空間を必要としません。また、赤外線センサはシリコンで構成できるので、コスト低減、適用範囲格段が見込めます。可変偏光フィルタは開拓中の波長帯であるテラヘルツ帯で実用レベルの機能を持つ、初めての機器になることが見込まれます。
新技術の特徴
・超小型コンパクトな分光機器を実現可能
・シリコンによる赤外光検出
・新規波長帯であるテラヘルツ光の動的コントロールが可能
想定される用途
・スマホなど携帯機器に分光器が搭載可能になるので、食品品質など身の回りの物の品質をチェック可能になる
・シリコンで赤外線を検出できるので、LSI信号処理回路と統合して生体信号の赤外計測システムなどに応用可能
・テラヘルツ波長帯は化学物質の吸収波長帯を含むので毒物検知を非接触高感度検出に応用可能
関連情報
・サンプルあり
- 情報
4)ユーザコメントからの商品評価レーダーチャート自動生成システム
電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報・ネットワーク工学専攻 教授 沼尾 雅之
新技術の概要
近年、商品レビューを始めとする、消費者によって形成されるビッグデータ(CGM)は膨大なものとなっています。評判分析(感情分析)は、レビューが示す感情(肯定・否定)を分析することで、効果的な情報推薦を可能にします。本技術では、商品レビューの情報を集約することで、ユーザの商品選択を支援するシステムを作成しています。
従来技術・競合技術との比較
評判分析に関する従来技術は、ユーザコメントを肯定・否定という1次元尺度でしか分析できない。本技術は商品のジャンル毎の評価項目も自動生成でき、多次元的な評価が可能となる。
新技術の特徴
・ユーザコメント文からのテキストマイニング
・評価軸の自動構成
・レーダーチャートの自動生成
想定される用途
・ネットショッピングサイトにおける商品評価可視化機能
・ユーザコメント分析によるユーザ動向調査
・商品開発のための商品評判分析
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
- 通信
5)魚型バルーンロボットによる空間演出技術の研究
電気通信大学 大学院・情報理工学研究科 機械知能システム学専攻 准教授 内田 雅文
新技術の概要
飛行体に搭載した送信機からの送信信号(例えば超音波信号)を受信し、送信機位置を測位するための受信機配置を位置決めするためのセンサシート。センサシート内には規定の位置に複数の受信機が着脱可能な形で固定されているため受信機の設置・撤去が簡便であり、可搬性もある。センサシート複数枚を床面・壁面に配列することによって全ての受信機位置は一意に定まる。さらに、飛行体がセンサシートの受信カバーエリアに限定して飛行するとき、飛行体はセンサシート配列に沿って飛行し、結果的に飛行ルートが規定される。すなわち、センサシートの配列が飛行計画のプログラミングを代替する。
従来技術・競合技術との比較
測位対象となる送信機が発する信号を、既知の位置に配置された受信機4機以上で受ければ、従来技術たる逆GPS法に基づく測位が成立する。このときの測位システムが常設ならば多少の手間でも受信機配置作業は一回限り。一方、本件が想定している用途は期間限定・期限付きイベントであって、当該システムの設置・移設および撤去の簡便性・利便性、さらには可搬性が求められているが、従来、これをフォローする適当な技術がなかった。
新技術の特徴
・センサシートによる測位システムの設置・撤去の簡便性
・センサシートによる可搬性
・センサシートの配列による飛行体の飛行ルートのプログラミング
想定される用途
・屋内イベント会場や展示会、テーマパーク等における空間演出のための1ツールとしての利用
・人と近接・接触を想定した飛行が可能なドローンとしての利用
- 材料
6)木質系粉末の流動・自己接着による三次元成形加工技術
電気通信大学 大学院情報理工学研究科 機械知能システム学専攻 助教 梶川 翔平
新技術の概要
スギやタケなどの木質系粉末から、金型を用いて任意の形状を持つ部品を成形できる技術である。合成樹脂などを添加することなく、金型内において木質系粉末を流動・接着させることができ、成形品はプラスチックのような外観を持つ。粉末を用いるため、廃材なども原料として利用可能である。
従来技術・競合技術との比較
木質系材料は金属やプラスチックなどの工業材料と比べ、任意の形状に変形させることが難しいため、主に切削によって加工されており、生産性が低い。木質系粉末に対して、合成樹脂を混合して成形する手法も開発されているが、良好な製品を成形するために必要な樹脂混合率は50 %程度と多い。
新技術の特徴
・廃木材なども原料として用いることができる上、幅広い樹種で成形が可能である。
・三次元的な形状をもつ部品を成形可能である。
