健康・医療 新技術説明会
日時:2018年10月23日(火) 10:55~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、横浜市立大学、静岡県立大学、名古屋市立大学、岐阜薬科大学、大阪市立大学
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
発表内容詳細
- 創薬
1)安心して使用出来る不整脈治療薬の開発
横浜市立大学 医学部 医学科 循環制御医学 講師 藤田 孝之
新技術の概要
心臓機能に悪影響を与えない不整脈治療薬の開発
従来技術・競合技術との比較
現在使用されている不整脈治療薬は不整脈を抑制する際に,脈拍を低下させたり,心臓ポンプ機能を低下させるなど重要な心機能への副作用がある.したがって注意深く使用しないと,治療によって心機能の低下や心停止から命にかかわる状況を引き起こす危険性がある.この点が不整脈の治療を非常に行いにくく,危険なものにしている.
新技術の特徴
・心臓の重要機能に悪影響を与えない
・既に臨床で使用されている薬剤の代謝産物であるため,安全性が確立されている
想定される用途
・不整脈発作への治療薬として,安全に使用.
・院外心肺停止症例への心肺蘇生時に使用.
・心不全などその他の心疾患治療薬として使用.
関連情報
・外国出願特許あり(出願する方向で検討中)
- 創薬
2)Charge-reversible脂質ナノ粒子を用いた核酸送達技術
静岡県立大学 薬学部 薬学科 医薬生命化学分野 教授 浅井 知浩
新技術の概要
血液のpHにおいて正電荷を有さず(安全性が高く)、且つ内包する核酸のより効率的な効果発現が可能な脂質粒子、及び該脂質粒子を形成するためのcharge-reversible脂質を開発した。安全かつ高効率な核酸送達を可能にする本技術は、核酸医薬(RNA干渉薬、ゲノム編集薬等)開発に有用なDDS技術として有望である。
従来技術・競合技術との比較
従来のイオナイザブル脂質は酸性で正に荷電するが、そのときの実効電荷の変化は0から+1である。一方、本発明のcharge-reversible脂質は中性条件下でもイオン化しており、ナノ粒子化したときの物理化学的安定性が高い。安定性とpH応答性に優位性をもつ該脂質を用いたDDS技術は、今後の核酸医薬開発に有用であると考えられる。
新技術の特徴
・安全性と安定性に優れた核酸導入用脂質ナノ粒子
・低濃度の核酸(siRNA)で遺伝子発現を制御可能
・簡便かつ低コストで調製可能
想定される用途
・核酸医薬(RNA干渉薬、ゲノム編集薬等)の開発への応用
・タンパク質・ペプチド医薬の開発への応用
・ワクチン開発への応用
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
3)肺高血圧症治療薬の新規標的分子の探索と創薬
名古屋市立大学 大学院薬学研究科 細胞分子薬効解析学分野 教授 山村 寿男
新技術の概要
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は予後不良の難病で、薬物治療は確立していない。最近、DNAマイクロアレイ解析を行った結果、特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)患者組織で、その病態形成に関与する分子の劇的な発現変化を検出した。本研究では、それらの分子を標的とした新規PAH治療薬の開発を目指す。
従来技術・競合技術との比較
長年、肺動脈性肺高血圧症(PAH)には適切な治療薬が存在せず、患者のQOL改善が不十分であった。近年、様々な治療薬が開発されているが、それらの薬剤が無効である症例も多く、依然として十分な薬物治療が確立されたとは言い難い。本研究では、既存の治療薬とは異なる作用機構を有する新規PAH治療薬を開発する。
新技術の特徴
・肺動脈性肺高血圧症の新規治療薬
・血管リモデリングの抑制
・新規創薬標的分子
想定される用途
・肺動脈性肺高血圧症治療薬
・末梢循環改善薬
・血管リモデリング抑制薬
- 創薬
4)Notch阻害薬の脊髄性筋萎縮症画期的新薬としての可能性
岐阜薬科大学 薬学部 薬効解析学研究室 教授 原 英彰
新技術の概要
脊髄性筋萎縮症の主な病態としてアストロサイト増殖が挙げられる。またアストロサイトの分化増殖を促進する機構として、Notchシグナルが挙げられる。本技術は、脊髄性筋萎縮症の新規治療標的としてNotchシグナルを同定し、Notch阻害薬が新規脊髄性筋萎縮症治療薬になる可能性を提案するものである。
従来技術・競合技術との比較
現在、SMAに対する治療薬としてはSpinraza® (Nusinerse) が国内における唯一の承認薬である。Spinraza®は、SMN量の増大をもたらし、治療効果を発揮するものの、このようなSMN補充療法は完治をもたらすものではない。本技術は、異なるメカニズムとしてNotchシグナル阻害剤を治療上有効量投与し、SMN補充療法との複合的な治療効果を期待するものである。
新技術の特徴
・アストロサイトを標的とした治療薬
想定される用途
・脊髄性筋萎縮症に対する運動機能改善薬
- アグリ・バイオ
5)粘膜上皮細胞の炎症応答を抑える大腸菌
大阪市立大学 大学院生活科学研究科 食・健康科学講座 教授 西川 禎一
新技術の概要
分散接着性大腸菌は下痢症患者からも健康者からも検出され、その下痢原性は不明とされている。そこで、粘膜上皮細胞に対するIL-8誘導能を調べた結果、患者由来の株が強い起炎性を示すのに対し、健康者由来の株はむしろ炎症応答を抑制した。本菌は炎症性腸疾患などの抑制に応用できる可能性があると考えられる。
従来技術・競合技術との比較
ビフィズス菌や乳酸菌は、プロバイオティクス、いわゆる善玉菌としてよく知られるが、これらに匹敵する大腸菌はNissle1917と呼ばれる株以外にない。今回発見した大腸菌はサルモネラ感染や起炎物質PMAによる刺激に対しても炎症応答を抑制したことから、新たなプロバイオティク大腸菌となる可能性がある。
新技術の特徴
・健康者から分離された大腸菌であり、腸管定着因子を保有するにもかかわらず腸管内での安全性を期待できる
・粘膜上皮細胞の炎症応答に対して優れた抑制性を示す
・炎症応答を抑制する因子が判明しつつあり、抗炎症剤創薬につながる可能性がある
想定される用途
・プロバイオティクス
・炎症性腸疾患の治療用生菌製剤
・抗炎症剤創薬
- 医療・福祉
6)人工知能補助により良好精子を選別するシステムの開発
横浜市立大学附属 市⺠総合医療センター 生殖医療センター 准教授 湯村 寧
新技術の概要
顕微授精時に卵に注入する精子の選別や顕微鏡下精巣内精子回収術時の精子探索において、人工知能を用いることにより胚培養士が効率的・効果的に良好な精子を選別・探索できるように支援するシステムを開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来、生殖医療に携わる熟練した胚培養士がその経験を活かして、顕微授精の場合は精液を洗浄して得られた精子浮遊液の映像を、また精子回収術の場合は精細管を細切して作成した細胞浮遊液の映像を観察して顕微授精に使用可能な精子を探索・選別してきた。
新技術の特徴
・熟練胚培養士の経験を学習した人工知能を利用した良好精子選別・探索技術
・精子一つ一つをマーキング、ランク付けすることにより精子の質的評価が可能
・そのほか様々な補足情報(精巣内精子回収術時の精子以外の精細胞数など)の提供
想定される用途
・顕微受精時の形状良好精子選別補助デバイス
・精巣内精子回収術時の精子探索デバイス
・良好精子の情報を蓄積した若手胚培養士向け教育ソフト(ツール)
- 医療・福祉
7)マイクロバイオームを活用した革新的遺伝子診断技術の開発
静岡県立大学 薬学部 薬学科 生薬学分野 教授 渡辺 賢二
新技術の概要
本技術は大腸がん診断マーカーとなる。大腸がん原因物質とされるコリバクチンの化学構造の決定はこれまでのところ達成されていない。そこで、化学構造の詳細な解析によって、それを検出するためのバイオプローブを創出した。これまでに大腸がんに対する腸内細菌代謝物を活用した診断マーカーの確立は、申請者の知る限りでは例がない。コリバクチン生合成遺伝子中にはペプチダーゼ(ClbP)と機能予測されている酵素遺伝子が含まれている。これによって、最終的にミリスチン酸とD-Asnの縮合部位が加水分解され活性型のコリバクチンへと変換されると考えられる(プロドラッグストラテジー)。この加水分解酵素ClbPの活性を検出することでコリバクチンの生産を検出できる。
従来技術・競合技術との比較
糞便を用い検査すると言った従来の方法と全く同じで、これまでに困難であった大腸がん予知を高感度かつ高精度に行うことができる。つまりコリバクチン生産菌を簡便に見つけ出すことができるのである。これまでにがん検診に用いられてきた「バイオマーカー」はがん細胞の代謝物、すなわち既に体内にがん細胞の存在を確認する手法であった。本方法論は、ヒト自身に存在する因子であり、環境因子としてはヘリコバクター・ピロリ菌による胃がん発症リスクを減少させる概念に近い。しかしながら、大腸がん発症に関して予知マーカーといったものは確立されていない。周知のようにヘリコバクター・ピロリの除菌によって胃がんのリスクは格段に低下した。
新技術の特徴
・大腸がん発症に関する予知マーカー
・非侵襲的かつ簡便に検査できる
・安価
想定される用途
・大腸がん発症リスク予測
・大腸がん予防
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
8)金コロイド粒子の規則配列構造を用いたプラズモン材料
名古屋市立大学 大学院薬学研究科 コロイド・高分子物性学分野 教授 山中 淳平
新技術の概要