・金属材料やプラスチック材料などと同様の加工技術(プレス成形、射出成形など)を適用可能である。
想定される用途
・家電製品の筐体
・文房具
・住宅・自動車内装部品
関連情報
・サンプルあり
- 医療・福祉
7)質感表現による認知症診断方法及び歌詞作成システム
電気通信大学 大学院・情報理工学研究科 情報学専攻 教授 坂本 真樹
新技術の概要
発明1:「さらさら」などのオノマトペに代表される質感表現を回答してもらうことにより、認知症など認知機能障害を推定する方法
発明2:画像や色や形容詞などの感性的なイメージ入力により、歌詞などの文章を作成するシステム
従来技術・競合技術との比較
発明1:MMSEや長谷川式簡易知能評価スケールは、記憶力や計算力を測定するため、認知症の疑いがあるという事実を受け入れがたい患者にとっては抵抗が大きく,検査時間がかかるなど、負担が大きかった。本新技術は、提示された画像や手触りから「さらさら」といったオノマトペなど質感を表現してもらうという簡便な方法で、認知症等になるとみられるとされる質感認知能力の低下を把握できる。発明2:近年,楽曲の旋律を自動的に作成するという技術は多く見られるが、歌詞を自動で作成するという技術はない。本新技術は、それを実現するものである。
新技術の特徴
・オノマトペなどで質感を表現してもらうだけでできる簡便で負担のない認知症診断(発明1)
・質感弁別能力の向上を図れる
・画像や色や形容詞などの感性的なイメージ入力により、歌詞などの文章を作成できる(発明2)
想定される用途
・認知症診断
・歌詞など文章作成支援
・感性トレーニングなどエンタメ
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
- 医療・福祉
8)赤外線・RGB顔画像から非接触心拍と呼吸計測
電気通信大学 大学院情報理工学研究科 機械知能システム学専攻 助教 孫 光鎬
新技術の概要
人体に触れずにバイタルサインを計測する技術の研究がにわかに活発になっている。非接触バイタルサイン計測の利点は、患者への負担が極力少なく、しかも無拘束・無意識などが挙げられる。本技術を活用し、革新的な医用機器の実用化研究・開発について紹介する。
従来技術・競合技術との比較
接触型センサ(心電計や呼吸バンド)と比較し、非接触であるため、長時間の連続計測、被測定者が無意識の状態での計測、プライバシー保護などのメリットが挙げられる。
新技術の特徴
・非侵襲、無拘束、非接触で生体情報センシング
・患者への負担が極力少なく、長時間のモニタリングが可能
・センサーを体に装着する必要がないため、日常生活における多様な場面で応用可能。
想定される用途
・在宅における健康モニタリング
・睡眠モニタリング
・ストレス度の非接触測定
関連情報
・サンプルあり
- 医療・福祉
9)ロボットを使った超音波診断・治療システムの開発と『医デジ化(Me-DigIT)』の推進
電気通信大学 大学院情報理工学研究科 機械知能システム学専攻 准教授 小泉 憲裕
新技術の概要
『医デジ化』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?『医療技能の技術化・デジタル化』という概念の略称です。世界三大発明のひとつである『活版印刷術』が情報の複製(コピー)技術を生み出し、今日の情報革命につながったように、医師の世界観や医療技能をデジタル(なかでもロボット)技術をもちいて再現し、それをコピーすることによって、一部の専門家の間で閉じられた医療知識やノウハウ、スキルは一般に共有化され、医療における新たなイノベーションにつながります。
従来技術・競合技術との比較
既存の装置では呼吸によって臓器が動くのを抑えるために、患者に呼吸を一時的に止めてもらって患部に超音波を当てる必要がありました。これに対して、ロボットシステムによって患部を精度よく抽出・追随できれば、あたかも臓器が静止しているかのような状態で診断・治療が行えます。正常な組織を傷つけることなく、また医師のスキルにもよらずに、誰がやっても一定水準の高度な診断・治療が施せます。現在、肝臓がんや腎臓がんの患者を対象に、システムの機能を確かめるための臨床研究を進めています。
新技術の特徴
・医師のように臓器や患部を抽出・追従・モニタリング
・体動の90パーセントを補償
・1mmの精度で患部を抽出・追従・モニタリング
想定される用途
・医療診断・治療支援
・ヘルスケアにおける各種計測支援
・遠隔医療支援
関連情報
・外国出願特許あり
お問い合わせ
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電気通信大学 研究推進機構 産学官連携センター
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