100nm〜1μm程度の金コロイド微粒子の自己集合による規則配列構造(コロイド結晶)を、2次元基板上に作製する手法を開発した。
粒子表面間に数nm程度の狭いギャップを持つ構造と、100nm程度の、長距離を隔てた2次元配列の両方が作製できる。
金粒子のプラズモン特性を利用した分子センシング材料として、診断分野での応用が期待される。
従来技術・競合技術との比較
長年研究を行ってきたコロイド粒子の自己組織化現象(コロイド結晶化)を応用した材料で、電子線リソグラフィー法などに比べ、
作製が容易で量産可能である。また、金粒子がランダム吸着した材料に比べて検出感度が高く、微量分析に利用できる。
新技術の特徴
・作成が容易
・高感度測定
・量産可能
想定される用途
・表面プラズモン(SPR)測定用チップ
・表面増強ラマン散乱(SERS)測定用チップ
関連情報
・サンプルあり
- 医療・福祉
9)ふらつきん ~その目眩、脳梗塞じゃないですか?~
大阪市立大学 大学院医学研究科 整形外科学 講師 池淵 充彦
新技術の概要
歩行時の腰部・頚部の加速度変化を計測することで、脳梗塞を発症しているか否か、脳梗塞の重症度はどのくらいか、歩行能力がどのくらいまで回復しているのかが分かります。必要なのはほんの数歩。特別な装置は必要なく、スマホレベルの加速度計でも判定可能です。
従来技術・競合技術との比較
脳梗塞かも知れない、そう思ってもしばらく様子を見てしまい、受診が遅れてしまう患者さんがおられます。本手法を用いれば、高い確率で脳梗塞を発症しているか否かを判断でき、早期加療のチャンスを失うことがありません。またその重症度も、病院でなくても医療者でなくても、いつでもどこでも正確に判定することが可能です。
新技術の特徴
・本技術は、歩行状態を表す単純な数式です。歩行状態のシミュレーション画像やよりリアルな歩行CGを作成する一助になります。
・本技術は、加速度変化を計測できるのであれば、映像・光学計測システム・超音波計測など、どのような装置にでも使用が可能です。
・本技術は単純な数式であり、ごく小さなメモリー容量しか必要ありません。
想定される用途
・脳梗塞ハイリスク患者における、脳梗塞発症の早期発見・早期治療
・脳梗塞後患者の正確な歩行能力評価。これにより過剰な歩行制限を防止し、患者のADLを維持する。
・リハビリテーションメニュー立案へのフィードバック
- 分析
10)ヘム鉄を選択的に検出可能な蛍光プローブの開発
岐阜薬科大学 薬学部 薬化学研究室 准教授 平山 祐
新技術の概要
本研究では、これまで我々のグループで行なってきた一連の鉄(II)イオン検出剤開発の中で見出したヘム鉄応答分子をリード化合物として、その構造最適化を実施し、生体内鉄の大半を占めるヘム鉄を選択的に検出できる試薬を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来のヘム鉄検出方法においては、ヘム鉄と過酸化水素を使った酸化反応による吸光度変化を見るものであった。一般的に蛍光検出法は吸光度検出に比較して10〜100倍程度高感度であり、本研究では、従来の吸光度法を凌駕する高感度検出を可能にするものである。
新技術の特徴
・従来技術が吸光度による検出であったのに対して蛍光検出であるため、高感度化が期待できる点。
・ヘム鉄を選択的に検出可能である点。
想定される用途
・核バイオマーカーとしてのヘム鉄検出キット
・血液中、尿中におけるヘム鉄検出キット
・生細胞および組織染色でのヘム鉄蛍光検出薬
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
横浜市立大学
TEL:045-787-8936 FAX:045-787-2025Mail:sangakuyokohama-cu.ac.jp
URL:http://www.yokohama-cu.ac.jp/
静岡県立大学 地域・産学連携推進室
TEL:054-264-5124 FAX:054-264-5099Mail:renkeiu-shizuoka-ken.ac.jp
URL:http://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/
名古屋市立大学 社会連携センター(事務局学術課内)
TEL:052-853-8041 FAX:052-841-0261Mail:ncu_renkeisec.nagoya-cu.ac.jp
URL:http://www.nagoya-cu.ac.jp/
大阪市立大学
TEL:06-6605-3450 FAX:06-6605-2058Mail:sangaku-ocuado.osaka-cu.ac.jp
URL:https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/research/ura
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